背景「どうやって作ったんだよこれ...」
皆さんは,「マサラスタイル上映」を知っているだろうか.
ざっくりと言えば,「なんでもあり応援上映」である.
「劇場版 少女☆歌劇 レヴュースタァライト」のマサラスタイル上映を見に行ったのだが,
映画自体がすごいのはもちろん,ここに参加する観客(通称:舞台創造科)の熱量がすごい.
「何度もこの映画見たんだろうな」と思えるような声援が飛び,カスタネットやクラッカーが鳴り,
何より,床一面に数cmほど積もるくらいの紙吹雪があった.
おそらく家で作ってきたであろう大量の紙吹雪は,映画上演の2時間ちょっとで消費されるのだが,
簡単に消費されていいものではないと思えるほどの意匠が感じられる.
登場するキャラクターの顔や,ワンシーンで登場する「星」の紙吹雪が飛んできた.
これどうやって作った...?
紙吹雪として投げる場合,数枚とかではないはず..
紙で作成している以上,はさみや切り取りスタンプ,裁断機などの手作業になるが.
考えるだけで怖くなってくる.舞台創造科の熱量は計り知れない.
上映終了後,帰り道で大量生産する方法はあるだろうかと考えていると,
3Dプリンターでなら可能なのではないかと考えた.
目標:光造形3Dプリンタで紙吹雪を作成する
マサラスタイル上映でのレギュレーションは[マサラスタイル上映について]という項目で以下のように記載されている.
《やっていいこと》
★紙吹雪
*お花紙推奨
*大きめに切ってください(4センチ四方程度以上推奨、これ以下だとお掃除が大変!)
*細かすぎる紙(シュレッダー紙等)はNG
~ 中略 ~
《やってはいけないこと》
★主催者が用意したもの以外のクラッカー・火薬類の持ち込み
★紙吹雪以外の固形物をばらまく行為
*マサラスタイルですがお米はNG
詳細なルールに沿うと,禁止行為の「紙吹雪以外の固形物をばらまく行為」に該当するので,
実際のマサラ上映で使用できないことに留意する.
レギュレーションから考えると,今回作りたいのは以下の条件を持つ紙吹雪である.
- 【上映ルール】4cm四方以上のサイズを持っている
- 【3Dプリンタの優位性】紙で作成すると大変そうな形をしている
- 【大量生産の可能性】複数毎を同時に印刷できる
- 【紙吹雪の仕様】投げると"紙吹雪"と言えるような形で広がる
今回使用する機材
光造形3DプリンターはELEGOO MARSを使用する.
光造形3Dプリンターは紫外線を当ててレジンを固めて積層させて造形物を作る形式である.
光造形3Dプリンタのシステム
- レジンを貯めたパットに,プラットフォーム呼ばれる印刷物を付着させる板を漬ける.
印刷部分のみに紫外線を当てて,レジンを固めてプラットフォームに層を作る.
- プラットフォームを1層分浮かせて,上記同様に印刷部分にのみ紫外線をあてて,1層追加していく.
- 積層を何度も繰り返していくことで,最終的にプラットフォームに生成物が出来上がる.
3Dプリンター印刷までの流れ
1. 機材の準備
光造形3Dプリンタ
光造形用のレジンインク
Amazonで販売されている.できるだけ公式品をできるだけ買うようにしている.
最初は500ml(小ボトル)を買って色を確かめたほうがいい.
光造形レジンには「水洗い可能」と「要アルコール洗浄」の2種類がある.
アルコール洗浄を要するタイプは,準備や洗浄作業などが結構面倒なので,
水洗い可能を推奨する.
スクレーパー(プラットフォームから生成物をはがすやつ)
必須ではなく,あったほうがいい物.
プラットフォームと生成物がものすごい密度で引っ付いている時に使う.
自分は100均で購入したもんじゃのへらを使っている.
2. blenderで3Dモデルを作成
3Dモデルを作成できればいいので,blenderにこだわる必要はない.
今回blenderを使用する利用はドキュメントの多さと無料という2点になる.
以下からインストールできる.
11/14にv4.0が公開された.
blenderはバージョン違いでファイルが開けなくなったりするので,作成バージョンに要注意.
3Dプリンタを印刷するまでの最難関部分はこの3Dモデル作成だと思う.
blenderはこんな感じの画面.「何をどうすれば目的の物が作れるんだ...」と言うくらい操作が難しい.
パワーポイントは2Dで造形物の移動だけ管理すればいいけど,
blenderなどの3Dモデル作成ソフトは造形物とカメラ移動の2つを管理する必要があるのも難易度をあげている一つの理由だと思う.
使える人からしたら"慣れ"らしいので,数をこなそうと思う.
造形物が出来上がったら,印刷データに変換する.
3. スライサーで3Dモデルを印刷データに変換
スライサーと呼ばれるソフトを用いて,
3Dモデルを光造形で印刷できる形式に変換する.
今回はCHITUBOXの無料版を使用する.
ソフトで造形物を読み込むと,印刷のプレビューが表示される.
ここで印刷サイズの倍率や印刷物の追加・削除などを行う.
また,印刷物が球体で中身がある場合は,中を空洞することも可能.
レジンインクも安いわけではないのでこういった処理ができることが助かる.
また,サポーターと呼ばれる補助の足場をスライサーソフトで追加することができる.
大きい(重い)物かつ,1層目(プラットフォームへの印刷部分)の表面積が少ない場合,
印刷途中で剥がれることを防ぐため利用する.
ひとしきり設定を終えると印刷のプレビューをアニメーションで確認することができる.
この画面で紫外線を当てる時間やプラットフォームの動作速度などを調整することができる.
スライサーで印刷データを保存し,3Dプリンターで印刷すると造形物が出来上がる.
最後に
「マサラスタイル上映」で使用される紙吹雪を光造形プリンタで作るまでの道のりを情報整理してみた.
意匠のこもった紙吹雪から感じる,とんでもない努力ときらめきに脳が焼かれてしまったので,
自分も作ってみたいと思った.
次回は,blenderで紙吹雪の3Dモデルを作成してみる.