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"エンジニア"の目線でアコーディオンを修理する~観察編~

Last updated at Posted at 2023-12-08

背景

最近,壊れたアコーディオンを譲り受けた.破損の状態は修理不可だと聞いた.
壊れている内訳は「手で空気を送る際に,常に一定の音がなる」という状態であった.
アコーディオンがどのような仕組みで動いているのかを知りたかったため,完全に分解して,元に戻そうと思っていた.
購入後,「破損前は,いい音が鳴っていた」という連絡があり,聞いてみたいと思うようになった.
しかし,自分は調律師でもなく,アコーディオンに詳しいどころか演奏したこともない.
自分が持つ使えそうな知識は,小中学校で習った音楽とエンジニアとして最低限の信号処理のみ.
元の演奏可能なアコーディオンの音を取り戻すために,"エンジニア"として取り組んでみようと思う.
アコーディオンをそのものを直すことは出来ないが,音だけなら何かしらできるかもしれない.

注意

この記事では,自分の観察力・記憶などを確認するために,あえて推測や観察から分かることだけで物事を進めている.
アコーディオンの知識など間違えている可能性が高いので,その点を留意して読んで欲しい.

修理までのロードマップ

以下を想定してみた.

image.png

現状は,鳴り続けている音が何かを分析して音のフィルタをかけて処理する方針を取る.
まずは,アコーディオンがどういった仕組みで音がなるのかを分析する必要がある.
仕組みや音の鳴り方に合わせて分析方法や処理を工夫する必要があると思う.

譲り受けたアコーディオンについて

見た目

鍵盤は30鍵あり,鍵盤と逆側には蛇腹操作用に手を通す革紐と18個のボタンという構成をしている.
おそらく鍵盤アコーディオンと呼ばれる"アコーディオンと言えば"と言えるものだとと思う.
アコーディオンを初めて触ったが,左手にボタンがあることを初めて知った.

見た目.png

演奏してみる

実際に演奏して音を聞いてみることにした.
アコーディオンに革の紐があり,肩にかけることができる.
右手に鍵盤が来るように構えてみると,
左手はギリギリボタンが押せるような形で蛇腹操作用の革紐に手を通すことができた.

まずは,鍵盤を押さずに蛇腹を操作してみる.
4秒引いて,4秒押し込む演奏をするとこのような音が鳴った.

それをオーディオエディタのAudacityで読み込んでスペクトル表示をするとこんな感じ.

oshihiki.png

あぁアコーディオンだなぁという音がする.
音だけで考えると十分な満足感があるが,これでは演奏することができない.

次に,ドと思われる鍵盤を押しながら,演奏する.

oshihikido

明らかに先ほどの音階の音が鳴っている.
また,新しくなっている音をドの音と仮定すると,
元から鳴っている音は「新しく鳴らしたドよりも低い音(低い周波数を持つ)」ことが分かった.
心なしか,操作する蛇腹が少し軽くなった.

最後に用途不明の緑のぽっちがついているボタンを押しながら,演奏する.

oshihikibtn

ドを鳴らした時と比べて,とても複雑な音が鳴っている.
画像で見ると,何も鍵盤を押さない時よりも横線が多くなっているため,より複数の音が混じっていると考えられる.
また,蛇腹はとても軽く押し引きの動作がすぐに終わってしまった.

実際に演奏してみてわかったこと

大体,3つのことが分かった.

  1. 蛇腹を操作すると常に音がなる
  2. 蛇腹を引いた際の音と蛇腹を押し込む際になる音が違う
  3. 鍵盤・ボタンを押すと,蛇腹の操作が軽くなる

そこで3つの仮説を立てた.

常に鳴る音の処理方法について

蛇腹からは常に一定の音階の音が出ており,それを消すためには周波数フィルタをかける必要がある.
周波数フィルタによる処理をして演奏する場合,
押す時になる音を消すフィルタ,引く時になる音を消すフィルタ,フィルタをしないの3状態になることが予想される.
蛇腹の押し引きで別の処理をする必要がある」という前提を立てた.

左手にあるボタンの意味

左手のボタンはベースを弾く用にあるのではないかと思われる.
音で比較してみると,ドの単音よりもボタンを押したほうが複雑な音が鳴るようになっている.
これは「ベース(複数音)が鳴っている」のではないかと考えた.

ピアノも左手はベースを弾くことから,その仕組みをアコーディオンに取り込んだと考えると,
左手のボタンはベースを弾くためのボタンである」という前提を立てた

アコーディオンの音が鳴る仕組み

「風を送って音が鳴る」楽器に関しては,他に「鍵盤ハーモニカ」と「ハーモニカ」を知っている.
アコーディオンは仕組みとして,それらに近いもしくは同じなのではないかと思う.

鍵盤ハーモニカは,空気をため込む部分にたまった空気を,鍵盤を押すことで
決まったルートで空気を流し,その空気の動きでリードを震わせる楽器である.
小学校の時,鍵盤ハーモニカを全鍵盤を押さえて鳴らそうとしたが,息の力が全然足りなかった覚えがある.
それは,リードを鳴らす空気の道が広くなり,リードを震わすほどの空気が送れなかったからだと思う.

今回,複数音鳴らした際に蛇腹が軽くなったのは,複数のリードを鳴らそうとするとその分必要な空気の量が多くなったからだと考える.
「空気の力で音を鳴らす外部的な要素と,音を鳴らす際にリードを使う内部構造も鍵盤ハーモニカと同じ」という前提を立てた.

最後に

知識の無い物を前にすると,ちゃんとやってこなかった小学校の自由研究を思い出した.
小学生の自分に,興味を持てるものを探してほしかったなと大人になって思い返すことになった.

次回は,収録した音を元に何の音が鳴り続けているのかを分析する.

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