主にUSですがAIに関する政策研究者たちが毎年AIに関するトレンドをまとめたAIインデックスというレポートを出していますが、その最新版である2018年のものが最近リリースされました。
去年は北米中心でしたが、今年はヨーロッパ、中国に関するトレンドもカバーされています。主に、投資、雇用、論文、特許、スタートアップ、ビジネス、政治の分野でのAIのトレンドです。
詳細はこちらのオリジナルのレポートを見ていただければと思いますが、ここではいくつか興味深いものを簡単に紹介します。
AIに関する論文の数
発表されたAIに関する論文の数の年ごとのトレンドをUS、中国、ヨーロッパの3地域に分けたのが以下のチャートです。ヨーロッパというのは多くの国の寄せ集めですが、それでもUS、中国よりも多いというのは個人的に驚きました。
それではそれぞれの地域ではだれがそういった論文を書いているのかというのが以下の3つのチャートになります。
まずは中国から。圧倒的に政府系で、さらにものすごい勢いで伸びていっているのがすごいがすね。
このチャートには大学などアカデミアは含まれていませんが、アカデミアからの論文の数は直近の2017年だと14,000ほどで、それは全体の92%を占めるとのことです。
次にヨーロッパです。ここも政府系が多いですね。
ちなみにここに含まれていない大学は直近の2017年だと16,000ほどで、それは全体の88%とのことです。
最後にUSです。ここ最近では政府系も企業もそれぞれ伸びていますが、やはり企業からの論文が圧倒的に多いですね。おそらくGoogle、Microsoftなどが特にここ最近の主要プレーヤーだと思います。
ちなみにここに含まれていない大学は最近の年の2017年だと9,000ほどで、それは全体の81%とのことです。
こうしてみると、いかにUSは企業が現在のAIブームを支えているのかがわかります。
AI論文のサブカテゴリーごとのトレンド
AI論文のサブカテゴリーごとのトレンドが以下のチャートです。
機械学習と確率論的推論(Probabilistic Reasoning)が一番多いですが、深層学習に関する論文の数が特にこの数年で一気に加速度的に増えているのが見えます。
この辺はある意味、予想通りというひとも多いのではないでしょうか。
arXivという論文を公開するサービスがありますが、そこに出されたAIに関する論文のサブカテゴリーのトレンドを追ったものが次のチャートです。
ここでは、Computer Vision、パターン認識(Pattern Recognition)に関するものが爆発的に増加していますね。
国別のAAAI会議で論文が受け入れられた数
2018年のAssociation for the Advancement of Artificial Intelligence (AAAI) という会議に提出して受け入れられた論文の数を国ごとに集計したのが次のチャートです。ちなみに2018年はこの会議はUSのニューオーリンズで開催されています。
提出された論文の70%ほどがUSと中国からとのことです。チャートを見てもわかるように、提出された論文の数としては中国が一番多いのですが、受け入れられた数という点ではUSと中国はほぼ同じです。USの論文が受け入れられる率が高いのがわかります。
大学生がAIと機械学習を勉強している割合
将来を考えるときには現在大学生が何を勉強しているのかを知ることが重要です。次の2つのチャートはUSの以下の大学でAIの基礎コースと機械学習の基礎コースへの参加率のトレンドです。
- University of California-Berkeley
- Stanford University
- University of Illinois at Urbana–Champaign
- University of Washington-Seattle
まずはAIの基礎コースから。
スタンフォード大学とカリフォルニア大学バークレー校での参加率が他に比べて高いですが、スタンフォードでは2014年以降にその比率が一気に伸びています。直近の2017年では学生の13パーセントが受講しているとのことです。すごいですね。
次に機械学習の基礎コース。
ここでも圧倒的にスタンフォード大学の学生の参加率、すごいですね。
ちなみにこちらがUS以外の以下の大学でのAI、機械学習の基礎コースへの参加率の成長率を2010年をもとにしたチャートです。
- Tsinghua University (China)
- National Institute of Astrophysics
- Optics and Electronics (Mexico)
- University of British Columbia (Canada)
- University of Toronto (Canada)
- TU Wien (Austria)
- Hebrew University (Israel)
- EPFL (Switzerland)
- MILA (Quebec, Canada)
中国のTsinghua、カナダのToronto大学がかなりな勢いで成長しているのがわかります。残念ながら、US以外に関しては、こうしたコースに参加している生徒の割合というチャートは出されていませんでした。
大きいAI会議への参加者
大きい規模のAI会議への参加者のトレンドを表したのが以下のチャートです。
NeurIPS (前はNIPSと呼ばれていた。)、 CVPR、ICMLといった会議が特に2012年以降に多くの参加者を集めているのがわかります。
AIスキルのタイプごとの仕事の応募件数のトレンド
やはり機械学習のスキルを必要とする仕事の数が一番多く、さらにどんどんと増えていってますが、最近では深層学習のスキルを必要とする仕事が一気に伸びているのがわかります。
AIと機械学習のオープンソースプロジェクトの人気度
Githubで公開されているAIと機械学習のソフトウェアのパッケージが集めたStar(星)の数のトレンドが以下のチャートです。それぞれのパッケージの人気度を測る一つの指標と言えます。
それにしても、Googleが公開した深層学習のフレームワークであるTensorFlowの人気ぶりはすごいですね。ほかを寄せ付けません。
こちらのチャートはTensorflowを除いたものです。
Pythonの機械学習のパッケージであるscikit-learnはしっかりと成長し続けているのが見えます。
企業の会計報告でAIと機械学習という言葉が出てきた回数
ニューヨーク証券取引所で株式が公開されている企業が、4半期ごとに会計結果を発表するときに、「AI」や「機械学習」という言葉がどれだけ出てきたかのトレンドを、テック企業とそれ以外の企業に分けてチャートに表したのが次です。
上がテック企業、下がそれ以外の企業です。
おもしろいのはそれと対比するために点線で出ている、「ビッグデータ」と「クラウド」という言葉の出る回数のトレンドです。この2つの言葉では、テック企業とそれ以外の企業の間でピークになるときのずれはだいたい4年ほどのようです。テック企業のCEOが話すテクノロジーに関する内容を、テックでない企業のCEOでも4年くらい経つと話し始めるということでしょうか。
テック企業ではAIに触れる回数がすでにビッグデータよりも多くなっているということは、これから数年の間にテックでない企業のCEOから今まで以上にAIという言葉が出てくるのではないでしょうか。
国会でAI、機械学習という言葉が出てきた回数
US、イギリス、カナダの議会で、「AI」、「機械学習」という言葉が使われた回数のトレンドが以下の3つのチャートになります。
US
イギリス
カナダ
どこもさすがに「AI」という言葉のほうが、「機械学習」という言葉よりも出現回数が圧倒的に多いですが、USに関してはけっこう「機械学習」という言葉が出てくる回数も多いようです。
GoogleやFacebookのCEOなどを議会の公聴会に呼んできて、質問するたびにテクノロジー音痴をさらけ出して目も当てられないような政治家ばかりのUSですが、それでも、おそらく一部だとは思いますが、しっかりと「機械学習」という言葉を使っている政治家がいるところは、まだまだ捨てたものではありませんね。(笑)
以上です!
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