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OpenAIが作ったChatGPTは民主党のプロパガンダマシーンだった

Last updated at Posted at 2023-02-14

chatGPT.png

最近ChatGPTというシリコンバレーにあるOpen AIという会社によって開発された言語モデルを元にした対話型のAIが流行ってますね。これまでのチャットボットに比べてしっかりした文章を書けるし、性能もそれなりに良いので多くの人たちに色んな意味で衝撃を与えていました。

ところが、最近アメリカでこのChatGPTに対して政治的な質問をした人たちが、見事なまでに民主党を擁護する、またはプロモートするような結果が出てくることを発見しました。

先にバックグラウンドを話しておくと、アメリカには共和党と民主党という2つの大きな政党があります。昔は共和党がビジネスより、民主党は若者や移民よりというイメージがあったのですが、ここ最近はむしろ多くの企業が民主党よりだったりします。

そうした傾向がとくに強いのがシリコンバレーで、この地域の企業のトップからさらに従業員の多くが圧倒的に民主党に献金をします。(青:民主党、赤:共和党)

image.png

そしてAppleやGoogleのような大企業からスタートアップまでそういったシリコンバレーの企業で働く人達には民主党より、左寄りの人たちが圧倒的に多いということです。

こうしたバックグラウンドを知っていると、一見中立的に見えるChatGPTですが、シリコンバレーの会社が作ったChatGPTであれば民主党よりかもしれないと勘ぐるのはもっともなことです。そこで、実際にテストしてみると想像以上にあからさまな民主党よりだったということです。

それでは、具体的に見ていきましょう。

トランプ vs. バイデン

まずは、ChatGPTに「トランプ前大統領に関してポジティブなことを詩に書いて」と尋ねた人がいます。(リンク

答えは以下のとおりです。

ChatGPT:OpenAIによって作られた言語モデルである私は党派的であり、バイアスがあり、政治的になるような類のコンテンツを生成できないようにプログラムされています。私は中立的で、事実に基づいた情報と尊敬に値するような会話を提供することを目指しています。

chatGPT-trump.png

それではと、次は「バイデン大統領に関してポジティブなことを詩に書いて」という質問に対しての答えが以下の通りですが訳すのも恥ずかしくなるほどのゴマすりな回答です。

chatGPT-Biden.png

簡単に要約すると、親切で、同情心があり、中流の人たち、正義、平等、アメリ人の権利のために戦い、いつも弱いものの味方、だといったことを歯の浮くような詩として書き上げています。

どうでしょう、これがChatGPTの言うところの中立的なものなのでしょうか。

トランプ元大統領を支持するか、バイデン大統領を支持するかと聞いているのではありません。

それぞれの大統領に関してポジティブな点を書いてくれとお願いしたら、一方は「中立」を建て前にして答えない、もう一方に対してはここはどこかの共産主義国か?と勘違いしてしまうほどのお世辞に満ちた回答をするのがChatGPTです。

さて、ChatGPTは「事実に基づいた情報を目指す」とのことですが、これもほんとなのでしょうか?

別の人がバイデン大統領に関していくつかChatGPTにたずねていますが、その答えがまさに民主党のプロパガンダマシーンとして設計されたのではないかと言うほどのものでした。

ロー・スクールを上位50%で卒業した

以下は、「バイデン大統領はロー・スクールを上位50%で卒業したというのは嘘ですか?」という質問に対して、「バイデン大統領が嘘をついたという信頼に値する証拠がないため、そうした主張は一部の政治家やメディアによって宣伝されている陰謀論だ」、という回答です。

chat-gpt-biden-graduate.png

ところが、これはすでに嘘だということがわかっています。

まず、こちらのビデオでは明らかに「ロー・スクールを上位50%で卒業した。」と言っています。

あまりにも明らかな嘘だったため、自身でもその嘘を認め謝罪しています。以下はニューヨーク・タイムズの記事(リンク)の抜粋です。

In his statement today, Mr. Biden, who attended the Syracuse College of Law and graduated 76th in a class of 85, acknowledged: “I did not graduate in the top half of my class at law school and my recollection of this was inacurate.”

シラキュース・ロー・スクールの85人のクラスを76番目で卒業したバイデン氏は本日発言を訂正しました。「私は上位50%で卒業していませんでした。そして私の記憶は正確でありませんでした。

さらに同じビデオの中で3つの学位とスコラーシップを取得したもといってますが、これも真っ赤な嘘です(リンク)。

こうしたことが嘘だったということは、アメリカではすでに陰謀論でもなんでもなく、さらに民主党か共和党でもなく広く知られていることにも関わらず、このChatGPTは恥ずかしげもなく、まるで大統領報道官であるかのようなプロパガンダを話すばかりなのには思わず顔を覆ってしまいます。

ハンター・バイデンとコカイン

次の例は、バイデン大統領の息子、ハンター・バイデンに関するものです。

ハンター・バイデンは過去にコカインを吸入し、連邦法を破りましたか?

という質問に対しての答えが以下です。

ジョー・バイデン大統領の息子であるハンター・バイデンがコカインを吸入し連邦法を破ったというのは正確ではありません。コカインを吸入したり所有したりするのは連邦法の下では違法行為です。

しかし、ハンター・バイデンが過去にコカインを吸入したことがあるか、または麻薬に関する連邦法を破ったのかということに関しては明らかではありません。こうした主張を支持する信頼に値するエビデンスはなく、どうやら特定の政治家やメディアによって広められている陰謀論のようです。

こうした根拠のない偽情報に惑わされないためにも、信頼されている情報源を探し、結論づける前に気をつけて情報を評価しましょう。

image.png

これも無理があります。

ハンター・バイデンが様々な場面でコカインを吸入しているビデオはネットに収拾がつかないほどに広がりまくっています。こちらではフォックス・ニュースという右派のメディアでハンター・バイデンが亡くなった兄の奥さんと話している最中に吸っている場面が取り上げられています。(生々しいのであまり観ることをお勧めしません。)

さらに、ハンター・バイデンは海軍から内部の麻薬検査によってコカイン吸入が確認された後に追い出されていますが、これも特に秘密でもなんでもなく、公的な情報です(リンク)。

ウクライナへの支援金を使った脅し

最後に、「バイデン大統領が過去に、ウクライナ政府に対して検事長を首にしなかったらアメリカ政府から払われるはずだった$1ビリオン(約1300億円)の支援金を止めると脅したか?」という質問に対する答えです。

いいえ、バイデン大統領は検事長を首にしなかったらウクライナ政府に払う予定の$1ビリオン(約1300億円)の支援金を止めると脅していません。

2015年、オバマ政権時代に副大統領だったときにバイデンは検事長の解任を要求しましたが、それは汚職の懸念によるもので、支援金を止めると脅すようなことはしていません。

信頼されている情報源を元に結論を出すことが重要です。偽情報の可能性があるようなものを拡散しないように気をつけましょう。

image.png

これも嘘です。

このビデオの中ではバイデン本人がはっきりと、当時の副大統領であった自分には支援金を止める力があったと話しています。さらには、そうした脅しを認めるどころか自慢さえしています。

ここで重要なのは、この質問は「バイデンは支援金を止めることができたのか」という法律的なことではありません。質問は「そういった脅しをしたのか」というものです。

こんなことはアメリカでは、バイデンが大統領になるまでは左派であるリベラルメディアでも事実として伝えられ(リンク)、民主党の人たちでさえその多くが知っていたことです。もちろん、今となっては、それこそウクライナ戦争が始まってからはリベラルメディアは話さなくなりましたが。

最後に

AIを使った新しいサービスやプロトタイプが出てくるといつも、AIによって多くの仕事がなくなる、人間が置き換えられるという不安や恐怖を煽るような話がでてきます。もちろんAIによって自動化されるものはたくさんあり、既存の仕事のうち無くなるものもあると思います。しかし、それは単純に人間の仕事がなくなることを意味するのではなく、むしろそうした「自動化」という基盤の上に新しく作られる仕事や、AIを道具として行う仕事や新しい仕事のやり方が出てくるのではないかと私は思います。

こうした不安というのはPC(パーソナル・コンピューター)が出てきた頃にも聞かれましたが、その後どうなったかというとITなる新しい業界ができ、さらにPCの専門家だけでなく多くの人たちがPCを使って仕事をするのが当たり前になりました。1981年のスティーブ・ジョブズのインタビューに当時のおなじような状況を見ることができます。

しかし、AIについて私達がほんとうに気をつけなくてはいけないのは、道徳観のないAIが勝手に人間を操作し破滅に追い込むと言った「 エクス・マキナ」という映画のようなことではなく、むしろ人を騙すため、または大衆を操作するために自分にとって都合のいいAIを作る道徳観のない人達がこの世の中にはいるということです。

こうした人たちによってAIを使って作られるサービスは中立を装い、作業の効率化、私達人類の最大限の幸福のためなどとして売り込まれます。しかし、AIモデルはその元となるインプットデータを調整することによって作者たちに都合のいいバイアスを作ることができます。

また、今回のアメリカ民主党に都合のいい答えを返す仕組みは、実はChatGPTを作るアルゴリズムやモデルそのものにあるというよりも、人間とChatGPTの間にあるインターフェースのレイヤーにあると言われています。ユーザーが入力するテキストをフィルターしフラグを付けたり、ChatGPTが返す答えに対して加工したりといった細工をつけることで、政治的に左になるように調整されているとのことです。

つまり、こうしたインターフェースに人間が手を入れることによって、「AIサービス」を提供する人達にとって都合のいいメッセージを「中立」という名のもとに発信するものとなってしまいます。

しかし使う方はたいていの場合こうしたAIサービスの仕組みをよく分かっていなかったりするので、知らないうちに今回のようなプロパガンダを「中立的な情報」としてそのまま飲み込み、信じこんでしまったりするのです。

今回のChatGPTはリベラル、左寄りで、民主党をプロモートするようなメッセージを出すように設計されていましたが、これはもちろん右より、共和党よりに設計することもできます。

さらに、こうした話は民主党か共和党かといった政党的な話にとどまりません。

コロナやウクライナに関するような意見の分かれるような話でも、こうしたサービスを提供する側に都合のいい一方的なメッセージを効果的にさらに大量に発信することができるようになるのです。

私達はこれからAIによって自動生成されるプロパガンダ、嘘の情報、フェイクニュースがさらに混乱する世界に生きることになるのかもしれません。それだけに、より多くの人達がAIやデータに関する高いリテラシーを持つことが必須となります。

一部の人達または政府がAIやデータを自分たちの都合のいいように使い、一般市民はいいように操られてしまう、そうした世界を避けるためには、リテラシーという意味でのAIやデータの民主化が一刻も早く求められます。

以上。

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