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学校で教えてくれない本の読み方

Last updated at Posted at 2024-07-30

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私は本を読むのが好きで、Amazonや、また日本に行ったときはいくつも書店に立ち寄りついついたくさん本を買ってしまいます。しかし時間を十分確保できず、読まずにそのままになっている本もたくさんあります。

そんな中、最近モーティマー・アドラー氏による、その名も「How to Read a Book (本の読み方)」という本に出会い感激しました。(今さらではありますが。。。)日本では「本を読む本」というタイトルの日本語訳版も出ているようです。

今から80年以上も前に出版された、本からほんとうの知識を得るための土台を提供してくれるこの本は、本の読み方に関するクラシック(古典)と呼ぶにふさわしい本です。世の中にあるたいていの「読み方」に関する本はこの本からの派生と言っても言い過ぎではないかと思います。

どうやって本を読むべきなのかというのは、もちろん目的によって変わってくるのですが、この「本の読み方」の中に書かれている4つのレベルの本の読み方を知っていると、効率的に本が読めるようになりますし、さらに本を読むことによってさらに自分が成長していけるようになると思います。

そこで今回は、この「4つのレベルの本の読み方」を完結にまとめているブログ記事、「The Best Summary of How to Read a Book by Mortimer Adler」を見つけたので、こちらで皆さんと共有したいと思います。

以下、翻訳。


本の読み方(モーティマー・アドラー)のまとめ

本を読む本(How to Read a Book)」による4つのレベルの本の読み方が、あなたの学習にとってどう役立つのか解説します。

4つのレベルの本の読み方

アドラー氏は本の読み方には4つのレベルがあると言います。

  1. エンターテイメントのための読み方(基礎的)
  2. 情報を得るための読み方(精査的)
  3. 理解のための読み方(分析的)
  4. マスターするための読み方(シントピカル)

あなたが小学校で本の読み方を習ったとき、それはエンターテイメントのための読み方を教えてもらったのです。もし高校や大学まで行ったのであれば、あなたは情報を得るための読み方を学んでいるはずです。

たいていの人達はここで止まります。しかし、本を読むことによって得られる最も大きな価値はその後の2つのレベルから得られるのです。

実際、最後の2つのレベルの読み方を学ばなければ、片腕を縛られてボクシングの試合に望むように人生を生きていくことになるでしょう。

もちろん全ての読書が最後のレベルの読み方になる必要はありませんし、そうすべきでもありません。読む対象の本があなたにとってどれだけ重要かによって、必要とされる本の読み方を変えるべきだと言っているだけです。

恋愛小説と法律に関する書類を同じように読んでいたのであればあなたの人生は悲惨なものとなるでしょう。

1. エンターテイメントのための読み方(基礎的)

これは小学校で習うような本の読み方です。このブログ記事を読んでるということはあなたはこのレベルにはすでに達しているということです。

2. 情報を得るための読み方(精査的)

流し読みはよくないという人がいますが、そんなことはありません。

素早く流し読みするのはその本が時間を書けて深く読むに値するかを判断するためです。たいていの本はそれほどの価値がないものです。

このレベルでは2つのタイプの読み方があります。

システム的な飛ばし読み:素早く飛ばし読みする。「はじめに」の章、目次、インデックスやカバーの内側を先に読みます。これでキーとなる章や本に書かれている重要なアイデアの概観が見えてきます。その後は気になる章を飛ばしながら読みます。

表層的な読み方:素早く流し読みをする。途中で思考のために止まったり、ページにコメントを書いたり下線を引いたり、知らない言葉を調べたりすることはありません。何か理解できないことがあっても、止まることなくどんどん読み進めるのです。だいたいの概要が読めればオッケーで、とにかく早く読み終わることが重要です。

どちらにしても、手に取った本のメインとなるアイデアが理解できればそれで十分です。最近巷で流行りの人間の心理に関する本などは、それらの本の「はじめに」的な章を読むだけでその本の価値の90%が得られると言っていいでしょう。

情報を得るための読書の目的は著者の主張や意見の論理的な構造と概要を理解することです。深く読むわけではないので、微妙なニュアンスなどは理解できませんが、重要なポイントはつかめます。

たいていの場合はここで止まります。読み終わるとその本を本棚にしまって次の本を手に取るといったかんじです。

しかしたまに、もっとその本について深く知りたいと思うようなこともあります。これが次の「理解のための読み方」です。

3. 理解のための読み方(分析的)

かつてフランシスコ・ベーコンは「いくつかの本は味見に値する、いくつかは飲み込むに値する。そして、まれにだが、たまには噛み砕いて、消化するに値するような本もある。」と言いました。

「理解のための読み方」はまさにこの噛み砕いて、消化するような読み方だと思ってもらえればいいでしょう。これは時間をかけ、頭をフルに使うタイプの読み方です。あなたの脳をフル回転させ、何が言われているのかを理解するために努力しなくてはいけません。

理解のための読み方には4つのルールがあります。

  1. どういった分野の本で、どういったトピックなのかを識別する。
  2. その本が全体を通して何を言おうとしているのかを正確に説明する。
  3. 重要な部分を抜き出し、それぞれの概要とそれらの間の関係を書き出す。
  4. 著者が解決しようとしている問題を定義する。

これらは簡単なようですが、実際にやってみるとけっこうな努力を必要とします。しかし、「情報を得るための読み方」を終えていれば、このレベルに必要な土台はすでにできているはずです。

理解のための読書は本の中に書かれているアイデアをあなたの頭の中にあるものと統合させる必要があります。本の中に書かれていることを消化し、それを自分のものにするということです。

このレベルの読み方をうまくやれば、手に取った本を深く理解することができます。

しかしこれは、本に書かれているトピックより広範な分野を理解したことにはなりません。1冊の本や記事を読んで、そこで書かれているトピックについての専門家を気取ることはもちろんできません。

そのトピックについてマスターしたいのであれば、それに関する複数の本を読み、それらを比較、対比させる必要があります。これが次のレベルの「マスターするための読み方」です。

4. マスターするための読み方(シントピカル)

このステージの読み方は最も要求されるレベルが高く大変なものです。

何かをマスターするための読書は同じトピックに関連するたくさんの本を読みそれらを比べ、それらの本に出てくるアイデアや使われている言葉、論理を対比させる必要があります。

そのためには関連する論理的展開を把握し、出てくる言葉を正確に理解し、問題とされていることを定義し、様々な角度から問題を探り、答えるべき質問を定義していく必要があります。

ここでの目的はある特定の本の全体像を理解することではありません。対象となるトピックに関して広く、そして深い理解を得ることが目的です。この読み方はそのトピックについてあなたがこれまで知らなかった、または気づいていなかったギャップを埋めることにもなります。

マスターするための読書には以下の4つの点が重要です。

  1. 主張の根拠とその論理的展開を理解する。
  2. 自分の言葉に翻訳する。 - 著者の言葉をそのまま使うのではなく、必要であれば自分の言葉に置換えます。このことによってそれぞれの著者による異なる単語や言い回しもあなたの言葉によって統一、整理されます。
  3. 質問を定義する。 - 著者が何を問題にしているかではなく、あなたが何を知りたいのかにフォーカスしましょう。そのために複数の著者が答えることができる質問を定義します。もちろん、すべての著者が同じことを問題としているわけではないため、いくつかの著者は答えることができない質問もあるかもしれません。
  4. 問題を定義し、議論を分析する。 - ある質問に対する答えが異なることもあります。それはさらに調査や思考が必要となる質問であるということです。問題に対する様々な視点を理解することは、より多くの情報を元にした意見を形成することに役立ちます。誰にも反対されることなく、みんなが同じように受け入れる真実といったものはありません。あなたが見つけようとしている答えは相対立する見解の中に転がっているものです。これらの著者とあなたの間でより多くの情報を元に対話できることこそがほんとうの価値なのです。

3番目や4番目のステージの読み方は大変に聞こえるかもしれません。それはそのとおりです。ほとんどの人はこんなことをやりません。だからこそ、こうした読み方ができるようになれば、あなたは一歩抜き出ることができるようになるのです。


以上、翻訳終わり。

あとがき

世の中にあるたいていの本はサラッと読み流すだけで十分なのに対して、いくつかはじっくり読むに値し、さらに読むたびに新しい発見があるようなものもあります。こうした本の多くは古典(クラシック)と呼ばれたりしますが、それらは少なくとも50年以上経っても多くの人に読まれている本です。もちろん1000年を超えるようなものもありますが。)

この「How to Read a Book(本の読み方)」という本は、まさにそういった古典(クラシック)と呼べるにふさわしい本ですが、あまり多くの人に知られていません。そこで、いつもの私が専門としているデータとは直接関係ないのですが、この機会にみなさんと共有させていただきました。

ちなみに、私の関わるデータに関連する分野でもたくさんの本があり、さらにどんどんと新しい本も出版されます。それらすべての本に目を通しておきたいと思うものの、それらすべてをしっかりと読む時間はありません。

そんなときこそ、この本はどのレベルに相応しいものなのかというのを最初に考えることの重要さを実感します。

たいていの本は上記のいわゆるレベル2の「情報を得るための読み方」で十分です。もちろんそうした本からも学ぶことはたくさんありますが、とにかく情報の収集が目的と割り切ります。

そうした読み方をしている中で、たまにレベル3の「理解のための読み方」に値するような、いわゆる古典(クラシック)と呼べるような本に出会います。私にとっては、例えばデータ関連であれば、ジョン・テューキー氏の「Exploratory Data Analysis」、エドワード・デミング氏の「New Economics」や「Out of the Crisis」、Trevor Hastie氏などによる「An Introduction to Statistical Learning」や「The Element of Statistical Learning」、ダレル・ハフ氏の「How to Lie with Statistics」などがそうです。

これらの本を理解するには、その内容を自分用に書き留めたり、ブログ記事として公開したり、公開セミナーを行ったりすることで自分の知識にすることができます。これに関しては「ファインマン・テクニック」なども参考になるかと思います。

データサイエンス・ブートキャンプのようなトレーニングプログラムを開発する際には、さらに一歩進んでレベル4の「マスターするための読み方」のように複数の本を比べて読み、参考にすることもありますが、正直私はまだこのレベルの読み方ができていないというのが現実です。今後は、もっと積極的に視点、意見の異なる本や資料などを探し、よりインフォームドされた自分の考えなり意見というものを形成していけるよう励みたいと思います。

以上。


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