ちょっと前に、シリコンバレーのInstacartで、データサイエンスのVP(バイス・プレジデント)をやっているJeremy Stanleyによる「あなたのビジネスのデータサイエンス本気度を試す4つの質問」という記事の訳と解説を書きました。
今回はその続きです。
上の記事の質問に答え、データサイエンスに対して本気であるということが確認できたとします。その場合、いつ始めればよいのかという質問が出てくるかと思います。
そこで、いくつものシリコンバレーのデータ先進企業でデータサイエンスのチームを作り、率いてきたJeremyとDanielによるアドバイスをここで、要訳という形で紹介します。
以下、要訳。
Doing Data Science Right — Your Most Common Questions Answered - Link
データサイエンスにはサイエンスのためのデータが必要です。しかしほとんどの企業では最初の頃はこの肝心のデータが十分ありません。
こういった、あまりやるべき仕事がない間は、あせってデータ部門のトップを雇ったり、データサイエンスのチームを作り始めるべきではありません。
まずは、後にデータを分析する際に重要となるデータを収集し始めるべきです。
データプロダクトを作る必要があるのであればデータがいきなり最初の頃から必要になることもあるでしょう。それでも、最初のMVP(Minimal Viable Product / 価値を提供するための最低限の機能を持ったプロダクト)はおそらくデータ・ドリブンとはならないものです。むしろ、最初は自分たちの直感に頼り、市場がそうしたアイデアを受け入れるかどうかを観察することが主な仕事となります。
そのような時に、データの収集やデータサイエンスに投資しはじめるのは、あなたのMVPを作り顧客に提供するのに使うべきだった貴重なお金と時間を無駄遣いすることになります。
ちょっと言いすぎかもしれませんが、それでも恐れずにアドバイスを言わせてもらうとしたら、あなたのプロダクトがMVPのレベルに達していると確認できた時が、データサイエンスに投資し始めるときだと言えるでしょう。
データサイエンティストが仕事をするために必要なデータが集まり(もしくはすぐに集まる予定)、プロダクト、エンジニアリング、そしてビジネスのかなり大きな時間と労力をデータサイエンスに対して割り当てる準備ができたのなら、この時点ですばやくチームを作り始めるべきです。
プロダクトのローンチが成功すると学ぶための十分なデータを生成し始めることができます。こうしてどんどん入ってくるデータのスピードと同じくらいに、このデータから価値のあるインサイトを取り出すことができる人をチームに加えていく必要があるのです。
データに価値を見出す文化を作るというのは、いつ始めても早すぎるということはありません。ビジネスの意思決定は、顧客の獲得であれ、プロダクトのリリースであれ、意見ではなくデータをもとに行われるべきなのです。
データサイエンスを早い時期に組織にもちこむメリットの一つはデータを最も重要な資産と位置づけることができるからです。
以上、要訳終わり。
あとがき
何でもいいからまずはデータを集めてみるではなく、何がビジネスにとってのゴールで、それを達成するためには何が問題なのか、それはどのようにデータで解決できるのかといったことこそ、まずは最初に明らかにする必要があります。
例えば、自分たちのビジネスモデルがサブスクリプション・モデルで、サービスを購読してくれる顧客の数を増やすのがゴールだったとします。その場合、大きく分けて、コンバート率をあげるか、チャーン率を下げるかということが重要になりますが、ビジネスの最初の時期にはまずはコンバート率を上げることが直近の問題かもしれません。(そもそも顧客の数が少ない。)
もしそうであれば、コンバート率をKPIとしてモニターすることになります。その場合は、コンバートしたかしてないかをどう定義し、その情報をどこからとってくるのか。サードパーティの課金システムを使っているのであれば、それとの連携が必要になるかもしれません。
そして、そのコンバート率をどのレベルでモニターするのか。例えば、国ごとなのか、OSごとなのか、バージョンごとなのか、別の属性(例えば性別、年齢など)なのか。自分たちのビジネスにとって重要な属性とは何なのかという議論が必要になります。
そして、このKPIをモニターすることによって、そもそも現在のコンバート率は問題なのかどうかを確認する必要があります。もしかすると緊急に解決しなくてはいけない問題ではないかもしれません。その場合は例えばチャーン率の改善に努力を費やしたほうが良いかもしれません。
もしコンバート率が緊急の問題なのであれば、ようやく次のステップとしてユーザーの行動履歴に関するデータを使い、それらがどうコンバート率に影響を与えているのかを分析していくことになります。ここではじめて、どういうデータがあればここでの分析に役立つのかという議論になります。
取れるものは取るという、FOMO(Fear Of Missing Out / 機会をとりそこなうことにたいする恐れ)によってデータを取り始めるのではなく、まずはデータで解決することができるビジネスの問題を定義し、その問題を解決するためのデータ分析という観点から、どういったデータが必要になるのかというステップで進んでいくことで、すばやく効率的に動いていくことができ、データを使って分析し続け、最終的にはそれが発展していくことでデータ・インフォームドな文化が組織の中に作られることになるのではないかと思います。
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