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ユーザーのエンゲージメントを理解したい人はぜひパワーユーザー・カーブ分析やりましょう

Last updated at Posted at 2018-08-20

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パワーユーザーというのは、頻繁にあるプロダクトを使うユーザーのことです。そして、パワーユーザーがいるということはそのプロダクトに何かユーザーを夢中にさせるものがある、ユーザーが頻繁に出くわす問題を解決してくれている、日々の仕事を効率化してくれているということです。

今回は、A16Z(Andreessen Horowitz)のAndrew Chenが、彼のチームが投資先を分析するときによく使うパワーユーザー・カーブというフレームワークの説明をしていたのでここで簡単に紹介します。A16Zといは、こちらシリコンバレーではトップ5に入る比較的若手のベンチャー・キャピタルで、彼は現在そこのパートナーです。その前はUberでグロースをやっていた人です。

以下、一部を要訳


The Power User Curve: The best way to understand your most engaged users - Link

パワーユーザーというのは大きく成功していくスタートアップには貴重な存在です。彼らはプロダクトを愛し、深く関わり、またプラットフォームのネットワークとしての価値を上げることに貢献してくれます。eコマースであれば、パワー・セラー(売り手)、ライドシェアリング(Uberなど)であれば、パワー・ライダー(乗る人)、ソーシャルネットワークであればインフルエンサーたちのことです。

どんなスタートアップでもパワー・ユーザーを欲しいものですが、だれがパワーユーザーなのか、そういったユーザーは増えていっているのかどうかは計測しなくてはわかりません。

パワーユーザー・カーブ - L30

いわゆるエンゲージメント率(DAU/MAU)という指標がよくエンゲージメントを測る指標として使われますが、このパワーユーザーのパフォーマンスを測るのには、これから紹介する、パワーユーザー・カーブ(アクティビティ・ヒストグラム、もしくはFacebookのグロース・チームではL30 として呼ばれたりしている)のほうが、効果的です。

簡単に言うと、あるユーザーが一ヶ月のなかで何日アクティブであったかを数え、それをすべてのユーザー分数え上げたものをヒストグラムで表したものです。

パワーユーザー・カーブはエンゲージメント率(DAU/MAU)に比べていくつかの優れている点があります。

毎日使うような熱狂的なユーザーがいるかどうかを教えてくれます。
ユーザーの間のエンゲージメントという点におけるばらつきを教えてくれます。これはすべてのユーザーを対象にしたエンゲージメント率からはわかりにくいものです。

ユーザーの参加月などのコホートごとにヒストグラムを出すことでエンゲージメントがよくなってきているのかどうかを見ることができます。これは、プロダクトや新機能のリリースや機能の変更のパフォーマンスを測るのに便利です。

ただ、アップを開いたかどうかでなく、どの機能を使ったか、何をしたかによっても表すことができます。

理想的なのはパワーユーザーカーブがスマイルの口に見えるときです。以下がそんなときの例です。

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一ヶ月のうちのアクティビティが1日や2日しかいないユーザーが多いのがわかりますが、これはどんなプロダクトでも共通のことです。しかし、このプロダクトの場合は、右の方へ行くに連れて一度ユーザーの数は減りますが、アクティブな日が30日、つまり毎日、に近づくにつれてまた増えていっています。この右の方で最後上がっているあたりのユーザーというのがパワーユーザーということになります。

逆に、あまり望ましくない場合は以下のようになります。

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ほとんどが1日しか使わないユーザーばかりで、逆に右の方に行くに連れて数がほとんどいなくなっています。つまりパワーユーザーがいないということです。

ただ、こういう結果だからといって終わりだということではありません。フィナンシャル・インベストメントのプロダクトを提供するWealthfrontやビジネスのソーシャルネットワークを提供するLinkedInを考えてみてください。ほとんどのユーザーは毎日のように積極的に使うことはないでしょう。そして、それは別に問題ではありません。というのも彼らのビジネスは毎日使うということに依存しているわけではなく、少ない使用頻度でもビジネスとして成り立つようなビジネスモデルとなっているからです。

パワーユーザー・カーブ - L7

ところで、SaaSやプロダクティビティといったカテゴリーのプロダクトは上記のような30日ではなく、7日という期間で見てみるほうがいいかもしれません。これは、L7と呼ばれたりもします。

これは、月ではなく、週ごとのアクティビティにフォーカスしたものです。仕事で使うようなプロダクトは普通月曜から金曜までの使用が多く、この期間の中での使用頻度を上げたいと思っているので、こうした期間で分析することが適しているでしょう。

パワーユーザー分析はユーザーがあなたのプロダクトをどのように使っているのかを理解するのに役立ちます。あなたが、まだ始めの頃のスタートアップであれば、ここで得られたインサイトをもとにより適したビジネスモデルを選ぶことになるかもしれません。また、エンゲージメントが高くないユーザー層に対して何か打つべき施策を考えるかもしれませんし、エンゲージメントが高いユーザーのユースケースをより理解することに努めるかもしれません。

このパワーユーザー・カーブは様々なユーザーのセグメントごとに出して比べたりもします。UberやThumbtackのような地域ごとのネットワーク効果の可能性があるプロダクトは、パワーユーザー・カーブを地域ごとに出すことで必要なインサイトが得られるでしょう。また、プロダクトのリリースの評価をするために、時間をもとにしたコホートごとに比べるのもよいでしょう。

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上記のチャートからは、時間がたつに連れてパワーユーザーの比率が増えていっているのがわかります。

パワーユーザー・カーブはユーザーのエンゲージメントを理解するのに役立ちますが、これだけが絶対の指標ではありません。それぞれのスタートアップは自分たちのプロダクト、ビジネスモデルにあったいくつかの指標を見つけるべきでしょう。さらに、このパワーユーザー・カーブをまったく異なるタイプのビジネスと比べるのも意味がありません。自分たちのパワーユーザー・カーブをまず計測し、それをベンチマークとしてそこからの改善をモニターし、何がうまくいってて、何がうまくいっていないのかを考えるための材料として使うのがいいでしょう。


以上、要訳終わり

パワーユーザーがだれなのか、そういった人たちは増えていっているのかどうか、こうした情報は、私がやっているExploratoryにとっても重要です。

ただ、Exploratoryのようなデータ分析ツールは他のタイプのプロダクトと比べ、以下のような特徴があります。

  • ビジネスで使うことがメインなため、毎日使うというケースは稀である。(土日は使用が減る。)
  • データ分析という行為は必ず毎日、または毎週行うというわけではない。使うときは毎日使うが、使わないときが数日、時には数週間ということもある。
  • データ分析とは、情報を吸収するだけの受け身の行為ではなく、問題意識を持った積極的な行為なので毎日使うとはなりにくい。ダッシュボードなどを使った指標のモニタリングは受け身でもありますが。。。

こうした前提をもとにですが、私達もパワーユーザー・カーブは数多く行っている分析の一つとしてモニターしています。

本文で出ていたようなL30(過去30日)で見ると以下のようになります。

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チャートの形がスマイルにはなっていません。😅

しかし、私達はスマイルの形になっているかどうかと言うよりも、時間が経つに連れ、この分布がどう変わってきているのかということの方を気にしています。以下は、月ごとに別々のチャートにして(繰り返しを使ってます。)、さらに25パーセンタイルごとのバケットを色で表したものです。

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例えば、赤いバーは使う頻度の高い上位25パーセントのユーザーのバケットになります。右下のThis Month(今月)を見ると19日以上使っている人が25%ほどいるということがわかります。この赤いエリアがどんどんと右側にシフトしてくる、さらにバーの高さが高くなってくると、パワーユーザーが増えてきていると言えます。

さらに、L7(7日間)でも見ています。こちらも、時間とともにどう変遷してきているかをモニターしています。以下は、過去4週間の間の変化を見ています。

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これだけでは得に何か変化がみてとれるというわけではないですが、今週は1日しか使っていないユーザーの割合が増えているというのがわかります。

すでに述べましたが、データ分析とは積極的な行為です。ユーザーの方も、何か問題があってそれを解決するため、もしくは何か質問があってその答えを探すためにExploratoryを使います。朝起きて、とりあえずExploratoryを開けるという人はいません。

ですので、こうしたパワーユーザー分析から何かがわかったからといって、何か短期的に効果を出せそうな施策を打つということに関しては私達はあまり興味がないです。それよりも、パワーユーザーの人たちがExploratoryを使って解決しようとしている問題は何なのか、その中のどういった問題が私達がもっとフォーカスすべきものなのか、またそれは他の多くの人たちにとっても重要な問題であるのか、といったことを理解することに努めています。

そうした理解をもとにプロダクトを改善し、メッセージを改善、オンボーディング(ユーザーが初めてExploratoryを使い始めるときの経験)を改善、サポート情報の改善に努めていくことで、最終的にパワーユーザーの比率が増えていけばいいと思っています。

これは、私達のようなプロダクトを作り、私達のようなビジネスモデルを持ち、まだビジネスの段階的にはアーリーステージにある場合の話ですので、みなさんにあてはまるかどうかはわかりませんが、何かのきっかけとなればいいなと思います。


データサイエンス・ブートキャンプ10月開催!

この10月の中旬に、Exploratory社がシリコンバレーで行っているトレーニングプログラムを日本向けにした、データサイエンス・ブートキャンプを東京で開催します。データサイエンスの手法を基礎から体系的に、プログラミングなしで学んでみたい方、そういった手法を日々のビジネスに活かしてみたい方はぜひこの機会に参加を検討してみてください。詳しい情報はこちらのホームページにあります!

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