なんとなく脳トレがてら1日1問解説しようと思っただけです.飽きたらやめます.
問題
xy^{\prime} = y+\sqrt{x^2+y^2},
を解け.
ただし,以下の公式を用いて良い.
\int\frac{1}{\sqrt{x^2+A}}\mathrm{d}x= \log{\left|~x+\sqrt{x^2+A}~\right|}+C~~~(A\neq 0, C:任意定数).
ポイント
- パっと見変数分離できなさそうなので詰みです.
- 実は,両辺を $x$ で割ってみると, $\dfrac{\mathrm{d}y}{\mathrm{d}x}=f\left( \dfrac{y}{x} \right)$ の 同次形 で有ることがわかります.
- 同次形では,$u=\dfrac{y}{x}$ とおくことにより,$ \dfrac{\mathrm{d}u}{\mathrm{d}x}=\dfrac{f(u)-u}{x}$ の変数分離形を作ることができます(明日に証明を問題にします).
- $u$ は $x$ についての関数であることに注意してください.
- 同次形については,ヨビノリさんの動画もご参照ください.
解説
はじめから $\dfrac{\mathrm{d}y}{\mathrm{d}x}=f\left( \dfrac{y}{x} \right)$ の形になっていれば 「$x=0$ の点は定義されていない」と見ることが出来ますが,今回は意図的に割り算を行うため,念の為場合分けを行いましょう(慣れればスルーで基本問題ないです).
① $x\neq 0$ のとき
与式の両辺を $x$ で割ると,
\begin{align*}
\dfrac{\mathrm{d}y}{\mathrm{d}x} &= \frac{y}{x}+\sqrt{1+\frac{y^2}{x^2}},
\end{align*}
が得られます.これは,$\dfrac{\mathrm{d}y}{\mathrm{d}x}=f\left( \dfrac{y}{x} \right)$ の同次形なので,$u=\dfrac{y}{x}$ とおくことにします.
さて, これを整理した $y=ux$ の両辺を $x$ で微分することで($u$ は $x$ の関数であることに注意しましょう),
\begin{align*}
\dfrac{\mathrm{d}y}{\mathrm{d}x} &= \dfrac{\mathrm{d}u}{\mathrm{d}x}\times x + u\times 1=x\dfrac{\mathrm{d}u}{\mathrm{d}x} + u,
\end{align*}
が得られます(同次形のときは毎回この式が登場するので,ここまでの流れは暗記してもまぁ大丈夫です.).ここで,$\left(f(x)g(x)\right)^\prime = f(x)^{\prime}g(x)+f(x)g(x)^{\prime}$ ,「積の微分」と呼ばれるものを用いました.上記を微分方程式に代入して整理すると,
\begin{align*}
x\dfrac{\mathrm{d}u}{\mathrm{d}x} + u &= u+\sqrt{1+u^2},\\
\therefore x\dfrac{\mathrm{d}u}{\mathrm{d}x} &= \sqrt{1+u^2}.\\
\end{align*}
無事に変数分離形を得ることが出来ました.残りの変形は,これまで8日間の学習同様です.
わり算操作が入りますが,$\sqrt{1+u^2}>0$ および $x\neq 0$ ですから,ここでの場合分けは不要です(気にはしてください).左辺に $u$ ,右辺に $x$ を持っていき, $x$ で積分を行いましょう.
\begin{align*}
\frac{1}{\sqrt{1+u^2}}\dfrac{\mathrm{d}u}{\mathrm{d}x} &= \frac{1}{x},\\
\int\frac{1}{\sqrt{1+u^2}}\dfrac{\mathrm{d}u}{\mathrm{d}x}\mathrm{d}x &= \int\frac{1}{x}\mathrm{d}x,\\
\int\frac{1}{\sqrt{1+u^2}}\mathrm{d}u &= \int\frac{1}{x}\mathrm{d}x,\\
\therefore \log{\left(~u+\sqrt{1+u^2}~\right)} &= \log{|~x~|} +C_1~~~(C_1: 任意定数).\\
\end{align*}
ここで,左辺の積分は有名なので,公式として用いました.今回の積分は一般に,次の形で覚えるとよいでしょう. $A\neq 0$ とするとき,
\int\frac{1}{\sqrt{x^2+A}}\mathrm{d}x= \log{\left|~x+\sqrt{x^2+A}~\right|}+C~~~(C:任意定数).
また, $A>0$ であるなら, $\sqrt{x^2+A}>x$ が成り立つので,絶対値記号をなくすことが出来ます.
\int\frac{1}{\sqrt{x^2+A}}\mathrm{d}x= \log{\left(~x+\sqrt{x^2+A}~\right)}+C~~~(C:任意定数).
細かい計算内容は,ヨビノリさんが解説してくれているので,こちらをご参照ください.公式を忘れてしまっても,手が動くくらいになっておけばOKです.
さて,あとは $u$ について解くだけです.丁寧に計算していきましょう.
\begin{align*}
\log{\left(~u+\sqrt{1+u^2}~\right)} &= \log{|~x~|} +C_1, \\
u+\sqrt{1+u^2}&= e^{\log{|~x~|} +C_1},\\
u+\sqrt{1+u^2}&= e^{C_1}e^{\log{|~x~|}},\\
u+\sqrt{1+u^2}&= e^{C_1}|~x~|,\\
u+\sqrt{1+u^2}&= \pm e^{C_1}x,\\
u+\sqrt{1+u^2}&= C_2x~~~(C_2\neq 0),\\
\sqrt{1+u^2}&= C_2x-u,\\
1+u^2&= (C_2x-u)^2,\\
1+u^2&= C_2^2x^2-2C_2xu + u^2,\\
2C_2xu&= C_2^2x^2 -1,\\
\therefore u&= \frac{C_2x}{2} -\frac{1}{2C_2x}.
\end{align*}
さて, $u=\dfrac{y}{x}$ とおいたことを思い出して,
\begin{align*}
\frac{y}{x}&= \frac{C_2x}{2} -\frac{1}{2C_2x},\\
y&= \frac{C_2x^2}{2} -\frac{1}{2C_2}~~~(C_2\neq 0, x\neq 0).
\end{align*}
② $x=0$ のとき
$xy^{\prime} = y+\sqrt{x^2+y^2}$ に $x=0$ を代入すると,
\begin{align*}
0&=y+\sqrt{y^2},\\
0&=y+|~y~|,\\
\therefore y &=-|~y~|,\\
\end{align*}
を得ます. 仮に,$y> 0$とするのならば, $y =-y$ となり不適です.したがって, $y=C~~~(C\leqq0)$ とおけば,これは微分方程式の解です.
また, $x=0$ のとき, $y=C$ というのは, ① の解 $y= \dfrac{C_2x^2}{2} -\dfrac{1}{2C_2}$ において, $x=0$ とした式 $y = -\dfrac{1}{2C_2}$ と矛盾ありません.ただし,$y=0$ だけは $C_2$ をどのように選んでも表現出来ないので特異解です.
したがって,本問の微分方程式 $xy^{\prime} = y+\sqrt{x^2+y^2}$ の解は,任意の実数 $x$ に対して,
y= \frac{C_2x^2}{2} -\frac{1}{2C_2}~~~(C_2\neq 0), ~~~y=0.
【参考】 Wolframalpha
非常に便利なので皆さん積極的に使っていきましょう.