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問題
以下の手順に従って,微分方程式,
\dfrac{\mathrm{d}y}{\mathrm{d}x}+P(x)y=Q(x),
の一般解は,次式で与えられることを示せ.
y=e^{-\int P(x)\mathrm{d}x}\left[ \int Q(x)e^{\int P(x)\mathrm{d}x}\mathrm{d}x +C\right]~~~(C:任意定数).
なお,これは一階線形微分方程式の解の公式として知られる.
STEP1 積の微分 $\left(f(x)g(x)\right)^\prime = f(x)^{\prime}g(x)+f(x)g(x)^{\prime}$ を使いて,$ye^{\int P(x)\mathrm{d}x}$ を $x$ で微分せよ.
STEP2 与えられた微分方程式の両辺に $e^{\int P(x)\mathrm{d}x}$ をかけよ.
STEP3 STEP1 と STEP2 で得られた式を組み合わせて,一般解を求めよ.
ポイント
- $\dfrac{\mathrm{d}y}{\mathrm{d}x}+P(x)y=Q(x)$ の形式の微分方程式は,一階線形微分方程式と呼ばれます.
-
STEP2 で登場する $e^{\int P(x)\mathrm{d}x}$ は,積分因子 と呼ばれます.
- 一階線形微分方程式の解法の1つに,「積分因子をかける」方法があります.次回以降で具体的に計算します.
- 一階線形微分方程式については,ヨビノリさんの動画もご参照ください.
解説
誘導通り変形していきます.
STEP1 積の微分 $\left(f(x)g(x)\right)^\prime = f(x)^{\prime}g(x)+f(x)g(x)^{\prime}$ を使いて,$ye^{\int P(x)\mathrm{d}x}$ を $x$ で微分せよ.
$y$ も $x$ の関数であることに注意しましょう.
\begin{align*}
\left\{ye^{\int P(x)\mathrm{d}x}\right\}^\prime&=y^\prime e^{\int P(x)\mathrm{d}x} + y\left\{e^{\int P(x)\mathrm{d}x}\right\}^\prime,\\
&= \dfrac{\mathrm{d}y}{\mathrm{d}x}e^{\int P(x)\mathrm{d}x} + ye^{\int P(x)\mathrm{d}x}\times\left\{\int P(x)\mathrm{d}x\right\}^\prime,\\
&= \dfrac{\mathrm{d}y}{\mathrm{d}x}e^{\int P(x)\mathrm{d}x} + ye^{\int P(x)\mathrm{d}x}\times P(x),\\
\therefore \left\{ye^{\int P(x)\mathrm{d}x}\right\}^\prime &=e^{\int P(x)\mathrm{d}x}\dfrac{\mathrm{d}y}{\mathrm{d}x} + P(x)e^{\int P(x)\mathrm{d}x}y.
\end{align*}
STEP2 与えられた微分方程式の両辺に $e^{\int P(x)\mathrm{d}x}$ をかけよ.
与えられた微分方程式は以下のとおりです.
\dfrac{\mathrm{d}y}{\mathrm{d}x}+P(x)y=Q(x).
両辺に $e^{\int P(x)\mathrm{d}x}$ をかければ,
\begin{align*}
e^{\int P(x)\mathrm{d}x}\dfrac{\mathrm{d}y}{\mathrm{d}x}+P(x)e^{\int P(x)\mathrm{d}x}y=Q(x)e^{\int P(x)\mathrm{d}x}.
\end{align*}
STEP3 STEP1 と STEP2 で得られた式を組み合わせて,一般解を求めよ.
STEP1, STEP2 で得られた式は次のとおりです.
STEP1
\begin{align*}
\left\{ye^{\int P(x)\mathrm{d}x}\right\}^\prime &=e^{\int P(x)\mathrm{d}x}\dfrac{\mathrm{d}y}{\mathrm{d}x} + P(x)e^{\int P(x)\mathrm{d}x}y.
\end{align*}
STEP2
\begin{align*}
e^{\int P(x)\mathrm{d}x}\dfrac{\mathrm{d}y}{\mathrm{d}x}+P(x)e^{\int P(x)\mathrm{d}x}y=Q(x)e^{\int P(x)\mathrm{d}x}.
\end{align*}
よって,以下の関係式を得ることが出来ます.
\begin{align*}
\left\{ye^{\int P(x)\mathrm{d}x}\right\}^\prime=Q(x)e^{\int P(x)\mathrm{d}x}.
\end{align*}
後は簡単です.これを $y$ について解くのが最終目標ですから,両辺を $x$ で積分して整理しましょう.
\begin{align*}
\int\left\{ye^{\int P(x)\mathrm{d}x}\right\}^\prime\mathrm{d}x&=\int Q(x)e^{\int P(x)\mathrm{d}x}\mathrm{d}x,\\
ye^{\int P(x)\mathrm{d}x}&=\int Q(x)e^{\int P(x)\mathrm{d}x}\mathrm{d}x+C~~~(C:任意定数),\\
\therefore y&=e^{-\int P(x)\mathrm{d}x}\left[\int Q(x)e^{\int P(x)\mathrm{d}x}\mathrm{d}x+C\right]~~~(C:任意定数).
\end{align*}
そんなわけで,一階線形微分方程式の解の公式を得ることが出来ました!
次回以降は,具体的に公式に代入して計算をしたり,他の一階線形微分方程式の解法を見ていきましょう〜
【補足】 任意定数について
以下の公式において,「各積分の度に任意定数を置かなくていはいけないの?」を思うかもしれません.
y=e^{-\int P(x)\mathrm{d}x}\left[ \int Q(x)e^{\int P(x)\mathrm{d}x}\mathrm{d}x +C\right]~~~(C:任意定数).
結論から言うと,$e^{-\int P(x)\mathrm{d}x}$ や $e^{\int P(x)\mathrm{d}x}$ の部分では,任意定数は不要です(合ってもいいですが).
というのも,例えば $e^{\int P(x)\mathrm{d}x}$ というのは, $x$ で微分を行うと $P(x)$ になる関数を任意に設定すれば良いのです.
平たく今回の内容を書き直してみましょう.例えば,
\dfrac{\mathrm{d}y}{\mathrm{d}x}+a(x)y=b(x),
という微分方程式があるとき,解の公式は次のように記述されます.
y=e^{-A(x)}\int b(x)e^{A(x)}\mathrm{d}x .
$A(x)$ は $a(x)$ の原始関数であれば問題ありません.つまり, $A(x)^\prime =a(x)$ を満たせば,任意定数は不要です.