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問題
本日の微分方程式(5日目)で紹介した以下の微分方程式を,ベルヌーイ型として解け.ただし,$n, m$ は $0$ 以外の定数である.
\begin{align}\tag{1}
\frac{\mathrm{d}P(t)}{\mathrm{d}t} = mP(t)-n\left\{P(t)\right\}^{2}.
\end{align}
ポイント
- $\dfrac{\mathrm{d}y}{\mathrm{d}x}+P(x)y=Q(x)y^n$ の形はベルヌーイの微分方程式 と呼ばれます.ベルヌーイの微分方程式は次の手順で解くことが出来ます.
- STEP1. 両辺を $y^n$ で割る
- STEP2. $y^{1-n}=u$ とおき,STEP1で得られた式を, $x$ に関する $u$ の一階線形微分方程式に書き換える.
- STEP3. 新たな微分方程式を解き,$u(x)$ を求めたら $y(x)$ に変換する.
- ベルヌーイの微分方程式については,ヨビノリさんの動画もご参照ください.
解説
式(1)を次のように変形すると,ベルヌーイ型であることがわかりやすくなります.
\begin{align}\tag{2}
\frac{\mathrm{d}P(t)}{\mathrm{d}t} - mP(t)= -n\left\{P(t)\right\}^{2}.
\end{align}
ポイントにある STEP 通り変形していきます.$x$ が $t$ に, $y$ が $P$ に置き換わったと考えると良いでしょう.本問のように,文字が変わっても冷静に手を動かせるようになることは非常に重要です.
STEP1 両辺を $\left\{P(t)\right\}^2$ で割る
$\left\{P(t)\right\}^2\neq 0$ のとき,式(2)の両辺を $\left\{P(t)\right\}^2$ で割ったものは以下の通りです.
\begin{align}\tag{3}
\left\{P(t)\right\}^{-2}\frac{\mathrm{d}P(t)}{\mathrm{d}t} - m\left\{P(t)\right\}^{-1}= -n.
\end{align}
STEP2. $\left\{P(t)\right\}^{1-2}=\left\{P(t)\right\}^{-1} = u$ とおき,STEP1で得られた式を, $t$ に関する $u$ の微分方程式に書き換える.
$\left\{P(t)\right\}^{-1} = u$ とおきましょう.これからの目的は,式(3)の左辺第一項 $\left\{P(t)\right\}^{-2}\dfrac{\mathrm{d}P(t)}{\mathrm{d}t}$ すらも $u$ と $t$ で置き換えることです.$u$ も $t$ の関数であることに注意して,$\left\{P(t)\right\}^{-1} = u$ の両辺を $t$ で微分すると次の関係が得られます.
\begin{align}\tag{4}
\dfrac{\mathrm{d}(\left\{P(t)\right\}^{-1})}{\mathrm{d}t}&=\dfrac{\mathrm{d}u}{\mathrm{d}t},\\
-1\times \left\{P(t)\right\}^{-1-1}\dfrac{\mathrm{d}P(t)}{\mathrm{d}t}&=\dfrac{\mathrm{d}u}{\mathrm{d}t},\\
\therefore \left\{P(t)\right\}^{-2}\dfrac{\mathrm{d}P(t)}{\mathrm{d}t}&=-\dfrac{\mathrm{d}u}{\mathrm{d}t}.
\end{align}
少々難しいですが,1行目から2行目への左辺の変形では,合成関数の微分 $\left\{f(g(x))\right\}^\prime = f^\prime(g(x))g^\prime(x)$ および $(x^\alpha)^\prime=\alpha x^{\alpha -1}$ を用いました.
さて,有難いことに式(4)では, 欲しかった $\left\{P(t)\right\}^{-2}\dfrac{\mathrm{d}P(t)}{\mathrm{d}t}$ の形が現れましたね.
式(4) の結果および $\left\{P(t)\right\}^{-1} = u$ を式(3)に代入すると,次の一階線形微分方程式を得ます.
\begin{align}\tag{5}
-\dfrac{\mathrm{d}u}{\mathrm{d}t}-mu=-n,\\
\therefore \dfrac{\mathrm{d}u}{\mathrm{d}x}+mu=n.\\
\end{align}
STEP3. 新たな微分方程式を解き,$u(t)$ を求めたら $P(t)$ に変換する.
式(5)は単純な一階線形微分方程式ですから,解の公式の練習がてらサクッと解を求めてしまいましょう.もちろん,変数変化法や積分因子を用いる方法で求めても良いですし,変数分離形としても解けます.解の公式は【参考】 をご覧ください.
さて,式(5)において公式を適用すれば,
\begin{align}\tag{6}
u&=e^{-\int m\mathrm{d}t}\left[ \int n\cdot e^{\int m\mathrm{d}t}\mathrm{d}t +C\right]~~~(C:任意定数),\\
u&=e^{-mt}\left[ \frac{n}{m}e^{mt} +C\right],\\
\therefore u&=\frac{n}{m} +Ce^{-mt},\\
\end{align}
$\left\{P(t)\right\}^{-1} = u$ とおいたことを思い出して,変形を行っていきましょう.
\begin{align}\tag{7}
\left\{P(t)\right\}^{-1} = u&=\frac{n}{m} +Ce^{-mt}.\\
\frac{1}{P(t)}&=\frac{n}{m} +Ce^{-mt},\\
P(t)&=\frac{1}{\frac{n}{m} +Ce^{-mt}},\\
P(t)&=\frac{m}{n+mCe^{-mt}}~~~(C:任意定数).
\end{align}
本日の微分方程式(5日目)よりも数倍楽に一般解が求まりましたね.
【参考】 一階線形微分方程式の公式
\begin{align}\tag{8}
\dfrac{\mathrm{d}y}{\mathrm{d}x}+P(x)y=Q(x),
\end{align}
の解の公式は次のとおりです.
\begin{align}\tag{9}
y=e^{-\int P(x)\mathrm{d}x}\left[ \int Q(x)e^{\int P(x)\mathrm{d}x}\mathrm{d}x +C\right]~~~(C:任意定数).
\end{align}