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問題
積分因子を用いて,以下の微分方程式の一般解を求めよ.
\begin{align}\tag{1}
y^\prime -3y = x^2.
\end{align}
ポイント
- $\dfrac{\mathrm{d}y}{\mathrm{d}x}+P(x)y=Q(x)$ の形式の微分方程式は,一階線形微分方程式と呼ばれます.
- 積分因子とは, $e^{\int P(x)\mathrm{d}x}$ のことです.一階線形微分方程式は,積分因子をかけることで,左辺が積の微分の形になります.
- 一階線形微分方程式については,ヨビノリさんの動画もご参照ください.
解説
まずは積分因子を具体的に求めていきましょう.
$P(x)=-3, Q(x) = x^2$ ですから,
\begin{align}\tag{2}
e^{\int P(x)\mathrm{d}x}=e^{\int -3\mathrm{d}x}=e^{-3x},
\end{align}
と求まります(ここの積分においては,$P(x)$ の原始関数を1つ求めるだけでいいので,任意定数は不要です.参考).
これを与えられた微分方程式(1)の両辺にかけていきましょう.
\begin{align}\tag{3}
y^\prime\times e^{-3x} -3y\times e^{-3x} = x^2\times e^{-3x}.
\end{align}
さて,左辺は積の微分の形になっているはずです.
積の微分公式 $\left(f(x)g(x)\right)^\prime = f(x)^{\prime}g(x)+f(x)g(x)^{\prime}$ と,にらめっこしてみましょう.
$f(x)=y,~g(x)=e^{-3x}$ としてみれば,$\left(f(x)g(x)\right)^\prime$は,
\begin{align}\tag{4}
(y\times e^{-3x})^\prime = y^\prime\times e^{-3x} -3y\times e^{-3x},
\end{align}
と表すことが出来ます.紛れもなく式(3)の左辺と一緒です.
したがって,式(4)の結果を式(3)に代入すれば,
\begin{align}\tag{5}
(y\times e^{-3x})^\prime = x^2\times e^{-3x},
\end{align}
との関係式を得ます.後は両辺を $x$ で積分して完了です.
\begin{align}\tag{6}
\int(y\times e^{-3x})^\prime \mathrm{d}x&= \int x^2\times e^{-3x}\mathrm{d}x,\\
y\times e^{-3x}&= \int x^2\times e^{-3x}\mathrm{d}x,\\
y\times e^{-3x}&= - \frac{1}{3}x^2e^{-3x}- \frac{2}{9}xe^{-3x} - \frac{2}{27}e^{-3x}+C~~~(C:任意定数),\\
y&=e^{3x}\left(- \frac{1}{3}x^2e^{-3x} - \frac{2}{9}xe^{-3x} - \frac{2}{27}e^{-3x} +C \right),\\
\therefore y&=- \frac{1}{3}x^2 - \frac{2}{9}x - \frac{2}{27}+Ce^{3x}~~~(C:任意定数).\\
\end{align}
【補足】 瞬間部分積分
最後の式の部分積分は,俗に言う瞬間部分積分と呼ばれるもので暗算しています.
(まともに計算をしても良いのですが,$\LaTeX$ で書くのが面倒だったのもあります.)
\begin{align}
\int f(x)g(x)\mathrm{d}x &= f^{(0)}g^{(-1)}-f^{(1)}g^{(-2)}+f^{(2)}g^{(-3)}-f^{(4)}g^{(-4)}+\cdots\\
\int x^2\times e^{-3x}\mathrm{d}x &=- \frac{1}{3}x^2e^{-3x} - \frac{2}{9}xe^{-3x} - \frac{2}{27}e^{-3x} +C
\end{align}
詳しくは,ヨビノリさんの動画をご参照ください.
【参考】 Wolframalpha
非常に便利なので皆さん積極的に使っていきましょう.