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超小型衛星の通信・地上局系って何やるの?

Last updated at Posted at 2023-12-05

この記事はCanSatチームFUSiONのアドベントカレンダー2023 3日目(12月5日)の記事です.

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はじめに

はじめまして.FUSiONで通信系を担当している ”ねこ見習い” のかねこです.

12/25のクリスマスまでアドベントカレンダーという形で,FUSiONメンバーそれぞれの活動であったり小話などを毎日更新していくつもりです.
是非ともこのイベントを通して,”よくわからない団体?"であるFUSiONについて知っていただければ幸いです.

軽く自己紹介とか

自己紹介

最初にも書かせていただきましたが,FUSiONで通信系を担当している ”ねこ見習い” のかねこです.
FUSiONでは珍しい大学院生メンバーとして,宇宙品質OBC製作プロジェクトに関わらせていただいてます.

これまでやってきたこと

成績評価と世間一般が想像するような大学生らしい生活?を全てそこらへんに投げ捨てて,超小型衛星をいじいじして遊んでました.
大学に入学してから全ての青春を衛星に捧げたといっても過言ではないかもしれません(笑)
(やりすぎて大学の健康診断で引っかかり,要経過観察になったのは秘密)

具体的に何をしてたか知りたい人はGitHubの自己紹介ページでも見ていってくださいね~

通信・地上局系のお仕事

自分がこれまでやってきた仕事を改めて思い出してみました.(n=1)
だいたいにはなりますが,大まかに分類すると3つ程度あると考えています.
具体的には以下の通りです.

  1. 書類のお仕事
    1.1 安全審査
    1.2 その他資料作成
  2. 申請・調整のお仕事
    2.1 国際周波数調整
    2.2 無線免許申請
    2.3 その他諸々
  3. 設計・開発・評価のお仕事
    3.1 設計要求解析
    3.2 回線設計
    3.3 通信機器の選定/開発・試験・評価
    3.4 アンテナの選定/開発・試験・評価
    3.5 地上局システムの開発・試験・評価
    3.6 通信システムへの結合・試験・評価
    3.7 衛星システムへの結合・試験・評価
    3.8 衛星-地上局システム全体の試験・評価
    3.9 衛星組み立て・環境試験・シッピング
    3.10 衛星運用

次の項でそれぞれの項目について簡単に説明をしていきます.

お仕事内容(書類仕事)

1.1 安全審査
これは構造,電源系が最も苦しんでいる印象を受けますが,通信系ももちろんあります.
アンテナ展開と電波放射に関してです.
アンテナ展開に関しては,テグス溶断で展開する方式だと必ずデブリにならないかといった観点からコメントがつきます.(衛星の実績がある所はそれぞれで解を持っていたりする)
電波放射についてもロケット側で規定されているものに沿うかどうか聞かれます.
このお仕事,結構はーーーーーどわーくです.

(衛星経験がある研が強いのは,これまでの衛星プロジェクトで一通り安全審査を経験しているため,設計要求解析の段階で安全審査項目を考慮した設計ができることにあるのではないかと個人的には感じています)

1.2 その他資料作成
会議や各デザインレビュー会,申請や調整のお仕事等で必要なので,資料作成が嫌いでもやらなければなりません.

お仕事内容(申請・調整のお仕事)

2.1 国際周波数調整
衛星は地球を周回しながら電波を出力するため,その周波数・出力・アンテナパターン・運用が許容可能かどうかを調整するITU(国際電気通信連合)を通じた世界との調整作業があります.これを国際周波数調整といいます.
(詳しくは総務省 電波利用ホームページ 周波数の国際調整についてを見てください)
これもかなりはーどわーく♡です.

2.2 無線免許申請
無線を使う以上は当然無線局免許申請が必要なので,これもやります.
国際周波数調整とくらべると楽ですが,時間がかかるので大変です.

2.3 その他諸々
その他外部機関等との調整作業が入ります.

お仕事内容(設計・開発・評価のお仕事)

3.1 設計要求解析
設計方針や要求の解析を行います.ここで検証不可能な要求を設定してしまうと詰みなのでしっかりと解析を行う必要があります.

3.2 回線設計
設計要求と軌道条件から通信回線が成立するようにそれぞれの値を決定します.
機器性能に無理が生じないように設定する必要があります.

3.3 通信機器の選定/開発・試験・評価
回線計算で設定した値を満たすような機器を選定したり,なければ開発したりします.また,それぞれの機器の試験や評価を行って妥当性確認を行います.

3.4 アンテナの選定/開発・試験・評価
回線計算で設定した値を満たすようなアンテナを選定したり,なければ開発したりします.また,それぞれの機器の試験や評価を行って妥当性確認を行います.

3.5 地上局システムの開発・試験・評価
回線計算で設定した値を満たすような機器を選定したり,なければ開発したりします.それを結合して地上局として動くシステムを構築・評価します.衛星系と同時並行で進めます.

3.6 通信システムへの結合・試験・評価
選定したアンテナや機器を結合してシステムを構築と評価を行います.

3.7 衛星システムへの結合・試験・評価
構築した通信システムを衛星側に結合してシステムの構築と評価を行います.

3.8 衛星-地上局システム全体の試験・評価
衛星側システムと地上局側システムを結合して試験を行います.
このあたりでシステム長時間運用試験を行います.

3.9 衛星組み立て・環境試験・シッピング
衛星の組み立てと環境試験を行います.(環境試験はこれまでの段階でも適宜実施する)
また,最終的な衛星の梱包を行います.

3.10 衛星運用
衛星運用の地上局責任者として運用・維持・管理を行います.
衛星が打ちあがってからも様々なお仕事があります.
(1stパスを取るために地上局待機になることがあり,ロケットの打ち上げを見れないことがある)

通信系(エレキ系全般)特有の悩み

人が少ない
電気系全般について言えるとは思うのですが,本当に人がいません(n=1)
なので,これまで説明してきたお仕事を1~4人とかの少人数で回していくことになります.
(当然ながら引継ぎや教育,ヘルプもやらねばなりません)
タスク過多です.無理です.ハゲます.
とても楽しいです.

要因
なぜ人がいないのか少しだけ考えてみました.

  1. そもそも人が少ない分野(航空宇宙の中では)
    現状で衛星を作っていたりする研はだいたい航空宇宙工学系です.
    総合工学とはいえ,花形とか人気分野はあります.そっちに人が吸われるので慢性的な人不足になるのかなと思っています.

  2. お仕事がよくわからない,難しそう
    この記事を書いた理由のひとつでもありますが,何をするのかよくわからないろいうのがあると思ってます.
    また,電気・通信・ソフトウェア・法律の知識等が必要になるので,大変そうと感じる人が多いのかな?と感じています.

  3. 責任が重い
    電源と中央処理系も一緒ではありますが,この系が失敗すると衛星は生死不明になるので責任は重いです.よって避けたがる人もいるかもしれません.(難しい課題に一緒に挑戦してみませんか!?)

おわりに

これをみて通信・地上局に興味を持っていただければ嬉しいです.
(隠さずに話したので通信や地上局系のお仕事が雰囲気くらいでも伝われば幸いです)
大変なところも多いですが,技術的な部分・事務的な部分・調整作業などを実地で学べるので,学生のうちに体験しておくと得るものが多い系なのではないかな?と思います.
また,FUSiONでは様々な背景や経験を持つメンバーがいるので,やる気のある人は是非とも一緒に活動しましょう!!

以上かねこでした.

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