373
261

Delete article

Deleted articles cannot be recovered.

Draft of this article would be also deleted.

Are you sure you want to delete this article?

More than 3 years have passed since last update.

カメラ不要!? Wi-Fiの"電波"を使った3D姿勢推定モデル「WiPose」

Last updated at Posted at 2020-10-01

はじめに

遂に、テクノロジーがここまで来ました。

** カメラなしで、姿勢推定できる時代が来ます **

Wi-Fiの電波を使って、障害物の向こうにいる人の姿勢や動きを高精度で推定する技術 『WiPose』 がニューヨーク州立大学の研究チームから発表されたので、ご紹介します!

この技術で驚くべき点の1つは、市販のWi-Fi電波送信機1台と、受信アンテナ数台だけで、3次元の姿勢推定ができる点です。

q2.png

また、RGBカメラでは推定が難しかった**「暗闇での姿勢推定」**ができるのも驚きです。

q3.png

どんな仕組み?

この技術でベースとなっている原理は「ドップラー効果」です。
救急車が目の前を通り過ぎるときに、サイレンの音の高さが変わるあの現象ですね。
一般に、波が発生している空間内で物体が動くと、波長が長くなったり短くなったりします。

今回の場合、Wi-Fiシグナルが発生している空間内を人が動くことで、波長が"わずかに"変化します。このわずかな変化を複数ヶ所で収集し、ディープラーニングモデルに流し込むことで姿勢を推定する、というのがWiPoseの推論の仕組みになります。

システム全体図

システム全体図は、下図の通り、①データ収集→②データ処理→③骨格構築の3ステップになっています。

データ収集
 一台のWi-Fi電波発信機と、6〜9台の受信機を使って、データを収集。
データ処理
  Wi-Fiシグナルから、CSI(チャネル状態情報)を抽出。
骨格構築
  CSIをインプットに、ディープラーニングモデルを使って、骨格を推定。

q4.png

【WiPoseのここがすごい】

WiPoseの平均誤差はわずか2.83cmです。2019年のSOTAモデルより、1.5cm(約35%)も精度が改善されています。
高精度を達成できた理由を2つ紹介します。

①骨格モデルの導入

1つ目は、人体骨格モデルを導入した点です。Wi-Fiシグナルは空間分解能が低く、シグナル情報が誤りがちなので関節点を独立に推定すると、最終的に不自然なポーズができあがることがあります。
彼らはこの課題を解決するために、「身体の各部位の長さは一定である」という特徴をモデルに組み込み、それぞれのボーンが親ノードを中心に何度回転しているかを考えることにしました。その結果、腕や足の長さは常に一定になり、自然な見た目を実現し、推論を安定させることができました。

q5.png

②時系列情報の利用

2つ目は、時系列データを利用した点です。通常、身体の動きは複数のタイムフレームにまたがるため、連続するデータサンプル間には強い時間依存性があります。彼らはこの連続するデータサンプル間の関係を学習するために、RNN(再帰型ニューラルネットワーク)を使う手法を考案しました。

q6.png

損失関数

損失関数についても少し触れておきます。

損失関数は、位置に関する損失 $L_p$、動きの滑らかさに関する損失 $L_s$、回転に関する損失 $L_r$の3種類を組み合わせて定義しています。

J = L_p + \beta L_s + \gamma L_r

(a)位置に関する損失
  正解座標と推定座標との距離を計算します。($p$は位置座標。)→正確な位置に近づけるための定義です。

\left|\left| \, p_{ground \, truth}^{t} - p_{predicted}^{t} \right|\right|_2

(b)動きの滑らかさに関する損失
  ground truthと同じ方向に動いているかを計算します。($||\cdot||_H$は、Huber損失。)→不自然な動きを抑制し、より人間らしい動きに近づけるための定義です。

\left|\left| \, v_{ground \, truth}^{t} - v_{predicted}^{t}\right|\right|_H

(c)回転に関する損失
  推定されたボーンの向きが、ground truthの向きと同じかを計算します。($u:=p_{(child)}-p_{(parent)}$ 親ノードから見た子ノードの相対位置ベクトル)→手足の振れ幅や曲がり具合をより正確にするための定義です。

\left|\left| \, u_{ground \, truth}^{t} - u_{predicted}^{t}\right|\right|_H

WiPoseの応用先

WiPoseは、市販の機器の組み合わせで安価に作ることができ、また物隠れにも強いため、以下のように幅広い応用事例が論文にて紹介されています。

  1. ヘルスケア:プライバシーを侵害せずに、高齢者や患者をモニタリングし、アラートを出す。(RGBカメラで24時間モニタリングされるのは嫌ですよね)
  2. VR/ゲーム:障害物などにより手足が物に隠れてしまうような環境でも、人を正確に認識し、バーチャル空間に投影する。(十分に広い部屋でなくても、バーチャル空間に自分を投影し、ゲームを楽しめるようになります)
  3. 盗難検知:カメラだと検知が難しい、服やカバンで手を覆って行う万引きを検知する。(犯罪の抑制が期待できます)

まとめ

今回は、Wi-Fiを使った姿勢推定モデルについて、解説しました。
Wi-Fiの普及率は70%と言われており、今後、様々なシーンでの応用が期待できる技術です。

もっと詳しく知りたい!という方は、ぜひ論文を読んでみてください ↓↓

373
261
1

Register as a new user and use Qiita more conveniently

  1. You get articles that match your needs
  2. You can efficiently read back useful information
  3. You can use dark theme
What you can do with signing up
373
261

Delete article

Deleted articles cannot be recovered.

Draft of this article would be also deleted.

Are you sure you want to delete this article?