研究室に配属された当初,私は同期で最も成績悪く,完全な初学者でした.(いわゆる劣等生(笑))そんな私も修士2年生になった今では,周囲の環境にも恵まれて,後輩の研究相談に対応できるほどに成長することができました.
今回は研究生活をより充実させたい方へ,かつての劣等生が実践してきた自分が大切にしてきたこと5選を紹介します.皆さんより遥かに成績の悪かった人間が偉そうに語ってますが,ご容赦ください.(笑)
この記事はこんな人にオススメ
- 研究室に配属された直後の人
- 研究がなかなか思うように進んでいない人
- 優秀な人(初学者ってこんな感じです...(笑))
①分からない専門用語を調べる
最初研究室に入ると,とにかくよく分からない専門用語が飛び交っていると思います.(少なくとも私はそう感じました)そこで最初にオススメするのが,"とにかく片っ端から専門用語を調べる"ということです.
例1:論文読み
最初の頃は論文を理解しようとすると,なかなか難しく結果途中で心が折れてしまうことが多々あります.そこで私は最初のゴール設定を"論文の手法理解"ではなく,"論文読みによる分野理解"ぐらいに留めることを意識していました.
そして分野理解を進めていくでオススメなのが,たくさん出てくる単語を調べていくことです.あくまでゴールは"分野理解"なので,数回しか出てこない単語を理解出来ていなくても大丈夫です.(最初はほとんどの単語が分からないので,全部調べていると時間がかかり挫折してしまうからです.)
まずはこの方法で,興味のある分野の論文を複数読んでみてください.すると大体共通した単語が使われているので,分野で研究されていることの大枠を掴むことができると思います.また,調べる単語の難易度が徐々に上がっていくと思うので,自然に知識も増えます.
例2:ミーティング中
私が初めて進捗ミーティングに参加した時は,まるで英語のミーティングに参加しているかのように話の内容が入ってきませんでした.(笑) なのでなにもしないでいると,だんだんぼーっとして眠くなっていきます.(笑)
そこで私がやっていたのが,"分からない単語をひたすらメモ"です.ここで重要なのはミーティング中に単語を調べない方がいいということです.初学者のレベルでは,ミーティング中に単語を調べた所で議論についていけないため,調べている間に単語を聞き逃す方が勿体ないと思います.分からない単語を調べながら参加するのは,ある程度議論へついていけるようになってからでいいと思います.(あくまで持論)
私は,とにかくミーティング中に聞こえてきた分からない単語を全てメモしていき,終了後に調べていました.マメな性格でないのでNotion管理は続きませんでしたが,それでも何回か調べることで少しずつ覚えていき,議論の内容が分かるようになっていきました.
②研究以外の雑談をする
これは,後輩を持つ皆さんにも是非オススメしたい方法です.
研究の話じゃないのか?!という声も聞こえてきそうですが,私はむしろ雑談を大切にしていました.(普段全く喋らないのに,研究の相談だけたくさんしている姿ってあまり想像できないですよね~)
実際配属直後で初学者の私が,唐突に先輩へ研究の相談をするのは心理的なハードルが高く,なかなか気軽に相談できませんでした.そこで私はまずコミュニケーションを取り距離を縮めることで,気軽に相談できる間柄になる必要があると考え,雑談を大切にしてきました.
最初は距離を縮めることを目的にしていましたが,実際にやってみると雑談をしている中でいつの間にか研究の話になりそのまま相談できることもあります.また,距離を縮めたおかげで,先輩の方から気をかけていただくようになりました.
面倒を見る後輩がいる方も,まずは雑談をして相談しやすい環境を作ることをオススメします!
③分からないことを積極的に聞く
難しいですけどこれができるかできないかで,研究が進むスピードは圧倒的に変わります.
私の研究室では週に1度の進捗ミーティングがあるので,主体的に相談をすることがなくても週に1度は方向性の見直しができます.しかし,進捗ミーティングとは別に週に2回でも誰かと相談できていれば,より細かいスパンで研究の見直しをすることができます.仮に間違った方向性で進めている時,前者は1週間を無駄にしますが,後者は2,3日のロスで済むのでもちろん後者の方が圧倒的に進捗を生むことができます.
他にも例えばプログラミングのエラー対処があります.最近はchatGPTに聞くことはできますが,似た分野で研究している先輩に聞くと既に同じ過ちを乗り越えていることがあるので,調べることなく解決することもあります.
積極的に聞けるようになるには??
「はいはい,そんなことは腐るほどどこでも言われているし,もううんざりですよ~.」,「やりたくても緊張して,そんな気軽に先輩を頼るなんて難しいよ~.」って人もいると思います.なのでそんな人にオススメの"積極的に聞けるようになる方法"を2つ紹介します.
1つ目は,"コミュニケーション能力の高い同期を頼る"です.同期だと話しやすいですし,その人が分からなくても先輩との間を繋いでもらうことができると思います.(仲の良いご近所さんみたいなイメージ?(笑))
2つ目は,"1人でいいから気合で相談できる先輩を見つける"です.その1人へ相談できるようになるまでは,確かに心理的ハードルが高いかもしれません.しかし色々な先輩へ相談しにいくより遥かに楽ですし,強力な味方を手に入れることができます.(かかりつけ医みたいなイメージ?(笑))
とにかく自分一人で抱え込まず,どんどん人に頼れる人が楽に研究を進められると思います.コミュニケーション能力を高めるトレーニングと割り切って,頑張ってみてはいかがでしょうか?きっと将来役に立つ能力です(笑)
④とにかく手を動かす(たまに立ち止まる)
研究生活がスタートしてなかなか進めることができない人に多いのが,「最初から理想を求めすぎる」だと思います.(真面目な人ほど陥りがちな罠)もちろん理想を高くもつことは,研究のモチベーションにも繋がりますし大切だと思います.しかし,頭でグルグル考えていることは机上の空論であるかもしれず,やってみないと分からないことはたくさんあると思います.(例えばスポーツの試合展開予想なんて,その道のプロでも大概外してますもんね~,結局試合が終わってみないと分からないんですよ(笑))
最初は誰かの真似事からでもいいと思うので,とにかくトライアンドエラーを繰り返してみてください.
そしてかっこ書きで"たまに立ち止まる"と書きました.これは,自分ができなかった部分で後悔していることです.私はとにかく手を動かしていたおかげで常に研究を進めていたつもりだったのですが,いつの間にか細かい部分の修正ばかりをしていてほとんど前進することができていませんでした.(ランニングマシンみたいな感じか...(笑))
手を動かすことばかりに集中していると,最初に掲げた壮大な目的を忘れて本質的でない修正ばかりになってしまいます.手を動かして研究を進めつつ,たまに立ち止まって研究の本質的な部分に立ち返るのがいいのかなと思います.
⑤外部発表をたくさんする
これは卒業研究を終えた頃のあなたに是非お伝えしたいです.
「準備に追われて研究が進まないからやりたくないです~」,「人前で話すのが苦手なんです~」
"準備面倒くさい","質疑応答が怖い"というその気持ちは分かりますが,これも研究の一部だと思って割り切ってください.ここでは私が感じているメリットについてお話します.
メリット1:アウトプットができる
外部発表する際は,"論文執筆"と"当日の発表"の2種類のアウトプットをすることになります.
"論文執筆"は,自分の研究を文章で明瞭かつ正確に伝えることができるように注意する必要があります.よって文章表現力が向上します.またその文章を考える過程で,より自分の研究を深く理解することができますし,時に新しいインスピレーションを得ることができます.
"発表"は,短い発表時間だけで自分の研究を伝える必要があります.創意工夫を凝らしたスライド作りが必要ですし,端的な口頭説明ができなければいけません.よって資料作りから発表までを含めたプレゼン能力向上に繋がります.
研究を通した自身のスキルアップには,これらのアウトプットが非常に効果的だったと思います.
メリット2:多角的な視点からブラッシュアップできる
私は「機械学習を用いたメンタルヘルス推定」の研究をしていたため,工学系と医学系双方の人が参加する学会によく出ていました.情報系の方は機械学習モデルについての質問が多いのですが,医学系の方は実応用する上での懸念点に関する議論が活発でした.情報系の方は機械学習モデルの構造や性能を気にしますが,医療系の方はむしろユーザへの負担や個人情報の保護について関心があるのです.
このように議論する相手の専門分野が異なると全く違う視点の意見を頂戴することができ,新たな気づきを得ることができます. そのため学会発表することで,新たに研究を考え直すきっかけになることが多いのです.
まとめ
いかがだったでしょうか?今回は自分が研究生活で大切にしてきた5選を紹介しました.
私は素晴らしい研究業績があるわけでもないので,正直これだけをやれば素晴らしい研究者になれるということはないと思います.ただし,学生研究レベルだとしても,学部4年生~修士2年生までの3年間を充実したものにするには役立つ部分もあるかと思います.
これは全くの初学者の頃からやってきたことなので,誰でもやろうと思えばできることしかありません.合う合わないはありますから,是非参考になる部分があればその部分だけでも取り入れてみてください.