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【証明付き】ライプニッツの積分法則の解説

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ライプニッツの積分法則は、積分の範囲が変数に依存する場合、積分を微分するための強力なツールです。この法則の証明を通して、どのように微分が行われるかを理解しましょう。さらに、なぜこの法則が近似ではなく厳密な等式として成り立つのかについても説明します。

ライプニッツの積分法則とは?

ライプニッツの積分法則は、次のように定式化されます:

$$
\frac{d}{dx} \left( \int_{a(x)}^{b(x)} g(x, t) , dt \right) = g(x, b(x)) \cdot \frac{db(x)}{dx} - g(x, a(x)) \cdot \frac{da(x)}{dx} + \int_{a(x)}^{b(x)} \frac{\partial g(x, t)}{\partial x} , dt
$$

ここで、以下の要素が含まれています:

  • g(x, t): x と t に依存する被積分関数。
  • a(x), b(x): 積分範囲の下限および上限。それぞれ x の関数として扱われています。

この法則は、積分範囲が変数 x に依存する場合に、積分を微分するための一般的な手法を提供します。

ライプニッツの積分法則の証明

では、ライプニッツの積分法則を数学的に証明し、さらにそれがなぜ厳密な等式として成り立つのかを説明します。

1. 関数 F(x) の定義

まず、関数 F(x) を次のように定義します:

$$
F(x) = \int_{a(x)}^{b(x)} g(x, t) , dt
$$

この関数 F(x) を x で微分することを考えます。ここで重要なのは、積分範囲 [a(x), b(x)] が x に依存していることです。このため、x が変化すると、積分範囲そのものも変化します。

2. 積分範囲の変化

まず、積分範囲の上下限 a(x) および b(x) が x に依存するため、x が微小に変化したときにこれらも変化することを考慮します。具体的には、次のようになります:

  • x が微小な変化 dx をすると、積分範囲の上限は b(x) から b(x + dx) に変化します。
  • 同様に、下限は a(x) から a(x + dx) に変化します。

3. テイラー展開による近似

ここで、積分範囲の変化をテイラー展開を用いて近似します。関数 b(x) を x でテイラー展開すると、次のように表せます:

$$
b(x + dx) = b(x) + \frac{db(x)}{dx} \cdot dx
$$

同様に、下限 a(x) についても:

$$
a(x + dx) = a(x) + \frac{da(x)}{dx} \cdot dx
$$

さらに、被積分関数 g(x, t) も x に依存しているため、これも x に関してテイラー展開を行います:

$$
g(x + dx, t) = g(x, t) + \frac{\partial g(x, t)}{\partial x} \cdot dx
$$

これらの展開を用いることで、微小な変化 dx による積分範囲と被積分関数の変化を考慮することができます。

4. 積分の微小変化 F(x + dx)

次に、x が x + dx に変化した場合の関数 F(x + dx) を次のように表します:

$$
F(x + dx) = \int_{a(x + dx)}^{b(x + dx)} g(x + dx, t) , dt
$$

これをテイラー展開を使って近似すると:

$$
F(x + dx) \approx \int_{a(x) + da(x)}^{b(x) + db(x)} \left[ g(x, t) + \frac{\partial g(x, t)}{\partial x} \cdot dx \right] dt
$$

ここで、積分範囲の変化により、新たな積分が生じます。これを分解して考えると、次のように整理できます:

$$
F(x + dx) = \int_{a(x)}^{b(x)} \left[ g(x, t) + \frac{\partial g(x, t)}{\partial x} \cdot dx \right] dt + \int_{b(x)}^{b(x) + db(x)} \left[ g(x, t) + \frac{\partial g(x, t)}{\partial x} \cdot dx \right] dt - \int_{a(x)}^{a(x) + da(x)} \left[ g(x, t) + \frac{\partial g(x, t)}{\partial x} \cdot dx \right] dt
$$

5. 積分の変化の計算

次に、各積分を計算します。

  1. 最初の項は次のようになります:

$$
\int_{a(x)}^{b(x)} \left[ g(x, t) + \frac{\partial g(x, t)}{\partial x} \cdot dx \right] dt
$$

これは、もともとの積分 F(x) に対応する部分と、被積分関数の x に関する変化に対応する部分を含んでいます。

  1. 次に、積分範囲が変化したことによる寄与を考えます。上限 b(x) の変化に対応する部分は次のように表されます:

$$
\int_{b(x)}^{b(x) + db(x)} \left[ g(x, t) + \frac{\partial g(x, t)}{\partial x} \cdot dx \right] dt
$$

これを近似すると、次のようになります:

$$
\int_{b(x)}^{b(x) + db(x)} g(x, b(x)) , dt = g(x, b(x)) \cdot db(x)
$$

  1. 下限 a(x) の変化に対応する部分は次のように表されます:

$$
\int_{a(x)}^{a(x) + da(x)} \left[ g(x, t) + \frac{\partial g(x, t)}{\partial x} \cdot dx \right] dt
$$

これも同様に近似すると、次のようになります:

$$
\int_{a(x)}^{a(x) + da(x)} g(x, a(x)) , dt = g(x, a(x)) \cdot da(x)
$$

6. なぜ 第2項 が消えるのか?

上記の積分において、第2項
$$
\frac{\partial g(x, t)}{\partial x} dx
$$
が消える理由は、積分範囲が非常に狭い微小区間であるためです。具体的には、積分区間が
$$
db(x)
$$
という小さな範囲に限定されているため、積分内で
$$
dx \cdot db(x)
$$
のような二次の微小項が生じます。このような二次の項は非常に小さいため、一次の項に比べて無視できるのです。

7. 極限操作と厳密な等式

ここまでの導出ではテイラー展開を用いて近似しましたが、これが厳密な等式として成り立つ理由は、極限操作にあります。極限 dx → 0 を考えることで、無視した高次の微小項(例えば、
$$
dx \cdot db(x)
$$
のような項は消え、一次の微小項だけが残ります。このため、ライプニッツの積分法則は近似ではなく厳密な等式として成立します。

8. 最終的な結果

これらの結果をまとめると、次のような式が得られます:

$$
F(x + dx) \approx F(x) + g(x, b(x)) \cdot db(x) - g(x, a(x)) \cdot da(x) + \int_{a(x)}^{b(x)} \frac{\partial g(x, t)}{\partial x} , dt \cdot dx
$$

これを dx で割り、極限 dx → 0 を考えると、ライプニッツの積分法則が得られます:

$$
\frac{dF(x)}{dx} = g(x, b(x)) \cdot \frac{db(x)}{dx} - g(x, a(x)) \cdot \frac{da(x)}{dx} + \int_{a(x)}^{b(x)} \frac{\partial g(x, t)}{\partial x} , dt
$$

結論

このようにして、ライプニッツの積分法則が証明されました。この法則は、積分範囲が変数に依存する場合に、積分を微分するための強力なツールです。証明の過程でテイラー展開を用いて近似を行いましたが、最終的には極限操作により厳密な等式として成り立つことが示されました。

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