はじめに
バックエンドとインフラを5年ほど経験し、toC / toB の両方のサービスを開発してきたが、最近「本当にユーザーに価値を届けるサービスを作るのは難しい」と改めて痛感している。特に、以下のようなことを日々考えるようになった。
①「すごい技術」と「ユーザー価値」のギャップがある
エンジニアは、最新技術を駆使したり、高度なシステムを構築することに喜びを感じやすい。
だが、その技術的な素晴らしさが直接ユーザーに伝わることはほとんどない。特に toC サービスでは顕著だ。
裏側のアーキテクチャがどれほど洗練されていても、ユーザーが触れるのは UI/UX であり、その体験がすべて。
どんなに「すごい技術」を使っていても、それがユーザーの課題を解決したり、明確なメリットを提供できなければ、自己満足で終わる可能性が高い。
このギャップに直面すると、エンジニアとして何のために開発しているのか、改めて考えさせられる。
② 作ってみると採算が合わない
「こんなサービスがあったら便利なのに」というアイデアから開発を始めることはよくある。
しかし、実際に形にして運営してみると、採算が合わないという現実にぶつかる。
開発コストの採算は取れていても、運用コストを甘く見積もったり、マーケティング費用を考慮していなかったりと、ユーザーにとって価値のあるサービスであっても、ビジネスとして成立させることの難しさを痛感する。
情熱だけでプロダクトを継続することはほぼ不可能であり、ユーザーへの価値提供と並行して、持続可能なビジネスモデルを構築する視点が不可欠だ。
しかも、これは最初に決めておかないと、後から内部のロジックを変更するのはなかなか骨が折れる。
③ ユーザーニーズを簡単に読み違える
「ユーザーニーズを捉える」ことはプロダクト開発の基本中の基本だが、これが最も難しい課題の一つだ。
ユーザーの課題を解決しようとしても、往々にしてそのニーズを読み違える。
自分たちの思い込みや、限られた情報から仮説を立てて開発を進めた結果、いざβ版をリリースしてみると、ユーザーからの反応が薄い、あるいは全く見当違いだったという経験は少なくない。
ユーザーが本当に求めているものは何か、それはお金を払ってでも解決したいことなのか。
ここを徹底的に追求しながら開発を進めるべきだと感じている。
④ ユーザーの声は聞くべきか、イノベーションを追求すべきか
プロダクト開発に関する書籍などを読むと、「ユーザーの声に耳を傾けるべきだ」という意見と、「ユーザーの声ばかり聞いているとイノベーションは生まれない」という意見の両方がある。
この二つのバランスを取ることが非常に難しい。
ユーザーの声は現状の課題を浮き彫りにし、改善点を見つける上で貴重な情報源だ。
しかし、時にはユーザー自身も潜在的なニーズに気づいていないことがある。
彼らの声に囚われすぎると、既存の枠組みから抜け出せず、革新的なアイデアが生まれない可能性もある。
このジレンマの中で、どこまでユーザーの声を聞き、どこから自分たちのビジョンを信じて推進していくべきか、常に問い続ける必要がある。
もしかしたら、ユーザーの声の中から潜在的なニーズや、未来の種を見つけ出す「洞察力」こそが、本当に価値のあるプロダクトを生み出す鍵かもしれない。
⑤ AI時代のエンジニアとしての価値提供
プロダクト開発は、技術的なスキルだけでなく、市場理解、ビジネス感覚、そして人間心理への深い洞察力が求められる、非常に複雑でやりがいのある領域だ。
エンジニアとしてすべての領域に精通する必要はないが、これからの AI 時代、単にコードを書くだけのエンジニアは減っていき、より実ビジネスを踏まえた設計・実装ができるエンジニアが生き残っていくと思っている。
自分が今作っているプロダクトは、常にユーザーへの価値提供ができているのか、自問自答する必要が高まっていると感じている。
おわりに
つらつらと書いてみたが、結局のところ「ユーザーに価値を届ける手段としてコードを書ける」というだけでも、十分意味があるのかもしれないと思えてきた。
もちろん、コードを書く以外で価値を提供できる可能性もあるが、その選択肢は多いに越したことはない。