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FANについて考える(令和6年最新版)

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ご無沙汰しております。KBTです。
最近自作PCを製作したのですが、PCのFANについて色々と情報を調べましたので未来の自分への備忘録として記事にしておきます。

今回購入したFANはどこにでもある安物のIceberg Thermal IceGALE Xtra 120mmファン ICEGALE12D-C0A ケースファンのため、本記事内ではこのFANをリファレンスとして記載します。

項目
品名 ICEGALE12D-C0A
サイズ 12cm x 2.5cm x 12cm
重さ 199g
回転速度 500~3000 RPM
最大風量 127CFM(215.773 m3/h)
最大静圧 4.6mm h2o(45.1122 Pa)
音量 0~44dBA
価格 \2,291-

FANの性能について

FANの性能を表すパラメータとして「風量」と「静圧」があります。

風量

FANの風をさえぎるものがない状態での風を送れる量を表す。
単位はCFM(Cubic Feet per Minute)またはm3/h。
1CFM = 1.699 m3/h = 28.317L/分
上記FANは127CFMなので215.773 m3/h

PCケース内が配線も綺麗でスカスカの場合はエアフローを遮る抵抗がない状態であり(圧力損失が低い状態)、静圧力より風量を重視するとよいようです。

静圧

この値が高いほど抵抗のある箇所へ風を押し込む能力があることを表す。
出口のない箱に対して風を送り込み、これ以上風が入らないという状態の時の箱内の気圧が幾らかを計測したものを最大静圧と呼び、単位はmm h2oまたはPa。
1mm h2o = 9.807 Pa
上記FANは4.6mm h2oなので45.1122 Pa

PCケース内に基盤や配線などが満ち満ちに実装されていて空気の通りが悪い場合は風の通りを邪魔する抵抗が増える状態であるため(圧力損失が高い)、風量だけが多くても内部に空気を押し込むことが出来ず、静圧力が高い方が風を中に押し込めるようです。

(FANからの)風の速さと圧力と外圧の関係を計算したい場合はベルヌーイの定理というものを使用するらしい。

FANの排気方向すぐのところに壁や冷却したいものなどのエアフローを遮るものが存在する場合、FANの送風力に影響を与える抵抗となります。
FANの送風力を損なわないためには最低でもFANの厚みと同程度かそれ以上の離隔を確保しましょう。
20240909_004.png
※FAN排気側すぐのところに抵抗(ラジエータ)が存在する例

参考: ファンの最大風量と最大静圧
参考: ファンの効果的な設置方法について

FANの設置位置による呼び方

FANは吸排気方向や設置位置により以下のような呼び方をする場合があります。

呼び方 説明 メリット
プッシュ型 空気を押し出して風を送る方式。主に吸気口やラジエータの吸気側にFANを取り付ける方式のことを指す。 冷風を勢いよく発熱体に吹き付けることが出来る。排気側で攪拌効果を得られる。排気側の流速にムラが出る。
プル型 空気を吸い込んで風を排出する方式。主に排気口やラジエータの排気側にFANわ取り付ける方式のことを指す。 吸気側の流速が一定になりやすい。
プッシュプル型 吸排気口両方にFANを取り付ける方式。 プッシュ型・プル型と比べ冷却効率が高い。

プッシュ型イメージ図

20240914_001.png

プル型イメージ図

20240914_002.png

プッシュプル型イメージ図

20240914_003.png

参考: PUSH型ファン・PULL型ファンの比較検討
参考: FANのプッシュとプルって何?

FANを2個用意した場合どのように配置するのが良いか

風量と静圧の説明が終わったところで、FANを2個用意した場合のマウント方式による特性の違いを以下に示します。

項目 並列 直列 吸気側1個、排気側1個
(プッシュプル型)
風量 1個のときより増える 1個のときと変わらない 1個のときと変わらない
静圧 1個のときと変わらない 1個のときより増える 直列のときより増える
利用シーン 圧力損失が低い場合に最適 圧力損失が高い場合に最適 圧力損失が高く高い冷却効率を求められる場合に最適

FANを並列に2個設置する場合、(圧力損失がなければ)2個並列に設置すれば風量は2倍に近くなります。
FANを直列に2個設置する場合、静圧力は2倍になるかというと2倍にはなりません。
FANを吸排気口にそれぞれ1個ずつプッシュプル型で設置する場合、FANを1個しか使用しない場合と比べても効率は1.3倍くらいにしかならないようです。

PCケース内部がスカスカの場合はFANを並列に取り付け、PC内部の密度が高くて風が通りにくいときは吸気口と排気口両方にFANを取り付けるのが良いようです。

参考: 風量と静圧と装置冷却効率の関係

熱の特性と吸排気口の位置

熱は下から上に向かって移動します。
底面に近い方が涼しく、天井に高い方が熱くなります。
そのため、効率の良い吸排気口の位置は「低い位置から吸気し高い位置から排気する」となります。

PC背面側のFANが比較的上部に取り付けられているのは下部にPCIボードが来てFANを配置できないからというのもありますが、CPU付近で暖められた上面の空気をPC外部に効率的に排出するためというのもあるのですね。

FANの回転数と風量の関係

一般的に同一回転数であればFANのサイズが大きいほど風量は増加します。
また、同一のFANであれば回転数が多くなればなるほど風量も増加します。
同一サイズ同一回転数でも製品により風量が異なるのはFANの羽の枚数や形状、FANブレードなどの性能によるものです。

FANの回転数が多いものや静圧力が強いFANに直接触れると指を切るなどの事故に繋がる場合があります。
なるべくFANガードなどで直接触れることがないように取り付けることをオススメします。

風量は放熱効果に影響を与えて、一般的には風量が大きいほど放熱効果は高くなります
参考: PC ファンの選び方

参考: ケースファンの大きさでPCの温度は変わる?

PCケース内の圧力

(PCに取り付けるFANの風量や静圧力が全て同一である場合において)たとえばPCケースにFANを4つ取り付けるとき、3つのFANを吸気口として使用し残りの1つのFANを排気口として使用した場合、排気量より吸気量の方が多くなるため、PCケース内部の圧力が高まります(正圧と言うらしい)。

逆に、3つのFANを排気口として使用し1つのFANを吸気口として使用した場合、吸気量より排気量の方が多くなるため、PCケース内部の圧力は低下します(負圧と言うらしい)。

風は圧力が高いところから低いところへ流れるため、PC内部が負圧の場合は吸気口からの空気の流入だけでは排気量を賄えないため、PCケースに存在する小さな隙間などからも吸気されます。
それに合わせて埃なども吸い込むため、使用環境によっては頻繁にクリーニングなどのメンテナンスが必要になる場合があります。
逆にPC内部が正圧の場合は吸気口からしか空気が取り込まれないため、吸気口の埃対策が重要になります。

PCに取り付けるFANの風量や静圧力が全て同一である場合においてPC内部が正圧または負圧に偏っている状態は、吸気側または排気側FANに過度な負荷がかかっている状態であり、FANの寿命や故障に影響を与える可能性があるようです。何事もバランスが大事ということですね。

メンテナンスの観点からはPC内部が若干正圧になるようにFANの風量を調節すると良い byインテル

参考: PC の冷却効果を高めることの重要性

FANの音

FANの善し悪しを語る上で冷却性能と並んで大事なのがFANの音と故障率でしょう。
FANの騒音についてはないに越したことはないでしょうが、冷却性能はFANの音量にも比例するのも事実です。
FANの騒音は音量だけでなく音の高低によっても不快感が異なりますし、音を不快に思うかどうかは個人にもよるところもあるかと思います。
自分は音よりも冷却性能を優先するタイプなのでFANの音については特に気にせず調査もしませんでしたが、今回購入したリファレンスFANを最大風速にしたときは流石に凄い音でした。

コンピュータにおける空気温度と冷却能力

IT業界でコンピュータの稼働温度の推奨値といえば米国空調冷凍学会(ASHRAE)が発表した空気線図(ASHRAE 2011)が有名で、18℃~27℃の環境で使用することが最もコンピュータに良いとされているようです。
また、適切な冷却効率が得られているかを計測する方法として機器の発熱量と実際の吸気側の温度と排気側の温度の差を計算する(ΔT)という方法があります。

おおよそ1kWの発熱あたり160CFMの空調冷却能力が必要になります

参考: 空気線図による空調機能力の計算

簡易水冷のラジエータの取り付け位置(番外編)

上部に取り付けるのが良いらしい。でも上部は熱風が集まるので設置するなら上面吸気ですかね・・・

簡易水冷警察コワイ

参考: その水冷クーラー、設置位置が間違ってるかも
参考: ラジエーター ファンの向きと位置で冷えるのはどれだ?
参考: 最強水冷クーラーの動画にいちゃもんをつけてきたコメントにブチギレ

その他参考サイト

CPUクーラーの選び方!

最期に

FANの選定については唯一解というものは存在せず、各自のニーズや環境により最適解は様々になります。
1℃単位で計測して最適化したところで機器内の埃や発熱量、外部の室温などにより風の経路が変わったりすることもあるかと思いますので過度な最適化を実施する必要はなさそうに感じました。

そのため、上記理論を参考にしつつもご家庭で趣味でやる分には自分の好きなように設置すればよく、色々試して最終的に本人が納得すればそれでよいのではないでしょうか。

この記事が皆様の快適なFANライフの一助になれば幸いです。

20240915_001.jpg
シュラウドを付ける方が冷却力が高いということなので自作のシュラウドをラジエータに取り付ける例。
果たして冷却力は向上するのでしょうか?

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