はじめに
AWSエンジニアによるGoogle Cloud学習シリーズを公開していきたいと思います。
筆者のレベルとしては、AWS上での開発経験は数年あり、パブリッククラウドの理解は十分にありますが、Google Cloud/Azureはまったく触ったことがありません。
まずは、Google Cloud認定試験の「Cloud Digital Leader」認定試験ガイドをベースに学習し、「Cloud Digital Leader」を取得出来るレベルの知識を習得したいと思います。
Google CloudのAIを活用したイノベーション
認定試験ガイドのセクション3「Google Cloud の AI を活用したイノベーション」は、試験内容の約16%を占める内容となります。
セクション内で大きく以下の3つの項に分けられています。
- AIとMLの基礎知識
- AIとMLの主要コンセプトについて取り上げ、MLでどのようにビジネス価値を創出できるかについて説明する
- Google CloudのAI/MLソリューション
- Google Cloudで利用可能なAI/MLソリューションおよびプロダクトにはどのようなものがあるか、さまざまなビジネスユースケースに最適なソリューションをどのように選択するかについて説明する
- Google cloud AI/MLソリューションの構築と使用
- Google Cloudの事前トレーニング済みAPI、AutoML、カスタムAI/MLプロダクトによってビジネス価値を生み出す方法について説明する
各項について簡潔にまとめて整理していきます。
AIとMLの基礎知識
AIとMLの主要コンセプトについて取り上げ、MLでどのようにビジネス価値を創出できるかについて説明する
AIとMLを定義する
AIとMLについて
- AI(人工知能)とは
- AI(人工知能)とは、人間の知能を模倣し、学習・推論・認識・問題解決などの人間のような知的な振る舞いをするコンピュータシステムのこと
- 推論とは
- AIが学習済みのモデルを使って、新しいデータに対して予測や判断を行うプロセス
- すでに学習したことを基に、新しい状況で判断を下すこと
- 推論とは
- 音声認識、画像認識、自然言語処理、意思決定支援など、さまざまな分野で活用されている
- AI(人工知能)とは、人間の知能を模倣し、学習・推論・認識・問題解決などの人間のような知的な振る舞いをするコンピュータシステムのこと
- ML(機械学習)とは
- ML(機械学習)とは、AIの一分野でデータから学習することで、明示的なプログラミングなしにタスクの性能を向上させる技術のこと
- 大量のデータからパターンを見つけ出し、そのパターンを基に予測や分類を行う
- 重要なポイント
- MLはAIの実現手段の1つであり、AIの部分集合である
- MLは「学習」に焦点を当てた技術である
- 両者ともビジネスの効率化や意思決定支援に活用される
AIとMLの具体例
- AI(人工知能)の具体例
- カスタマーサービス
- 【チャットボット】顧客からの一般的な問い合わせに24時間対応する
- 【感情分析】顧客の声のトーンや文脈から感情を理解し、適切な対応を提案する
- セキュリティ
- 【不正検知】通常とは異なる取引パターンを検出する
- 【顔認証】画像/動画から登録済みの人物か判定し、建物やデバイスへのアクセスを制御する
- カスタマーサービス
- ML(機械学習)の具体例
- 【需要予測】
- 過去の売上データ、天候、イベント情報などから将来の需要を予測し、在庫の最適化や発注のタイミングを提案する
- 【レコメンド(製品推奨)】
- ユーザーの過去の購買履歴やブラウジング行動から興味を持ちそうな商品を推奨する
- 【品質管理】
- 製造ラインの画像データから不良品を自動検出
- センサーデータから故障の予兆をけ検知する
- 【需要予測】
- AIとMLの関係性
- 【Eコマースサイトのレコメンドシステム】
- ML → 顧客の行動データから購買パターンを学習する
- AI → 学習したパターンを基に、個々の顧客に最適な商品を推奨する判断を実施する
- 【Eコマースサイトのレコメンドシステム】
AIやMLの機能と、データ分析やビジネスインテリジェンス機能との違いについて説明する
機能 | 時間軸 | 目的 | 例 |
---|---|---|---|
AI・ML | 未来 | 過去のデータを用いて、未来を予測し意思決定を行う | 過去のフライトの顧客満足度や苦情に関するデータを用いて、将来のフライトの満足度や苦情を予測する |
データ分析・ビジネスインテリジェンス | 過去 | 過去のデータを用いて、事象を説明する | 過去の売上データから、顧客の属性分布や売上傾向を把握する |
- AI・MLと、データ分析・ビジネスインテリジェンスでは、時間軸と目的が異なる
- AIとMLは、過去のデータからパターンや関係性を学習し、将来を予測するために使用される
- 予測結果に基づいて、企業はより良い意思決定を行うことができる
- 例)過去のフライトの顧客満足度や苦情に関するデータを用いて、将来のフライトの満足度や苦情を予測する
- 例)過去のフライトの顧客満足度や苦情に関するデータを用いて、将来のフライトの満足度や苦情を予測する
- 予測結果に基づいて、企業はより良い意思決定を行うことができる
- データ分析やビジネスインテリジェンスは、過去のデータを用いて、すでに起こった事象を分析し、現状を把握するために使用される
- 過去のデータに基づいて現状を理解することに重点を置いている
- 例)過去の売上データから顧客の属性分布や売上傾向を把握する
- 過去のデータに基づいて現状を理解することに重点を置いている
- AIとMLは、過去のデータからパターンや関係性を学習し、将来を予測するために使用される
このように、データ分析やビジネスインテリジェンスは過去を理解するためのツールであるのに対し、AIとMLは未来を予測し、より良い意思決定を行うためのツールである
MLでどのような問題を解決できるのかについて説明する
MLは、様々なビジネス上の問題を解決するために利用できる。
以下に4つの一般的なビジネス課題を解決する例を挙げる
- ルールベースのシステムの置換または簡素化
- 従来のルールベースのシステムでは、複雑なルールを定義する必要があり、メンテナンスが困難であったが、MLを用いることで、データからルールを自動的に学習することができ、システムの簡素化と効率化を実現できる
- 例)Google検索における検索結果の表示
- 以前は手作業でコーディングされたルールを用いて、検索キーワードに対応する適切な検索結果を表示していたが、検索クエリの数が膨大になるにつれて、ルールベースのシステムでは対応が難しくなってきた
- MLを導入することで、ユーザーの検索履歴やクリックデータなどを分析し、より適切な検索結果を表示できるようになった
- プロセスの自動化
- MLは、予測と繰り返し行われる決定を大規模に行うための手段であり、今まで人手で行っていた作業を自動化し、業務効率化とコスト削減を実現することができる
- 例)不動産物件調査の自動化
- タイの不動産開発業者では、物件調査プロセスを自動化するためにMLを活用している
- 従来は、調査員が目視で物件の状態をチェックし、報告書を作成していたが、このプロセスは時間とコストがかかるだけでなく、人為的なミスが発生する可能性もあった
- GoogleのSpeech-to-Text APIを使用して、調査担当者がスマートフォンアプリに向かって欠陥を口頭で説明するだけで調査結果を管理・文書化するようにした
- Cloud Vision APIを利用し、ドローンで撮影した画像から欠陥を自動的に分類することで、調査プロセス全体の自動化を目指した
- 結果として、調査時間の短縮、人件費の削減、調査の効率化と正確性の向上が実現させた
- 画像、動画、音声などの非構造化データを理解すること
- MLは、画像、動画、音声などの非構造化データを分析し、意味のある情報を抽出することができ、これまで活用することが難しかった非構造化データからビジネス価値を生み出すことができる
- 例)メールの自動転送
- オンライン専門食品スーパーでは、受信メールの処理にMLの自然言語処理機能を活用している
- 従来は人手で仕分けしていたメールを、MLを用いて顧客の感情やトピックを特定し、関連部署へ自動転送するようにし、顧客対応のスピードと質を向上させた
- パーソナライズ
- MLは、ユーザーの行動履歴や属性情報などを分析し、個々のユーザーに最適化されたサービスを提供することができ、顧客満足度とロイヤルティの向上を実現できる
- 例)YouTubeのおすすめ表示
- ユーザーの視聴履歴や評価などを分析し、おすすめの動画を表示するためにMLを活用している
- ユーザーは自分の好みに合った動画を見つけやすくなり、視聴時間を増やすことができる
MLで創出できるビジネス価値について説明する
(大規模なデータセットの処理、ビジネス上の意思決定能力の拡張、非構造化データからの価値の引き出しなど)
MLは、大量のデータ処理、ビジネス上の意思決定能力の拡張、非構造化データからの価値の引き出しなど、様々なビジネス価値を創出することができる
-
大規模なデータセットの処理
- 従来のシステムでは、処理が困難であった大規模なデータセットも、MLを活用することで効率的に処理し、分析することが可能になる
- データ量は時間とともに増加の一途を辿るが、MLは、このような大量のデータを分析し、そこから有益なインサイトを抽出することで、ビジネスの意思決定を支援する
-
ビジネス上の意思決定能力の拡張
- MLは、過去のデータに基づいて未来を予測することを可能にする
- 従来は経験や勘に頼っていたビジネス上の意思決定を、データに基づいたより客観的なものに変え、精度の高い予測に基づいた、より効果的な意思決定を可能にする
- 例)ある航空会社では、MLを使って過去のフライトデータから顧客満足度や苦情を予測することで、料金設定、人員配置、ケータリングなどを最適化し、収益の最大化を実現している
-
非構造化データからの価値の引き出し
- MLは、画像、動画、音声、テキストなどの非構造化データを理解し、分析することを可能にする
- 従来、これらの非構造化データは分析が困難で、ビジネスに活用することが難しいとされてきたが、MLの自然言語処理や画像認識などの技術を用いることで、これらのデータからも有益な情報を抽出し、ビジネス価値を創出することが可能になる
- 例)あるオンラインスーパーでは、顧客からのメールをMLで分析することで、顧客の感情やニーズを把握し、顧客対応の質向上につなげている
-
その他のビジネス価値
- MLは上記以外にも、以下のようなビジネス価値を創出する可能性を秘めている
- 【業務の自動化】繰り返し行われる定型業務をMLで自動化することで、人為的なミスを減らし、業務効率を大幅に向上できる
- 【新製品・サービス開発】顧客データ分析からニーズを捉え、MLを活用した新製品・サービス開発を促進することができる
- 【不正検知】金融取引やセキュリティ分野において、MLを用いた不正検知システムは、不正行為の防止に貢献する
- MLは上記以外にも、以下のようなビジネス価値を創出する可能性を秘めている
-
MLのビジネス価値創出における注意点
- MLは強力なツールだが、その効果を最大限に発揮するためには、高品質なデータが不可欠
- データの完全性、一意性、適時性、有効性、精度、整合性などを確保することで、MLモデルの精度が向上し、より正確な予測や分析が可能になる
- また、責任あるAI開発の原則に基づき、倫理的な問題やバイアスにも配慮する必要がある
MLは様々なビジネス分野において、業務効率化、意思決定の高度化、顧客体験の向上など、多岐にわたるビジネス価値を創出する可能性を秘めている
高品質で正確なデータがMLモデルの成功に不可欠な理由について説明する
- 高品質で正確なデータの使用
- MLモデルは、データから学習し、予測や意思決定を行うため、データの品質は、MLモデルの成功に直結する非常に重要な要素となる
- 高品質で正確なデータを用いることで、MLモデルはより正確な予測を行い、ビジネスに貢献することができる
- 逆に、低品質なデータを用いた場合、モデルは誤った学習を行い、不正確な予測や誤った意思決定につながる可能性がある
- 低品質なデータがMLモデルに与える影響
- 子供に間違った情報を教えることと同じ
- 子供は、間違った情報を与え続けると、それを正しいと認識してしまうのと同様に、MLモデルも低品質なデータから学習すると、誤ったパターンを学習し、不正確な予測を行うようになってしまう
- 高品質なデータとは、完全性、一意性、適時性、有効性、精度、整合性の6つの側面を満たしているデータのこと
- 【完全性】必要な情報がすべて揃っていること
- 情報が欠落していると、モデルは正確な予測に必要なパターンを学習できない
- 【一意性】データが重複していないこと
- 重複したデータで学習すると、モデルが混乱し、正確なパターンを特定できなくなる
- 【適時性】データが最新であり、分析対象の事象の現状を反映していること
- 古いデータでは、正確な予測ができない
- 【有効性】データが事前に定義された標準や形式に準拠していること
- 形式が異なると、モデルがデータを正しく解釈できない
- 【精度】データが正しいこと
- 誤ったデータで学習すると、モデルも誤った予測を行う
- 【整合性】データが矛盾なく統一されていること
- データに矛盾があると、モデルは正確な予測を行うことができない
- 【完全性】必要な情報がすべて揃っていること
上記を満たした高品質なデータを用いることで、MLモデルは正確な学習を行い、その能力を最大限に発揮することができ、ビジネスにおける様々な課題解決、意思決定の向上、顧客体験の向上などに貢献することができる
説明可能なAI、責任あるAIの重要性について説明する
- 責任あるAIとは
- 論理的な配慮、透明性、説明責任などを考慮したAIの開発と利用のこと
- 論理的な配慮、透明性、説明責任などを考慮したAIの開発と利用のこと
- Googleの責任あるAI開発のための基本方針
- 【社会への有益性】AIは社会全体に利益をもたらすように開発・利用されるべきである
- 【不公平なバイアスの防止】AIは、人種、性別、宗教などに対する不公平なバイアスを発生させたり、助長したりしないように設計する必要がある
- 【安全性の確保】AIは、安全性に配慮して開発・テストされ、予期せぬ動作や悪用を防ぐ必要がある
- 【人々への説明責任】AIの開発者や利用者は、AIの動作や意思決定について説明責任を果たす必要がある
- 【プライバシーの尊重】AIは、プライバシーを侵害しないように設計・運用されるべきである
- 【科学的卓越性の追求】AIの開発は、最新の科学的知見に基づいて行われるべきである
- 上記の原則に加えて、Googleは、AIを特定の用途に利用しないことを明確にしている
- 人々に危害を加える可能性のある技術
- 武器や軍事目的の技術
- 差別や人権侵害を助長する技術
- 説明可能なAI(Explainable AI)とは
- AIの意思決定プロセスを人間が理解できるように説明することを目指す技術
- 従来のAI、特に深層学習などを用いたAIは、その複雑さゆえに、なぜそのような結果に至ったのかを人間が理解することが難しいという問題があった
- 説明可能なAIの重要性
- 【信頼性の向上】AIの意思決定プロセスを理解することで、ユーザーはA Iに対する信頼感を高めることができる
- 【バイアスの検出】AIの意思決定プロセスを分析することで、バイアスの存在を検出し、修正することができる
- 【改善の促進】AIの意思決定プロセスを理解することで、モデルの改善点を特定し、より正確で信頼性の高いAIを開発することができる
Google Cloudは、Explainable AIのためのツールとフレームワークを提供しており、AI開発における透明性を確保している
これらのツールは、AIの意思決定プロセスを可視化し、人間が理解しやすい形で説明することを可能にする
Google CloudのAI/MLソリューション
Google cloudで利用可能なAI/MLソリューションおよびプロダクトにはどのようなものがあるか、さまざまなビジネスユースケースに最適なソリューションをどのように選択するかについて説明する
Google Cloud AI/MLソリューションおよびプロダクトを選択する際に組織が考慮すべき、決定が必要な事項やトレードオフ(迅速性、労力、差別化、必要な専門知識など)について説明する
Google Cloudは、多様な AI/MLソリューションとプロダクトを提供しており、組織はビジネスニーズ、リソース、専門知識などに基づいて最適なものを選択する必要がある
考慮事項 | 説明 | トレードオフ | 考慮すべきポイント |
---|---|---|---|
迅速性 | モデルをどの程度のスピードで本番環境に導入する必要があるか。 |
【迅速な導入】 事前トレーニング済み API、AutoML、BigQuery ML 【時間が必要】 カスタムトレーニング |
ビジネス要件に基づき、必要な導入スピードを検討する。 |
労力 | モデルの構築、トレーニング、デプロイにどれだけの労力をかけることができるか。 |
【労力が少ない】 事前トレーニング済み API 【中程度の労力】 AutoML、BigQuery ML 【多くの労力】 カスタムトレーニング |
利用可能なリソース (人材、時間、予算) を考慮する。 |
差別化 | モデルにどれだけの独自性を持たせる必要があるか。 |
【差別化が低い】 事前トレーニング済みAPI 【中程度の差別化】 AutoML 【高い差別化】 カスタムトレーニング |
競争優位性を築くために必要な差別化のレベルを検討する。 |
必要な専門知識 | モデルの構築、トレーニング、デプロイに必要な専門知識を持っているか。 |
【専門知識が不要】 事前トレーニング済みAPI 【ある程度の専門知識】 AutoML、BigQuery ML 【高度な専門知識】 カスタムトレーニング |
社内の専門知識レベルを評価し、必要な場合はトレーニングや外部パートナーとの協力を検討する。 |
コスト | モデルの開発、運用、クラウドサービスの利用にどれだけの費用をかけることができるか。 |
【低コスト】 事前トレーニング済みAPI 【中程度のコスト】 AutoML、BigQuery ML 【高コスト】 カスタムトレーニング |
予算内で実現可能なソリューションを選択する。 |
データの量と品質 | モデルのトレーニングに利用できるデータの量と品質はどれくらいか。 |
【大量のデータが必要】 カスタムトレーニング 【少量のデータでも可能】 AutoML, 事前トレーニング済みAPI |
データの量と品質はモデルの精度に影響するため、事前に評価する必要がある。 |
セキュリティとプライバシー | 機密性の高いデータを扱う場合は、セキュリティとプライバシー対策をどのように講じるか。 |
【セキュリティとプライバシー対策が重要】 すべてのソリューション |
データの保護に関する要件を満たすソリューションを選択する。 |
倫理的な配慮 | AIの利用によって発生する可能性のある倫理的な問題にどのように対処するか。 |
【責任あるAIの原則を考慮】 すべてのソリューション |
倫理的な問題を評価し、責任あるAIの原則に基づいたソリューションを選択する。 |
- 迅速性
- どの程度のスピードでモデルを本番環境に導入する必要があるかは、重要な決定要因であり、事前トレーニング済みAPIは、Googleがすでにトレーニング済みのモデルを利用できるため、モデルのトレーニング時間を大幅に短縮できる
- AutoMLやBigQuery MLも、コードを書かずにモデルを構築できるため、迅速な導入に適している
- 一方、カスタムトレーニングは、モデルを最初から構築するため、最も時間がかかる
- 労力
- 事前トレーニング済みAPIは、労力が最も少ない選択肢であり、APIを呼び出すだけで、高度なML機能を利用できる
- AutoMLは、GUIを使用してモデルを構築できるため、コーディングの労力を削減できる
- BigQuery MLは、SQLクエリを使用してモデルを構築できるため、データアナリストにとって使いやすい選択肢である
- カスタムトレーニングは、モデルの構築、トレーニング、デプロイのすべてを独自に行う必要があるため、最も労力がかかる
- 差別化
- 事前トレーニング済みAPI は、汎用的なタスクに適していますが、差別化要因にはなりにくい
- AutoMLは、独自のデータを使用してモデルをトレーニングできるため、ある程度の差別化が可能
- カスタムトレーニングは、完全に独自のモデルを構築できるため、最も高い差別化を実現できる
- 必要な専門知識
- 事前トレーニング済みAPIは、MLの専門知識がなくても利用でき、APIの使い方を理解するだけで良い
- AutoMLは、GUIを使用できるため、MLの専門知識が少なくてもモデルを構築できる
- BigQuery MLは、SQLを使用できるデータアナリストにとって使いやすい選択肢である
- カスタムトレーニングは、MLエンジニアやデータサイエンティストなど、高度な専門知識を持つ人材が必要
- その他の考慮事項
- 【コスト】ソリューションによって、開発コスト、運用コスト、クラウドサービスの利用料金などが異なる
- 【データの量と品質】モデルの精度を高めるためには、高品質で関連性の高いデータが大量に必要
- 【セキュリティとプライバシー】機密性の高いデータを扱う場合は、セキュリティとプライバシー対策が重要
- 【倫理的な配慮】AI/MLの利用には、倫理的な問題が伴う場合があるため、責任あるAIの原則に基づいたソリューションを選択することが重要
組織は、上記の要素を総合的に考慮し、ビジネス目標、予算、リソース、専門知識などに基づいて最適なソリューションを選択する必要がある
ビジネスのさまざまなユースケースに対して、どのGoogle Cloud AI/MLソリューションおよびプロダクト(事前トレーニング済みのAPI、AutoML、カスタムモデルの構築など)が適しているのかについて検討する
ビジネスのさまざまなユースケースに対して、どのGoogle Cloud AI/MLソリューションおよびプロダクトが適しているかを以下に整理する。
事前トレーニング済みAPI
-
ユースケース例
- 画像の内容を認識し、業務にとって安全でない画像をフィルタリングしたい
- 音声をテキストに変換したい
- テキストを音声に変換したい
- テキストを別の言語に翻訳したい
- 動画に映っている動きやアクションを認識したい
- オンラインお問い合わせフォームの入力情報を処理したい
-
メリット
- Googleが構築してトレーニングしたモデルをAPI経由で利用できるため、独自のトレーニングデータや専門知識が不要
- 迅速かつ少ない労力で実装できる
- オンプレミス、プライベートクラウド、Googleのパブリッククラウドにデプロイできる
-
デメリット
- カスタマイズ性は低い
- 特定のニーズに完全に合致しない場合がある
AutoML
-
ユースケース例
- 正常な部品と欠陥のある部品を区別したい(自動車メーカーなど)
- オンラインお問い合わせフォームの入力情報を、独自の分類スキームで処理したい
- カスタムの画像分類モデルを構築したい
-
メリット
- コーディングの必要がなく、GUIを使用してMLモデルをトレーニングできる
- 専門知識が少なくても利用できる
- データに合わせてカスタマイズされたトレーニング済みモデルを作成できる
-
デメリット
- カスタムモデル構築よりは柔軟性や制御が低い
- 大規模なデータセットや複雑なモデルには不向きな場合がある
カスタムモデル構築
-
ユースケース例
- ニーズに完全に合致した、高度にカスタマイズされたMLモデルを構築したい
- 差別化された、革新的な結果を得たい
-
メリット
- 柔軟性が高く、MLパイプラインを完全に制御できる
- ニーズに特化したモデルを構築できる
-
デメリット
- 完全なカスタム構築のため、時間と労力がかかる
- データサイエンティストとエンジニアの専門チームが必要
BigQuery ML
-
ユースケース例
- 大規模なデータセットで機械学習を行いたい
- SQLを使用してモデルを構築・実行したい
- 予測分析を行いたい
-
メリット
- データアナリストが使い慣れたSQLでモデルを扱える
- データがすでにBigQuery内にある場合は、データ移動の必要がない
- Vertex AIとの統合によりオンライン予測も可能
-
デメリット
- 事前定義済みのMLモデルに適合するケースに限定される
- カスタムモデル構築よりは柔軟性や制御が低い
その他のソリューション
-
Contact Center AI
- 顧客対応の効率化とカスタマーエクスペリエンスの向上を実現する
-
Document AI
- ドキュメント処理の自動化、データ分析に利用できる
-
Cloud Talent Solution
- 採用活動の効率化、最適な人材のマッチングを実現する
-
小売業向け Vertex AI Search
- 商品レコメンド、売上向上に貢献する
選択時の考慮事項
-
スピード
- どれだけ早くモデルを本番環境に導入する必要があるか
-
差別化
- モデルにどれだけ独自性があるか、またはどれだけ独自性が必要か
-
専門知識
- AIまたはMLプロジェクトに着手する際に必要となる専門知識
-
労力
- AIソリューションの構築に必要となる労力
Google Cloudは、事前トレーニング済みAPI、AutoML、カスタムモデル構築など、様々なAI/MLソリューションを提供しており、それぞれのソリューションは異なるユースケースに適しており、選択する際には上記のような考慮事項を踏まえる必要がある。
Google Cloudの主なAI/MLソリューションとプロダクトの用途と特徴
名前 | 説明 | 主な用途/特徴 |
---|---|---|
AutoML | Vertex AI上で、ノーコードで独自のMLモデルを構築できるサービス。 | グラフィカルユーザーインターフェース(GUI)を使用して、エンドツーエンドでMLモデルをトレーニングできるため、コーディングの必要がなく、専門知識が少なくても利用できます。データに合わせてカスタマイズされたトレーニング済みモデルを作成可能です。 |
AutoML Natural Language | カスタムのMLモデルの構築とデプロイ、ドキュメントの分析と分類、エンティティの特定、属性の評価を行うことができるサービス。 | カスタムのテキスト分類、エンティティ抽出など。例えば、オンラインお問い合わせフォームの入力情報を処理する際に利用できます。 |
AutoML Vision | 特化したデータで画像認識モデルをトレーニングできるサービス。 | 例えば、自動車メーカーが正常な部品と欠陥のある部品を区別する際に利用できます。 |
BigQuery ML | BigQueryでSQLクエリを使用してMLモデルを作成し、実行するためのツール。 | 大規模なデータセットでの機械学習に適しており、データアナリストが使い慣れたSQLでモデルを扱うことができます。予測分析に利用でき、Vertex AIとの統合によりオンライン予測も可能です。 |
Cloud Talent Solution | AIを活用した求人検索機能と人材獲得機能で、求職者を希望の仕事にすばやく結び付け、雇用者が有能な候補者を呼び込んで採用につなげられるようにするソリューション。 | 採用活動の効率化、最適な人材のマッチングを実現します。 |
Cloud Translation API | テキストの言語を別の言語に翻訳するAPI。 | 多言語対応のアプリケーション開発に利用できます。 |
Contact Center AI | お客様と対話して人間のエージェントを支援し、運用効率の向上とカスタマーケアのパーソナライズによってコンタクトセンターの変革を可能にするソリューション。 | 顧客対応の効率化、カスタマーエクスペリエンスの向上を実現します。 |
カスタムモデル | Vertex AIで独自のデータでモデルをトレーニングし、カスタムモデルを構築できるサービス。 | MLワークフローの各段階(データ収集、特徴量エンジニアリング、モデル構築、デプロイ、モニタリング)に対応する製品が揃っており、完全なカスタム構築のため、時間と専門知識が必要となります。ニーズに特化したモデルを構築できるため、差別化された結果を得られます。 |
Document AI | 非構造化ドキュメントから情報を抽出して分類し、分析情報を引き出すソリューション。 | ドキュメント処理の自動化、データ分析に利用できます。対象ドキュメントは請求書、領収書、フォーム、手紙、レポートなど。抽出したデータはデータベースに保存するか、詳細に分析するために別のアプリにエクスポートできます。 |
Natural Language API | テキストの構文や感情を検出するAPI。 | 事前定義済みのカテゴリにテキストを分類することができます。例えば、問い合わせ内容が苦情なのか、誉め言葉なのか、事業の詳細に関する問い合わせなのかなどを判別する際に利用できます。 |
Speech-to-Text API | 音声をデータ処理用のテキストに変換するAPI。 | 音声入力、音声検索、音声認識などに利用できます。 |
TensorFlow | ML向けに開発されたエンドツーエンドのオープンソースプラットフォーム。 | 研究者によるMLの革新と、開発者によるMLアプリの構築・デプロイを支援します。Googleが独自開発したASICであるTPU (Tensor Processing Unit) を利用し、MLワークロードを高速化します。 |
Text-to-Speech API | テキストを高品質の音声に変換するAPI。 | 音声案内、音声合成、音声対話システムなどに利用できます。 |
Video Intelligence API | 動画に映っている動きやアクションを認識するAPI。 | 動画分析、動画検索、動画コンテンツの理解などに利用できます。 |
Vision API | 高性能の事前トレーニング済みMLモデルを提供するAPI。 | 画像の顔やオブジェクト、テキスト、感情を自動検知します。画像にラベルを割り当て、多数の事前定義カテゴリに即座に分類できます。 |
小売業向け Vertex AI Search | MLを使用してeコマースサイトで買い物客が最適な商品を選択して注文できるよう支援するソリューション。 | 商品レコメンド、売上向上に貢献します。過去のデータに基づいてサイト上の各ページでの最適な商品の並び順を学習し、表示する商品と表示方法を正確性、関連性、購入される確率という点で最適化します。 |
事前トレーニング済み API | Googleが構築してトレーニングしたMLモデルをAPI経由で利用できるサービス群。 | 独自のトレーニングデータや専門知識が不要で、迅速かつ少ない労力で実装できます。カスタマイズ性は低いですが、Virtual Private Cloud、オンプレミス、Googleのパブリッククラウドにデプロイ可能です。 |