はじめに
今回は、MarkLogic社配布の並列分散ロードAPIContentPumpを使って、データロードと同時にちょっとしたデータ加工もできることを紹介します。
なお、ContentPumpについてある程度理解している前提でお話を進めますので、ご存知の無い方は公式ページなどを一読してからお願いします。
背景
ContentPumpは、MarkLogic Serverに対してXML / JSON / CSV / TSVなどのインポートやXML/JSONのエクスポート行うことができます。しかしXMLデータはAs-Isで取り込むと、いくつかの問題が起きます。
・日付型が不揃いだったり、数値型にカンマが入っていると、クエリ実行時に変換作業を噛ませなければいけなくなる。
・同じ意味なのに別々の要素名となっているとrange索引をそれぞれで設定しなければいけなくなる。
・インポートするドキュメント内に任意の付加情報を記述できない。
もちろん一旦MarkLogic Serverに取り込んで、これらをバッチ処理などで綺麗にするのも手ですが、その場合は以下の問題が起きます。
・一旦索引付けしたデータを再度加工して挿入する処理時間
・バッチ処理によって新たに挿入する分、DBサイズが肥大化する。
そこで今回はContentPumpによる挿入時点で加工を行うサンプルを示します。
加工内容
変換項目すべてをカバーするクエリを書くのは大変なので、今回はContentPumpを使ったCSV→MLDBという流れを前提に以下の項目のみを確かめることにしましょう。
対象項目 | 加工内容 |
---|---|
日付型の変換 | 日付をyyyyMMddからyyyy-MM-ddに変換する |
数値型の変換 | 正整数内のカンマを削除する |
要素名の変換 | 要素名を別のモノに変更する |
CSVファイル情報の付加 | CSVファイル名や行数を付加する |
外部変数の設定 | その他任意の情報を付加する |
実機検証環境・検証条件
☆検証環境
Content Pumpのバージョン | MarkLogicのバージョン | OS | CPU | メモリ |
---|---|---|---|---|
8.04 | 8.0-3.3 | Windows7 Professional |
Intel(R)Core(TM)i7-3740QM CPU2.70GHz 2.70GHz (4core8スレッド) |
16GB |
☆サンプルデータ
挿入データは以下のCSVです。必ず1行目に要素名があること、要素名がXML文法として許されること、要素列数と各行の列数(この場合は3)があっていることを確認しておきましょう。CSVファイルをC:\work\transformに置きます。
if001.csvの内容:
"SHOP_ID","SAMPLE_DATE","SALE_SUM"
"SHOP001","20170101","11,111"
"SHOP001","20170202","22,222"
"SHOP001","20170303","333"
"SHOP001","20170404","4,444,444"
"SHOP001","20170505","5,555,555"
"SHOP002","20170606","34,567"
"SHOP002","20170707","22,111"
"SHOP002","20170808","88,999"
"SHOP002","20170909","31,234"
"SHOP002","20171010","45,678"
このまま挿入するとこんな感じです。
<?xml version="1.0" encoding="UTF-8"?>
<root>
<SHOP_ID>SHOP002</SHOP_ID>
<SAMPLE_DATE>20171010</SAMPLE_DATE>
<SALE_SUM>45,678</SALE_SUM>
</root>
これに対して目指すべき挿入後データはこんな感じです。
<?xml version="1.0" encoding="UTF-8"?>
<ENVELOPE>
<METADATA>
<CSV_FILE_NAME>if0001.csv</CSV_FILE_NAME>
<SRC_LINE_NUM>10</SRC_LINE_NUM>
<INTERFACE_ID>IF0001</INTERFACE_ID>
</METADATA>
<CONTENT>
<SHOP_ID>SHOP002</SHOP_ID>
<SALE_DATE>2017-10-10</SALE_DATE>
<SALE_SUM>45678</SALE_SUM>
</CONTENT>
</ENVELOPE>
☆ContentPumpの実行バッチファイルのサンプル
コマンドプロンプトでmlcp.batがあるディレクトリに移動して、以下のコマンドを実行します。
mlcp.bat import -host localhost -input_file_path C:\work\transform -host localhost ^
-port 8062 -username admin -password admin ^
-output_uri_replace "/C:/work/transform, '/transformed'" ^
-transform_module /transform/transform_if0001.xqy ^
-transform_namespace "http://marklogic.com/example" ^
-transform_param "IF0001" -input_file_type delimited_text -delimiter "," ^
-generate_uri true -thread_count 16
今回、紹介する機能に関連するパラメータは以下の通りです。
パラメータ | 説明 |
---|---|
transform_module | 変換内容を記述したXQueryのURI |
transform_namespace | XQueryの名前空間 |
transform_param | 外部変数設定。XQuery内ではmap:map型変数$contextに"transform_param"をキーとして格納されます。 |
☆変換クエリ
/transform/transform_if0001.xqyの中身を示します。CSVファイルに関する情報は挿入URI名に含まれるため文字列関数から取り出すことにしました。その他は、要素名をみてそれぞれのデータに変換を適用しています。
xquery version "1.0-ml";
(: モジュール名前空間 :)
module namespace example = "http://marklogic.com/example";
(: 変換関数 :)
declare function example:transform(
$content as map:map, (: 変換対象のドキュメント内容・URI :)
$context as map:map (: transform_paramで指定した外部パラメータ :)
) as map:map* {
(: 現在の挿入内容の取得 :)
let $the-doc := map:get($content, "value") (: 現在設定の挿入ドキュメント内容 :)
let $the-uri := map:get($content, "uri") (: 現在設定の挿入ドキュメントURI :)
(: 外部変数の取得 :)
let $ifId := map:get($context, "transform_param")
(: URIよりCSVファイルに関する情報(ファイル名と行数)を取り出す。 :)
let $temp-value := fn:tokenize($the-uri, "/")[fn:last()]
let $fileName-seq := fn:tokenize($temp-value, "-")
let $sourceFileName := $fileName-seq[fn:last() - 2]
let $sourceFileLine := $fileName-seq[fn:last()]
(: DBアクセスできるかの確認(ここは不要ですが、後述します) :)
let $a := fn:doc("/rule/if0001_cp.xml")
let $_ := xdmp:log(fn:concat("Let's Get ", $a/ROOT/SAMPLE/text()))
(: 戻り値の設定 :)
return
if (fn:empty($the-doc/element())) then ($content)
else (
(: 要素の中身を変換 :)
let $changedData-seq :=
for $ele in $the-doc/root/*
let $name := fn:name($ele)
let $data := $ele/text()
return
if($name = "SHOP_ID") then $ele
else if($name = "SAMPLE_DATE") then (
let $new_name := "SALE_DATE"
let $new_data := fn:concat(
fn:substring($data, 1, 4), "-",
fn:substring($data, 5, 2), "-",
fn:substring($data, 7, 2)
)
return element{$new_name}{$new_data}
)
else if($name = "SALE_SUM") then (
let $new_data := fn:replace($data, ",", "")
return element{$name}{$new_data}
)
else ()
(: 挿入内容の作成 :)
let $updated-content :=
element {"ENVELOPE"}{
element {"METADATA"} {
element {"CSV_FILE_NAME"}{$sourceFileName},
element {"SRC_LINE_NUM"}{$sourceFileLine},
element {"INTERFACE_ID"}{$ifId}
},
element {"CONTENT"}{$changedData-seq}
}
return (
map:put($content, "value", document {$updated-content}), $content
)
)
};
試験実施
では、実際にインポートしてみましょう。ContentPumpを実行して標準出力の中のINPUT_RECORDS、OUTPUT_RECORDS、OUTPUT_RECORDS_COMMITTEDが全て10、OUTPUT_RECORDS_FAILEDが0となっていることを確認します。
挿入後のファイルの確認はクエリコンソールで行いました。
スクロールして10ファイル一通り確認しましたが問題なさそうです。
[補足]変換ルールをMarkLogic内に置くことは可能か?
今回の検証を行うにあたり変換内容をXQueryに直書きしましたが、変換ルールをMarkLogic内の別ファイルに置くことはできないかと考えました。XQuery中の以下の記述は/rule/if0001_cp.xmlのSAMPLE要素の内容"rule"を取り出してErrorLog.txt
に出力するものです。
※ver9以降では、ErrorLog.txt
ではなく[APPサーバのポート番号]_ErrorLog.txt
となります。
(: DBアクセスできるかの確認(ここは不要ですが、後述します) :)
let $a := fn:doc("/rule/if0001_cp.xml")
let $_ := xdmp:log(fn:concat("Let's Get ", $a/ROOT/SAMPLE/text()))
ErrorLog.txtには実際に"rule"というテキストを取り出すことができました。
2018-02-13 16:09:51.268 Info: corbTest_XDBC: Let's Get rule
2018-02-13 16:09:51.268 Info: corbTest_XDBC: Let's Get rule
・・・
2018-02-13 16:09:51.330 Info: corbTest_XDBC: Let's Get rule
このことから、変換ルールファイルを作成して変換XQueryで参照させることは可能です。しかし個人的にはお勧めできません。というのも挿入するXMLファイルごとにfn:docのような参照関数を実行することになるからです。このため変換ルールをMarkLogicに格納するのならば、変換ルールへの参照はContentPump実行前に行い、その結果を外部変数としてContentPumpのパラメータtransform_paramで渡すことをお勧めします。
考察
ContentPumpは単にデータのインポートを行うだけでなく、XQueryの範囲で任意のデータ加工が行えることが分かりました。他にも以下のようなことに使えそうです。
・空の要素は、要素を設定しない。
・同一ファイル内での導出計算
他方で、こういった煩わしい加工を担ってくれる一般のデータ変換ツールを手放せるかというとそうではありません。例えば、
・ロードデータの文字コードや改行コードの変換や制御文字の排除
・XMLが整形式になっていない、CSVの項目数があっていない、CSVに項目行がない、場合などの補正
・CSV要素名がXML文法に違反している etc
と、いったことはContentPumpだけではどうしようもないようです。
一方で、XQuery内でDBに参照クエリを実行できることから、DB内に既に存在するデータとの結合検索が効率よくできそうな点は大きな特徴といえます。
おわりに
今回はContentPumpのインポート時における付加機能を説明したに過ぎません。今後は変換ルール設計案の考案やこの方法で出来ること出来ないことの整理、性能の劣化度合いの測定などを行っていこうと思います。
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