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無限多重根号を作っていったら一般化できた

Last updated at Posted at 2023-08-09

はじめに

高校生の頃、数学の教科書のコラム記事でラマヌジャンという数学者を知りました。彼が生み出した奇術のような不思議な公式の数々は、その名を検索すれば浴びるようにご覧になることができますが、僕は特にリンク先の記事で見かけた次の式に心が惹かれました。

\sqrt{1+2\sqrt{1+3\sqrt{1+4\sqrt{1+5\sqrt{\cdots}}}}}=3

藤原正彦, "Ramanujanの数学", 数学, Vol. 57, No. 4, pp. 407-422, 2005

この多重根号の式を計算して「3」という結果を導くことは骨が折れそうですが、逆はなんとか導出できそうです。(おそらく帰納法で示すことができるのだと思いますが、ひとまずその手間は省きます。)

\begin{align}
3 &= \sqrt{9} = \sqrt{1 + 8} = \sqrt{1 + 2 \times 4} \\
&= \sqrt{1 + 2 \sqrt{16}} = \sqrt{1 + 2 \sqrt{1 + 15}} = \sqrt{1 + 2 \sqrt{1 + 3 \times 5}} \\
&= \sqrt{1 + 2 \sqrt{1 + 3 \sqrt{25}}} = \sqrt{1 + 2 \sqrt{1 + 3 \sqrt{1 + 24}}} = \sqrt{1 + 2 \sqrt{1 + 3 \sqrt{1 + 4 \times 6}}} \\
&= \cdots \\
&= \sqrt{1 + 2 \sqrt{1 + 3 \sqrt{1 + 4 \sqrt{1 + 5 \sqrt{\cdots}}}}}
\end{align}

なんと綺麗な等式だろうかと感銘を受けました。僕もやりたいと思いました。
この記事は、「3」以外の自然数を前記の式のように無限多重根号で表してみた結果を纏めたものです。

やったこと

目標

1 ~ 5 の自然数を対象に、無限多重根号の形で表現することを目標としました。
恣意的もいいところですが、以下のどちらかをクリアできれば見た目として綺麗に纏まりそうだと思ったので、いずれかの形になるように値を操作しました。

(A) 「1」以上の自然数が順に登場する (まさに前記の $ 3=\cdots $ のような形)
(B) 特定の種類の自然数しか登場しない

手順

手順もへったくれもないですが、以下のような操作を行いました。

(1) 自然数 $n$ を2乗して平方根の中に入れる $$ n = \sqrt{n^2} $$
(2) 平方根の中を、勘と気合と少しの先読み力で変形していく $$ n = \sqrt{n^2} = \sqrt{\square + \triangle} = \cdots $$

結果

「1」の変形

$n=1$ のとき、以下のように変形できました。

\begin{align}
1 &= \sqrt{1} = \sqrt{2 - 1} \\
&= \sqrt{2 - \sqrt{1}} = \sqrt{2 - \sqrt{2 - 1}} \\
&= \sqrt{2 - \sqrt{2 - \sqrt{1}}} = \sqrt{2 - \sqrt{2 - \sqrt{2 - 1}}} \\
&= \cdots \\
&= \sqrt{2 - \sqrt{2 - \sqrt{2 - \sqrt{\cdots}}}}
\end{align}

ラマヌジャンの「$3=\cdots$」の式と違って1種類の自然数だけで構成される結果になりました。それはそれで綺麗だと思いました。
よく見ると、式変形の過程で $ \sqrt{1} = \sqrt{2 - \sqrt{1}} $ となる箇所が現れています。つまり、 $ \sqrt{2 - \sqrt{1}} $ の根号中の「$ \sqrt{1} $」部分に自身を代入することで、根号の中に根号を増やし続けることができる構造になっていました。

「2」の変形

$n=2$ のとき、以下のように変形できました。

\begin{align}
2 &= \sqrt{4} = \sqrt{2 + 2} \\
&= \sqrt{2 + \sqrt{4}} = \sqrt{2 + \sqrt{2 + 2}} \\
&= \sqrt{2 + \sqrt{2 + \sqrt{4}}} = \sqrt{2 + \sqrt{2 + \sqrt{2 + 2}}} \\
&= \cdots \\
&= \sqrt{2 + \sqrt{2 + \sqrt{2 + \sqrt{\cdots}}}}
\end{align}

「2」は「2」だけで自己完結する形になりました。とても綺麗です。
このケースでも $ \sqrt{4} = \sqrt{2 + \sqrt{4}} $ と、入れ子の構造になっていて根号を無限に生成できるようになっていました。

「3」の変形

僕がやった結果ではないですが、ご参考として再掲します。

3 = \sqrt{1 + 2 \sqrt{1 + 3 \sqrt{1 + 4 \sqrt{1 + 5 \sqrt{\cdots}}}}}

「4」の変形

$n=4$ のとき、以下のように変形できました。

\begin{align}
4 &= \sqrt{16} = \sqrt{4 + 12} + \sqrt{4 + 3 \times 4} \\
&= \sqrt{4 + 3 \sqrt{16}} = \sqrt{4 + 3 \sqrt{4 + 12}} = \sqrt{4 + 3 \sqrt{4 + 3 \times 4}} \\
&= \sqrt{4 + 3 \sqrt{4 + 3 \sqrt{16}}} = \sqrt{4 + 3 \sqrt{4 + 3 \sqrt{4 + 12}}} = \sqrt{4 + 3 \sqrt{4 + 3 \sqrt{4 + 3 \times 4}}} \\
&= \cdots \\
&= \sqrt{4 + 3 \sqrt{4 + 3 \sqrt{4 + 3 \sqrt{\cdots}}}}
\end{align}

苦戦しましたがどうにか纏まりました。主観では案外綺麗な形に収まったと思うのでよしとします。
入れ子構造を見つける戦いの様相を呈してきました。この場合では $ \sqrt{16} = \sqrt{4 + 3 \sqrt{16}} $ がお目当てのものでした。

「5」の変形

$n=5$ のとき、以下のように変形できました。

\begin{align}
5 &= \sqrt{25} = \sqrt{5 + 20} + \sqrt{5 + 4 \times 5} \\
&= \sqrt{5 + 4 \sqrt{25}} = \sqrt{5 + 4 \sqrt{5 + 20}} = \sqrt{5 + 4 \sqrt{5 + 4 \times 5}} \\
&= \sqrt{5 + 4 \sqrt{5 + 4 \sqrt{25}}} = \sqrt{5 + 4 \sqrt{5 + 4 \sqrt{5 + 20}}} = \sqrt{5 + 4 \sqrt{5 + 4 \sqrt{5 + 4 \times 5}}} \\
&= \cdots \\
&= \sqrt{5 + 4 \sqrt{5 + 4 \sqrt{5 + 4 \sqrt{\cdots}}}}
\end{align}

$n=4$ のときと同様の構造に落ち着きました。
どうやら一般化できそうです。

考察

一般化

$2$ 以上の自然数 $n$ について一般化できました。

\begin{align}
n &= \sqrt{n^2} = \sqrt{n + (n - 1)n} \\
&= \sqrt{n + (n - 1) \sqrt{n^2}} = \sqrt{n + (n - 1) \sqrt{n + (n - 1)n}} \\
&= \sqrt{n + (n - 1) \sqrt{n + (n - 1) \sqrt{n^2}}} = \sqrt{n + (n - 1) \sqrt{n + (n - 1) \sqrt{n + (n - 1)n}}} \\
&= \cdots \\
&= \sqrt{n + (n - 1) \sqrt{n + (n - 1) \sqrt{n + (n - 1) \sqrt{\cdots}}}}
\end{align}

$\sqrt{n^2} = \sqrt{n + (n - 1) \sqrt{n^2}}$ で入れ子になっていることが分かります。

「2」「3」の場合の確認

$n=2$ で計算した無限多重根号の形で、実はこの一般形が成立していました。

\begin{align}
2 &= \sqrt{2 + \sqrt{2 + \sqrt{2 + \sqrt{\cdots}}}} \\
&= \sqrt{2 + 1 \cdot \sqrt{2 + 1 \cdot \sqrt{2 + 1 \cdot \sqrt{\cdots}}}}
\end{align}

$n=3$ のときでも一般形が成立しました。

\begin{align}
3 &= \sqrt{9} = \sqrt{3 + 6} = \sqrt{3 + 2 \times 3} \\
&= \sqrt{3 + 2 \sqrt{9}} = \sqrt{3 + 2 \sqrt{3 + 6}} = \sqrt{3 + 2 \sqrt{3 + 2 \times 3}} \\
&= \cdots \\
&= \sqrt{3 + 2 \sqrt{3 + 2 \sqrt{\cdots}}}
\end{align}

$\sqrt{9} = \sqrt{3 + 2 \sqrt{9}}$ の部分で入れ子です。

「3」の無限多重根号の特異さ

$n=1, 3$ の結果は、一般形に該当しない特殊ケースの結果になっていました。
$n=1$ の場合は、一般形が成立する条件 ($n \geq 2$) から外れるため必然的な結果でした。
$n=3$ の場合は、一般形が成立する条件を満たしています。にもかかわらずラマヌジャンは特殊な形の多重根号を導出しました。絶対 $\sqrt{n^2} = \sqrt{n + (n - 1) \sqrt{n^2}}$ の入れ子構造を見つける方が遥かに簡単だと思うのですが、何があってあんな形に行き着くことができたのでしょうか。

おわりに

まとめ

自然数 $n=1, 2, 4, 5$ について、それぞれ無限多重根号の形で表現してみました。結果として、以下のことが分かりました。

  • 2以上の自然数について一般化できる。
  • 1を無限多重根号で表した形は実は一般形に該当しない特殊形だった。
  • ラマヌジャンが導出した3の無限多重根号の形は特異なものだった。

今後の取組み(気が向けば)

$n=2, 4, 5$ について、導出した一般形に当てはまらない特殊な形で表現可能か検討してみたいと思います。

追加検討1: 別の形式による一般化(2023/08/17)

別の一般形がありそうな予感

整数を無限多重根号で表した一般形を見つけて、ラマヌジャンが導出した $n=3$ の時の形が特殊ケースだったと結論付けました。
確かにラマヌジャンが導出した式は、上記の一般形から見ればその形に収まらない特殊ケースでしたが、$n=3$ の時は同時に上記の一般形も成立しました。(一般形と言っているので、成立してくれないとえらいことですが。)
逆は成り立たないでしょうか。つまり、$n=3$ のラマヌジャンが導出した式が実はある一般形の1ケースで、上記の $n=2, 4, 5$ の時の変形が特殊ケースになるようなことはないでしょうか。
試しに、$\sqrt{1 + \square}$ の形を意識して整数 $n$ を変形してみます。

\begin{align}
n &= \sqrt{n^2} = \sqrt{1 + (n^2 - 1)} = \sqrt{1 + (n - 1)(n + 1)} \\
&= \sqrt{1 + (n - 1) \sqrt{(n + 1)^2}} = \sqrt{1 + (n-1) \sqrt{n^2 + 2n + 1}} = \sqrt{1 + (n-1) \sqrt{1 + n(n+2)}} \\
&= \sqrt{1 + (n-1)\sqrt{1 + n\sqrt{(n+2)^2}}} = \sqrt{1 + (n-1)\sqrt{1 + n\sqrt{n^2+4n+4}}} = \sqrt{1 + (n-1)\sqrt{1 + n\sqrt{1 + (n+1)(n+3)}}} \\
&= \sqrt{1 + (n-1)\sqrt{1 + n\sqrt{1 + (n+1)\sqrt{(n+3)^2}}}} = \sqrt{1 + (n-1)\sqrt{1 + n\sqrt{1 + (n+1)\sqrt{n^2+6n+9}}}} = \sqrt{1 + (n-1)\sqrt{1 + n\sqrt{1 + (n+1)\sqrt{1 + (n+2)(n+4)}}}}
\end{align}

上の方で導出した式のように、わかりやすく入れ子の構造になっているということではないですが、ここまで求めたところからさらに根号を増やしていけそうです。

仮説

$n \geq 2, k = -1, 0, 1, 2, \cdots$ について、以下の式が成立しそうです。

n = \sqrt{1 + (n - 1) \sqrt{1 + n \sqrt{\cdots \sqrt{1 + (n + k) \sqrt{1 + (n + k + 1)(n + k + 3)}}}}}

上式が成立していれば、$k \rightarrow \infty$ とするイメージで、以下の新たな一般形を導出できます。

n = \sqrt{1+(n-1) \sqrt{1+n \sqrt{1+(n+1) \sqrt{1+(n+2) \sqrt{\cdots}}}}}

証明

帰納法による証明を試みます。

$k = m$ の場合に成立すると仮定します。

n = \sqrt{1 + (n - 1) \sqrt{1 + n \sqrt{\cdots \sqrt{1 + (n + m) \sqrt{1 + (n + m + 1)(n + m + 3)}}}}}

この時、$k = m + 1$ の場合、

\begin{align}
&\sqrt{1+(n-1)\sqrt{1+n\sqrt{\cdots\sqrt{1+(n+m)\sqrt{1+(n+m+1)\sqrt{1+(n+m+2)(n+m+4)}}}}}} \\
&=\sqrt{1+(n-1)\sqrt{1+n\sqrt{\cdots\sqrt{1+(n+m)\sqrt{1+(n+m+1)\sqrt{1+n^2+(2m+6)n+(m+2)(m+4)}}}}}} \\
&=\sqrt{1+(n-1)\sqrt{1+n\sqrt{\cdots\sqrt{1+(n+m)\sqrt{1+(n+m+1)\sqrt{n^2+2(m+3)n+(m^2+6m+9)}}}}}} \\
&=\sqrt{1+(n-1)\sqrt{1+n\sqrt{\cdots\sqrt{1+(n+m)\sqrt{1+(n+m+1)\sqrt{(n+m+3)^2}}}}}} \\
&=\sqrt{1+(n-1)\sqrt{1+n\sqrt{\cdots\sqrt{1+(n+m)\sqrt{1+(n+m+1)(n+m+3)}}}}} \\
&=n
\end{align}

となるので、ある $k$ の値で仮説の式が成立する場合、連続して $k+1$ の場合でも成立することが分かります。

さらに、$k=-1$ の場合、

\begin{align}
& \sqrt{1+(n-1)\sqrt{1+n(n+2)}} \\
&= \sqrt{1+(n-1)\sqrt{1+n^2+2n}} \\
&= \sqrt{1+(n-1)\sqrt{(n+1)^2}} \\
&= \sqrt{1+(n-1)(n+1)} \\
&= \sqrt{1+n^2-1} \\
&= \sqrt{n^2} \\
&= n
\end{align}

となり成立します。

以上のことから、$k=-1$ 以降のすべての整数で仮説の式が成立します。従って、当該の仮説の式から導出した新たな一般形の式も成立していることがわかります。

いくつかの具体例による確認

$n=3$ の場合、まさにラマヌジャンが導出した式が得られます。

\begin{align}
3 &= \sqrt{1+(3-1)\sqrt{1+3\sqrt{1+(3+1)\sqrt{1+(3+2)\sqrt{\cdots}}}}} \\
&= \sqrt{1+2\sqrt{1+3\sqrt{1+4\sqrt{1+5\sqrt{\cdots}}}}}
\end{align}

試しに、$n=2$ の場合の結果も見てみます。

\begin{align}
2 &= \sqrt{1+(2-1)\sqrt{1+2\sqrt{1+(2+1)\sqrt{1+(2+2)\sqrt{\cdots}}}}} \\
&= \sqrt{1+1\sqrt{1+2\sqrt{1+3\sqrt{1+4\sqrt{\cdots}}}}}
\end{align}

念のため、本当か簡単に確認してみます。

\begin{align}
2 &= \sqrt{4} = \sqrt{1 + 1 \times 3} \\
&= \sqrt{1+1\sqrt{9}} = \sqrt{1+1\sqrt{1+2 \times 4}} \\
&= \sqrt{1+1\sqrt{1+2\sqrt{16}}} = \sqrt{1+1\sqrt{1+2\sqrt{1+3 \times 5}}} \\
&= \sqrt{1+1\sqrt{1+2\sqrt{1+3\sqrt{25}}}} = \sqrt{1+1\sqrt{1+2\sqrt{1+3\sqrt{1+4 \times 6}}}} \\
&= \cdots \\
&= \sqrt{1+1\sqrt{1+2\sqrt{1+3\sqrt{1+4\sqrt{\cdots}}}}}
\end{align}

という形でおそらく成立していそうです。

追加検討1のまとめ

2以上の自然数について、別の形式による一般形を次のように導出しました。

n = \sqrt{1+(n-1) \sqrt{1+n \sqrt{1+(n+1) \sqrt{1+(n+2) \sqrt{\cdots}}}}}

また、ラマヌジャンが導出した $n=3$ の場合の式は、上式の一般形の1ケースであることが分かりました。

【感想】
1ケースであるとはいえ、$n=3$ は個人的にはこの追加検討で導出した一般形が見た目として一番映えるケースの1つだったと思います。
($n=2, 3$ の場合が見た目として一番綺麗になる気がしています。$\sqrt{1+\square}$ の $\square$ に1か2が最初に入ると無限多重根号の式が綺麗な階段状になる感じがするので。)

追加検討2: 「1」の一般化(2023/08/19)

ここまでの検討でカバーできていない部分

以上の検討の内容で、$n \geq 2$ について以下の一般形を求めました。

\begin{align}
n &= \sqrt{n + (n - 1) \sqrt{n + (n - 1) \sqrt{n + (n - 1) \sqrt{\cdots}}}} \\
n &= \sqrt{1+(n-1) \sqrt{1+n \sqrt{1+(n+1) \sqrt{1+(n+2) \sqrt{\cdots}}}}}
\end{align}

一方で、$n=1$ については次の1パターンしか見つけられていません。

1 = \sqrt{2 - \sqrt{2 - \sqrt{2 - \sqrt{\cdots}}}}

これでは寂しいような気がするので、次は $n=1$ の場合の一般形を模索してみたいと思います。

いくつかの具体例の計算

追加検討1のように急に抽象的な形で式展開をするのが難しかったので、まずはいくつか具体的な値を使って、$n=1$ の計算をしてみます。

\begin{align}
1 &= \sqrt{3-2}=\sqrt{3-\sqrt{4}}=\sqrt{3-\sqrt{6-2}}=\sqrt{3-\sqrt{6-\sqrt{4}}}=\cdots \\
1 &= \sqrt{4-3}=\sqrt{4-\sqrt{9}}=\sqrt{4-\sqrt{12-3}}=\sqrt{4-\sqrt{12-\sqrt{9}}}=\cdots \\
1 &= \sqrt{5-4}=\sqrt{5-\sqrt{16}}=\sqrt{5-\sqrt{20-4}}=\sqrt{5-\sqrt{20-\sqrt{16}}}=\cdots
\end{align}

以上のように計算してみると、パターンが見えてきました。つまり、最初の根号で引き算をしている2つの値の積を登場させると、うまく根号を量産していけそうな気配がします。
(例えば1番上の式の場合、最初の根号で引き算をしている3と2の積である6を登場させると、その後スムーズに式展開していけそうです。)

「1」の変形の一般化

以上の具体例を参考に、実数 $r$ を用いて $n=1$ の一般形の導出を試みます。

\begin{align}
1 = \sqrt{1} &= \sqrt{r - (r-1)} \\
&= \sqrt{r - \sqrt{(r-1)^2}} = \sqrt{r - \sqrt{r^2-2r+1}} = \sqrt{r - \sqrt{(r^2-r) - (r-1)}} \\
&= \sqrt{r - \sqrt{r(r-1) - (r-1)}}
\end{align}

ここで、1行目と3行目にて、最外部の根号の中で次の入れ子の構造が成立しているのが見て取れます。

(r-1) = \sqrt{r(r-1) - (r-1)}

従って、右辺の根号中の2項目の $(r-1)$ に右辺の値自体を代入することで、再帰的に根号を増やしていくことができます。よって、$n=1$ の場合の一般形の1つとして次の式が得られます。

1 = \sqrt{r-\sqrt{r(r-1)-\sqrt{r(r-1)-\sqrt{r(r-1)-\sqrt{\cdots}}}}}

改めて具体例による確認

$r=2$ とした場合、最初に計算した $n=1$ の無限多重根号の形に等しくなります。つまり、最初に導出したものは上記の一般形の1ケースだったようです。

\begin{align}
1 &= \sqrt{2-\sqrt{2(2-1)-\sqrt{2(2-1)-\sqrt{2(2-1)-\sqrt{\cdots}}}}} \\
&= \sqrt{2-\sqrt{2\cdot 1-\sqrt{2\cdot 1-\sqrt{2\cdot 1-\sqrt{\cdots}}}}} \\
&=\sqrt{2-\sqrt{2-\sqrt{2-\sqrt{2-\sqrt{\cdots}}}}}
\end{align}

追加検討2のまとめ

$n=1$ を無限多重根号を用いて表す一般形の1つとして、実数 $r$ を用いた次の式を導出しました。

1 = \sqrt{r-\sqrt{r(r-1)-\sqrt{r(r-1)-\sqrt{r(r-1)-\sqrt{\cdots}}}}}

最初に導出した $n=1$ の無限多重根号の式は、以上の一般形に属すことが分かりました。
なお、安全策を取ったつもりで $r$ を実数としましたが、実はもっと狭い範囲でしか成立しないとか、あるいは逆に複素数でも行けるとか、厳密には考えられていません。そこまでの元気と能力がありませんでした。

おまけ

この追加検討2が難航と迷走を極め、途中で以下のものができました。(twitterで見たことがある気がします。)

\begin{align}
1 &= \frac{1}{1} = \frac{1}{2-1} \\
&= \frac{1}{2-\frac{1}{1}} = \frac{1}{2-\frac{1}{2-1}} \\
&= \frac{1}{2-\frac{1}{2-\frac{1}{1}}} = \frac{1}{2-\frac{1}{2-\frac{1}{2-1}}} \\
&= \cdots \\
&= \frac{1}{2-\frac{1}{2-\frac{1}{2-\cdots}}}
\end{align}

$1=\frac{1}{2-1}$ なので、右辺の右下の「1」に右辺自身を代入することで成り立つようです。
こんな風に分数の中に分数が無限に現れるのも面白いと思いました。

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