〜Part1の続き〜
条文の解釈によると、フリーランス(請負契約)は「労働者」となることができないとされます。
しかし、労働法が制定されたのは
使用者の指揮命令に服し、拘束性の高い労働者を保護する
という目的があるからです。
そのことを考えると、請負契約であってもその実態として使用される者は当然存在するわけで、
そのような人を保護するのが労働法である以上、請負契約であるかどうか関係なしに
労基法上の「労働者」に該当するとして保護を与える
というロジックが成り立つわけです。
#労働者性の判断基準
では、どのようにして労働者性(=使用される者であるか)を判断するのかでしょうか。
実際に労働者性が争われた事件として、関西医科大学研修医事件があります。
この事件は、研修医Xさんが、医師と同等の仕事をこなしていたのに月6万円で働かされ、過労死したことに対し、遺族が、Xは労基法上の「労働者」に該当するとして、最低賃金の額までの未払い分の支給を求めて訴えを提起した事件で、Xさんが労働者であるか否かが争われた事案です。
これについて最高裁は、労基法上の「労働者」に該当するか否かの主要な判断基準として5点あげました。
それが
①仕事の依頼、業務従事の指示等に対する諾否の自由の有無
②業務の内容及び遂行方法に対する指揮命令の有無
③勤務場所及び勤務時間に関する拘束性の有無
④代替性の有無
⑤時間給、欠勤の控除あるいは残業手当の付与等、報酬の性格が使用者のし指揮命令下に一定時
間労務を提供していることに対する対価と判断されるか否か
の5点です。
それぞれについて軽く説明すると
①について
・諾否の自由あり…交渉力が高い→労働者性が後退
・諾否の自由なし…交渉力が弱い→労働者性肯定
②について
・指揮命令なし…自由裁量がある→労働者性後退
・指揮命令あり…自由裁量がなく従属性が高い→労働者性肯定
③について
・拘束性なし…自由裁量がある→労働者性後退
・拘束性あり…自由裁量がなく従属性が高い→労働者性肯定
④について
・代替性あり…その者の労務提供に対してでなく、その者の出す結果を重視
→結果が出ればだれでもよい→労働者性後退
・代替性なし…その者の労務提供に期待しており、他者では不可能→労働者性肯定
⑤について
・対価性なし…報酬は成果に対して払われており、時間拘束の対価ではない→労働者性後退
・対価性あり…報酬は成果でなく、時間拘束の対価として払われている→労働者性肯定
このような観点で判断されます。
また現在ではこれに加えて
・機械、器具は使用者が提供しているか
・報酬の額は高いか
・使用者に対する専属性はどの程度か
・福利厚生や退職金の有無
の4つの補助的判断基準があるとされています。
したがって、労基法上の「労働者」に該当するかどうかは
主要な判断基準5つ、補助的判断基準の4つを、総合考慮して決められるということになります。
「総合考慮」という言葉からわかるように、すべての判断基準が同一の結果になる必要はなく、
”一つ目と二つ目はの判断基準は労働者性後退だけど、それ以外は労働者性肯定だから、俺は労働者だ!”
というように結論づけることができます。
#まとめ
以上のように、「労働者」であるかどうかについては、契約類型ではなく、以上の判断基準をもとに判断されます。
たとえフリーランスであるとしても、この基準をもとに「労働者」に該当する可能性があるということになります。
フリーランスエンジニアの方は、今一度確認されてみてはいかがでしょうか!
最後まで見ていただきありがとうございます。