はじめに
現在大学院生の私には、高校生の時とっても好きだったある動画がありました。その動画とはポケットモンスターコイキング~金鯱の逆鱗~というシリーズのゲーム実況動画です(笑)。あまりにも面白くて、何度繰り返し見たか忘れてしまうほど見た記憶があります。私の青春と言っても過言ではありません。
ところでこのシリーズは金色(色違い)のコイキング一匹のみという縛りで、ポケットモンスタールビーをクリアしようというテーマで作られた作品です。そのため、まずはじめにこの金色のコイキングを釣るところから話がスタートするのですが... 。その回数なんと39416回。1 自分でやっていたら間違いなく第一話を投稿することなく投げ出していたに違いありません。その当時の自分は「すごい回数だな、よくやるな」ぐらいにしか思っていませんでした。
しかし大学院生になって確率統計を勉強するようになって、ふとこのシリーズを思い出してしまったのです。そして、「39416回も粘らないといけないのって一体どれくらいの確率で起きる出来事だったんだろう?」という問を考えたくなってしまいました。今回はそんなテーマを扱うことで、確率統計に少しでも興味を持ってもらえる人がいればと思ってこの記事を作ってみました。是非興味を持っていただければ嬉しいです!
数学的なモデリング
ではさっそく数学に落とし込んでいきましょう。まず色違いのコイキングが釣れる確率を $p$ とおいてみます。すると、色違いでない、つまり普通のコイキングが釣れる確率は $1-p$ ということになりますね。また、コイキングを釣る回数を $n$ 回と表現してみましょう。
さてここで、表現したい確率を明確に言語化しておきましょう。ここで表現したいのは「$n$回目までに色違いのコイキングが釣れる確率」です。つまり、
\mbox{1回目で色違いを釣る確率} + \mbox{2回目で色違いを釣る確率} + \cdots +\mbox{$n$回目で色違いを釣る確率}
によって計算することができます。もちろんこのやり方でも計算できますし、文系の高校数学の範囲の知識で解くことができます。しかし、ここではもう少しスマートに考えてみましょう。「$n$ 回目までに色違いのコイキングを釣る」の否定(余事象)は「$n$ 回目までに色違いのコイキングを一度も釣れない」です。つまり
1から「$n$ 回目までに色違いのコイキングを一度も釣れない確率」を引けば「$n$回目までに色違いのコイキングを釣る確率が求まる」
ということになりますね。したがってこれを計算してみましょう。まず、$n$ 回目までに一度も色違いのコイキングが釣れない確率は
\underbrace{(1-p)\times(1-p)\times\cdots(1-p)}_{n個} = (1-p)^n
よってこれを1から引けば、「$n$回目までに色違いのコイキングを釣る確率」を求めることができます。
1 - (1-p)^n
さて、ここで色違いのコイキングが釣れる確率は、ポケモンルビーでは $1/8192$ だったそう2です。したがって $p=1/8192$ ということになります。よって、$n$ 回目までに色違いのコイキングが釣れる確率は
1 - \biggl(1 - \frac{1}{8192}\biggr)^n
となりますね。この $n$ 回目までに色違いのコイキングが釣れる確率を図にしてみるとこんな感じになります。
当然ですが釣る回数が増えれば増えるほど金のコイキングは釣りやすくなるわけですし、だんだんとその確率は1に近づいていきます。
結果
さて話をもとに戻せば、例の動画シリーズでは39416回の釣りという激闘の末、ようやく金のコイキングを釣っていましたね。ということは、39415回までは釣れていなかったわけです。では39415回目までに釣れる確率はどうなるかといえば、 $n=39415$ を代入してみれば良いわけですね。そうすると...
なんと、99.2%の確率で39415回目までに釣れているはずだったのです!悲しいことに、0.8%もの強運(むしろ弱運)を引き当ててしまっていたのでした...。
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厳密には釣った回数が 38996 回で孵化した回数が420回です。 ↩