以下では簡単のため $3 \times 3$行列のみに限って記述する. $2 \times 2$やそれ以上の行列に関しても基本的に同じである.
対角化
行列 $A$ を対角化することを考える. $A$ の重複のない固有値を $\lambda_1, \lambda_2, \lambda_3$とする. それぞれの固有ベクトルを $x_1, x_2, x_3$ とすると, 相違なる固有値の持つ固有ベクトルは互いに線型独立であるため, $P = ( x_1\ x_2\ x_3 )$ は正則で逆行列をもつ. ここで
\begin{align*}
AP &= A( x_1\ x_2\ x_3 ) \\
&= ( Ax_1\ Ax_2\ Ax_3 ) \\
&= ( \lambda_1 x_1\ \lambda_2 x_2\ \lambda_3 x_3 ) \\
&= ( x_1\ x_2\ x_3 )\left(
\begin{array}{ccc}
\lambda_1 & 0 & 0 \\
0 & \lambda_2 & 0 \\
0 & 0 & \lambda_3
\end{array}
\right) \\
&= P\left(
\begin{array}{ccc}
\lambda_1 & 0 & 0 \\
0 & \lambda_2 & 0 \\
0 & 0 & \lambda_3
\end{array}
\right)
\end{align*}
となることがわかる. ここに左から $P^{-1}$ を掛ける. すると
\begin{align*}
P^{-1}AP &= P^{-1}P\left(
\begin{array}{ccc}
\lambda_1 & 0 & 0 \\
0 & \lambda_2 & 0 \\
0 & 0 & \lambda_3
\end{array}
\right) \\
&= \left(
\begin{array}{ccc}
\lambda_1 & 0 & 0 \\
0 & \lambda_2 & 0 \\
0 & 0 & \lambda_3
\end{array}
\right)
\end{align*}
となりこれで対角行列が得られた. 最初に固有値は重複がないこととしたが, たとえ重複があったとしても互いに線型独立な固有ベクトルが $n$ 本とれれば対角化は可能である.
ジョルダン標準形
では互いに線形独立な固有ベクトルが $n$ 本取れない場合はどうしたらよいのだろうか?
固有値を $\lambda_1, \lambda_2$ とし( $\lambda_2$ は重複度2), それぞれの固有ベクトルを $x_1, x_2$ とする. ここで $(A - \lambda_2 E)x_3 = x_2$ を満たし, $x_1, x_2$ と線型独立となるような $x_3$ をとる. すると $Ax_3 = x_2 + \lambda_2 x_3$ となる. $P = ( x_1\ x_2\ x_3 )$ とすると,
\begin{align*}
AP &= A( x_1\ x_2\ x_3 ) \\
&= ( Ax_1\ Ax_2\ Ax_3 ) \\
&= ( \lambda_1 x_1\ \lambda_2 x_2\ x_2 + \lambda_2 x_3 ) \\
&= ( x_1\ x_2\ x_3 )\left(
\begin{array}{ccc}
\lambda_1 & 0 & 0 \\
0 & \lambda_2 & 1 \\
0 & 0 & \lambda_2
\end{array}
\right) \\
&= P\left(
\begin{array}{ccc}
\lambda_1 & 0 & 0 \\
0 & \lambda_2 & 1 \\
0 & 0 & \lambda_2
\end{array}
\right)
\end{align*}
となることがわかる. 対角化のときと同様にして,
\begin{align*}
P^{-1}AP &= \left(
\begin{array}{ccc}
\lambda_1 & 0 & 0 \\
0 & \lambda_2 & 1 \\
0 & 0 & \lambda_2
\end{array}
\right)
\end{align*}
となりジョルダン標準形が得られた. 得られる固有値が1つのときも同様にしてジョルダン標準形を得ることができる.