前回システム開発におけるプロジェクトマネジメントの話を投稿させていただきました。
記事:なぜプロジェクトは炎上するのか?~それはスカウターが故障してるから~
前回書かせてもらった通り、マネジメントしている立場の人間のスカウターが壊れていると、
プロジェクトは炎上しやすくなり、その分チームメンバーにしわ寄せがいきます。
今回はそんなスカウターの真意について、自分の考えをメモしておこうと思います。
スカウターが壊れた人が上の立場にいると、適材適所の人員計画が難しくなり、
間違った人材を重要なポジションに配置してしまう事で、極端にプロジェクトの成功確率(炎上しないって意味の)が低下します。
前回の記事でも書いた通り、スカウターはあらゆる場面で非常に重要な能力なのですが、人は他人の能力を無意識に測定しています。
チームメンバー、同期、上司、社長・・・色々な人に対して感じている事があるはずです。
「あの人はUnityに精通している」「あの人はコミュ力が低い」「あの人はインフラ周りに詳しい」「あの人はDBのパフォーマンスチューニングが得意」・・・
上記のように思うのは、自身のスカウターで相手を測定しているからです。
では、他人のスキル・思考・特性を測るスカウターが、どうして壊れるのか・はたまた壊れていることに気づかないのかについて、プロジェクトマネジメントの観点から記載します。
※注意:スカウターはスキルだけでなく、思考、特性まで測るという意味で使っていますが、今回はややこしくなり過ぎない為に「スキル」の測定だけに焦点を当てます
##他人のスキルをスカウターで測定するとは
###スカウターの限界###
ドラゴンボールのスカウターは、性能の良い機器を装着すればどんな相手でも戦闘力を測ることができます!すごい
しかし現実のこの世では、スカウターを使って他人のスキルを測る時に、自分の能力以上の物事を正確に計測することはできません(特にスキル部分)
当然といえば当然ですが、これを勘違いしている人はたくさんいると感じます。
勘違いする原因は、色々あると思いますが
・そもそも自分の能力を正確に測れていない(まず自分にスカウターを向けて!)
・プライドが邪魔をしている(相手より自分の方が先輩・組織的には立場が上…etc)
・開発する能力がないのに「作るのは現場だ!おれは現場に指示してマネジメントするんだ!みんな頑張れ!」みたいな謎理論
少なくとも↑のような人は、スカウターを使いこなす事は困難かと思います。
###スカウターのモード###
話を戻しますが、スカウターには大きく分けて3つのモードがあると定義しています。
- 高精度モード :正確に相手の能力を分析可能なモード
- 誤差有モード :誤差はあるが概ね相手の能力を分析可能なモード
- 測定不能モード:雰囲気(適当)で分析するモード
単純な例として、新卒エンジニアにGitについて教えてあげる場面について考えてみましょう。
◆前提:新卒エンジニアのレベル
チーム開発したことないです!いつもmasterブランチにcommitしてます!branch?
今回は「Gitに関する知識」でまず新人の子をスカウターにかけます。
その時指針になるのは「自分のGitに関する知識」です。
◆あなたがGitマスターの場合
Gitコマンド・ワークフローを熟知している人であれば、「1. 高精度モード」で相手の能力を見極めることが可能です。
高精度モードでは相手の能力をかなり正確に見極めることができます(誤差が非常に少ない)
新人の子が「何がわかってて何がわかってないのか」が正確に絞り込むことができ、より正確なアドバイスが可能になります。
今度はGitの基本操作はできるけど、チーム内で問題(コンフリクト等)が発生した際に対処できないレベルの人が新人の子に教えたときはどうなるでしょうか?
◆あなたがGitビギナーの場合(※branch、commit、push、pullくらい分かります!conflict・・・誰か助けて!レベル)
この場合スカウターは「2. 誤差有モード」で相手の能力を測定する事になります。
このモードでは、自分が知っている部分に関しては相手の能力を正確に判定できますが、自分の実力以上の部分に関しては曖昧な測定となる為、結果的に誤差が生じます。
自分が正確に判定できる部分より曖昧な部分が大きくなっている場合、それは「3. 測定不能モード」に突入しています。
◆あなたがGit初心者の場合(※Gitって…ソースコードとか管理するためのものだよね!使い方は知らないけど…レベル)
この場合スカウターは「3. 測定不能モード」で測定する事になります。
新人の子がとても饒舌で、間違ったGit理論について、とても上手なプレゼンをしてきたとしたら、(お、この子は色々知ってそうだな素晴らしい!)と、勘違いしてしまうかもしれません。
なぜなら自分が保有していない能力を測定する場合、別要素からその能力を推測するしかないからです。
自分が保有していない能力を測定する場合、別要素からその能力を推測する
Gitを例に話しましたが、マネジメントにおいてもあらゆる場面でこの事が自然と行われています。
そして測定したい内容について自分より優秀な人材をスカウターで測定する時がマネジメント成功・失敗の分かれ道になります。
・会社組織がマネージャーを選定する時(会社がマネージャーをスカウターにかけている)
・マネージャーがチームリーダーを抜擢する時(マネージャーがチームリーダーをスカウターにかけている)
・マネージャーorリーダーがチームメンバーを選定する時(リーダーがメンバーをスカウターにかけている)
各タイミングでスカウターは正常に機能しているのでしょうか?
組織上位レイヤーが超人集団で、開発力・マネジメント力…あらゆる物を熟知したエキスパートな場合、もしかしたら全てを「1. 高精度モード」悪くても「2. 誤差有モード」で測定できているかもしれません(本当に凄い会社!!)
ただ、そうじゃない場合だって当然あります。
そしてそれ自体別に悪いことではないし、様々な会社でよくある事だと思います。
必ずしも人選する立場の人間が、そのポジションに必要な能力を保有しているとは限らない(「3. 測定不能モード」で決定せざるを得ない)のです。
「3. 測定不能モード」でマネージャーやリーダー、メンバーを選ばなくてはならない状況下でも、その測定精度を上げることは可能なのですが、それができていなかったりする事で誤った人事配置が行われる事もあるのではないでしょうか。
※今回は上記回避策は記載しません
では、最後にスカウターの真意を書いて終わりにします。
###スカウターの真意###
プロジェクトマネジメントにおいて、スカウターで能力を測定する際にとても重要なのは「いまどのモードで測定しているのか」を自分で意識する事です。
それができていないうちは、誤った測定結果によって判断を誤る可能性が高くなるでしょう(高精度モードだと信じてるけど、実は測定不能モード…etc)
「これは「3. 測定不能モード」だ・・・」と分かりさえすれば、いくらでも対策できるのです。
上記実現するには自分自身を知る事(何がわかってて何がわかってないのかに気付く事)がとても大切なのです。
私個人の話になってしまいますが、新人時代に非常に優れたエンジニア・マネージャーの方々と一緒のチームで働くことができ(今でも本当に尊敬しています)、そこで「世の中には本当に凄い人たちが沢山いる!自分も頑張らなくては!」と思い、足りない部分・できていない事を見つめる習慣がついたのは、とても良かったし有難かったと感じています。
自身の悪い部分やできていない事を直視するのは辛い事だし、それを第三者的な視点で見つめなおすのは大変な事だと思います。
人は自分のプライドや立場を守るために、上記から目を背けたり、気付いたとしてもそれを態度には出せない(できない事がバレたくない等)事がよくあり、恥ずかしながら自分自身もそういう時代がありました†
ただ、それが自身のスカウターを錆びつかせ、最悪の場合プロジェクト炎上・組織の炎上にもつながるという事を少しでも意識してもらいたいです。
プロジェクトマネージャー・チームリーダーなど人をマネジメントするポジションの人は特に。
スカウターが壊れている人 = 自分ができていない事に気付いていない or できていない事を素直に認められない人
です。
###おしまい###
長くなってしまいましたので、これにて終わりにします
ここまで読んでくださって、有難うございました。
プロジェクトマネジメント論には色々な考え方があり、これが絶対だ!というのはないので、あくまで私のいままでの経験から感じている事を書きました。
プロジェクトの炎上がなくなりますように