レトロスペクティブ(retrospective)とは、「チーム自体」やチーム活動の「プロセス」を振り返る活動のことをいいます。あらゆる組織・チームにおいて重要な作業です。本投稿では、レトロスペクティブを行う上でのフレームワークを提供します。
retrospective(レトロスペクティブ)の意味 - goo国語辞書
[形動]過去を懐かしむさま。回顧的。「レトロスペクティブな町並み」→レトロ
[名]美術で、回顧展。映画の回顧上映。
レトロスペクティブは、特にアジャイル開発のフレームワークの1つであるスクラムにおいて、「振り返り」を行うイベントとして重要です。スクラムでは、「透明性」のあるチーム・プロセスを通じて、反復的な「検査」と「適応」を繰り返すことで、チームをより良い方向に導きます。スクラムについては、以下の投稿を参考にしてください。
チーム活動における振り返りには、大きく2つの対象があります。
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チームの成果に対する振り返り
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チーム自体やチームの活動プロセスに対する振り返り
1.についてはスプリントレビューという活動で実施します。2.に関して、チームのメンバー全員で本音で話し合い、チームの問題点や良いところを探し、次の活動の改善や継続的に取り組む事項について合意します。これがトロスペクティブです。
誰が本投稿を読むべきか
- レトロスペクティブを導入したいが、まだ試したことがない。どこから手を付ければよいかわからない
- レトロスペクティブを開始しているが、より活気づけたい。
- チームリーダーでレトロスペクティブをファシリテートする立場である。
- スクラムマスター
レトロスペクティブの骨組み
レトロスペクティブを始める上で、骨組みとして最低限以下を考える必要があります。
- 目標の作成
- 所要時間
- 参加者
- 場所/部屋の設定
1. 目標の作成
レトロスペクティブをなぜやるのか。スクラムマスターはチームにスクラムの教育をしっかり行い、レトロスペクティブをやることの意義を正しく理解してもらう必要があります。その中で、費やす時間に見合う価値のあることは何か?自分たちの状況を考慮して、チームと一緒に有用な目標を見つけることが重要です。
たとえば、有用な目標例として以下を参考にしてください。
- プラクティスを改善する方法を見つける
- うまくできているものを見つける
- 目標を達成できなかった理由を理解する
- 顧客への対応を改善する方法を見つける
- 関係を修復する
レトロスペクティブは、定期的な頻度で繰り返し振り返りとして行われます。イテレーションの最初は、「継続的なプロセスの改善」などが目標でもよいと思います。やっていくと、徐々に新鮮味が失われるので、その場合は新しい目標を提案するのがよいでしょう。
2. 所要時間
以下4つの要因を考慮して決めてください。
- イテレーションの長さ(どれくらいの間隔でふりかえるか)
- 複雑さ(技術、他部署との関係性、チームの構成)
- チームの大きさ
- 衝突や意見の対立の度合い
例として、「1週間のイテレーションのチーム」であれば、1時間で十分でしょう。また、「30日間のイテレーションのチーム」であれば、半日で十分です。以下は注意点です。参考にしてください。
- いずれにしても時間を短くしすぎると、いい加減な結果になるので注意しましょう。
- チームのメンバ全員が参加し意見を述べる活動ですので、人数が多い場合には、時間を多めにとってください。
- 失敗や社内政治に悩まされている辛いプロジェクトは、チームメンバーに息抜きしてもらう時間を計画に入れておく。
3. 参加者
全員!!!
4. 場所/部屋の設定
場所も意外と重要です。チームの作業部屋を利用する場合、チームの成果物がそこにあり、通常業務のように感じます。それがメリットかデメリットかどうかはチームによりますので、チーム状況を鑑みてください。
新鮮な視点が必要な場合には部屋を変えるべきです。環境を変えることで、特別な状況であることを象徴的に示すことができます。
レトロスペクティブの作業では、チームが活発に意見を交わします。大きな部屋を探してください。快適に動ける十分な空間を確保するべきでしょう。またテクニックとして、椅子や円形や半円形に並べると、お互いの顔を見ることができるため、参加者は活気づきます。教室や映画館のような配置は息苦しいと思いませんか?誰かの後頭部を見ていては、会話はできないですよね?
レトロスペクティブの構成
レトロスペクティブでは、各ステップをタイムボックス化し、ダラダラと実施せずに上限時間を決めてやるのが良いでしょう。
タイムボックス化されるべきステップは以下の通りです。
- 場を設定する
- データを収集する
- アイデアを出す
- 何をすべきか決定する
- レトロスペクティブを終了する
各ステップには、レトロスペクティブの目的に応じて選択すべき様々なアクティビティが準備されていますので、ちょっとだけ後でご紹介します。また、これらのステップを進行するのはスクラムマスターであり、レトロスペクティブのリーダー、ファシリテーターです。
以下では、各ステップの目的や何をするべきかを説明します。
1. 場を設定する
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目的
- このステップの目的は、参加者がこれから行うレトロスペクティブの作業に意識を集中するように促す効果があり、議論をするに適した雰囲気を作る。
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何をすべきか
- 参加者に対して、レトロスペクティブへの歓迎と感謝の意を簡単に述べることから始めます。
- 部屋にいる全員に、簡単に口を開いてもらいます。レトロスペクティブの肝は、グループで考え、一緒に学んでいくことなので全員参加の取り組みであることを意識付けます。
- レトロスペクティブの進め方の概要説明(タイムボックス、目標、進め方)
- チームの価値、約束事を共有します(許される振る舞いや相互作用について)
2. データを収集する
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目的
- データを取集すれば、すでに起きたことについて共通の理解を得ることができます。逆に、共通の理解がないと、議論をする上で個人の意見や信念を正当化してしまうことになります。
- また、データを収集することで、個々人の視野が広がりま。す
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何をすべきか
- データの収集(客観的な事実/感情の両方を集める)
- イベント(MTG、何らかの決定、チームメンバの変更、マイルストーン、お祝いごと、新しい技術の採用など、チームの誰かに関係のあるすべてのイベントが含まれる。)
- メトリクス(バーンダウンチャート、ベロシティ、不具合の件数、完了したストーリー、リファクタリングされたコード量)
- 機能、完了したストーリー
- データのレビュー
- パターンや変化、驚きについてコメントしてもらう。
- データの収集(客観的な事実/感情の両方を集める)
客観的な事実はもちろん重要ですが、データの半分以上は感情です。
3. アイデアを出す
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目的
- アイデアを出することで、チームは一歩下がった視点から全体像を見たり、根本的な原因を調査したりできます。
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何をするべきか
収集したデータを参照して、強みや以前のイテレーションで挙がった課題を確認する。
みんなで改善のアイデアを考えていく。
4. 何をすべきか決定する
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目的
- この時点でチームは、全ステップのアイデア出しで得た試みや改善点のリストをもっているはずです。それらの優先順位付けをおこない、次の活動で実施するものを見つけます。
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何をするべきか
- チームがコミットできて、確かな効果の現れる項目を選択する。
- 1つか2つに限定すること。あまりに多いと、変化に対応できる限界を超えてしまいます。
- スクラムの場合、忘れないようにバックログアイテムを作成しましょう。
- チームがコミットできて、確かな効果の現れる項目を選択する。
注意してほしいのは、決めるのは全てチームのメンバです。あくまで、リーダ、ファシリテーター、そしてスクラムマスターはそれらを支援する立場であること忘れないで下さい。
5. レトロスペクティブを終了する
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目的
- この振り返り自体を点検し、レトロスペクティブを終了します。レトロスペクティブから学んだことを心に留めるための方法をチームが決める支援をします。
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何をするべきか
- 経験を文書化する方法を決め、フォローアップを計画する。たとえば、写真をとる。とか
- レトロスペクティブのレトロスペクティブを行うこと。
- うまくいたこと、やり方を変えられること
- 「検査と適応」をレトロスペクティブ自体に活かします。
- イテレーションとレトロスペクティブで行ったみんなの作業に感謝の意を表して、終了する。
アクティビティの選択
アクティビティはタイムボックス化されたプロセスとして、レトロスペクティブの各ステップを進めていく上で役立ちます。アクティビティという枠を作ることで、チームが一緒になって考えることができます。
たとえば、ブレインストーミング、聴いたことあると思います。これはアイデアを出すステップでのアクティビティの1つです。そのほかにも、ドット投票、チェックイン、ペアインタビュー、KPT法など、各ステップごとに色々なアクティビティがあります。
具体的なアクティビティは、本投稿を見ていただいて、関心が多そうでしたら、将来的にまとめます!!!(笑)
アクティビティを利用するメリットは以下の通りです。
- 参加者が平等に参加できる
- 参加者が5人よりも多いと、全員が一緒の会話に参加することは難しいです。
- 小さなグループ作業のアクティビティを導入する等、グループ全員の意見を聞けるように促すことができます。
- 会話に集中できる
- 会話の骨組みを作るという役目
- 会話が脱線しにくくなる
- 新しい視点を助長する
- 参加者の普段の考え方を取り払って、新しいアイデアを出すことを助長する
アクティビティを選択する上では、レトロスペクティブの目標を後押しするものを選択してください。仕事に関係ないアイスブレイカー、エナジャイザー、ゲームはふさわしくありません。「ただ楽しい」だけに、無駄に時間を利用しないようにしましょう。楽しくやるのはいいが、それが目的になってはいけません。
また、居眠りをしないような、関心を持ち続けられるアクティビティを選択することも重要です。チームに関心を持たせ続けるには、アクティビティをも変えてみましょう。あなたがアクティビティに飽きたら、おそらくチームも飽きています。
ファシリテーション(レトロスペクティブのリーダーの役割とスキル)
レトロスペクティブを運営するファシリテーターを、ここではリーダーと表現します。スクラムマスターがた暗闘することが多いと思います。
リーダーの基本的なスキルを学習するには、リーダーの役割とプラクティスを理解し、参加者に対してフィードバックを求める必要があります。レトロスペクティブ自体も、またスクラムにおける振り返りの対象なのです。
レトロスペクティブのリーダーは、時には議論に参加することもありますが、主な責任はそのプロセスにあります。たとえ。個人的に強い意見を持っていても、常に中立を保つ必要がある。人間、ついつい議論に参加してしまいたくなりますが、しばらく考えてから、あなたの考えが本当に必要かどうか考えてください。たいていは、あなたが何か言わなくてもチームはうまくやれるでしょう。
上で述べた主な責任であるプロセスとは、具体的には以下の3つです。
- アクティビティの管理
- 集団ダイナミクス
- 時間管理
1. アクティビティの管理
レトロスペクティブにおいて、チームが一緒に考えることを支援するためのアクティビティが必ず含まれます。アクティビティの進め方について説明し、アクティビティの間チームを観察し、終了後に感想を聞いてください。アクティビティを始める前に目的を聞きたがる参加者がいますが、チームがこれから踏み出す領域についての漠然とした感覚を教えるだけにしてください。
具体的な責任を以下の通りです。
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アクティビティの紹介
- アクティビティの各ステップを一度に理解できる人はいない。詳細についてはその時になってから説明するとよい。
- 説明を行ったら、質問がないかを尋ねる
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アクティビティ中のタスク
- アクティビティの質問に答えること
- 部屋の様子を観察すること
- 部屋の音量を聞いておく
すべてのアクティビティについて感想を聞くこと。感想を聞くことで、チームは自分たちの経験を吟味し、新たな見解を抽出することができます。
2. 集団ダイナミクス
集団ダイナミクスとは、集団の構成員の相互依存関係から派生する力学的特性のことです。人間は、集団になったとき、個人がばらばらに行動するのではなく、集団ゆえに生まれる動力に従って行動します。これは、個人が集団から影響を受けると言うことであり、逆に集団に影響を与えるということでもあります。
議論の場においては、この集団ダイナミクス健全に保立てることが重要であり、リーダーはこれを管理します。具体的な観点は以下の通りです。
- 議論への参加を管理する
- 言うべきことのある人には、確実に話せる機会を設ける
- 話過ぎる人には、会話を支配されないようにする
- 喋りっぱなしの人には、直接(個人的に)言うこと
- レトロスペクティブの前に個人的に話す
- 気づきを述べて、チームへの影響を説明し、お願いする
- 決して、非難しているようには言わない。
- マネージャーが会話を支配することがある。
- 自重をお願いするのも、ファシリテータの役割
また、レトロスペクティブを続けていると、負の効果があり、無視できない課題が遅かれ早かれ生じます。たとえば、チームの約束を破ることや他人を非難することです。
まずはチームの約束を思い出してもらいましょう。チームの約束は任意ではありません。守らない約束に価値はありません。非難や個人攻撃を耳にしたら、話を中断し議題を本筋に戻すのが、リーダーの役割であり、チーム全体の務めでもあります。
3. 時間管理
グループの要求にこたえると同時に、時間に注意を払い、タイムボックスに全て納める必要があります。時計を持っていくことを絶対に忘れないでくださいね。
計画した時間になってもまだ議論が活発な場合は、グループにどうしたいかを尋ねてみてください。結論はかならず、チームの手に委ねるようにしましょう。結論が出ない場合には、いくつか妥協点を探してください。あとで議論を続ける、などです。
## まとめ
以上、レトロスペクティブのまとめになります。
本当はたくさんあるアクティビティを色々ご紹介したいのですが力尽きました!!
是非、書籍等でもあるので試してみてください!