『エンジニアの知的生産術』の書籍を読んでいます。
この書籍の第二章では、「記憶を鍛えるには」の知見が共有されています。
その中で、1999年にSupermemoの作者Piotr Wozniakさんにより公開された文章「知識を構造化する20のルール/Effective learning: Twenty rules of formulating knowledge」が紹介されていましたので、本ブログでサマリーを紹介します。
エンジニアの知的生産術 ──効率的に学び、整理し、アウトプットする
ここに、知識を構造化するための20のルールについて記します。
最初の16のルールは記憶をシンプルに作成することを中心です。いくつかのルールは強く重なっています。
1. Do not learn if you do not understand(理解出来ないことを学ぼうとしない)
例えば、ドイツ語がわからないのに、ドイツ語で書かれた歴史の教科書を暗記しようとしてはいけない。かかる時間は天文学的なものになるし、得られた知識を活用することはできない。
2. Learn before you memorize(暗記する前に学ぶ)
個々の事実や規則を学ぶ前に、学習する知識の全体像を理解する必要がある。完全で詳細なものよりも、シンプルなものの方が覚えやすいため。それが知識化されたあとに、徐々に詳細化していくべきです。
3. Build upon the basics(基礎から積み上げる)
基礎をおろそかにしてはいけない。一見明らかなことを記憶することは、時間の浪費ではありません。簡単なことを記憶するコストは小さい。でも、基礎の知識がなくなると、多大なコストが発生する。安全側に倒しましょう。
4. Stick to the minimum information principle(最小情報原則にこだわる)
問題を可能な限りシンプルにしましょう。シンプルなものは覚えやすく、学習スケジュールの調整も有効に働きます。
例えば「一部だけ覚えていた」ことが起きると、その覚えていた部分も含めて再学習コストが発生する。
私たちの脳は、最小限の量の情報を1回の繰り返しでメモリから取り出すことを望んでいる。可能な限り短い答えを求めている。以下に例を示します。
複雑な知識例
Q:死海の特徴は何ですか?
A:イスラエルとヨルダンの国境に位置するソルトレイク。その海岸線は、海面下平均で396m、地表面の最も低い地点です。それは74キロです。それは海洋と同じくらい塩分(30%)の7倍です。その密度は水泳者を浮かせます。単純な生物だけがその生理食塩水に住むことができます。
シンプルな知識例
Q:死海はどこにありますか?
A:イスラエルとヨルダンの国境にある
Q:地球表面上の最低点は何ですか?
A:死海の海岸線
Q:死海の平均レベルはどのくらいですか?
A:海抜400メートル(海面下)
Q:死海はどのくらいですか?
A:70 km
Q:死海は海よりどれだけ塩分が多いですか?
A:7倍
Q:死海の塩分量はどのくらいですか?
A:30%
Q:なぜ死海は水泳選手を浮かせますか?
A:塩分が多いため
Q:なぜ死海は死んだのですか?
A:単純な生物だけがそこに住むことができるので
Q:シンプルな生物だけが死海に生きることができるのはなぜですか?
A:塩分が多いため
5. Cloze deletion is easy and effective(穴埋め問題は覚えやすく効率的)
教科書の知識を間隔をあけて繰り返し学習することができる知識に変換する、迅速で効果的な方法です。
6. Use imagery(画像を使おう)
百聞は一見に如かず。one picture is worth a thousand wordsということわざもあります。
7. Use mnemonic techniques(記憶術を使う)
ここでは、マインドマップとかが紹介されている。
8. Graphic deletion is as good as cloze deletion(画像穴埋め問題も善き)
下記のようなイメージです。
9. Avoid sets(順序の定まらない集合を覚えようとしない)
例えば、以下の問題を見てください。
例:どの国がEUに属していますか?
可能な限り、そのようなアイテムは、セットに基づいてメモリを保持するコストが高いため、避けるべきです。最小情報原則に基づいて、シンプルなサブセットの問題に分割して記憶するべき。
10. Avoid enumerations(複数のものの並びを覚えようとしない)
9. と同様で、列挙型の記憶方式は避けるべきです。下記のように。
Q:アルファベットの文字の並びは何ですか?
A:abcdefghijklmnopqrstuvwxyz
11. Combat interference(干渉を見つけて取り除く)
例えば、abc順に英単語を覚えることを想像してください。
abhor
abhorrent
abject
addjunct
...
似た単語で記憶が混同し、別の単語の意味を記憶してしまうかもしれません。
これは脳に苦痛を与えるので、長続きしなくなります。
二兎を追う者は一兎をも得ずということわざがあるので、片方を取り除く等の対応はよいです。
12. Optimize wording(言い回しを最適化しよう)
最小限の時間で右脳が発火するために最適化する必要があります。これにより、エラー率が低減し、特異性が高まり、応答時間が短縮され、集中力が高まります。
単語数が減ると、学習がスピードアップします。
13. Refer to other memories(ほかの記憶と関連付けよう)
他の記憶を参照すると関連付けることで、より良い文脈で記憶し、言葉遣いを簡素化し、干渉を減らすことができます。
14. Personalize and provide examples(個人の体験や具体例と絡めよう)
パーソナライゼーションは、他の記憶を構築する最も効果的な方法かもしれません。あなたの個人的な人生は、参照する事実や出来事の金鉱です。あなた自身のためにコレクションを構築している限り、十分に確立された記憶を構築するためにパーソナライズを豊富に使用してください
15. Rely on emotional states(感情と絡めよう)
感情は記憶に関連しています。あなたが悲しみの時に事実を学ぶなら、あなたが悲しんでいる時にそれを思い出す可能性がより高くなります。いくつかの記憶は感情を誘発し、脳のこの特性を覚えておくのに役立ちます
16. Context cues simplify wording(文脈のヒントを利用して言い回しを簡潔にする)
文脈を提供することは、記憶を単純化する方法であり、より早期の知識と干渉を回避する方法です
17. Redundancy does not contradict minimum information principle(冗長性ある記憶方法は、最小情報原則に矛盾しない)
異なる角度から見たときと同じ事実を記憶することに実害はほとんどない。受動的かつ能動的なアプローチは、単語対の学習において特に実用的である。問題解決の派生ステップを記憶することは、あなたの知的な力を高めるための手段です!
18. Provide sources(出典を出そう)
学習プロセスを管理したり、知識を更新したり、信頼性や重要性を判断したりするのに役立つ
19. Provide date stamping(日付を記録しよう)
経時変化する揮発性の高い知識獲得に役立ちます
20. Prioritize(優先順位を付けよう)
効果的な学習はすべて優先順位付けに関するものです。
必要な場合は、知識の一部を再度レビューしたり、分割したり、再定式化したり、優先順位を付けたり、削除したりすることができます