1. 導入
人間には不可能なスーパージャンプをしたり、破けた紙が修復されたり、口の中から新品のパンが出てきたり、バケツが地面の水を一滴も残さず吸い上げたり、逆再生動画は不思議で面白いですよね。現実ではありえない現象が逆再生動画では見られます。しかしいったいどうして現実ではありえない現象が逆再生動画で見られるのでしょうか?逆再生動画を逆再生たらしめているのは何なのでしょうか?この記事では逆再生動画内の物理法則を考えて逆再生動画を逆再生たらしめている物について考えていきます。
2. 時間反転
物理を使って逆再生動画を表現してみましょう。
普通再生→逆再生 では時間の進む向きが反対になるべきです。
$t → -t$
とすれば時間の向きが逆転します。
普通再生の物理の式の$t$に$-t$を代入すれば逆再生の物理法則がわかります。
この$t → -t$の操作を時間反転といいます。
3. 定義
$x'(t)$を定義します
$x'(t):=x(-t)$
x'が逆再生時の位置です
$v'(t)$を定義します
$v'(t):=\frac{dx'(t)}{dt}$
$v'(t)$が逆再生時の速度です
$a'(t)$を定義します
$a'(t)=\frac{d^2 x'(t)}{dt^2}$
$a'(t)$が逆再生時の加速度です
4. 逆再生時の物理量
位置、速度、加速度に$t → -t$します
位置
$x(t)→x(-t)=x'(t)$
速度
$v(t)→v(-t)=\frac{dx(-t)}{d(-t)}=-\frac{dx'(t)}{dt}=-v'(t)$
速度は-1倍されます。
右に進んでる物体を逆再生したら左に進むので納得いきます。
加速度
$a(-t)=\frac{d^2 x(-t)}{(d(-t))^2}=\frac{d^2 x'(t)}{(dt)^2}=a'(t)$
加速度は変わらないようです。
5. 代入しよう!
空気抵抗
$ma=-kv$など
時間反転すると
$→ma'=-k(-v')$
$\Leftrightarrow ma'=kv'$
従って普通再生と異なる式になります。
逆再生時は空気があると進行方向に加速するようです。
摩擦力
$f>0$
$F=-f\frac{v}{\lvert v \rvert}$(力の向きが$-v$)
$f$が$v$によらないなら時間反転で
$→F=-f\frac{-v'}{\lvert -v' \rvert}$
$\Leftrightarrow F=f\frac{v'}{\lvert v' \rvert}$
普通再生の時と異なる式になります。
同様に逆再生時は進行方向に加速するようです。
6. 反発係数の式
$t_1<t_2,e\leqq1$,ただし$t_1$は衝突直前、$t_2$衝突直後の時間である
$v(t_2)=-ev(t_1)$
時間反転すると$t,v$はマイナスがかかるので
$→$
$-t_1<-t_2$
$-v'(t_2)=ev'(t_1)$
$\Leftrightarrow t_1>t_2$
($t_1$の方が大きくなったので$t_2$は衝突直前$t_1$衝突直後の時間になった。)
$v'(t_1)=-\frac{1}{e}v'(t_2)$(衝突前後に合わせて$e$で割った。)
逆再生時の反発係数は$\frac{1}{e}\geqq1$になるらしい!
$\frac{1}{e}\geqq1$ですから$e\neq1$の時普通再生と異なる式になります。
7. 式が変わらない例
$F=F(r)$(力が$r$とか定数とかにしか依らない時)
$F(r)=ma$
$→F(r')=ma'$
で式の形が変わりません。
当てはまる例として、万有引力、クーロン力、調和振動子などが挙げられます。
8. 考察
逆再生の式が普通再生の式と異なる例を挙げてみましたが、すべて熱や音を出す現象でした。熱や音を出さないで式が変わる例は思い浮かばなかったため、逆再生を逆再生たらしめているのは熱や音を出す現象なのではないかと考えました。