目次
- 1. エグゼクティブサマリー
- 2. 5Gモビリティ管理の概要
- 3. 5G NRにおける測定報告 (3GPP TS 38.331)
- 4. N2ベースのインターgNBデータハンドオーバー手順 (シーケンス)
- 5. ハンドオーバー中のセキュリティ手順 (3GPP TS 24.501)
- 6. ハンドオーバー中のQoS管理
- 7. データハンドオーバーとVoNRハンドオーバーの違い
- 8. メッセージシーケンスチャート
- 9. 結論
- 引用文献
1. エグゼクティブサマリー
5Gネットワークにおけるシームレスなモビリティは、特にデータ集約型アプリケーションにおいて、高性能な接続を維持するために不可欠です。ハンドオーバーは、UE(User Equipment)がサービスの中断なくセル間を移行することを保証し、ユーザーエクスペリエンスとネットワーク効率の両方にとって極めて重要な側面です。本報告書では、RRC_CONNECTED状態にあるUEがインターネットアクセス中に経験する、測定報告とそれに続くN2ベースのインターgNBハンドオーバーの複雑なシーケンスに焦点を当て、そのプロトコル交換と関連する技術的側面を分析します。
データハンドオーバーは、一般的なインターネットトラフィックに対するユーザープレーン接続の維持に重点を置いていますが、VoNR(Voice over New Radio)ハンドオーバーは、音声品質と低遅延を保証するために、特定のQoS(Quality of Service)要件(音声に対するGBR、シグナリングに対する高優先度の非GBR)と異なるRLC(Radio Link Control)モード構成を導入します。この報告書では、5Gハンドオーバーが単なる「接続転送」ではなく、QoSとセキュリティメカニズムと深く統合された、制御プレーン機能とユーザープレーン機能の複雑なオーケストレーションであることを強調します。これは、5Gの高度な機能と多様なサービス要件を反映したものです。
2. 5Gモビリティ管理の概要
UEがRRC_CONNECTED状態にある場合、ネットワークにアクティブに接続され、データと制御情報を交換しています [1]。モビリティ管理は、UEが地理的なエリアや異なるセル間を移動する際に、この接続が維持されることを保証するプロセスです。これは、ユーザーが移動しながらも中断のないサービスを体験できるようにするために不可欠です。
5Gネットワークでは、いくつかの種類のハンドオーバーが定義されており、それぞれ異なるシナリオに対応しています [1]。
-
Intra-gNBハンドオーバー:
UEが同じCU(Central Unit)内のセル/DU(Distributed Unit)間を移動するケースです。この場合、コアネットワークへの追加のシグナリングは発生しません [1]。 -
Xn-Based Inter-gNBハンドオーバー: ソース
gNBとターゲットgNBがXnインターフェースを介して接続されている場合に発生します。シグナリングとデータパケットの転送はNG-RAN(Next Generation Radio Access Network)内で調整されます [1]。 -
N2-Based Inter-gNBハンドオーバー: 本報告書の主要な焦点であり、ソース
gNBとターゲットgNBがXnインターフェースを持たない場合、またはXnハンドオーバーが設定で許可されていない場合に、AMF(Access and Mobility Management Function)を介してハンドオーバーが調整されます [1]。このプロセスでは、gNBとAMFを接続するN2インターフェースが使用され、ソースgNBとターゲットgNBが異なるAMFに接続されている場合は、AMF間を接続するN14インターフェースも使用されることがあります [1]。 - その他のハンドオーバータイプ: インターシステムハンドオーバー(N26インターフェースを介した5GSからEPSへのハンドオーバー)、インターRATハンドオーバー(NRからE-UTRAへのハンドオーバー)、NSA/MR-DC構成におけるハンドオーバー、非3GPPアクセスへのハンドオーバーなど、多様なシナリオが存在します [1]。
本報告書で詳述するシナリオは、UEがRRC_CONNECTED状態にあり、インターネットにアクティブにアクセスしている状況を想定しています。これは、PDUセッションと関連するQoSフローがすでに確立されていることを意味します [2]。
ハンドオーバータイプの選択は、単なる技術的選択ではなく、インフラストラクチャの展開(Xnの可用性)、望ましいパフォーマンス(レイテンシ)、および運用の柔軟性(AMF間のモビリティ)によって影響される戦略的なネットワーク決定です [1]。N2ベースのハンドオーバーは、Xnベースのハンドオーバーと比較して、より多くのシグナリングと遅延を伴うことが示されています [1]。しかし、N2ハンドオーバーは、gNBが異なるAMFに接続されている場合や、直接的なgNB間の接続が最適化されていない場合など、より広範な適用可能性を提供します。したがって、ハンドオーバーの選択は、パフォーマンス、相互運用性、およびネットワークアーキテクチャのバランスを取る戦略的決定です。
3. 5G NRにおける測定報告 (3GPP TS 38.331)
UEはRRC_CONNECTED状態にある間、無線状態の変化を監視するために、定期的に隣接セルを測定します [1]。これらの測定結果は、ネットワーク(gNB)がハンドオーバーなどのモビリティ決定を行う上で不可欠です。
3.1. MeasurementReportメッセージとそのトリガー
MeasurementReportメッセージは、UEからgNBに送信されるRRC(Radio Resource Control)メッセージであり、3GPP TS 38.331で定義されています [2]。このメッセージは、gNBによってRRCシグナリングを介して設定された事前定義された「イベント」によってトリガーされます [3]。これらのイベントは、RSRP(Reference Signal Received Power)、RSRQ(Reference Signal Received Quality)、SINR(Signal-to-Interference-plus-Noise Ratio)などの信号品質メトリックに基づいています [3]。
ハンドオーバーの一般的なトリガーイベントの1つは、イベントA3です。これは、「隣接セルがSpCell(Special Cell、プライマリサービングセル)よりもオフセット分だけ良好になる」という条件でトリガーされます [3]。このイベントは、隣接セルの信号強度(Mn)が、ヒステリシスやセル固有のオフセットを考慮して、サービングセル(Mp)よりも設定されたオフセット分だけ良好になった場合に発生します [3]。例えば、隣接セルのRSRPが-78dBm、サービングセルのRSRPが-82dBm、A3オフセットが3dBに設定されている場合、-78dBm > -82dBm + 3dBm の条件が満たされると、イベントA3がトリガーされ、UEはMeasurementReportを送信します [3]。このメカニズムは、不必要なハンドオーバー(ピンポンハンドオーバー)を防ぎ、ネットワークの過負荷を回避するために重要です [3]。
3.2. MeasurementReportの論理、トランスポート、物理チャネルへのマッピング (Uuインターフェース)
MeasurementReportメッセージは、UEとgNB間の無線インターフェース(Uu)を介して送信されます。その伝送経路は、プロトコルスタックの各層で異なるチャネルタイプにマッピングされます [8]。
-
論理チャネル:
MeasurementReportは、特定のUEに固有の制御情報を伝送するため、**専用制御チャネル(DCCH: Dedicated Control Channel)**として分類されます [8]。 -
トランスポートチャネル:
DCCHメッセージは、UEからgNBへのアップリンク伝送のために、**アップリンク共有チャネル(UL-SCH: Uplink Shared Channel)**にマッピングされます [8]。 -
物理チャネル:
UL-SCHは、無線インターフェース上で**物理アップリンク共有チャネル(PUSCH: Physical Uplink Shared Channel)**を介して送信されます [8]。
この多層的なチャネルマッピングは、無線リソースの効率的な利用と、異なる種類の情報(制御データとユーザーデータ)の適切な優先順位付けを可能にします。
3.3. 共通の5G測定イベント
以下の表は、3GPP TS 38.331のReportConfigNRに基づいて、5G NRで一般的に使用される測定イベントをまとめたものです [3]。これらのイベントは、UEが測定報告をトリガーする条件を定義し、モビリティ決定の基盤となります。
表: 共通の5G測定イベント (3GPP TS 38.331 ReportConfigNRに基づく)
| イベントタイプ | 説明 | トリガー条件の例 (RSRP) | 主要なパラメーター |
|---|---|---|---|
| イベント A1 | サービングセルが閾値より良好になる | Mn > Thresh |
RSRP/RSRQ/SINR閾値, ヒステリシス |
| イベント A2 | サービングセルが閾値より悪化する | Mn < Thresh |
RSRP/RSRQ/SINR閾値, ヒステリシス |
| イベント A3 | 隣接セルがSpCellよりオフセット分だけ良好になる | Mn + Ofn + Ocn – Hys > Mp + Ofp + Ocp + Off |
オフセット, ヒステリシス, セル固有オフセット |
| イベント A4 | 隣接セルが閾値より良好になる | Mn > Thresh |
RSRP/RSRQ/SINR閾値, ヒステリシス |
| イベント A5 | SpCellが閾値1より悪化し、かつ隣接セルが閾値2より良好になる | Mp < Thresh1 AND Mn > Thresh2 |
RSRP/RSRQ/SINR閾値, ヒステリシス |
| イベント A6 | 隣接セルがSCellよりオフセット分だけ良好になる | Mn + Ofn + Ocn – Hys > Ms + Ocs + Off |
オフセット, ヒステリシス, セル固有オフセット |
| イベント B1 | インターRAT隣接セルが閾値より良好になる | Mn_IRAT > Thresh_IRAT |
RSRP/RSRQ/SINR閾値, ヒステリシス |
| イベント B2 | PCellが閾値1より悪化し、かつインターRAT隣接セルが閾値2より良好になる | Mp < Thresh1 AND Mn_IRAT > Thresh2 |
RSRP/RSRQ/SINR閾値, ヒステリシス |
注釈: Mn: 隣接セルの測定結果, Mp: SpCellの測定結果, Ms: SCellの測定結果, Ofn: 隣接セルの測定オブジェクト固有オフセット, Ofp: PCellの測定オブジェクト固有オフセット, Ocn/Ocp/Ocs: セル固有オフセット, Hys: ヒステリシス, Off: イベント固有オフセット (例: a3-Offset)。
4. N2ベースのインターgNBデータハンドオーバー手順 (シーケンス)
UEがRRC_CONNECTED状態にあり、インターネットにアクティブにアクセスしている状況におけるN2ベースのインターgNBハンドオーバーは、ソースgNB、ターゲットgNB、AMF、SMF、UPF、およびUE間の複雑なプロトコル交換を伴います。このセクションでは、このプロセスを説明します。
4.1. 初期状態
ステップ0: UEはソースgNBに接続され、RRC_CONNECTED状態にあり、アップリンクおよびダウンリンクのデータ通信をアクティブに行っています。この状態では、UEは継続的なデータフローを維持するために、無線環境を継続的に監視しています [2]。
4.2. 測定報告のトリガー
ステップ1: MeasurementReport (UE -> ソースgNB)
UEは、無線環境を定期的に測定し、隣接セルの信号強度(RSRP、RSRQ、SINRなど)を監視しています [1]。特定のイベント(例: イベントA3)がトリガー条件を満たすと、UEはソースgNBにMeasurementReportメッセージを送信します [2]。このメッセージは、3GPP TS 38.331で定義されており、UEの専用制御チャネル(DCCH)を介してアップリンク共有チャネル(UL-SCH)上で物理アップリンク共有チャネル(PUSCH)として伝送されます [5]。この報告は、gNBがモビリティ決定を行うための主要な情報源となります。
4.3. ハンドオーバーの決定と準備
ステップ1.1: ソースgNBは、UEから受信したMeasurementReport、自身のセル負荷、UEのモビリティ制限、無線能力などの情報に基づいて、ハンドオーバーが必要であると判断し、最適なターゲットgNBを選択します [2]。
ステップ2: Handover Required (ソースgNB -> AMF)
ソースgNBがハンドオーバーを決定すると、N2ハンドオーバープロセスを開始し、AMFにHandover Requiredメッセージを送信します [2]。このメッセージは、NGAP(NG Application Protocol)プロトコル(3GPP TS 38.413)を介してN2インターフェース上で伝送されます [2]。含まれる主要なパラメータには、UE RAN-NGAP-ID、AMF-NGAP-ID、ターゲットgNB ID、ハンドオーバータイプ、ハンドオーバー原因、およびハンドオーバーされるPDUセッションに関する情報が含まれます [2]。
ステップ3: Handover Request (AMF -> ターゲットgNB)
AMFはHandover Requiredメッセージを受信すると、ターゲットgNBを特定し、Handover Requestメッセージを送信します [2]。このメッセージもNGAPプロトコルを介してN2インターフェース上で伝送されます [2]。これには、UEセキュリティコンテキスト、UE能力、PDUセッション情報(PDUセッションID、S-NSSAI、QFI、QoSプロファイルなど)、ソースからターゲットへの透過コンテナ(Source to Target Transparent Container)、およびGUAMI(Globally Unique AMF Identifier)が含まれます [2]。このステップは、ターゲットgNBがUEを受信する準備を整えるハンドオーバー準備フェーズの一部です [1]。
ステップ4: HandoverRequestAcknowledge (ターゲットgNB -> AMF)
ターゲットgNBはHandover Requestメッセージを受信すると、UEのPDUセッション情報とQoSプロファイルに基づいて、UEの受け入れを決定します [1]。承認されると、ターゲットgNBはAMFにHandoverRequestAcknowledgeメッセージを送信します [2]。このメッセージには、UE-NGAP-ID、承認されたPDUセッションのリスト、およびターゲットからソースへの透過コンテナ(TargetToSource-TransparentContainer)が含まれます [2]。この応答は、ターゲットgNBがUEのコンテキストとリソースを準備し、ハンドオーバーを受け入れる準備ができたことをAMFに通知します。
5Gハンドオーバーは、UEコンテキスト、PDUセッション、およびQoSフローに対する非常に詳細な制御を伴います。これは、NGAPおよびPFCPメッセージに含まれるパラメータ(UE能力、セキュリティコンテキスト、PDUセッション情報、QoSプロファイル、QFI、PDCP SNステータス)から明らかです [1]。この粒度の高い制御は、UEが新しいセルに移行する際に、既存のデータセッションのQoS要件が維持されることを保証するために不可欠です。
ステップ5: Handover Command (AMF -> ソースgNB)
AMFはHandoverRequestAcknowledgeを受信すると、ソースgNBにHandover Commandメッセージを送信します [2]。このメッセージは、ステップ4でターゲットgNBから受信した情報を含みます [2]。このコマンドは、ソースgNBにUEのハンドオーバー実行を開始するよう指示します [1]。
4.4. ハンドオーバーの実行
ステップ6: RRCReconfiguration (ソースgNB -> UE)
ソースgNBは、UEにRRCReconfigurationメッセージを送信することにより、ハンドオーバーをトリガーします [2]。このRRCメッセージ(3GPP TS 38.331で定義)は、UEの専用制御チャネル(DCCH)を介してダウンリンク共有チャネル(DL-SCH)上で物理ダウンリンク共有チャネル(PDSCH)として伝送されます [7]。メッセージには、ターゲットセルID、新しいC-RNTI(Cell Radio Network Temporary Identifier)、および選択されたセキュリティアルゴリズムのターゲットgNBセキュリティアルゴリズム識別子など、ターゲットセルにアクセスするために必要な情報が含まれます [2]。このメッセージを受信すると、UEはソースgNBから切断し、ターゲットgNBへの接続を試みます [1]。
ステップ7: UplinkRANStatusTransfer (ソースgNB -> AMF)
UEにRRCReconfigurationメッセージを送信した後、ソースgNBはAMFにUplinkRANStatusTransferメッセージを送信します [2]。このNGAPメッセージは、UE-NGAP-IDとAMF-NGAP-ID、およびRANStatusTransfer-TransparentContainerを含み、ソースgNBでサービスされていたすべてのDRB(Dedicated Radio Bearer)のPDCP(Packet Data Convergence Protocol)シーケンス番号(SN)ステータスに関する情報を提供します [2]。この情報は、ハンドオーバー中のデータ損失を防ぐために、ユーザープレーンのデータ転送を調整するために重要です [1]。
ステップ8: DownlinkRANStatusTransfer (AMF -> ターゲットgNB)
AMFは、ソースgNBから受信したUplinkRANStatusTransfer情報をターゲットgNBにDownlinkRANStatusTransferメッセージで転送します [2]。これにより、ターゲットgNBは、ハンドオーバー中にソースgNBでバッファリングされたダウンリンクデータを適切に処理し、重複や損失を回避できます。
4.5. ユーザープレーンパスの更新
ステップ9: Nsmf_PDUSession_Update (SMF -> UPF) および PFCP Session Modification (SMF <-> UPF)
ハンドオーバープロセス中にUPFの再割り当てが発生する場合、またはユーザープレーンパスが更新される場合、SMF(Session Management Function)はUPF(User Plane Function)のパスを更新する役割を担います [1]。これは、SMFがUPFに対してNsmf_PDUSession_Updateサービス操作(3GPP TS 23.502で定義)を開始することで行われます [17]。
このサービス操作は、PFCP(Packet Forwarding Control Protocol)メッセージ(3GPP TS 29.244で定義)を介してN4インターフェース上で実行されます [15]。具体的には、SMFはUPFにPFCP Session Modification Requestを送信し、UEのIPアドレスと新しいターゲットgNBのN3アドレスおよびTEID(Tunnel Endpoint Identifier)を含むダウンリンクトンネル情報を更新します [1]。UPFはPFCP Session Modification Responseで応答し、更新を確認します [16]。PFCPはUDP/IP上で動作します [16]。
PFCPのN4インターフェースにおける役割は、CUPS(Control and User Plane Separation)の直接的な結果です [15]。この分離により、制御プレーン機能とユーザープレーン機能の独立したスケーリングと進化が可能になり、ネットワークの柔軟性と効率が向上します [15]。さらに、5Gコアネットワークにおけるサービスベースアーキテクチャ(SBA)の採用は、HTTP/2とRESTful APIをNamf(AMF)やNsmf(SMF)などのインターフェースで使用することで、従来の参照点アーキテクチャから根本的な転換を示しています [10]。これにより、ネットワーク機能の柔軟性、スケーラビリティ、プログラマビリティが向上します。
4.6. ハンドオーバーの完了
ステップ10: RRCReconfigurationComplete (UE -> ターゲットgNB)
UEがターゲットセルに正常に接続した後、RRCReconfigurationCompleteメッセージをターゲットgNBに送信することでハンドオーバー手順を完了します [2]。このRRCメッセージ(3GPP TS 38.331で定義)は、UEのDCCHを介してUL-SCH上でPUSCHとして伝送されます [7]。この時点で、UEはターゲットgNBを介してアップリンクデータの送信を開始します [2]。
ステップ11: HandoverNotify (ターゲットgNB -> AMF)
ターゲットgNBは、ハンドオーバーが成功したと判断し、AMFにHandoverNotifyメッセージを送信します [1]。このNGAPメッセージは、UE-NGAP-IDとAMF-NGAP-ID、およびUEの位置情報(UEがサービスを受けているトラッキングエリア(TAC)など)を含みます [2]。この通知は、AMFがUEの新しい場所を認識し、コアネットワーク内のパスを更新するために重要です [1]。
ステップ12: UEContextReleaseCommand (AMF -> ソースgNB)
AMFはHandoverNotifyメッセージを受信すると、ソースgNBにUEContextReleaseCommandメッセージを送信します [2]。このNGAPメッセージには、UEコンテキストを識別するためのUE-NGAP-IDと、ハンドオーバー成功を示す原因が含まれます [2]。ソースgNBは、このコマンドを受信すると、UEに関連するリソースを解放します [1]。
5. ハンドオーバー中のセキュリティ手順 (3GPP TS 24.501)
5Gネットワークにおけるセキュリティは、UEとAMF間のNAS(Non-Access Stratum)メッセージの整合性保護と暗号化を通じて確保されます [10]。この多層的なアプローチは、UEからAMFまでの堅牢なセキュリティを保証します。
NASセキュリティコンテキストは、通常、AMFとUE間の一次認証および鍵合意手順の結果として確立されます [28]。このコンテキストは、AMFがセキュリティモード制御手順を開始する際、N1モードからN1モードへのハンドオーバー中、またはS1モードからN1モードへのインターシステム変更中に使用されます [28]。
ハンドオーバー中に新しいNASセキュリティコンテキストを使用する場合、AMFはSECURITY MODE COMMANDメッセージ(3GPP TS 24.501で定義)を開始します [27]。このメッセージは、新しい5G NASセキュリティコンテキストのngKSI(key set identifier)を含み、新しいコンテキストで整合性保護されますが、暗号化はされません [27]。UEは、新しい5G NASセキュリティコンテキストで整合性保護され、暗号化されたSECURITY MODE COMPLETEメッセージで応答します [27]。この交換により、ハンドオーバー後のNASメッセージの安全な交換が確立または更新されます [28]。
5GSM(5G Session Management)メッセージは、通常、UL NAS TRANSPORTメッセージやDL NAS TRANSPORTメッセージなどのセキュリティ保護された5GMM(5G Mobility Management)メッセージに「ピギーバック」されることで間接的にセキュリティ保護されます [10]。これは、制御プレーンのセキュリティが、ユーザープレーンのモビリティと密接に連携していることを示しています。
6. ハンドオーバー中のQoS管理
5Gシステムでは、異なるサービスタイプ(例: インターネットデータ、音声、ビデオ)がそれぞれのパフォーマンス要件を満たすために、きめ細かなQoS管理が不可欠です [8]。
QFI(QoS Flow ID)は、PDUセッション内で異なるQoSフローを区別するために使用されます [8]。SDAP(Service Data Adaptation Protocol)層は、これらのQFIをUEとgNB間の適切な無線ベアラにマッピングする役割を担います [9]。これにより、各QoSフローが無線インターフェース上で適切なQoS処理を受けることが保証されます。
ユーザープレーンのデータは、gNBとUPF間のN3インターフェースを介してGTP-U(GPRS Tunnelling Protocol - User plane)トンネルでグループ化されます [9]。ハンドオーバー中、SMFはPFCP(Packet Forwarding Control Protocol)を介してUPF内の転送ルールを更新し、UEの新しいgNBへのパスをリダイレクトします [15]。このQoSの差別化とマッピングは、5Gネットワークが多様なサービス要件(例: eMBB、URLLC、mMTC)を同時にサポートする上で極めて重要です。
7. データハンドオーバーとVoNRハンドオーバーの違い
データハンドオーバーとVoNRハンドオーバーは、どちらもUEのモビリティをサポートしますが、音声サービスの固有の要件のために重要な違いがあります。
7.1. QoS要件の違い
VoNRは、IMS(IP Multimedia Subsystem)をサービスプラットフォームとして利用し、5G RANと5Gコアネットワークを介して音声サービスを提供します [29]。VoNRのQoSフローは、一般的なデータトラフィックとは異なる特定の5QI(5G QoS Identifier)値を使用します [29]。
-
5QI=5:
SIP(Session Initiation Protocol)シグナリングメッセージに使用されます。これは非GBR(Non-Guaranteed Bit Rate)QoSフローですが、最小限の遅延と高い信頼性でSIPシグナリング手順を完了するために高優先度で処理される必要があります [29]。 -
5QI=1: 音声パケット(
RTP: Real-time Transport Protocol)の転送に使用されるGBR(Guaranteed Bit Rate)QoSフローです [29]。これは、音声通話の品質を保証するために、特定の帯域幅と遅延要件が保証されることを意味します。 -
5QI=6-9: 一般的なインターネットデータに使用される非
GBRQoSフローです [29]。
一般的なデータハンドオーバーでは、主に非GBRのQoSフローが関係し、ベストエフォート型のサービスが提供されることがよくあります。しかし、VoNRでは、音声トラフィックのリアルタイム要件を満たすために、GBRフローが不可欠です。
7.2. RLCモードの違い
RLC(Radio Link Control)層は、データ転送の信頼性を管理します。VoNRでは、RLCモードの選択もデータハンドオーバーとは異なります [29]。
-
gNBは、SIPシグナリングには**RLC-AM(Acknowledged Mode)**を使用するDRB(Dedicated Radio Bearer)を使用します。RLC-AMは、セグメンテーション、再送信、重複検出/削除を提供し、シグナリングメッセージの信頼性の高い配信を保証します [9]。 - 音声トラフィック(
RTP)には、gNBは**RLC-UM(UnAcknowledged Mode)**を使用するDRBを使用します。RLC-UMは再送信を行いませんが、セグメンテーションをサポートします [9]。音声トラフィックはリアルタイム性が重要であり、わずかな遅延でもユーザーエクスペリエンスに影響を与えるため、再送信による遅延を避けるためにRLC-UMが選択されます。データハンドオーバーでは、通常、より高い信頼性が求められるため、RLC-AMがより一般的です。
7.3. ユーザーエクスペリエンスへの影響
VoNRは、VoLTEと同様に、従来の回線交換(CS)サービスと比較して、より優れたユーザーエクスペリエンスを提供します [30]。
-
音声品質:
AMR-WB(Adaptive Multi-Rate Wideband)やEVS(Enhanced Voice Services)などのより優れたコーデックを使用することで、よりクリアで自然な音声体験を提供します [29]。 -
通話セットアップ時間:
VoNRの通話セットアップ時間は、従来のCSサービスよりもはるかに高速です(2G/3Gの平均5秒に対し、VoLTEでは0.25〜2.5秒)[30]。 -
同時データ接続:
VoNR/VoLTEは、ユーザーが通話中に4G/5Gデータ接続を使用することを可能にし、ユーザーエクスペリエンスを向上させます [30]。
初期の5G展開ではVoNRがサポートされていない場合があり、その場合、音声通話の要求が4G(EPS Fallback)へのハンドオーバーをトリガーすることがあります [1]。これは、5GネットワークがまだVoNRサービスを完全にサポートしていない場合に、音声サービスを保証するためのメカニズムです。
8. メッセージシーケンスチャート
以下は、UEの測定報告とそれに続くN2ベースのハンドオーバーのメッセージシーケンスチャートです。
9. 結論
本報告書では、RRC_CONNECTED状態にあるUEがインターネットアクセス中に経験する、5Gネットワークにおける測定報告とN2ベースのインターgNBハンドオーバーの複雑なシーケンスを分析しました。この分析を通じて、5Gモビリティ管理の洗練された性質と、シームレスな接続を維持するために必要な複数のネットワーク機能とプロトコルの間の複雑な相互作用が明らかになりました。
UEの測定報告から始まり、gNBによるハンドオーバー決定、AMFを介したソースgNBとターゲットgNB間の調整、そして最終的なユーザープレーンパスの更新とリソースの解放に至るまで、各ステップは高度に調整されています。NGAPはgNBとAMF間の制御プレーンシグナリングを、PFCPはSMFとUPF間のユーザープレーン制御を可能にし、これらのプロトコルは5Gのサービスベースアーキテクチャ(SBA)の原則とCUPS(Control and User Plane Separation)の利点を活用しています [10]。
ハンドオーバープロセスにおけるセキュリティは、NASメッセージの整合性保護と暗号化を通じて、UEとAMF間で厳密に維持されます [27]。SECURITY MODE COMMANDおよびSECURITY MODE COMPLETEメッセージは、セキュアな通信を確立し、維持するために不可欠です。
データハンドオーバーとVoNRハンドオーバーの比較は、5Gネットワークが多様なサービスタイプにどのように対応しているかを浮き彫りにします。VoNRは、音声トラフィックのリアルタイム性と信頼性を保証するために、GBR QoSフロー(5QI=1)と非GBR高優先度シグナリングフロー(5QI=5)をRLC-UMおよびRLC-AMモードとともに利用するという、特定のQoS要件とRLCモード構成を必要とします [29]。これは、汎用的なデータサービスとは対照的であり、5Gが提供する柔軟性とサービス固有の最適化能力を示しています。
N2ベースのハンドオーバーは、Xnベースのハンドオーバーと比較して、より多くのシグナリングと潜在的な遅延を伴うことがありますが [1]、Xnインターフェースが利用できない場合や、異なるAMFドメイン間でのモビリティが必要な場合に、その適用範囲の広さから不可欠な選択肢となります。このバランスは、ネットワーク設計者がパフォーマンスと柔軟性の間で下す必要のある戦略的決定を反映しています。
全体として、5Gのモビリティ管理は、単に接続を維持するだけでなく、ユーザーエクスペリエンス、セキュリティ、および多様なサービス要件を最適化するために、ネットワークインフラストラクチャ全体で高度な調整と粒度の高い制御を必要とする複雑なエンジニアリングの偉業です。
引用文献
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