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1. 生成AIで作成する5Gシステム全体概要(2026年最新版)

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Last updated at Posted at 2025-04-15

目次
0. 電子書籍の紹介

  1. はじめに
  2. 5Gコアネットワーク(5GC)の概要
  3. 5G無線アクセスネットワーク(RAN)の概要
  4. ユーザー機器(UE)の概要
  5. 運用・保守・管理(OAM)の概要
  6. 5Gシステムにおける主要なインターフェースとプロトコル
  7. 最新の高性能・高機能な5Gシステムの主要な機能と特徴
  8. 5Gシステムコンポーネント間の関係
  9. 結論
  10. 関連ドキュメント
  11. 引用文献

0. 電子書籍の紹介

🔗 いちばんはじめの取扱説明書 5Gシミュレーション構築 Open5GS+UERANSIM編

1. はじめに

最新の高性能・高機能な5Gシステムアーキテクチャは、第3世代パートナーシッププロジェクト(3GPP)によって策定されており、その仕様は複数のリリースを通じて進化してきました。特にRelease 15は、商用展開に必要な一連の機能と機能の初期定義という点で重要な節目となりました。しかし、2026年現在の最新の高性能5Gシステム(5G-Advanced)を理解するためには、Release 18(5G-Advancedの最初のリリース)の完了と、現在進行中であるRelease 19の仕様(AI/MLのネイティブなネットワーク統合、高度なXRサポート、非地上系ネットワーク(NTN)の拡張など)を考慮することが不可欠です。

5Gシステムアーキテクチャの基本的な特徴の一つは、サービスベースアーキテクチャ(SBA) の採用です。このアーキテクチャでは、ネットワーク機能(NF)が共通のAPIインターフェースを介して、許可された他のNFにサービスを提供します。SBAは、以前の世代のアーキテクチャからの大きな転換であり、モジュール性、再利用性、クラウドネイティブアーキテクチャ、そして仮想化技術やソフトウェア技術(コンテナ化やKubernetes等)の活用を重視しています。この設計原則により、ユーザープレーン機能(UPF)と制御プレーン機能(CP NFs)は独立してスケーリングおよび進化することが可能になります。

5Gアーキテクチャの根底にある主要な原則には以下が含まれます:

  • ユーザープレーン(UP)機能と制御プレーン(CP)機能の分離(CUPS): トラフィックのルーティングと制御シグナリングを完全に分離。
  • 機能設計のモジュール化とステートレスなNFのサポート: UDSF(Unstructured Data Storage Function)などを活用し、NF自体は状態を持たず冗長性とスケーラビリティを高める。
  • サービスベースのインターフェース(SBI)の定義: HTTP/2およびRESTベースのAPIを採用。
  • ネットワーク機能の能力公開(NEF): サードパーティや外部アプリケーションへのAPI公開。
  • アクセスネットワーク(AN)とコアネットワーク(CN)間の依存性の最小化: 3GPPアクセス(NR/LTE)とNon-3GPPアクセス(Wi-Fi等)を統合する収束されたコアネットワーク。
  • AI/MLベースのネットワーク自動化: Release 18/19で導入されたNWDAF(Network Data Analytics Function)を中心としたインテリジェンスの統合。

全体的な5Gシステムは、ユーザー機器(UE)、次世代無線アクセスネットワーク(NG-RAN)、そして5Gコアネットワーク(5GC)という3つの主要なコンポーネントで構成されています。

下図は、5Gシステム全体の基本的な動き(制御プレーンによる接続確立から、ユーザープレーンによる実際のデータ通信まで)を直感的に理解するための、電源オンからブラウザアクセスによるデータ疎通までを示すシーケンス図です。
2026年現在の5G SA(スタンドアロン)環境における標準的なコールフローに基づいています。

2. 5Gコアネットワーク(5GC)の概要

5Gコアネットワーク(5GC)は、完全に サービスベースアーキテクチャ(SBA) に基づいて設計されています。このアーキテクチャでは、ネットワーク機能(NF)は明確に定義されたRESTful APIを通じて相互にサービスを提供・消費します。

2026年現在の5GCの大きな技術的特徴は以下の通りです:

  • クラウドネイティブとコンテナ化: ほぼすべての5GCコンポーネントがKubernetesなどのコンテナオーケストレーション基盤上でマイクロサービスとして動作し、動的なオートスケールを実現しています。
  • HTTP/2 (一部HTTP/3の議論) の採用: NF間の基本的な通信プロトコルとしてHTTP/2 (TCP/TLS) が採用され、高速でセキュアな多重化通信を実現しています。
  • ステートレスアーキテクチャ: UDSF(Unstructured Data Storage Function)等を用いて計算リソースと状態管理(ステート)を分離し、障害時の瞬時なフェイルオーバーを可能にしています。

2.1 アクセスおよびモビリティ管理機能(AMF)

アクセスおよびモビリティ管理機能(AMF: Access and Mobility Management Function)は、4G EPCネットワークにおけるMME(Mobility Management Entity)の「モビリティ管理およびアクセス制御」部分を独立・発展させたコア機能です。

AMFは、ユーザー機器(UE)からのコントロールプレーン(NAS: Non-Access Stratum)シグナリングを終端し、以下の役割を担います:

  • 登録管理と接続管理: UEのネットワークへの初期アタッチ、登録更新、および接続状態(CM-IDLE / CM-CONNECTED)の管理。
  • モビリティ管理: UEの移動に伴うハンドオーバ制御、ページングの実行、および位置情報(トラッキングエリア)の更新。
  • ネットワークスライシングの入口: ネットワークスライス選択機能(NSSF)と連携し、UEが要求するS-NSSAI(Single Network Slice Selection Assistance Information)に基づいて適切なスライスへの接続を許可。
  • 認証とセキュリティのゲートウェイ: AUSFと連携し、UEの正当性を確認するプロセスのトリガー役。
  • 非3GPPアクセスのサポート: Wi-Fiや衛星通信(NTN)など、3GPP標準以外のアクセス網からの接続(N3IWF経由)も統合的に管理。

5GCにおけるMME機能の分解(AMFとSMFへの分離)は、アーキテクチャ上の極めて重要な変更点であり、これによりセッションに依存しない純粋なモビリティ制御の最適化が可能となっています。

2.2 セッション管理機能(SMF)

セッション管理機能(SMF: Session Management Function)は、ユーザー機器(UE)のPDU(Packet Data Unit)セッションの確立、維持、変更、終了を管理する、5GCにおける中核的な要素です。

SMFは、4G EPCにおけるSGW-C(Serving Gateway Control Plane)とPGW-C(PDN Gateway Control Plane)、およびMMEが担っていたセッション管理機能を統合・高度化した存在です。

主な機能には以下が含まれます:

  • IPアドレスの割り当てと管理: UEに対するIPアドレス(IPv4/IPv6)またはEthernet MACアドレスの割り当て。
  • UPFの選択と制御: ユーザープレーンデータ転送を行うための最適なUPFを選択し、PFCP (Packet Forwarding Control Protocol) またはN4インターフェースを使用してパケットのルーティングルールや転送ルールをUPFに設定。
  • QoSとポリシーの適用: PCFから取得したポリシー(QoSルール)に基づき、PDUセッションレベルおよびQoSフローレベルでの帯域制御と優先度設定をUPFやgNBに対して指示。
  • ローミング機能のサポート: Local Breakout (LBO) などのローミングシナリオにおいて、訪問先(V-SMF)またはホーム網(H-SMF)としてのトラフィック制御。

4G EPCと5GCにおけるセッション管理機能の比較

5Gでは、CUPS(C-PlaneとU-Planeの分離)がアーキテクチャの基本理念として完全に組み込まれています。

2.3 ユーザープレーン機能(UPF)

ユーザープレーン機能(UPF: User Plane Function)は、ユーザーデータトラフィック(U-Plane)の処理を行い、無線アクセスネットワーク(RAN)と外部データネットワーク(インターネットや企業網、MECなど)間のパケット転送を担うルーターおよびゲートウェイとしての役割を果たします。

UPFは、以前の4GネットワークにおけるS-GW(ユーザプレーン)およびP-GW(ユーザプレーン)の機能を統合し、よりシンプルで柔軟なデータ転送を実現しています。主な機能は以下の通りです:

  • パケットルーティングと転送: NG-RANからのGTP-Uパケットをデカプセル化し、データネットワークへルーティング。またその逆を実行。
  • QoSの実行(Enforcement): SMFからN4インターフェース経由で指示されたQoSルール(パケットの優先付け、帯域制限、パケットドロップなど)を物理パケットに対して適用。
  • パケットインスペクション(DPI): アプリケーションの検出(Application Detection)や課金(Charging)のためのトラフィック分析。
  • MEC(Multi-access Edge Computing)との連携: UPFはネットワークエッジ(ユーザーに物理的に近い場所)に分散配置することが可能であり、UPF内でトラフィックのローカルブレイクアウトを行うことで、超低遅延サービス(URLLCなど)を実現します。

2.4 ポリシー制御機能(PCF)

ポリシー制御機能(PCF: Policy Control Function)は、5Gネットワーク全体のポリシーおよび課金ルールを統合的に管理・強制するためのルール決定エンジンです。4GにおけるPCRF(Policy and Charging Rules Function)を発展させたものです。

PCFは、ネットワークの要件やユーザーの契約情報に基づいて、通信の品質(QoS)、課金方法、トラフィックルーティングのルールを動的に決定します。
主な役割:

  • セッション管理ポリシー(SM Policy): SMFに対して、PDUセッションごとのQoSルールや帯域制御ルールを提供(N7インターフェース)。
  • アクセス・モビリティポリシー(AM Policy): AMFに対して、サービスエリア制限やRFSP(RAT/Frequency Selection Priority)などのモビリティに関するポリシーを提供(N15インターフェース)。
  • アプリケーション連携: アプリケーション機能(AF)やNEFから、特定のアプリケーションフローに対する帯域保証やルーティングの要求(Traffic Influence)を受け取り、それをポリシーに反映(N5 / N30インターフェース)。2026年時点では、AI/ML推論をベースとしたNWDAFからの分析データを受け取り、動的にQoSを変更する自己最適化ポリシー制御が実用化されています。

2.5 認証サーバー機能(AUSF)

認証サーバー機能(AUSF: Authentication Server Function)は、ユーザー機器(UE)が5Gネットワークに接続しようとする際の、認証プロセスを専門に処理する機能です。

5Gシステムではセキュリティ要件が大幅に強化されており、AUSFは以下の役割を果たします:

  • 5G-AKA (Authentication and Key Agreement) および EAP-AKA' の実行: 5Gにおける主要な認証プロトコルを処理し、ネットワークとUEの「相互認証」を担保します。
  • 暗号鍵の導出: 認証成功後、セキュリティアンカー(SEAF: AMF内に配置)に対して、暗号化および完全性保護のためのマスターキー($K_{SEAF}$ など)を提供します。
  • 非SIMベースの認証のサポート: プライベート5GやIoTシナリオにおいて、従来のUSIMカードだけでなく、証明書ベース(EAP-TLS等)の多様な資格情報をサポートする柔軟な認証フレームワークを提供します。
  • UDMとの連携: サブスクリプション情報と認証ベクタを取得するため、N13インターフェースを通じてUDM(Unified Data Management)と連携します。

2.6 ネットワークリポジトリ機能(NRF)

ネットワークリポジトリ機能(NRF: Network Repository Function)は、5Gのサービスベースアーキテクチャ(SBA)を機能させるための「電話帳」または「サービスディスカバリ(発見)」のハブとして機能します。

NRFにより、各ネットワーク機能(NF)は自身の提供するサービス(NFプロファイル)を登録・更新・登録解除し、他のNFが提供するサービスを動的に発見することが可能になります。
2026年現在の最新の5GC展開(特に大規模ネットワークやMEC環境)では、NRFは階層化(ローカルNRFとパブリック/グローバルNRFの分離など)され、分散クラウド環境におけるコンテナ化されたNFの自動スケーリングに追随してリアルタイムにルーティングを更新する重要な役割を担っています。

2.7 ネットワークスライス選択機能(NSSF)

ネットワークスライス選択機能(NSSF: Network Slice Selection Function)は、ユーザー機器(UE)のサブスクリプションとサービス要件、およびネットワークの負荷状況に基づいて、適切な「ネットワークスライス(論理ネットワーク)」を選択する役割を担います。

NSSFは、AMFからの要求に応じて、UEに許可されたS-NSSAI(Single Network Slice Selection Assistance Information)のリストを評価し、UEが接続すべきAMFセットや、セッションを管理する適切なSMFの選定を支援します(N22インターフェース)。Release 18以降では、NWDAF(ネットワークデータ分析機能)と連動し、特定のスライスの負荷や遅延状況をAIが予測して、NSSFがスライス選択を動的に最適化するユースケースが実用化されています。

2.8 統合データ管理(UDM)

統合データ管理(UDM: Unified Data Management)は、4GネットワークにおけるHSS(Home Subscriber Server)を進化させたもので、加入者(サブスクライバー)データの管理やアクセス権限の制御を行います。

UDMは以下のような機能を持ちます:

  • 加入者データの管理: ポリシー、アクセス権限、スライス情報(SUPI: Subscription Permanent Identifier に紐づくデータ)を管理。
  • SUCIからSUPIへの復号: 5Gのプライバシー強化機能として、UEから送信された暗号化識別子(SUCI)を恒久識別子(SUPI)に復号(SIDF: Subscription Identifier De-concealing Function を内包)。
  • 認証クレデンシャルの生成: AUSFに対して認証ベクタを提供。
    2026年のクラウドネイティブアーキテクチャでは、UDMはフロントエンドとしての役割に特化し、実際のデータ(状態)は後述のUDR(Unified Data Repository)に保存されるステートレスな構成(Data Layer Architecture)が標準となっています。

2.9 その他の重要な5GCネットワーク機能

2.9.1 ネットワーク公開機能(NEF)

ネットワーク公開機能(NEF: Network Exposure Function)は、5Gシステム内のネットワーク能力(QoS制御、デバイス状態、位置情報など)やイベントを、外部アプリケーション(サードパーティ開発者や企業システム)に対して安全にAPI公開(Exposure)するためのゲートウェイです。
2026年時点では、3GPP標準のCAPIF(Common API Framework)と統合され、APIの認証、課金、レート制限などを高度に制御することが一般的です。

2.9.2 セキュリティエッジ保護プロキシ(SEPP)

SEPP(Security Edge Protection Proxy)は、ローミングシナリオにおいて異なるオペレーター(PLMN)の5Gコアネットワーク間のシグナリングトラフィック(N32インターフェース)を暗号化・保護するプロキシです。
SEPP間ではPRINS(PRotocol for N32 INterconnect Security)が使用され、エンドツーエンドの機密性と完全性が保たれるため、ローミング時のトポロジ隠蔽やなりすまし防止において不可欠です。

2.9.3 アプリケーション機能(AF)

アプリケーション機能(AF: Application Function)は、外部またはオペレーター自身のアプリケーションサーバーであり、PCFやNEFと通信して、特定のアプリケーショントラフィックに対するQoSの要求や、トラフィックのルーティング変更(Traffic Influence)を5GCに指示します。エッジコンピューティング(MEC)環境において、トラフィックを最寄りのEdge UPFに曲げる(ローカルブレイクアウト)ための中心的な役割を担います。

2.9.4 統合データリポジトリ(UDR)

統合データリポジトリ(UDR: Unified Data Repository)は、サブスクリプションデータ(UDMが使用)、ポリシーデータ(PCFが使用)、外部公開データ(NEFが使用)など、5GC内の多様な構造化データの中央データベースです。これによりデータと処理の分離(ステートレスアーキテクチャ)が実現します。

2.9.5 ネットワークデータ分析機能(NWDAF)

ネットワークデータ分析機能(NWDAF: Network Data Analytics Function)は、5Gネットワーク内にAIおよび機械学習(ML)のインテリジェンスをネイティブに統合するための機能です。Release 18および19において、その機能は劇的に拡張されました。
NWDAFは、AMF、SMF、UPF、OAM(運用管理)、さらにはAFからデータを収集し、ネットワークの負荷予測、UEの移動予測、QoSの劣化予測、異常検知などをリアルタイムで計算します。得られたインサイト(推論結果)はPCFやNSSFにフィードバックされ、ネットワークの自律的な最適化(Self-Optimizing Network: SON)を推進します。

表1:主要な5Gコアネットワーク機能とその役割(2026年改訂版)

ネットワーク機能(NF) 略語 主な役割 主要なインターフェース (3GPP準拠)
アクセスおよびモビリティ管理機能 AMF UEのアクセス制御、モビリティ管理、登録管理 N1, N2, N8, N11, N12, N14, N22
セッション管理機能 SMF PDUセッション管理、IP割当、UPF制御 N4, N7, N10, N11
ユーザープレーン機能 UPF ユーザーデータの転送、パケットインスペクション、QoS実行 N3, N4, N6, N9
ポリシー制御機能 PCF QoSや課金ルールの決定、AMポリシーの提供 N5, N7, N15, N30, N36
認証サーバー機能 AUSF UEの認証プロセスの実行と鍵の導出 N12, N13
ネットワークリポジトリ機能 NRF NFのサービス登録、プロファイル保持、ディスカバリ N27
ネットワークスライス選択機能 NSSF UEに対する適切なネットワークスライスの選択とAMF割当 N22
統合データ管理 UDM 加入者プロファイル管理、SUPI復号、認証情報生成 N8, N10, N13, N35
ネットワーク公開機能 NEF 外部アプリ(AF)への安全な機能公開(APIゲートウェイ) N30, N33, N37, N51, N52
セキュリティエッジ保護プロキシ SEPP ローミング時のPLMN間シグナリングの暗号化・保護 N32
アプリケーション機能 AF アプリ要件に応じたトラフィック制御やポリシー調整の要求 N5, N33
統合データリポジトリ UDR 加入者データ、ポリシーデータの物理的な集中保存場所 N35, N36, N37
ネットワークデータ分析機能 NWDAF AI/MLを利用したデータ収集、異常検知、予測推論の提供 Nnwdaf (N23, N34等)

3. 5G無線アクセスネットワーク(RAN)の概要

5G無線アクセスネットワーク(NG-RAN: Next Generation Radio Access Network)は、5Gコアネットワーク(5GC)とユーザー機器(UE)を無線インターフェース(NR-Uu)を介して結ぶシステムです。
NG-RANアーキテクチャは、初期の非スタンドアロン(NSA: 4GコアであるEPCを利用)から、現在主流となっているスタンドアロン(SA: 5GCを利用)の両方の展開をサポートしています。2026年時点では、SAの普及に伴い、ネットワークスライシングやURLLC機能がRAN側でもフル稼働しています。

3.1 gNodeB(gNB)

gNodeB(gNB)は、5G NR(New Radio)における基地局であり、無線信号の送信と受信、および無線リソースの管理を担当します。
5GのgNBの最大の特徴は、アーキテクチャが論理的に**集中ユニット(CU: Central Unit)と1つ以上の分散ユニット(DU: Distributed Unit)**に分割されている点です。これにより、計算リソースのプール化(仮想化)や、柔軟なネットワーク展開(Cloud RAN / vRAN)が可能となっています。

2026年において、O-RAN(Open RAN)アライアンスによるオープン化が世界規模で標準採用されつつあり、特定のベンダーに縛られないマルチベンダー構成が主流です。O-RANアーキテクチャでは、gNBはさらに細分化され、インテリジェントな制御機能(RIC)と結合しています。

  • O-CU (Open Central Unit): CU-CP と CU-UP に分離。
  • O-DU (Open Distributed Unit): リアルタイム処理を担当。
  • O-RU (Open Radio Unit): アンテナと無線周波数処理を担当し、O-DUとは標準化された「Open Fronthaul」で接続。
  • RIC (RAN Intelligent Controller): O-RANアライアンスによって定義され、AI/MLベースの無線リソース最適化(xApp/rApp)を担うインテリジェント制御ノード。」

3.2 集中ユニット(CU)

集中ユニット(CU)は、gNBプロトコルスタックの非リアルタイムな上位レイヤーをホストする論理ノードです。具体的には、コントロールプレーンの RRC(Radio Resource Control) および、パケットデータ収束プロトコル(PDCP)、さらにユーザープレーンの SDAP(Service Data Adaptation Protocol) を処理します。

CUはさらに以下の2つに機能分離(CUPS)され、それぞれが E1インターフェース を介して接続されます。これにより、ユーザーデータトラフィックが増大した場合、CU-UPだけをスケールアウトさせるといった柔軟なサイジングが可能です。

  • CU制御プレーン(CU-CP): RRC(UE状態管理)、NGAP(AMFとの通信)、PDCPの制御面を処理。
  • CUユーザープレーン(CU-UP): SDAP(QoSフローのDRBへのマッピング)やユーザーデータ用PDCP(暗号化・ヘッダ圧縮)を処理。

3.3 分散ユニット(DU)

分散ユニット(DU)は、gNBプロトコルスタックのうち、厳密なリアルタイム性が要求される下位レイヤーをホストする論理ノードです。具体的には、無線リンク制御(RLC)層、媒体アクセス制御(MAC)層、および物理層(PHY)の上位部分を処理します。

DUは、F1インターフェースを介してCUに接続される一方、フロントホールインターフェースを通じて無線ユニット(RU)と接続されます。
2026年現在、O-RAN標準の普及により、DUとRU間のインターフェースはかつてのベンダー独自方式から、Open Fronthaul(O-RAN WG4策定)に基づくeCPRI(enhanced Common Public Radio Interface)通信へと完全に移行しています。これにより、サーバー用汎用プロセッサ(COTS)上に仮想化DU(vDU)をソフトウェアとして展開することが一般的です。

3.4 CUとDU間のF1インターフェース

F1インターフェースは、gNB内部でCUとDUを接続するための3GPP標準インターフェースです。このインターフェースの標準化は、基地局のコンポーネントを異なるベンダーから調達して組み合わせる(マルチベンダー相互運用性)ための最も重要な基礎となります。

F1は用途に応じて以下の2つに論理分割されます:

  • F1-C (Control Plane): CU-CPとDU間で、RRCシグナリングメッセージや、システム情報の配信、ページング、UEコンテキストの管理などの制御情報を転送します(F1APプロトコルを利用)。
  • F1-U (User Plane): CU-UPとDU間で、ユーザーのデータパケットを転送します(GTP-Uトンネルを利用)。

3.5 その他の重要なRANコンポーネントとインターフェース

5G RANを構成する上で、CU、DU、RU、F1以外にもネットワークの安定性やモビリティを担保する重要なインターフェースが存在します。

  • Xnインターフェース:
    隣接するgNB間(具体的にはgNB-CU間)を結ぶインターフェースです。Xn-C(コントロールプレーン)とXn-U(ユーザープレーン)からなり、UEの基地局間ハンドオーバ(Xnハンドオーバ)時のシグナリングや、ハンドオーバ中のデータ転送(データロスを防ぐためのフォワーディング)、およびデュアルコネクティビティ(DC)の制御に使用されます。
  • NGインターフェース:
    NG-RAN(gNB)と5Gコアネットワーク(5GC)を結ぶバックホールインターフェースです。N2(gNB-CU-CPとAMF間の制御シグナリング)およびN3(gNB-CU-UPとUPF間のユーザデータ転送)を包括して「NGインターフェース」と呼びます。
  • 無線ユニット(RU / O-RU):
    アンテナとデジタル・アナログ変換(DAC/ADC)、電力増幅、および一部の低レベル物理層処理(FFT/IFFT、ビームフォーミング等)を担います。2026年では、超多素子アンテナを用いるMassive MIMO対応のO-RUが一般的となり、AIを用いた波束制御(Beam Management)がRU内部あるいはDUからの指示で高度に実行されています。

表2:主要な5G RANコンポーネントとインターフェースまとめ(2026年改訂版)

コンポーネント / IF 説明 主要なプロトコル / 関連IF
gNB 5G NR基地局。無線送信・受信、リソース管理を担当。 NG, Xn, F1, Uu
CU-CP RRC, PDCP-Cをホストする集中ユニット制御プレーン。 F1-C, E1, N2(NG-C), Xn-C, E2
CU-UP SDAP, PDCP-Uをホストする集中ユニットユーザープレーン。 F1-U, E1, N3(NG-U), Xn-U
DU RLC, MAC, High-PHYをホストする分散ユニット。リアルタイム処理。 F1-C/U, Open Fronthaul, E2
RU (O-RU) 無線周波数(RF)とLow-PHYをホストするアンテナユニット。 Open Fronthaul (eCPRI)
F1 CUとDU間を接続する3GPP標準インターフェース。 F1AP, GTP-U
E1 CU内部でCU-CPとCU-UPを分離・接続するインターフェース。 E1AP
Xn 隣接gNB間を接続。高速ハンドオーバやDC制御を実現。 XnAP, GTP-U
NG (N2/N3) gNBと5GC(AMF/UPF)を接続するインターフェース。 NGAP, GTP-U

4. ユーザー機器(UE)の概要

4.1 ユーザー機器(UE)の基本構造と役割

ユーザー機器(UE: User Equipment)は、5Gネットワークに接続されるエンドユーザー端末またはIoTデバイスであり、ユーザーとネットワーク間の最終的なインターフェースを担います。

UEは、論理的に以下の2つの主要な機能ブロックで構成されます:

  • モバイル機能(MT: Mobile Termination): 無線通信に関するすべてのプロトコル処理(ベースバンド処理)を行う中核。SIM(USIM)との通信やネットワークとの認証・セッション管理を行います。
  • 端末装置(TE: Terminal Equipment): アプリケーション(OS、Webブラウザ、動画再生など)を実行し、ユーザーにインターフェースを提供する装置。

2026年現在の高性能な5G-Advanced対応UEでは、物理層(PHY)や通信制御においても AI/MLモデルがネイティブに組み込まれる(Release 18の機能) ようになり、専用のNPU(Neural Processing Unit)がベースバンド処理の一部(チャネル推定やビーム管理の最適化など)を担うアーキテクチャが一般化しています。

UEは、単なるデータの送受信機ではなく、ネットワークスライスの選択トリガー(URSPポリシーに基づく判断)QoS要求の通知高度な省電力制御(WUS: Wake-Up Signal等) を実行する、ネットワークエコシステムにおける能動的なアクターとして機能します。

4.2 UEプロトコルスタック(5GSM/5GMM/RRC/SDAP/PDCP/RLC/MAC/PHY)

UEは、5Gネットワークと通信するために高度に階層化されたプロトコルスタックを備えています。スタックは大きく分けて、コアネットワーク(AMF/SMF)と直接対話する 非アクセス層(NAS: Non-Access Stratum) と、基地局(gNB)と通信する アクセス層(AS: Access Stratum) に分かれます。

  • NAS層
    • 5GMM (5G Mobility Management): ネットワークへの登録、認証、位置登録更新、およびセキュアなコンテキストの確立を管理。
    • 5GSM (5G Session Management): PDUセッションの確立、変更、解放、およびIPアドレス/QoSルールの要求を管理。
  • AS層
    • RRC (Radio Resource Control): 制御プレーンの中心。システム情報(SIB)の受信、接続確立・解放、ハンドオーバ制御、測定報告を実施。
    • SDAP (Service Data Adaptation Protocol): 5Gで新設。QoSフローとデータ無線ベアラ(DRB)のマッピングを処理。
    • PDCP (Packet Data Convergence Protocol): ヘッダ圧縮(ROHC/EHC)、暗号化と完全性保護、パケットの順序制御と重複排除。
    • RLC (Radio Link Control): 上位層パケットのセグメンテーション(分割)とリアセンブル(結合)、およびARQによる再送制御。
    • MAC (Medium Access Control): 論理チャネルとトランスポートチャネルのマッピング、HARQ(ハイブリッドARQ)処理、スケジューリングの実行。
    • PHY (Physical): 変調・復調、チャネルコーディング(LDPC/Polar符号)、マルチアンテナ(MIMO)処理。

4.3 5G対応デバイスの種類(スマートフォン、IoT、車載デバイスなど)

2026年の5Gシステムでは、ユースケースの多様化に合わせて様々なプロファイル(カテゴリ)のUEが標準化されています。特にRelease 17〜19にかけて、低コスト・省電力向けの端末カテゴリが充実しました。

デバイスタイプ ターゲットユースケース 3GPPの主要な分類・特徴 概要
スマートフォン・PC eMBB (大容量高速通信) 通常のNR端末 サブ6GHzおよびミリ波(FR2)にフル対応。Massive MIMOを活かしたGbps級の通信。
RedCap (Reduced Capability) 産業IoT、スマートウォッチ RedCap (Rel-17), eRedCap (Rel-18) 帯域幅を20MHz(FR1)に制限し、アンテナ数を削減(1Rx/2Rx)することで、従来のNR端末よりコストと消費電力を大幅削減。LTE Cat-1/4の置き換え。
Ambient IoT (ゼロエナジー) 物流トラッキング、環境センサ Ambient IoT (Rel-19) 電池を搭載せず、周囲の電波(環境発電)やバックスキャッタリングを利用して通信する究極の省電力・超低コストタグ。
車載デバイス (OBU) C-V2X / URLLC NR V2X (PC5インターフェース) 基地局を介さない端末間直接通信(Sidelink)に対応し、ミリ秒単位の超低遅延で自動運転の協調制御を実現。
FWA (Fixed Wireless Access) CPE 家庭/企業向けブロードバンド FWAルーター 光ファイバーの代替。高利得の指向性アンテナを備え、ミリ波等を活用して安定した大容量通信を提供。

4.4 UEとネットワーク間の認証・暗号化機能

5Gのセキュリティは、従来の4Gの弱点(IMSIキャッチャー等による盗聴リスク)を克服するためにゼロトラストアーキテクチャに近い概念を取り入れています。

  • SUPIとSUCI: UEの永続的な識別子(SUPI: Subscription Permanent Identifier)は、ネットワークに送信される前にホームネットワークの公開鍵を用いてSUCI (Subscription Concealed Identifier) に暗号化されます。これにより、無線区間でのアイデンティティ盗聴を防止します。
  • 5G-AKA と EAP-AKA': ネットワーク(AUSF/UDM)がUEを認証するだけでなく、UEもネットワークが「本物のホームネットワーク」であることを確認する強固な相互認証を実施します。
  • 鍵階層構造: 認証成功後、K_AUSFからK_SEAF、K_AMF、そして無線区間用のK_gNBへと鍵が派生します。
  • ユーザープレーンの完全性保護(Integrity Protection): 5Gでは制御プレーンだけでなく、必要に応じて ユーザーデータ(U-Plane)に対しても改ざん検知(完全性保護) を適用できます(これまでは暗号化のみでした)。

4.5 UEにおけるネットワークスライスおよびQoS管理

UEにおけるスライスとQoS(Quality of Service)の扱いは、アプリケーションが要求する通信品質をネットワーク全体で実現するための出発点です。

  • URSP (UE Route Selection Policy): PCFからUEに対して事前にプロビジョニングされるルールセットです。UE内のOSやモデムは、アプリケ−ション(例:動画アプリ、業務アプリ)のトラフィックをどのS-NSSAI(ネットワークスライス)、どのDNN(Data Network Name)、どのPDUセッションに割り当てるべきかをURSPに基づいて決定します。
  • QoSフローのマッピング: UEから送信されるアップリンクデータは、SDAP層において、SMF/gNBから指定されたQoSルール(QFI: QoS Flow Identifier)に基づき、適切なDRB(データ無線ベアラ)にマッピングされます。これにより、無線区間での適切な優先度制御(スケジューリング)が行われます。

5. 運用・保守・管理(OAM)の概要

5.1 OAMの定義と重要性

OAM(Operations, Administration, and Maintenance:運用・管理・保守)は、5Gネットワークのライフサイクル全体(プランニング、展開、監視、最適化、修復)を支える管理機能の総称です。
2026年の5G-Advanced時代においては、ネットワークが高度に仮想化・スライス化されており、人手による運用は限界を迎えています。そのため、3GPPやTM Forumは Autonomous Networks(自律型ネットワーク) の概念を推進しており、OAMは「レベル4(高度な自律)からレベル5(完全な自律)」の自動化を目指すシステムの頭脳としての役割を担っています。

OAMの重要性は以下の点に集約されます:

  • Intent-driven Management(インテント駆動型管理): 「何をしたいか(インテント)」をシステムに指示するだけで、OAMが自動的に具体的な設定を計算し適用する。
  • End-to-End スライスマネジメント: 無線(RAN)、トランスポート、コアにまたがるスライスを統合的に生成・監視・課金する。
  • AI/MLの閉ループ制御: NWDAFやMDA(Management Data Analytics)を利用して、障害を事前予測して自己修復(Self-Healing)を行う。

5.2 3GPPのOAM管理体系

3GPPにおけるOAM機能でもSBAの概念は管理プレーンにも適用されており、OAMサービスもSBI(RESTful API)として定義されています。

主要な仕様群のカテゴリ (2026年最新版):

  • アーキテクチャとフレームワーク: サービスベースの管理アーキテクチャ(SBMA)の定義。
  • ネットワークリソースモデル: NRM: 5Gネットワークの各要素(gNB、AMF、SMF等)のデータ構造(YANGモデル等)を定義。
  • インテント駆動型管理: Release 17/18で拡張された、ビジネス目標をインテントとしてOAMに入力し、自律的にネットワークを構成する仕様。
  • 管理データ分析: MDA: OAMレイヤーでのAI/MLを活用したデータ分析サービス(Management Data Analytics)。

5.3 ネットワーク管理機能(FCAPS)

FCAPSは、ISO/ITU-Tによって定義されたネットワーク管理の5つの基本カテゴリであり、3GPP OAMもこの枠組みに準拠して詳細化されています。

機能カテゴリ 説明 関連する3GPP OAMの働き
Fault (障害管理) 異常の検出、アラームの相関分析、自己修復。 AIによるアラームストームの抑止と根本原因分析(RCA)。
Configuration (構成管理) パラメータの設定、ソフトウェア更新、プロビジョニング。 YANGモデルに基づくNetconf/RESTCONF設定。ZTPの実行。
Accounting (課金管理) リソース利用状況の記録、スライスごとの課金。 コンテナ化環境での使用リソース(CPU/メモリ等)ベースの従量課金。
Performance (性能管理) KPIの収集、スループットや遅延の監視。 ストリーミングテレメトリによるミリ秒単位のリアルタイムメトリクス収集。
Security (セキュリティ) 鍵の管理、アクセス制御、ログ監査。 ゼロトラスト環境における証明書の自動ローテーション。

5.4 トポロジ管理と自動構成(ZTP: Zero-Touch Provisioning)

ZTP(ゼロタッチプロビジョニング)は、現場にハードウェア(基地局のRUやDU、あるいは汎用サーバー)を設置し、電源とネットワークケーブルを接続するだけで、手動設定なしに運用開始状態まで持っていく技術です。

2026年のO-RANおよび3GPPの連携(SMO: Service Management and Orchestration)においては、ZTPは単なる初期設定ツールから、AIを活用した動的トポロジ管理とSelf-Organizing Network (SON) と深く結びついています。

ZTPとトポロジ自動構築のフロー:

  1. 物理設置と起動: デバイスがDHCP/SLAACでIPを取得。
  2. セキュリティ認証: デバイス内の証明書(TPM)を用いてOAM/SMOシステムと相互認証(Plug and Play機能)。
  3. ソフトウェアと設定のダウンロード: 自身の役割に応じた最新のコンテナイメージと設定(YANG構成)をダウンロード。
  4. トポロジの自動発見: LLDP等を利用して隣接ノードを検出し、OAMシステム内のNRMトポロジツリーを自動更新。
  5. サービスイン: F1/NGインターフェースを自動確立し、セルを電波発射状態に移行。

5.5 分析・監視とAIの活用(Analytics, NWDAF, Telemetry)

5G-AdvancedシステムのOAMにおける最大の進化は、AI/ML推論とリアルタイム・ストリーミング・テレメトリの統合です。旧来のSNMP(数分おきのポーリング)は、gRPCベースのテレメトリ(イベント駆動・ミリ秒単位)に置き換わりました。

このインテリジェンスの中核となるのが以下の要素による閉ループ制御(Closed-loop Automation) です:

  • Telemetry(テレメトリ): RANや5GCから、パケット遅延、CPU使用率、無線品質などの膨大なデータを継続的にOAMやNWDAFにプッシュします。
  • NWDAF (Network Data Analytics Function): ネットワーク内部(コア側)に位置し、トラフィック予測やQoS異常検知を行います。
  • MDA (Management Data Analytics): OAM層に位置し、NWDAFのデータや、インフラ(サーバー、ルーター)のデータを横断的に分析し、全体最適化の意思決定を行います。

これにより、障害が発生するにリソースを増強したり、干渉を回避するためにビーム方向をAIが自動調整するといった「プロアクティブ(予防的)なネットワーク運用」が実現されています。

2026年現在の最新技術(Release 18/19に基づく5G-Advancedの機能、AI/MLの統合、NTN、最新のプロトコルトレンドなど)を網羅して詳述します。


6. 5Gシステムにおける主要なインターフェースとプロトコル

5Gシステムは、コンポーネント間でシームレスな通信を実現するために、厳密に標準化されたインターフェースとプロトコルスタックを利用しています。2026年の5G-Advancedアーキテクチャでは、従来の通信プロトコルに加え、IT業界標準のWebプロトコル(HTTP/2、さらにはHTTP/3)が深く統合されています。

6.1 RANとコアネットワーク間のNGインターフェース

NGインターフェースは、NG-RAN(無線アクセスネットワーク)と5GC(5Gコアネットワーク)を結ぶ主要な境界インターフェースです。このインターフェースは、コントロールプレーン(N2)ユーザープレーン(N3) に明確に分離されており、アーキテクチャの基本原則であるCUPS(制御・ユーザー分離)を体現しています。

  • N2インターフェース(制御プレーン): gNB(具体的にはCU-CP)とAMF間を結びます。ここでは、NGAP(NG Application Protocol) が使用され、SCTP(Stream Control Transmission Protocol)上で転送されます。UEのコンテキスト管理、PDUセッションリソースの設定、ハンドオーバの調整などを担います。
  • N3インターフェース(ユーザープレーン): gNB(具体的にはCU-UP)とUPF間を結びます。ユーザーの実際のデータトラフィックは、GTP-U(GPRS Tunneling Protocol User plane) によってカプセル化され、UDP/IP上で転送されます。

6.2 コアネットワーク内のNF間のサービスベースインターフェース(SBI)

5GCのコントロールプレーンは、各NF(ネットワーク機能)がAPIを公開し合うサービスベースインターフェース(SBI) を採用しています。

2026年時点のSBIの特徴と使用プロトコルは以下の通りです:

  • アプリケーション層: HTTP/2(一部のRelease 18/19実装では、遅延低減のためにQUIC上のHTTP/3の採用も進行中)とRESTful API(JSON形式) を使用。
  • セキュリティ: トランスポート層のセキュリティとしてTLS 1.3が標準化されており、さらにアプリケーション層の認証・認可としてOAuth 2.0(NRFが認可サーバーとして機能)を使用します。
  • これにより、AMF、SMF、PCF、UDMなどの各NFは、クラウドネイティブ環境(Kubernetes等)で相互にHTTPリクエスト/レスポンス(GET, POST, PUT, DELETE, PATCHなど)を交換し、疎結合かつ動的に連携します。

6.3 ユーザー機器(UE)とネットワーク間の無線インターフェース

UEとgNB間の無線インターフェースはNR-Uu(New Radio User-to-Network Interface) と呼ばれます。
このインターフェースは、サブ6GHz帯(FR1)からミリ波帯(FR2)、さらにはRelease 18以降で活用が進むより高い周波数帯(サブテラヘルツ帯への布石)にまで対応する拡張性の高い設計(OFDMベースの柔軟なサブキャリア間隔、スロット構成)を持っています。

6.4 その他の重要なインターフェースとプロトコル

  • PFCP (Packet Forwarding Control Protocol): N4インターフェースにおいて、SMF(コントロールプレーン)がUPF(ユーザープレーン)に対して、パケットの転送、破棄、QoSマーキング、利用量報告などのルール(FAR, PDR, URR, QER等)を指示するためのプロトコル。
  • NAS (Non-Access Stratum): UEとAMF間で、gNBを透過的に通過(トンネリング)してやり取りされる制御プロトコル。モビリティ管理(登録、認証等)とセッション管理のメッセージが含まれます。
  • XnAP (Xn Application Protocol): gNB間のXnインターフェース上で動作し、ハンドオーバのネゴシエーションやデュアルコネクティビティ(DC)の制御に使用されます。

7. 最新の高性能・高機能な5Gシステムの主要な機能と特徴

2026年現在、5Gシステムは「5G-Advanced(Release 18およびRelease 19)」のフェーズに突入しており、単なる高速通信インフラから、AIを内包した「インテリジェントな社会基盤」へと進化しています。

7.1 ネットワークスライシング

ネットワークスライシングは、単一の物理インフラストラクチャ上に、特定の要件(遅延、帯域、セキュリティ、信頼性)を満たす論理的に独立した仮想ネットワーク(スライス) を複数構築する技術です。

2026年時点では、コアネットワーク(5GC)だけでなく、RAN(無線区間)やトランスポート網(光ファイバー網)においてもスライス間の厳格なリソース分離(Hard Slicing)が可能となっており、SLA(Service Level Agreement)をエンドツーエンドで保証する商用サービスが広く普及しています。

7.2 Multi-access Edge Computing(MEC)

MEC(Multi-access Edge Computing)は、ETSI ISG MECによって標準化が進められ、3GPPのアーキテクチャとも深く統合されています。コンピューティングリソース(サーバー)をコアネットワークの中心部ではなく、基地局の近く(ネットワークエッジ) に配置することで、物理的な伝送遅延を極限まで削減します。

5Gシステムにおいては、UPFの分散配置(Edge UPF) と、AF(Application Function)からのトラフィック迂回指示(Traffic Influence)により、特定のアプリケーショントラフィックをインターネットに出すことなくローカルで処理(ローカルブレイクアウト)します。

7.3 超高信頼性・低遅延通信(URLLC)

URLLC(Ultra-Reliable Low Latency Communication)は、産業用ロボット制御や自動運転など、パケットロスが許されず、かつ即時性が求められるミッションクリティカルな要件に対応する機能です。
技術要素:

  • ミニスロット(Mini-slot): データを通常の14シンボル(スロット)ではなく、2〜7シンボル単位で送信し、即座に無線区間にパケットを送り出します。
  • プリエンプション(Pre-emption): 実行中のeMBB(大容量通信)のスケジュールを強制的に中断し、URLLCトラフィックを最優先で割り込み送信します。
  • PDCP Duplication(複製転送): 全く同じデータパケットを異なる周波数や基地局(デュアルコネクティビティ)経由で同時に複製送信し、片方が失敗してももう一方が届くことで、信頼性「99.999%(ファイブナイン)以上」を達成します。

7.4 大容量多接続(mMTC)とIoTの拡張

mMTC(Massive Machine Type Communication)は、1平方キロメートルあたり100万台規模のデバイスを収容する技術です。
2026年(Release 18/19)における最大の変化は、IoT対応デバイスのバリエーションの劇的な拡大です:

  • RedCap (Reduced Capability) / eRedCap: ビデオ監視やウェアラブルデバイス向けに、スマートフォンほどの性能は不要だが、従来のLPWA(NB-IoT等)よりは速度が必要な領域を埋める中間層のデバイス。
  • Ambient IoT: Release 19の目玉技術の一つであり、電池を持たず、周囲の電波をエネルギー源(環境発電)として通信する超小型・超低コストのタグ。物流管理などでRFIDを代替し、基地局(gNB)と直接通信します。

7.5 5G-Advanced (Release 18/19) とその他の高度な機能

2024年から標準化が完了し、2026年現在、標準化が完了し初期の商用検証・展開が開始されている5G-Advanced(Release 18/19)には、以下の革新的な機能が含まれます。

  1. AI/MLのネイティブ統合 (AI/ML for Air Interface & Core)
    • RANのAI化: 無線チャネル状態情報(CSI)の圧縮とフィードバック、ビーム管理、測位(ポジショニング)の精度向上に、機械学習モデル(ニューラルネットワーク等)が標準規格として導入されています。
    • NWDAFの高度化: コアネットワーク側では、AIがスライスのSLA違反を予測したり、UEのトラフィックパターンを学習してSMFやPCFに最適なパラメータをサジェストします。
  2. XR (Extended Reality) とメタバースの最適化
    • AR/VRグラスなどのデバイス向けに、単なる帯域確保だけでなく、映像・音声・ハプティクス(触覚)など複数のデータフローの同期を保つ「Multi-modal QoS制御」が導入されています。
  3. 非地上系ネットワーク(NTN: Non-Terrestrial Networks)のシームレス統合
    • 低軌道衛星(LEO)や成層圏プラットフォーム(HAPS)が、地上のgNBと同じように5Gコア(AMF)に接続されます。これにより、海上、山間部、砂漠など地球上のどこにいても、通常の5Gスマートフォンで通信が可能になっています。
  4. ネットワーク省電力機能 (NES: Network Energy Savings)
    • トラフィックが少ない時間帯に、基地局のアンテナ素子やRUの電源をミリ秒レベルでAIが動的にオン/オフし、ネットワーク全体のカーボンフットプリントを劇的に削減します。

8. 5Gシステムコンポーネント間の関係

これまでに解説してきた5Gシステムの各コンポーネント(UE、RAN、5GCの各NF、外部ネットワーク)は、独立して動作するのではなく、3GPP標準で厳密に定義されたインターフェースを通じて緻密に連携し、単一の通信システムとして機能します。

2026年時点の5G-Advancedアーキテクチャ(Release 18/19準拠)における最大の特徴は、従来の「コントロールプレーン(C-Plane)」と「ユーザープレーン(U-Plane)」の分離(CUPS)に加え、NWDAFを中心とした分析・最適化の枠組み(本稿では概念的に「インテリジェンスレイヤー」と呼称)がシステム全体の中央に位置し、各コンポーネントからデータを収集して自己最適化のフィードバックループを形成している点です。

以下の図は、これらのコンポーネント間の包括的な関係と主要な参照点(Nインターフェース)を示しています。

システムコンポーネントの連携ハイライト

  1. エンドツーエンドのセッション確立: UEからN1を介して送られた要求をAMFが受信し、N11を介してSMFに渡します。SMFはPCF(N7)からルールを取得し、N4を介してUPFにパケット転送ルール(FAR)を設定し、同時にAMF(N2)経由でgNBに無線ベアラ(DRB)の確立を指示します。これによりUEからDNまでの通信パスが完成します。
  2. NWDAFによる閉ループ最適化: ネットワーク運用中、NWDAFはAMFやSMFから統計データ(負荷、パケット遅延など)を常時収集し、AIで分析します。その予測結果(例:「10分後に特定のセルで輻輳が発生する」)をPCFに通知し、PCFが動的にQoSポリシー(N7)を変更することで、輻輳を未然に防ぎます。

9. 結論

本レポートでは、2026年時点における最新の3GPP技術仕様(Release 18/19の5G-Advanced)に基づいた、5Gシステムの全体概要について解説しました。

5Gシステムは、当初のRelease 15における「単なる高速大容量の通信インフラ」から、以下のような画期的なアーキテクチャの進化を遂げています。

  • サービスベースアーキテクチャ(SBA)の完全な成熟: コアネットワーク(5GC)はクラウドネイティブなマイクロサービスとして構築され、NSSF、NRF、UDMといった各NFがHTTP/2やRESTベースのAPIを通じて動的かつステートレスに連携することで、前例のない柔軟性とスケーラビリティを獲得しました。
  • オープンで仮想化されたRAN(O-RAN): gNBはCU(集中ユニット)、DU(分散ユニット)、RU(無線ユニット)に分離され、汎用サーバー上でのソフトウェア処理(vRAN)と、AI搭載のRIC(RAN Intelligent Controller)による高度な無線リソース管理が標準化されました。
  • 多様なユースケースへの適応: ネットワークスライシングによる論理ネットワークの分割、エッジの超低遅延を実現するMEC、ミッションクリティカルなURLLC、そしてRedCapやAmbient IoTなどを包含するmMTCにより、あらゆる産業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を基盤から支えています。
  • AI/MLのネイティブな統合と自律化(Autonomous Networks): 5G-Advancedにおける最大のパラダイムシフトとして、NWDAFやOAMレイヤーにおけるMDA(Management Data Analytics)により、ネットワークは人間の手による監視から「AIによる自律的かつ予測的な最適化(Self-Healing / Self-Optimizing)」へと移行しました。
  • 非地上系ネットワーク(NTN)の統合: 衛星通信(LEO)が5Gアーキテクチャに直接組み込まれ、地球規模のユビキタスなカバレッジが実現しています。

結論として、2026年現在の5Gシステムは、通信事業者が単に「土管(パイプ)」を提供する存在から、アプリケーション(AFやNEFを介した連携)と密結合する 「インテリジェントなサービスプラットフォーム」 へと進化したことを証明しています。継続する3GPPの標準化活動(次世代の6Gに向けた研究を含む)により、このシステムは今後も持続可能性(省電力化)とパフォーマンスの極限を追求し、社会・経済の不可欠なインフラストラクチャとして発展し続けるでしょう。

10. 関連ドキュメント

🔗 記事を読む

11. 引用文献

本ドキュメントの更新・拡充において参照した、2026年現在の最新の3GPP仕様および業界標準は以下の通りです。

  1. 3GPP TS 23.501 (V18.x.x / V19.x.x): System Architecture for the 5G System (5GS). 5Gコアの全体アーキテクチャ、SBA、ネットワークスライシングの基礎。
  2. 3GPP TS 23.502 (V18.x.x / V19.x.x): Procedures for the 5G System (5GS). 各種NF間の詳細なシーケンス手順とコールフロー。
  3. 3GPP TS 38.300 (V18.x.x / V19.x.x): NR; NR and NG-RAN Overall description. 5G無線アクセスネットワーク(gNB, CU/DU分割)の全体像。
  4. 3GPP TS 23.288 (V18.x.x / V19.x.x): Architecture enhancements for 5G System (5GS) to support network data analytics services (NWDAF). AI/MLと分析機能のコア統合。
  5. 3GPP TS 29.500シリーズ (TS 29.500, 29.501, etc.): 5G System; Technical Realization of Service Based Architecture. SBIプロトコル、RESTful API、HTTP/2ルーティング。
  6. 3GPP TS 33.501 (V18.x.x): Security architecture and procedures for 5G System. 5G-AKA、SUPI/SUCI、SEPPなどのセキュリティ機構。
  7. 3GPP TS 28.532, TS 28.541 (V18.x.x): Management and orchestration; Generic management services and Network Resource Model (NRM). OAMアーキテクチャ、ZTP、FCAPS管理機能。
  8. 3GPP TS 29.244 (V18.x.x): Interface between the Control Plane and the User Plane nodes (PFCP). SMFとUPF間のパケット制御プロトコル。
  9. O-RAN Alliance Specifications (2025/2026 Releases): O-RAN Architecture Description, Open Fronthaul (eCPRI), Near-RT RIC / Non-RT RIC Interfaces (E2, A1, O1).
  10. ETSI ISG MEC / CAPIF: Multi-access Edge Computing Framework and Common API Framework for 3GPP Northbound APIs (NEF).
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