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11. 生成AIで作成する5Gシステムのサンプルメッセージシーケンス概要 : UE電源OFF 編

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目次


1. はじめに

本報告書は、5Gユーザー機器(UE)が電源をオフにする際に開始されるレジストレーション解除の複雑なプロセス、特にUEが5GMM-REGISTEREDCM-IDLE状態にあるシナリオについて詳述する。この状態は、UEが初期レジストレーションを完了し、接続性が確立されているものの、アクティブなデータ転送がなく待機中(待受中)である一般的なモバイルネットワークの状況を指す。この手順は、5Gシステム(5GS)の様々なネットワーク機能(NF)およびプロトコルレイヤ(アクセス層(AS)から非アクセス層(NAS)、そして5Gコア(5GC)に至るまで)にわたる協調的なシーケンスを伴う。このフローを理解することは、ネットワークアーキテクト、エンジニア、研究者にとって、効率的なリソース管理、シームレスなユーザーエクスペリエンス、および3GPP仕様への準拠を確保するために不可欠である。

1.1. 5Gシステムアーキテクチャと主要ネットワーク機能の概要

5Gシステムは、UEの接続性、モビリティ、およびセッションを集合的に管理するいくつかの相互接続されたNFで構成されている。この手順に関与する主要なNFは以下の通りである。

  • ユーザー機器 (UE): 電源オフを開始するモバイルデバイス。
  • gNB (次世代ノードB): UEとの無線通信を担当する5G無線アクセスネットワーク(NG-RAN)ノード。
  • アクセスおよびモビリティ管理機能 (AMF): モビリティおよびアクセス管理のための5GCにおける中央制御プレーンNFであり、NASシグナリングを処理する。
  • セッション管理機能 (SMF): IPアドレス割り当ておよびQoS(Quality of Service)制御を含むPDU(Protocol Data Unit)セッション管理を担当する。
  • ユーザープレーン機能 (UPF): PDUセッションのユーザープレーンデータ転送およびアンカリングを処理する。
  • 統合データ管理 (UDM): 加入者データを保存し、UEのレジストレーション情報を管理する。
  • ポリシー制御機能 (PCF): セッション管理およびモビリティのためのポリシー規則を提供する。

3GPPアーキテクチャの全体像は、これらの機能がどのように連携して5Gサービスを提供するかを理解する上で重要である。

1.2. 初期UE状態:5GMM-REGISTERED、CM-IDLE、PDUセッション確立済み

現状は、UEが「待受中」であるとする。これはUEがAMFとの初期レジストレーションを正常に完了した5GMM-REGISTERED状態を意味する。この「待受中」という表現は、UEがCM-IDLEモードにあることをさらに示唆している。CM-IDLEモードでは、RRC接続およびユーザープレーンリソースは電力消費を抑えるために解放されているが、NASシグナリング接続コンテキストはAMFとUEの両方に維持されている。PDUセッションは確立されているものの、そのユーザープレーン接続は非アクティブ化されている可能性がある。

1.3. 電源オフによるUE主導のレジストレーション解除の目的と範囲

UEが電源をオフにする際、そのリソースとコンテキストを解放するためにネットワークに明示的に通知する必要がある。これがUE主導のレジストレーション解除手順である。本報告書の範囲は、UEが電源オフを決定した時点から、5GSにおけるそのコンテキストが完全に解放されるまでのエンドツーエンドのシグナリングフローを網羅する。

表1:UEレジストレーション解除における主要5Gネットワーク機能とその役割

ネットワーク機能 UEレジストレーション解除(電源オフ)における役割
UE (User Equipment) 電源オフを決定し、レジストレーション解除要求を送信。NASおよびASレイヤのコンテキストを解放。
gNB (Next Generation NodeB) UEからの無線シグナリングを転送し、AMFからの指示に基づいて無線リソース(RRC接続、無線ベアラ)を解放。
AMF (Access and Mobility Management Function) UEからのレジストレーション解除要求を受信・処理。SMFおよびgNBにコンテキスト解放を指示。UDMとのレジストレーション情報を更新。
SMF (Session Management Function) AMFからの指示に基づき、関連するPDUセッションの解放を管理。UPFにユーザープレーンリソースの解放を指示し、PCFおよびUDMにセッション解放を通知。
UPF (User Plane Function) SMFからの指示に基づき、PDUセッションに関連するユーザープレーンリソース(IPアドレス、トンネル)を解放。
UDM (Unified Data Management) AMFおよびSMFからの要求に基づき、UEのレジストレーション情報およびセッション情報を更新・削除。加入者データ変更通知の購読を解除。
PCF (Policy Control Function) SMFからの指示に基づき、PDUセッションに関連するポリシー情報を解放。

2. 全体メッセージシーケンス図

UEの電源オフによるレジストレーション解除手順は、複数のネットワーク機能とプロトコルレイヤにわたる協調的なシーケンスである。以下のシーケンス図は、このプロセスの主要なメッセージ交換とフローを視覚的に表現している。

3. 詳細な手順の内訳:UE電源OFFによるレジストレーション解除

UEが電源をオフにする際のデレジストレーション(登録解除)手順は、複数のプロトコルレイヤとネットワーク機能(NF)を横断する、協調的なプロセスです。ここでは、UEが電力消費を抑えるために無線リソースを解放しているCM-IDLE (Connection Management - IDLE)状態から開始するシナリオを前提とします。

CM-IDLE状態のUEは、コアネットワークには登録済み(5GMM-REGISTERED状態)ですが、基地局(gNB)との間にアクティブな無線接続(RRC接続)を持っていません。そのため、電源オフを通知するNASメッセージ DEREGISTRATION REQUEST を送信するには、まずRRC接続を確立し、シグナリング用の経路を確保する必要があります。この一連の流れは、シーケンス図の3つの主要なグループに沿って説明します。


3.1. RRC接続確立とサービスリクエスト (CM-IDLEからCM-CONNECTEDへ)

この最初のフェーズは、CM-IDLE状態のUEがNASメッセージを送信できるように、コアネットワークへの接続を再開する手順です。UEはService Request手順を開始して、CM-CONNECTED状態へ移行します。

[0] - [1] ランダムアクセス手順

  • UE -> gNB : PRACH (Msg1)

  • gNB --> UE : RAR on PDSCH (Msg2)

    UEは、アップリンク同期を確立するため、まずPRACH(Physical Random Access Channel)を用いてランダムアクセスプリアンブル(Msg1)をgNBに送信します。gNBはこれに応答し、RAR(Random Access Response, Msg2)をPDSCH(Physical Downlink Shared Channel)で返信します。これにより、UEは初期のアップリンクタイミング調整と、後続メッセージを送信するためのリソース割り当て(Uplink Grant)を取得します。

[2] - [3] RRC接続設定

  • UE -> gNB : RRCSetupRequest (TS 38.331)

  • gNB -> UE : RRCSetup (TS 38.331)

    ランダムアクセスに成功すると、UEはRRC(Radio Resource Control)接続の確立を要求するRRCSetupRequest(Msg3)を送信します。この時点ではまだ基本的なシグナリング用の無線ベアラ(SRB0)しか確立されておらず、メッセージは共通制御チャネル(CCCH)で運ばれます。gNBは接続を許可すると、RRCSetup(Msg4)を返信し、SRB1の設定情報を含めます。

[4] RRC接続完了とNASメッセージの送信

  • UE -> gNB : RRCSetupComplete (Carrying NAS: Service Request)

    UEはRRCSetupメッセージに従ってSRB1を確立し、RRC接続が完了したことを示すRRCSetupCompleteをgNBに送信します。このメッセージには、**最初のNAS (Non-Access Stratum) メッセージである Service Request がカプセル化(piggybacked)**されています。これにより、UEはCM-IDLEからCM-CONNECTEDへの移行をコアネットワークに要求します。

[5] NASメッセージのAMFへの転送

  • gNB -> AMF : N2/NGAP: Initial UE Message (Carrying NAS: Service Request)

    gNBは、UEから受信したRRCSetupCompleteからNASメッセージを取り出し、Initial UE MessageとしてN2インターフェース(NGAPプロトコル)を介してAMF(Access and Mobility Management Function)に転送します。

3.1.1. 認証とNASセキュリティ設定

AMFはService Requestを受信すると、UEとの間でセキュリティコンテキストを確立または再確立するために、認証とNASセキュリティ手順を開始します。

  • [6] - [9] 認証手順

    • AMF -> gNB : Downlink NAS Transport (Carrying NAS: Authentication Request)
    • gNB -> UE : RRC DLInformationTransfer (Carrying NAS: Authentication Request)
    • UE -> gNB : RRC ULInformationTransfer (Carrying NAS: Authentication Response)
    • gNB -> AMF : Uplink NAS Transport (Carrying NAS: Authentication Response)

    AMFはAuthentication Requestを生成し、gNB経由でUEに送信します。UEはこれに応答し、Authentication Responseを返信します。このやり取りにより、UEとネットワークは相互に正当性を検証します。

  • [10] - [13] NASセキュリティ手順

    • AMF -> gNB : Downlink NAS Transport (Carrying NAS: Security Mode Command)
    • gNB -> UE : RRC DLInformationTransfer (Carrying NAS: Security Mode Command)
    • UE -> gNB : RRC ULInformationTransfer (Carrying NAS: Security Mode Complete)
    • gNB -> AMF : Uplink NAS Transport (Carrying NAS: Security Mode Complete)

    認証が成功すると、AMFはSecurity Mode CommandをUEに送信し、NASメッセージの暗号化(Ciphering)と完全性保護(Integrity Protection)を開始するよう指示します。UEはこれに応じてセキュリティ設定を有効化し、Security Mode Completeを返信します。この時点以降、UEとAMF間のすべてのNASメッセージは保護されます。

3.1.2. PDUセッションの再アクティベートとデータ無線ベアラの確立

NASセキュリティが確立されると、AMFはUEの既存のPDUセッションを再アクティベートするプロセスを進めます。

[14] - [15] SMFへのコンテキスト更新要求

  • AMF -> SMF : Nsmf_PDUSession_UpdateSMContext Request

  • SMF --> AMF : Nsmf_PDUSession_UpdateSMContext Response

    AMFは、UEがCM-CONNECTED状態に移行したことを、各PDUセッションを管理するSMF(Session Management Function)に通知します。これはNsmf_PDUSession_UpdateSMContextサービスオペレーションを呼び出すことで行われ、SMFはユーザープレーン(U-Plane)接続の再確立準備を開始します。

[16] UEコンテキストの初期設定要求

  • AMF -> gNB : N2/NGAP: Initial Context Setup Request

    AMFは、UEのコンテキスト(PDUセッション情報、セキュリティ情報、QoS要件など)をgNBに提供するため、Initial Context Setup Requestを送信します。このメッセージには、データ通信用の**データ無線ベアラ(DRB)**と、NASメッセージ用の追加のシグナリング無線ベアラ(SRB2)を確立するための設定情報が含まれます。

[17] - [18] 無線リソースの再設定

  • gNB -> UE : RRCReconfiguration

  • UE -> gNB : RRCReconfigurationComplete

    gNBは、AMFからの情報に基づき、RRCReconfigurationメッセージをUEに送信します。このメッセージにより、以下の設定が行われます。

    • AS (Access Stratum) セキュリティの有効化: RRCメッセージとユーザーデータの保護が開始されます。
    • SRB2とDRBの確立: NASメッセージ用のSRB2と、ユーザーデータ用のDRB(s)が設定されます。
    • QoSフローとDRBのマッピング: 各QoSフローが適切なDRBにマッピングされます。

    UEは設定を適用し、完了するとRRCReconfigurationCompleteをgNBに返信します。

[19] UEコンテキスト設定完了の報告

  • gNB -> AMF : N2/NGAP: Initial Context Setup Response

    gNBは、UEの無線リソース設定が完了したことをInitial Context Setup ResponseでAMFに報告します。

このフェーズが完了すると、UEはCM-CONNECTED状態に移行し、ユーザーデータの送受信や、後続のNASシグナリング(このシナリオではデレジストレーション要求)を送信する準備が整います。


3.2. UE主導のデレジストレーション(電源オフ)

RRC接続が確立され、UEがCM-CONNECTED状態になると、いよいよ電源オフのためのデレジストレーション手順を開始できます。このプロセスは主にNASレイヤで進行し、UEの登録情報をコアネットワークから削除します。

[20] デレジストレーション要求の送信

  • UE -> gNB : RRC ULInformationTransfer (Carrying NAS: DEREGISTRATION REQUEST)

    UEは電源オフを決定すると、DEREGISTRATION REQUEST NASメッセージを生成します。このメッセージには、デレジストレーションの理由として**"Switch off"**が明記されます。このNASメッセージは、確立されたSRB2(またはSRB1)上でRRC ULInformationTransferメッセージにカプセル化されてgNBに送信されます。

[21] AMFへのNASメッセージ転送

  • gNB -> AMF : N2/NGAP: Uplink NAS Transport (Carrying NAS: DEREGISTRATION REQUEST)

    gNBはUEから受信したNASメッセージを、N2インターフェースを介してUplink NAS TransportメッセージでAMFに転送します。

[22] - [29] コアネットワーク内でのコンテキスト解放

AMFはDEREGISTRATION REQUESTを受信すると、UEに関連するすべてのリソースを解放するシーケンスを開始します。

  • [22] PDUセッション解放のトリガー

    • AMF -> SMF : Nsmf_PDUSession_ReleaseSMContext Request

      AMFは、UEが持つ各PDUセッションについて、それを管理するSMFに対してNsmf_PDUSession_ReleaseSMContextサービスを呼び出し、セッションの解放を要求します。

  • [23] - [24] ユーザープレーン(UPF)リソースの解放

    • SMF -> UPF : N4 Session Release Request

    • UPF --> SMF : N4 Session Release Response

      SMFは、PDUセッションのユーザープレーンを担当するUPF(User Plane Function)に対し、N4インターフェースを介してセッション解放を要求します。UPFは該当セッションのリソース(トンネル情報など)を削除し、応答します。

  • [25] - [26] ポリシー(PCF)コンテキストの削除

    • SMF -> PCF : Npcf_SMPolicyControl_Delete Request

    • PCF --> SMF : Npcf_SMPolicyControl_Delete Response

      SMFは、セッションポリシーを管理するPCF(Policy Control Function)に対し、関連するポリシー情報の削除を要求します。

  • [27] - [28] UDMからのSMF登録情報の削除

    • SMF -> UDM : Nudm_UECM_Deregistration (DELETE /smf-registrations/{pduSessionId})

    • UDM --> SMF : 204 No Content

      SMFは、加入者情報を管理するUDM(Unified Data Management)に対し、このPDUセッションに関するSMFの登録情報を削除するよう要求します。これはHTTP DELETEリクエストとして実行されます。

  • [29] - [32] UDMからのAMF登録情報と購読情報の削除

    • AMF -> UDM : Nudm_UECM_Deregistration (DELETE /amf-3gpp-access)

    • UDM --> AMF : 204 No Content

    • AMF -> UDM : Nudm_SDM_Unsubscribe

    • UDM --> AMF : 204 No Content

      すべてのPDUセッションが解放された後、AMFはUDMに対して自身の登録情報(UEがどのAMFに登録されているか)の削除と、このUEに関する購読情報(例:加入者データの変更通知)の解除を要求します。これにより、UDMはUEがネットワークに登録されていない状態として記録します。

[33] - [34] デレジストレーションの承認

  • AMF -> gNB : N2/NGAP: Downlink NAS Transport (Carrying NAS: DEREGISTRATION ACCEPT)

  • gNB -> UE : RRC DLInformationTransfer (Carrying NAS: DEREGISTRATION ACCEPT)

    コアネットワーク内での処理が完了すると、AMFはDEREGISTRATION ACCEPT NASメッセージを生成し、gNB経由でUEに送信します。これにより、UEはネットワークが要求を正常に処理したことを確認できます。

[35] UEの最終処理

  • UE -> UE : Enter 5GMM-DEREGISTERED state

    DEREGISTRATION ACCEPTを受信したUEは、以下の処理をローカルで行います。

    • 5GMM-DEREGISTERED状態へ移行: ネットワークから登録解除された状態になります。
    • PDUセッションのローカル解放: すべてのPDUセッション情報を削除します。
    • ネイティブ5G NASセキュリティコンテキストの保持: 電源オフが理由の場合、次回の登録を迅速化するため、NASレイヤのセキュリティコンテキスト(鍵など)は保持します。

3.3. 無線リソースとN2コンテキストの解放

最後に、UEとgNB間、およびgNBとAMF間の接続を解放します。

[36] UEコンテキスト解放の指示

  • AMF -> gNB : N2/NGAP: UE Context Release Command (Cause: Deregistration)

    AMFは、このUEに関するコンテキスト(N2シグナリング接続)を解放するよう、UE Context Release CommandをgNBに送信します。理由として「Deregistration」が指定されます。

[37] RRC接続の解放

  • gNB -> UE : RRCRelease

    gNBは、AMFからの指示に基づき、UEに対してRRCReleaseメッセージを送信します。これにより、UEとgNB間の無線接続が切断されます。

[38] UEのASレイヤ解放処理

  • UE -> UE : Release RRC connection, Delete AS security context, Enter RRC_IDLE state

    RRCReleaseを受信したUEは、以下の処理を行います。

    • RRC接続の解放: SRB、DRBを含むすべての無線リソースを解放します。
    • ASセキュリティコンテキストの削除: 無線区間のセキュリティコンテキストを削除します。これはNASセキュリティコンテキストが保持されるのとは対照的です。
    • RRC_IDLE状態へ移行: 無線的に待機状態となり、この後電源がオフになります。

[39] コンテキスト解放完了の報告

  • gNB -> AMF : N2/NGAP: UE Context Release Complete

    gNBは、UEとの接続および関連リソースをすべて解放した後、AMFにUE Context Release Completeを送信して、手順全体の完了を報告します。これにより、gNBもUEに関する情報を削除します。

以上が、UEの電源オフに伴うデレジストレーション手順の全体像です。CM-IDLE状態からの開始、NASレイヤでのコアネットワークコンテキストの削除、そしてASレイヤでの無線リソースの解放という、体系的なプロセスを経て完了します。

表2:DEREGISTRATION REQUESTメッセージの主要情報要素

情報要素 (IE) 説明 関連仕様
5G-GUTI UEのグローバル一意識別子。 TS 24.501
Deregistration type レジストレーション解除の理由。このシナリオでは「Switch off」が指定される。 TS 24.501
Access Type レジストレーション解除が適用されるアクセスタイプ(3GPPアクセス、非3GPPアクセス、または両方)。 TS 24.501
**** (オプション) UEが利用不可になる期間。 TS 23.501
**** (オプション) セキュリティ保護されたNASメッセージをカプセル化するために使用。 TS 24.501

表4:UE電源オフによるレジストレーション解除中の5GMM状態遷移

5GMM状態 説明 関連仕様
5GMM-REGISTERED UEがネットワークに正常にレジストレーションされている初期状態。 TS 24.501
5GMM-SERVICE-REQUEST-INITIATED UEがService Request手順を開始し、ネットワークからの応答を待っている状態。 TS 24.501
5GMM-CONNECTED RRC接続が確立され、NASシグナリング接続がアクティブな状態。 TS 24.501
5GMM-DEREGISTERED-INITIATED UEがレジストレーション解除手順を開始し、ネットワークからの応答を待っている状態。 TS 24.501
5GMM-DEREGISTERED UEのレジストレーションがネットワークによって解除され、UEの位置がネットワークに不明な最終状態。 TS 24.501

表3:PDU SESSION RELEASE COMMANDメッセージの主要情報要素と原因値

情報要素 (IE) 説明 関連仕様
5GSM cause PDUセッション解放の理由を示す。例: #36 "regular deactivation" (通常の非アクティブ化)、#46 "out of LADN service area" (LADNサービスエリア外)。 TS 24.501
PTI (Procedure Transaction Identity) 手順のトランザクション識別子。 TS 24.501
**** (オプション) リソース不足などの場合にUEが再試行を待つべき時間を示すタイマー値。 TS 24.501
N1 SM delivery skip allowed indication (オプション) AMFがN1 SMコンテナのUEへの送信をスキップできるかを示す。 TS 24.501

表5:無線ベアラ(SRB/DRB)から論理チャネルへのマッピング概要

無線ベアラタイプ 論理チャネル 用途 関連仕様
SRB0 CCCH (Common Control Channel) 初期ネットワークアクセスおよびシステム情報交換のためのRRCメッセージ。 TS 38.331
SRB1 DCCH (Dedicated Control Channel) 一般的なRRCシグナリングおよびセキュリティ有効化前のNASメッセージ。 TS 38.331
SRB2 DCCH (Dedicated Control Channel) セキュリティ有効化後のNASメッセージ(SRB1より低優先度)。 TS 38.331
SRB3 DCCH (Dedicated Control Channel) EN-DC構成における特定のNR RRCメッセージ。 TS 38.331
DRB (Data Radio Bearer) DTCH (Dedicated Traffic Channel) ユーザープレーンデータ転送。1つ以上のQoSフローが1つのDRBにマッピングされる。 TS 38.300, TS 37.324

4. 詳細な分析と考察

UEの電源オフによるレジストレーション解除手順は、5Gシステムの設計におけるいくつかの重要な側面を浮き彫りにする。

  • UEの初期状態の影響: 本報告書で扱った「待受中」(CM-IDLE)のシナリオでは、UEはNASメッセージを送信するために明示的にRRC接続を確立する必要がある。これは、UEが既にアクティブなデータ通信を行っている(CM-CONNECTED)状態であれば不要なステップであり、ネットワークの負荷やUEの電力消費に直接影響する。この違いは、5GがUEの状態管理にどれだけきめ細かく対応しているかを示すものである。

  • 「Switch off」という解除タイプの重要性: この特定のタイプは、UEとネットワークが、UEが計画的にオフラインになることを認識していることを示唆している。これにより、ネットワークは、例えばSIMカードの取り外しやネットワーク主導の強制解除とは異なる、特定の最適化された動作を実行できる。最も顕著なのは、ネイティブ5G NASセキュリティコンテキストがUEとAMFの両方で保持されることである。これは、UEが次に電源をオンにした際に、同じネットワークに再接続する場合、完全な再認証プロセスをスキップし、より迅速なレジストレーションを可能にする。これは、ユーザーエクスペリエンスの向上とネットワークリソースの効率的な利用という観点から、非常に合理的な設計判断である。

  • レイヤ化されたセキュリティアーキテクチャ: ASセキュリティコンテキストが解放される一方でNASセキュリティコンテキストが保持されるという区別は、5Gの洗練された側面を示している。ASセキュリティは無線接続の存続期間に限定され、無線リソースの解放とともに破棄されるのに対し、NASセキュリティはUEのコアネットワークへの登録状態に紐付く、より永続的な性質を持つ。この分離により、無線接続とセキュリティの確立を独立して管理でき、効率的なハンドリングが可能となる。

  • PDUセッション解放の効率化: skip indicatorの存在も、効率化への強い意図を示している。UEがCM-IDLE状態であり、かつ電源オフが確実である場合、SMFはAMFに対してPDU SESSION RELEASE COMMANDのUEへの送信をスキップするよう指示できる。これは、UEが5GMMのDEREGISTRATION ACCEPTを受信した際にPDUセッションをローカルで解放するという動作に依存しており、不要な無線シグナリングを削減する賢明な最適化である。

  • サービスベースアーキテクチャ(SBA)の活用: この手順全体を通じて、5GコアネットワークにおけるSBAの広範な利用が明確に示されている。UDMとのインタラクションにおいて、RESTfulなサービスオペレーションが多用されていることは、5Gが従来のシグナリングプロトコルから脱却し、よりモジュール型でスケーラブルなマイクロサービスベースのアーキテクチャに移行していることを強調している。これにより、ネットワーク機能間の連携がより柔軟になり、新しいサービスの展開やネットワークの拡張が容易になる。

全体として、UEの電源オフによるレジストレーション解除手順は、5GシステムがUEの状態、リソース管理、およびセキュリティをきめ細かく、かつ効率的に処理するように設計されていることを示している。これは、UEの電力消費を最小限に抑えつつ、ネットワークリソースを最適化し、将来の高度なサービスをサポートするための基盤を築く上で不可欠な要素である。

5. 結論

本報告書は、5G UEが電源をオフにする際にCM-IDLE状態から開始されるレジストレーション解除手順について、包括的な分析を提供した。このプロセスは、UEの電源オフの決定から始まり、無線リソースの解放、NASレイヤでのレジストレーション解除、PDUセッションの解放、そしてコアネットワーク機能におけるUEコンテキストのクリーンアップに至るまで、多層的かつ協調的なシグナリングフローを伴う。

主要な結論として、以下の点が挙げられる。

  • 状態依存の効率性: UEがCM-IDLE状態にある場合、レジストレーション解除の前にRRC接続の確立が必要となる。この初期ステップは、5GシステムがUEの現在の状態に基づいて手順を適応させる柔軟性を持っていることを示している。
  • 「Switch off」の最適化: レジストレーション解除の理由が「Switch off」であることは、ネットワークがUEの計画的な離脱を認識し、ネイティブ5G NASセキュリティコンテキストを保持するといった特定の最適化を可能にする。これにより、UE再起動時のレジストレーションプロセスが迅速化される。
  • レイヤードセキュリティの設計: ASセキュリティコンテキストが無線リソースとともに解放される一方で、NASセキュリティコンテキストが保持されるという設計は、5Gの堅牢なレイヤードセキュリティアーキテクチャを反映している。これにより、効率性と柔軟性を両立させている。
  • SBAの活用: 5GCにおけるUDMとのRESTfulなインタラクションは、5Gのサービスベースアーキテクチャの成熟度を示しており、リソース管理の効率化と将来のネットワーク進化への適応性を高める。

総じて、5GシステムにおけるUEの電源オフによるレジストレーション解除手順は、電力効率、リソース管理、およびシームレスなユーザーエクスペリエンスを最適化するために、詳細かつインテリジェントに設計されていることが明らかになった。この複雑なシグナリングと状態管理の連携は、高性能な5Gモバイルネットワークを支える基盤技術の深さを示している。


引用文献

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