ビジネスの重要指標をモニターするために、ダッシュボードを作ったものの、時間の経過と共に、誰にも見られなくなってしまう、といった経験はありませんか?
そうなってしまう理由の1つに、そこから得られる情報がビジネスの改善に結びつかない、あるいは特定のアクションに結びつかないため、ダッシュボードの閲覧者にとってあえて見る必要がなくなってしまうことがあります。
そこで、ダッシュボードの閲覧者に役立つ効果的なダッシュボードを作成するうえで、おさえるべき4つのポイントを紹介いたします。
1. モニターすべきは遅行指標でなく先行指標です
「売上」、「閲覧数」、「サインアップ数」などの「後追い指標」をモニターしても、それらは既に起こった「結果」なので、もうすでにとき遅しです。つまり、望む結果を得るために行動を変えることができません。
そこでしっかりとモニターしなくてはいけないのが、「リピート率」、「エンゲージメント」といった「先行指標」です。「先行指標」の数値が悪かった場合、その時点で対処することで、最終的に望みたい結果である「遅行指標」に対して影響を与えることができます。
例えば、以下はあるスーパーの売上に関するダッシュボードですが、提示されているのは遅行指標ばっかりです。
このようなダッシュボードを見ていても、毎回結果に一喜一憂するばかりで、何の行動も取ることはできません。
しかし、例えばこの会社の売上に対する先行指標が「リピーター顧客の数」であった場合、この指標をダッシュボードを使ってモニターしていれば、必要なときに行動を起こせるようになります。行動を起こす必要があるかどうかを判断するために、このダッシュボードを見ようという気になるのです。
ところで、サブスクリプション型ビジネスの場合は、MRR(月間定期収益)やチャーン率の先行指標として「エンゲージメント」スコアがよく使われます。
しかし一般的に、先行指標は同じ「売上」に対するものであっても、それぞれのビジネスによって異なります。
そこでいくつかの仮説を立て、複数の候補となる先行指標を定期的にモニターし、そのうちのどれが実際に、遅行指標である売上に先行する関係を持っているのかをモニター、そして分析していくことになります。
そして分析の際には、先行指標と遅行指標の関係を調べるために相関分析をしたり、多変量解析をしたりすることになります。
多変量解析を使った先行指標の分析に興味がある方は以下のリンクをご参考ください。
2. 基準値無しで良し悪しの判断できません
私達人間は何かと比べないと、良いのか悪いのかよくわかりません。
にも関わらず、ただ指標の数値を並べただけのダッシュボードがよくあります。
こういうときには、前月や前年などと比べたり、またはターゲットとなる数値と比べることで、数値に文脈を与えることができます。
3. 数値に一喜一憂するのは二流、一流は傾向をおさえます
いざKPIなどの指標を定義しモニターし始めると、上司が怒りっぽくなったということはありませんか?
実は数値やデータはばらつきます。そのため、あるときは良いが、あるときは悪いということは偶然起きるものなのです。
例えば、ある月の売上が悪かったときには、その翌月の前月比は良くなりやすいはずです。
このことを理解していないと、ダッシュボードを作っても偶然の結果によってみんなを不幸せにするばかりになってしまいます。
そこで、指標は 「トレンド」を見ることが重要となります。
トレンドを見ることで上昇傾向なのか、それとも下降傾向なのかを判断できるようになり、それによってアクションを起こすべきなのか、それとももうしばらく様子を見るべきなのかを判断できるようになります。
なお、月単位で指標をモニターしている場合であれば、単に指標の推移を時系列で可視化するだけでなく、月の情報を「抽出」して、年ごとに月次の指標を比べることも有効です。
また、「トレンドライン」をチャートに追加することで、上下に変動する指標が長期的なトレンドが上向きなのか、あるいは下向きなのかを理解することも可能です。
4. ちょっとした探索を提供するのがおもてなし
最後に紹介するのが「インタラクティブ性」です。
多くの場合、作成したダッシュボードは「いつでも」また「どこからでも」、最新の状況を確認できるようにWebサイトにパブリッシュして、関係者が閲覧できるように共有します。
しかし、このとき一つの問題があります。
それはダッシュボードの閲覧者ごとに、どのような切り口でダッシュボードの内容を理解、あるいは探索したいかは変わってくる、ということです。
しかし、ダッシュボードの作成者が閲覧者のために、個別にダッシュボードを作成していては、どれだけ時間があっても足りず、そのような対応は現実的ではありません。
そこで、ダッシュボード内で閲覧者が少しでも探索できるようになっていると、閲覧者がダッシュボードの作成者に問い合わせをすることなく、自分の質問に自分で答えるための深掘りをすることができます。
ただ、ここで1つ問題があります。
ダッシュボードにはないデータを使ってダッシュボード内のデータを深掘りしたい場合はどうでしょう?
チャートをクリックしようにも、そもそもそうしたデータはチャートとして表されていません。
そこで、こうしたダッシュボードにはないデータも「パラメーター」のような形で閲覧者が選べるようになっていると、よりユーザーのことを考えたダッシュボードのデザインとなります。
もっと知りたい!
今回は、みんなに長く使われるダッシュボードに必要な4つのポイントを紹介しました。
記事内のスクリーンショットは、データの加工、可視化、分析、レポーティングのためのUIツールのExploratoryを利用しています。
こちらの記事で紹介したポイントを、実際にどのようにダッシュボードに実装していくのかに興味がある方は、Exploratoryのデモを交えた紹介動画がありますので、ぜひご覧ください!
データ分析を体系的に学びたい!
今回の記事でも触れた適した先行指標の探索のためには相関分析、多変量解析、そしてトレンドや違いを理解するためには時系列分析やデータのばらつきの分析が必要となります。
そこで、そういった分析手法を基礎から、そして体系的に学びたいという方向けに、データサイエンス・ブートキャンプ・トレーニングをこの3月に開催しますので、興味のある方はぜひご参加をご検討いただければと思います。