SaaSを始めとするサブスクリプション型のビジネスは、従来の売り切り型のビジネスとは異なるため、サブスクリプション型のビジネスに特有な様々なKPIをモニターすることになります。
そこでSaaSスタートアップのCEOが集中し、四半期ごとに経営メンバーに共有すべきKPIをまとめた記事が、Airbnb、Slack、Twitter、Uberなどへの投資で知られている投資会社のCraft Venturesの共同創業者のDavid Sacks氏から出ていたので、こちらに要訳として紹介します。
- The SaaS Board Meeting - リンク
ビジネス全体に関わるKPI
どのようなSaaSスタートアップでも、経営に参加するメンバーに説明すべきビジネスの健全性を評価する以下のKPIがあります。
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1. ランウェイ(訳者注: 会社の資金がなくなるまでに残された猶予期間): 銀行にどれだけの現金があるか、毎月の支出がどの程度なのかも理解する必要があります。
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2. 収益と収益の成長率: 年間契約が主体のサービスの場合、ARR(訳者注: Annual Recurring Revenue / 年間定期収益)を利用します。月間契約が主体のサービスの場合、MRR(訳者注: Monthly Recurring Revenue / 月間定期収益)を使用します。
- 3. 収益の内訳: 新規の収益だけでなく、顧客のキャンセルや、プランのアップグレード/ダウングレードよる変動が、収益にどれだけ影響しているのかを理解することが重要です。これらは以下のように1つのチャートにまとめることが可能です。
- 4. 収益のリテンション率: 顧客をコホート(訳者注: 一般的にSaaSの世界では、サービスの利用を開始したタイミングで分けたグループのことを「コホート」と呼びます)に分けて、収益のリテンション率を改善できているかを理解することが重要です。
- 5. エンゲージメント: 従来、ユーザーのエンゲージメントはコンシューマー向けの指標でしたが、少数から使い始められるサービスを提供するSaaS企業においても(現場でサービスを利用する担当者が導入/キャンセルの意思決定をするため)、エンゲージメントは重要な指標です。例えば、DAU/MAU(訳者注: 一日あたりのアクティブ・ユーザー数であるDAU(Daily Active User)を月間のアクティブ・ユーザーであるMAU(Monthly Active User)で割った指標。詳しくはこちらをご覧ください)や、DAU/WAU(前述のMAUを週あたりのアクティブ・ユーザー数であるWAU(Weekly Active User)に置き換えた指標)が重要です。無料プランを提供しているプロダクトやサービスの場合、有料・無料ユーザーに分けてエンゲージメントを計測することも有効です。また、ユーザー数の多い上位10社のエンゲージメントを個別にモニターすることも有効です。(訳者注: 添付画像のように、エンゲージメントの変動が大きいときには「トレンドライン」を利用して全体的な傾向を、可視化することをおすすめします。詳細は前述したリンクよりご確認いただけます)
- 6. 資本効率: ビジネスの成長の効率性を理解するために、「バーン・マルチプル」(訳者注: 新規収益を生み出すために投下した費用を、得られた新規収益で割った指標です。効率が良くなるほど値は小さくなり、1を下回ると非常に良いものとされています)が重要な指標です。さらに、「顧客あたりの獲得コスト」(訳者注: SaaSの世界では、CAC(Customer Acqusition Cost)と表されます。新規顧客を獲得するために投下した総コストで、獲得した新規顧客数で割ることで計算される指標です。詳しくはこちらの「CAC」のセクションをご覧ください)も重要な指標です。
営業に関わるKPI
以下のKPIと、それに付随する指標に注力する必要があります。
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7. 前四半期の実績:
- 新規の年間定期収益
- 受注した大規模案件
- 主要な案件の勝敗
- 主要な失注理由
- プロダクトやサービスに不足している機能
- 競合の状況
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8. 次の四半期のパイプライン:
- 見通し
- 主要な案件
- 受注確率を考慮した受注予定額
- 受注金額のターゲットに対するパイプラインの積み上げ金額の達成率
- 数字を達成するために必要な変化
なお、将来の収益の見通しを出す際には、下記のようなテーブルを用意することで、期初に立てた見通しと、実測値の差を確認することが可能です。
以上、要約終わり。
あとがき
今回は、SaaSスタートアップのCEOが四半期ごとに集中すべき8つのKPIを紹介しました。
冒頭でも紹介したように、特にSaaSを始めとするサブスクリプション型のビジネスは、従来の売り切り型のビジネスとは異なるため、サブスクリプション型のビジネスに特有なKPIをモニターすることになります。
また、例えば、記事でも紹介されていたエンゲージメント指標のDAU/MAUを自分達のプロダクトやサービスのデータを使って計算、モニターしようとすると、データベースからデータを抽出し、集計、結合、計算するスキルが求められることも少なくありません。
そのため、そういったスキルがないことで、様々な指標をモニターすることに膨大な時間がかかってしまう、あるいはモニターすることを諦めてしまうこともあるようです。
そういったときには、データの加工、可視化、分析、レポーティングのためのUIツールのEpxploratoryを使うと、UIを通して、簡単にSaaSスタートップに必須のKPIの計算や可視化を、数クリックで簡単に行い、その更新を自動化することが可能です。
サブスクデータ分析: トライアルツアー
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