レイヤーケーキ・チャートとは?
SaaSやサブスクリプション型のビジネスでは、ビジネスの効率的な成長を示す「健康度」を可視化するためにレイヤーケーキ・チャートがよく使われます。
レイヤーケーキ・チャートとは、「利用開始時期」で顧客をグループ(色)分けした上で、それぞれのグループのMRR(月間定期収益)の推移を可視化したものです。開始時期が古いグループから新しいグループとなるように積み上げたものが階層(レイヤー)に見えるため、「レイヤーケーキ」と呼ばれています。
以下はビジネスチャットのSaaSサービスを展開するChatwork様が2022年12月期の第2四半期決算で発表していたレイヤーケーキ・チャートですが、このチャートを見ると、ひと目でうらやましいほどにビジネスが効率的に成長していることが分かります。
というのも、利用開始時期によるそれぞれの顧客グループから得られる収益が、時間の経過と共に増加しているからです。例えば、2018年に利用を開始した顧客から得られる収益は時間の経過と共に増えています。
チャーン(解約)が全く発生しないビジネスはないため、それぞれのグループからのMRRは時間が経つに連れ減っていくものです。しかし、顧客がプランをアップグレードしたり、ライセンスの数を増やしたりした場合には、このグループからのMRRはチャーンによる減少分を上回って増加することもあります。
そして、こうした傾向を示しているのが上記のChatwork様のレイヤーケーキ・チャートなわけです。
レイヤーケーキ・チャートの4つのパターン
上記のChatwork様のレイヤーケーキ・チャートはビジネスが効率的に成長していることを示すものでしたが、もちろんそうでない場合もあります。
そこで、4つのパターンのビジネスと、それぞれの成長度がどのようにレイヤーケーキ・チャートによって可視化されるかを簡単に見てみましょう。
1. 典型的なビジネス
普通、ある一定の割合で顧客はキャンセルしていくものなので、同じ時期にコンバートした顧客から得られる収益は時間が経つに連れ減っていくものです。以下のレイヤーケーキからはそうした傾向が読み取れます。
2. 改善しているビジネス
提供しているサービスの改善や、顧客ターゲティングの改善などによって、顧客がサービスの価値をしっかりと実感できるようになれば、キャンセルする顧客は減少していくはずです。
その場合、最近獲得した顧客グループは過去に獲得した顧客グループと比べて、収益の減少幅が時間が経つに連れ小さくなっていきます。以下のレイヤーケーキからはそうした傾向が読み取れます。
3. 顧客のリテンションがしっかりできているビジネス
現実的にはあまりないパターンですが、顧客がまったくキャンセルしなかった場合、コンバートした時期によるそれぞれのグループからの収益は一定となり、以下のようなレイヤーケーキとなります。
この場合、新たに獲得した顧客からの収益がそのままビジネスの成長となります。
ただ、これが最高の形のレイヤーケーキかというと、そうではありません。実は、ただの理想ではなく現実世界でも十分有り得るより優れた形のレイヤーケーキがあるのです。それが次に紹介するものです。
4. 「ネガティブ・チャーン」で世界最強のビジネス
たとえ顧客のキャンセルが少なくとも、少しでもキャンセルがあれば利用開始時期によるそれぞれの顧客グループの顧客の数は減少するわけですから、収益は普通は少なくなっていくはずです。
しかし、顧客がプランをアップグレードすることによって1顧客当たりの収益が増えると、顧客数は減ったとしても収益は増えることもあり得ます。
これが最高のレイヤーケーキ・チャートで、以下のような形になります。
上記で紹介したChatwork様のレイヤーケーキ・チャートがまさにこのパターンでした。
なお、コンバート時期によるそれぞれのグループからの収益が減っていくのではなく、増えていくことをSaaSの世界では「ネガティブ・チャーン」と呼んだりします。チャーン(キャンセル)によって同じ顧客グループからの収益が減るのではなく、その逆に増えていくため「ネガティブ」という言葉を使います。
レイヤーケーキ・チャートの作り方
それでは、ビジネスがどれだけ効率的に成長しているのかを可視化するためのレイヤーケーキ・チャートはどのように作ればよいのでしょうか。ここから、簡単に紹介していきたいと思います。
以下のような、1行が1顧客の毎月の支払いを表し、その顧客の利用開始日を列に持つデータがあれば、レイヤーケーキ・チャートは作成できます。
例えば、データの加工、可視化、分析、レポーティングのためのUIツールのExploratoryでは、「エリアチャート」を使って、色に「サービスの利用開始日」を割り当てて、レイヤーケーキ・チャートを簡単に作成できます。
しかし、手元にあるデータに顧客のサービスの利用開始日の列がない場合もあります。
そういったときには、顧客のサービスの利用開始日の列を計算する必要がありますが、例えば、Exploratoryでは、「表計算」を使って、数クリックで、顧客ごとの「最初の支払い日」、つまりは「サービスの利用開始日」の列をデータに追加できます。
もっと知りたい、やり方を学びたい!
今回は、サブスクリプション型のビジネスの成長の効率性を測るレイヤーケーキ・チャートを紹介しましたが、もっと詳細を知りたい、さらに自分でもできるようになりたいという方は、以下のノートで詳しいやり方を紹介していますので、よろしければ、ご参考ください。
また、今年の12月にサブスクリプション型ビジネスに特化したデータ分析のトレーニングを開催いたします。
こちらのトレーニングは、SaaSを含むサブスクリプション型のビジネスの改善に必須である、ビジネス指標(KPI)の定義、コンバージョンやチャーン(解約)の要因分析、さらにそれらの先行指標となるエンゲージメントの計算方法や分析手法を効率的に学んでいただくための2日間のトレーニングとなっております。
SaaSやサブスクリプションビジネスの分析または可視化の手法を効果的に学びたい方は、ぜひご参加を検討ください。
自分のデータで試してみたい!
記事内のチャートは、データの加工、可視化、分析、レポーティングのためのUIツールのExploratoryを利用して作成しています。
ご自身のデータを使って、これらのチャートを作成したりデータの分析をしたい方は、下記のリンクより無料トライアルが可能ですので、是非、お試しください!
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