こんにちは。
高度情報処理試験で、受験者を最も悩ませる存在といえば! そう、論文です。
論文の傾向と対策のような本はたくさん出ていますが、「模範回答とまったく同じ論文を書くわけにはいかないし・・・」「実際、どうやって準備すればいいんだろう」と悩んでいる受験者は多いはず。
かく言う筆者も、かつてはその一人でした。
この記事では、そんな論文試験をなるべく要領よく突破するコツを解説します。
対象となる試験区分
論文が必要となる試験区分には、以下があります。
- プロジェクトマネージャ
- ITストラテジスト
- システム監査技術者
- ITサービスマネージャ
- システムアーキテクト
実は上記のどの試験区分でも、「論文を書く要領」はほぼ同じです。
したがって、どれかひとつの区分で論文試験に合格すると、芋づる式に他の試験にも合格しやすくなります。
この記事では、上記5区分に共通する「論文試験のコツ」を解説していきます。
なお、筆者は上記5区分のうち、ITサービスマネージャを除く4区分に合格しています。
論文試験のコツ
コツ1:ネタに使うプロジェクト(案件)を2~3件選んでおく
1.1 ネタは何個あればいいのか問題
論文試験対策をする際、「論文のネタにするプロジェクト(案件)のネタは、どのくらい用意すればいいのか?」で悩む人は多いと思います。
これには、「絶対こうするべき!」という答えはありませんが(最後に受かればなんでもいいんです)、筆者の経験上は「2~3案件」がベストでした。
2~3案件がベストだった理由は、
- あまり数多くネタを用意しても、ひとつひとつを論文書けるレベルまで深掘りできない
- かといって1つだけでは心もとない
というのに加え、私の場合は受験したときに、そんなにたくさんのプロジェクトを経験していたわけではありませんでした。
そんなわけで、それなりにいろんな方面に対応でき、かつ深掘りもできた数がちょうど2~3個といったかんじでした。
2~3個の中身は、こんなかんじでした。
- 自分自身が深くかかわった案件がひとつ(これが本命)
- 自分は関わっていないけど、社内で注目を浴びている/よく知っている人が関わっているなどの理由で、わりと実態が見えている案件を1~2個(保険として)
1.2 自分の実体験じゃないと落とされるのか問題
プロマネなどの試験だと、「自分が本当にプロマネとして関わった案件でないと、バレて不合格になるのでは?」と気にする人もよくいますが、そんなことはありません。
私の知人では、論文対策本の模範回答をベースに架空のプロジェクトを脳内で妄想して、それをネタに論文を書いて合格した人もいました。
私はさすがにそこまでの芸当はできませんでしたが、できる人は全然それでいいと思います。
また、「自分が関わった案件だと、細部の泥臭いところまで知りすぎているだけに、論文用にキレイに整えて書くのが難しい」と言う人もいます。(めっちゃわかる)
どういう案件を書きやすいと感じるかは人それぞれなので、自分の感覚で「書きやすい」と感じる題材を選ぶのがいいと思います。
1.3 準備したネタが十分かどうかを検証する方法
ネタの準備をしていると、「このネタだけで本当に充分かな?」「このネタでは全然太刀打ちできない問題が出たらどうしよう・・・」という不安が常につきまといます。
この不安を解消するためには、まずはIPAのサイトで、自分が受験する試験区分の午後Ⅱ(論文)の過去問を10年分くらい開いてみてください。
(解く必要はなく、開くだけです)
各年度、論文の問題が2問または3問あり、どれか1つを選んで回答するようになっています。
全年度分、どれか1つは「これなら書けそう」という問題があれば、ネタの準備は十分です。
もし、「2問(または3問)とも無理そう・・・」という年度が1年でもあれば、ネタの準備がまだ足りていない可能性があります。
その場合は、
- ネタの数を増やす
- 手持ちのネタの掘り下げを深める
- そんな問題が当日出たら、諦めて次年度受験する
などの対策をしましょう。
(3つめは対策じゃないだろーと怒られそうですが、リスク管理用語では「リスクの保有」といって、立派な対策のひとつです!(威張り! 笑))
コツ2:問題選択を瞬時にできるようにしておく
2.1 瞬時の判断で、時間を節約
論文はどの試験区分でも、問1、問2のどちらかを選択して回答するようになっています。
(アーキテクトの場合は問3もありますが、1問だけ選んで回答するのは同じ)
「どっちを選ぶべきか・・・」と試験時間中に悩んでいると、どんどん時間をロスしてしまいます。
ここはざっくり、各問の1行目を読んで、「これでいこう!」と決断できる判断力が必要になります。
2.2 問題選択のコツ
2.2.1 例1:令和3年度 プロマネ
たとえば令和3年度の試験プロマネ試験の場合、問1と問2はそれぞれ以下のようになっています。
- 問1 システム開発プロジェクトにおけるプロジェクトチーム内の対立の解消について
- 問2 システム開発プロジェクトにおけるスケジュールの管理について
ざっくりタイトルを読むだけで、どういう内容が求められているか、なんとなく見えてきませんか?
問1は「チーム内の対立の解消」と書いてあることから、明らかに「身内でモメたプロジェクト」がフィットするネタです。
「いやー、うちは和気あいあいとした社風だから、あんまりモメた経験ないんだよね」という人は、問2でいく方がいいです。
問2はスケジュール管理ということで、どんなプロジェクトでも必ず必要になってくるオーソドックスなネタになっています。
2.2.2 例2:令和3年度 ストラテ
同じ年度のITストラテジスト試験の場合、問1と問2はそれぞれ以下のようになっています。
- 問1 デジタルトランスフォーメーションを実現するための新サービスの企画について
- 問2 個別システム化構想におけるステークホルダの意見調整について
問1は「新サービスの企画」とあることから、いわゆる「攻めのIT」方向のネタが求められていることが明らかです。
標準化やインフラ統合系のプロジェクトネタしか持っていない人は、避けるべきだとすぐに判断ができます。
問2は「ステークホルダの意見調整について」とあるので、「いろいろ意見が割れたけど、最後はなんとかしたぜ!」系の案件がフィットするとわかります。
(2.2.1のプロマネの問1と似た雰囲気ですね)
いずれにしても、「どちらで書くかの判断をなるべく早くつける」という部分も、多少練習しておいた方がいいです。
コツ3:アンケートを瞬殺で埋められるようにしておく
論文試験では、論文のほかに、「論述の対象とするプロジェクトの概要」的なタイトルのアンケートみたいなのを書かされます。
下記リンクの2~3ページがそれにあたります。
このアンケートは試験時間中に書く必要があり、ここで迷ってしまうのもやはり時間のロスにつながります。
ネタの準備ができたら、各ネタごとにこのアンケートのテンプレを用意して、試験当日は何も考えずに書けるようにしておきましょう。
コツ4:設問→章の骨組みを秒殺で自動変換できるようにしておく
4.1 設問 = 論文の構成
論文試験の設問は、ほぼ以下で固定されています。
- 設問ア(概要と前振り)
- 設問イ(メインの設問)
- 設問ウ(振り返り、反省点、評価など)
各設問に書かれている言葉は、そのまま論文の章立ての骨組みになります。
「設問の言葉を見て、章立ての骨組みを作る」という一連の作業を、脳のリソースをほぼ使わずに、勝手に手が動くくらいの勢いでできるようになっておきましょう。
4.2 お手本
設問の言葉を論文の構成に変換するという意味では、以下のツイートの画像が非常にきれいなお手本になっています。
設問ア、イ、ウに書かれた言葉が、ほぼそのまんま章や節のタイトル(「第●章 xxx」や「1.1 xxx」などの「xxx」部分)になっているのがわかります。
論文試験の対策本などでも、模範論文はだいたいこんな書き方になっていました。
私も自分の試験のときは、こんな感じで章立てして論文を書きました。
章立てしないでダラダラ文章を書くよりずっと楽ですし、「設問にちゃんと答えてるぞ」アピールにもなります。
「設問見る → 骨組み作る」の一連の作業を秒殺できるようになっておきましょう。
コツ5:設問アの前半は寝ながらでも書けるようにしておく
5.1 設問アの800文字のうち、前半はほぼ必ず「概要」
どの試験区分でも、設問アは全部で800文字が字数制限となっています。
その800字の中で、
- 案件の概要(ストラテの場合は市場的な背景とセットで書かされることが多い)
- 設問イに続く前振り的な部分
を書かされます。
後半の「設問イに続く前振り」の部分は設問によって柔軟に書かないといけませんが、前半の概要の部分は、どんな設問のときでもほぼ同じことを書きます。
5.2 概要を300字程度で書く練習がオススメ
この前半の概要に関する部分を、200~300字で、迷いなく書けるようになっておくと、時間配分に余裕ができます。
コツ1で用意したネタごとに、テンプレを用意しておくとよいでしょう。
コツ6:「これで合格!」という論文を、どんなに時間をかけてもいいので一本仕上げておく
6.1 設問アの後半以降は、題意に沿った回答が必須
設問アの後半以降は、題意に沿った回答が必須になります。
これは、当たり前ですが、「設問で聞かれていることにちゃんと答える」という意味で、当然ながら設問がどう来るかによって回答するべき内容も変わります。
コツ4で立てた章立てに沿って、章・節のタイトルどおりの内容をちゃんと書けてさえいれば、大きく外すことはないのですが、最初のうちはそこもなかなか難しく感じると思います。
6.2 どこまで詳しく書けばいい? → 字数に収まる程度
論文試験の対策を始めると、「各設問にどこまで詳しく答えればいいのか」も迷いポイントになると思います。
これは言ってしまえば、「聞かれていることにすべて答えた上で、字数が足りなくもなく、オーバーもしない程度の詳しさ」というのが答えです。
個人的な感覚では、「そんなに詳しく書いている余裕はない(字数的に)」と思いました。
具体的に言うと、
- 各設問で聞かれていることをズバリ一文で答える(必須)
- そのズバリの答えを具体的に、でも長すぎず補足する文をひとつふたつ入れる
このぐらいがベストでした。
補足:ひとつの設問で、聞かれることはひとつじゃない
「各設問で聞かれていること」とありますが、たいていひとつの設問の中で、複数のことが聞かれます。
例えば令和3年度のプロマネの問1の設問イは以下のようになっています。
設問アで述べたプロジェクトの実行中に作業の進め方をめぐって発生した対立と、あなたが実施した対立の解消策及び行動の基本原則の改善策について、800字以上1600字以内で具体的に述べよ。
これは、ひとつの設問の中で3つのことが聞かれているパターンです。
①プロジェクトの実行中に作業の進め方をめぐって発生した対立
②あなたが実施した対立の解消策
③行動の基本原則の改善策
上記①②③のそれぞれに対して、「ズバリ一文」の回答と、「具体的に、でも長すぎず補足する文をひとつふたつ」の組み合わせで答えていきます。
例えば①なら、こんな感じです。
【ズバリ一文の回答】
私が担当したプロジェクトの実行中に作業の進め方をめぐって発生した対立は、IT部門と業務部門の優先順位をめぐる対立である。
【具体的に、でも長すぎず補足する文をひとつふたつ】
具体的には、 業務部門は自分たちの業務量を減らすための即効性のある対応を最優先にしたいという強い要望を持っていた。一方、現行システムのアーキテクチャではそうした要望に柔軟に答えることが構造上困難であった。IT部門では、そのような構造上の課題を解決するための対応に予算を充てたいと考えていた。
上記のように、業務部門は即効性を求め、IT部門は長期的視野での対応を優先したいと考えており、意見が対立していた。
②や③も、書く内容は異なっても、要領としては同じように書いていきます。
上記の、①の例文として出した内容が、字数にして260文字でした。
②や③あたりの回答は上記よりは多少長くなると思うので、こんなかんじでまとめていけば800字はクリアできるでしょうといったところです。
6.3 「ズバリ一文」にたどり着くのは時間がかかる
以上を踏まえ、あとはもう書いてみるのみ! なのですが、それをいきなり2時間という論文試験の制限時間内でやるのはかなりハードルの高い芸当です。
個人的には、「どこまで詳しく書けばいいのか」の匙加減もそうですが、「経験したプロジェクト/案件のどの側面を切り出せば問題へのズバリな答えになるのか」をつかめるようになるまでに、けっこう時間がかかりました。
「こういう経験したよな~」とつらつら書いては、「あ、この部分は設問とあんまり関係ないや」と気が付き、書いたことをほぼ全消し……を繰り返して、ようやく納得のいく「ズバリ一文」にたどり着く、というようなことを、最初はあらゆる設問ごとにやっていた気がします。
6.4 試験1か月前までに、「時間オーバーでもいいから合格する論文」を仕上げる
「論文試験は時間との戦い」とは合格者も不合格者も口をそろえて言っていることで、それはそれで事実です。
だからといって、論文を初めて書くときから、いきなり時間をはかって無理やり時間内に書こうとしたり、「手書きで文字を書く練習」をするのはあんまりおすすめしません。
まずはパソコン打ちでも、時間をオーバーしてもかまわないので、「この年度のこの論文は、これで合格!」という論文をひとつ仕上げてみることをおすすめします。
パソコン打ちで、1日がかりで書けない論文を、2時間以内に手書きで書くのはどだい無理だからです。
まずは「時間をかければ、ちゃんとした合格論文が書ける」という状態になって、時間の節約はそこから考えていけばじゅうぶんだと思います。
個人的には、遅くとも試験1か月前くらいまでにこの状態を作って、残りの1か月で時間内に書き切る練習をする、というくらいがちょうどいいかなぁと思います。
6.5 論文が合格ラインかどうかは、プロまたは合格者に見てもらえたらベスト
自分が書いた論文が合格ラインかの判断は、自分ではなかなか難しいと思います。
もちろん、最後まで独学で合格に至る人もいますが、やはり誰かに見てもらうのに越したことはありません。
私の場合は、受験当時の職場が情報処理試験の取得を推奨しており、割安で模試を受けることができたので、それを活用しました。
論文の添削の有無によってやや値段が変わる(もちろん、添削ありの方が高い)模試でしたが、正直添削がなければカネ払う意味ないじゃんと思っていたので、高くても添削ありの方を選びました。
そのような模試に個人で申し込むのも有効だと思います。
また、知り合いに合格者がいる人や、TwitterなどのSNSをやっている人は、頼めば見てもらえる可能性もあります。
合格者は採点のプロじゃない、という点は念頭に置いておく必要がありますが、意外と「俺はここはできていなかったけど受かったぞ」という生の声が聞けたりもするので、模試の添削にはない魅力もあったりします。
ちなみにこのブログにコメントしたり、Twitterで@IQ_Bocchiにからんだりすると、ざっくりですが添削コメントをもらえるとかもらえないとかいう噂です。
コツ7:時間配分を決めて過去問を解き、検証を繰り返す
「時間をかければ合格論文が書ける」という状態になったら、あとはひたすら時間を縮める練習をするだけです。
7.1 手書きグッズを用意する
以下の手書きグッズは、このタイミングで用意しましょう。
- えんぴつ or シャープペン
- 消しゴム
- マス目つきの原稿用紙(横書き)
えんぴつやシャープペンはいくつか使ってみて、手になじむ(疲れにくい、書きやすい)ものを選びましょう。
消しゴムはよく消えるものを。私はMONO消し一択でした。
マス目のないノートで手書きの練習するのはまじでおすすめしません。
字数を手で数えるのはしんどいですし、実際の試験でかかる時間を把握しづらくなります。
7.2 時間を縮めていく練習
手書きグッズが用意できたら、以下のサイクルを、2時間切れるようになるまでひたすら繰り返します。
- 2時間の時間配分をだいたい決める(問題選択、全体の回答のイメージ作り、設問ア・イ・ウ それぞれを書く作業、見直し)
- 2時間はかって、実際に書いてみる
- 書きながら、最初に決めた時間配分の横に実際にかかった時間をメモしておく
- 2時間たって書き切れていなかった場合は、そこでやめずに最後まで書き切る
- どの部分でどれくらい時間オーバーしていたかと、その原因を見直す
- 原因を改善
以上!
この記事では、論文試験の合格のコツとして、主に勉強・練習のすすめかたについて書いてきました。
あとは受験地の選び方や、試験当日の持ち物、時間の使い方など、いくつかコツがあるのですが、それはまた別途記事を書きます。
この記事を参考に、多くの方が論文試験に合格し、IT業界でキャリアアップするきっかけをつかんでもらえれば幸いです。