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その紙業務、本当にOCRが最適解? ~紙業務を自動化・効率化する様々な手段を知ろう~

Last updated at Posted at 2021-03-02

#はじめに

紙文化が発達した日本のビジネスにおいて、ペーパーレス化は多くの人の関心を集めているテーマです。

紙から文字を読み込んでデータ化できるOCRは、ペーパーレス化や紙業務の効率に化対する打ち手としてとても人気があります。

一方で、「紙=OCR」という定式が広まりすぎて、「それ本当にOCRでやった方がいいの?」と思うような業務までOCR案件として検討している人たちが一定の割合でいるのも事実です。

また他方では、「ペーパーレス化が本当に進んだら、OCRなんて不要になるんじゃないの?」といった、なかなか鋭い懸念も見られます。

この記事では、「紙を扱う」という一点でひとくくりにされがちな業務を様々な切り口で掘り下げながら、

  • 本当にOCRが最適解なのか
  • OCRでないとすれば、どんな手段がとりうるのか

を考えていきます。

ポイント1:その紙を発行しているのは誰か?

OCRが最適解かどうかを判断するのに最も根本的なポイントになるのは、実は帳票の種類でもなければ、利用目的でもありません。

「その紙は、誰が発行しているのか」という切り口です。

以下、具体的に見ていきましょう。

1-1 紙を発行しているのが自分(自社)の場合

サービス等の加入申込書やアンケートなど、自社が発行している紙の入力業務を自動化するためにOCRを使いたい、というニーズは非常に多いと思います。

この場合に一歩立ち止まって考えてたいのは、「それって本当に本質的なペーパーレス(効率化)になってますか?」という点です。

紙を発行しているのが自社の場合、OCRを使うよりも、入力フォーム自体を電子化する方がよほど確実かつ効率的です。

これで納得した人は、次のポイントに進んでください。
納得しなかった人のために、ちょっと補足を書きます。

自社で発行している紙をOCR化することの意味

申込書にせよ、アンケートにせよ、それを紙でやっているということは、「自社で紙を発行して、それを顧客に書いてもらい、回収して、その結果をデータ化する」という業務フローをとっているということですよね。

こんなかんじ。
image.png

で、それをOCRで解決するというのはどういうことかというと。

こういうことです。
image.png

自社で発行している紙をOCR化するという発想に対するツッコミ

ですがこれ、勘がするどいみなさんや関西のみなさんから見たら、何か叫びたくなりませんか?
こんなかんじのことを。

image.png

え? つっこみポイントが足りないですか?
はい、よくお気づきですね。

OCRをしっかりやっている側の観点からすると、ここもつっこんでおかないといけないですね。

image.png

OCRの精度に100%はありえない、という点は多くの場所で指摘されています。

例:【外部リンク】AI OCRとは?成功のポイントは認識精度を理解し業務全体を見直すこと

精度が100%ではない=人の仕事は残る

OCRの精度が100%ではない、ということは、「100%じゃなくても、読み取ったなりの結果でデータ化できればいいんです」という整理ができていない限り(こういう整理ができる業務は稀です)、人間の手間がゼロにはならないということです。

OCRの導入を検討している人の中にも、「それはわかってます」と言う人が多いです。
「ゼロじゃなくてもいいんです。現状より手間が減れば」と。

そして、こんなかんじのBefore / Afterを思い描きます。
image.png

たしかに、"人による確認・修正も視野に入れた現実的なフローを考える"ということは、OCR活用のために必要なスタンスの一つではあります。

しかしながら、手間をゼロにできる手段が他にあるとわかっていながら、わざわざ手間を残すOCRを採用するのはばかげたことです。

そして、自社で紙を発行するタイプの業務であれば、OCRなど使わずとも、手間をゼロにする方法があります。

入力を電子化すれば、紙も手間もゼロにできる

ツッコミの部分でも指摘したとおり、このユースケースでは、**紙を発行しているのは自分(自社)**です。
ということは、そもそも「紙を発行するかどうか」の判断も含めて自分(自社)次第で変えられるはずです。

たとえばこんなふうに。

image.png

非常にシンプルです。
このフローを構築できるのであれば、そもそも入力の手間も、転記によるミスもゼロにすることができます。

高齢者? 回収率?

とはいえ、上記のような話をしたときに、「なるほど、たしかにそうですね! ちょっと入力フォームの変更も検討してみます!」などという返事がすぐに返ってくることは稀です。

OCRのプロジェクトはOCRありきで進んでしまっていて、「入力フォームを変えるとなると、また別の部署の承認も必要になるので……」みたいな話になる場合もあります。

あるいは、「うちのお客様は高齢者が多くて……」とか、「紙じゃないとアンケートの回収率が下がるんです」などの理由で、紙にこだわりたがる人もいます。

ですが、OCRに投資できるお金があるなら、そのお金を「電子だけど高齢者に入力しやすいフォームを開発する」とか、「電子だけど回収率を下げない戦略を立てて実行する」といった方向に回すこともできるはずです。

そして今はGoogle Formをはじめとして、無料や極めて安価で作成・利用できるフォームが数限りなくあります。
【外部リンク】Googleフォームだけじゃない!無料で使える高機能なフォーム作成ツール5選

自社発行の紙はフォーマットが固定=OCRで実現する難易度は低い

こうした状況を理解した上で、「それでもやはり、この紙業務はOCRでやる」という判断になることもあるでしょう。
それはそれでいいと思います。

OCR側から見ても、自社で発行した紙を処理するのが最も難易度が低く、実現性が高いのも事実だからです。

自社で発行する帳票は、以下の記事で分類するところの「定型帳票」に当たることがほとんどです。
定型帳票はOCRで実装する技術的な難易度が最も低く、OCRに馴染みやすい領域です。

結論

ポイントの1点目から話が長くなりましたが、自社で発行している紙をOCRで処理する場合の要点をまとめると以下のとおりです。

  • 紙を発行しているのが自社であれば、OCR化の前に入力の電子化を検討する方が本質的な解決策になる
  • それを踏まえてなおOCRでやりたいのであれば、OCRの技術的には最も低いハードルで実現できる

1-2 紙を発行しているのが他者(他社)の場合

これまでは申込書やアンケートのように、自社が発行するタイプの紙業務について見てきました。

一方で、請求書や注文書、領収書など、自分は紙を発行している側ではなく、受け取る側としてその紙を処理している、というケースもあると思います。

こうしたケースの場合、紙を発行している主体が自社ではないので、自社の努力によって紙をなくすことは困難です。

image.png

したがって、OCRを使う必然性が高いケースだと言えるでしょう。

業界共通プラットフォームなどの本質的な対策は?

もちろん、こうした状況に対しても、電子取引のための業界共通プラットフォームを作ったり、法整備を進めることで、本質的なペーパーレス化を進めていくべきだ! といったラディカルな意見もあるでしょう。

長期的な視野で見れば、そうした動きもゆくゆくは進んでいくと思います。
自分自身がそうした動きをコントロールできる立場にある人なら、そうするに越したことはないとも思います。

とはいえ、過去の日本政府や産業界の動きからして、そうした動きにはどこまで現実味があるでしょうか。。

何十年というタイムスパンの中であればわかりませんが、少なくともこの先5年くらいは、この手の紙がゼロになることはないように思います。
(これ、5年後にぜひ検証したいですね。ちなみにこの記事の執筆日は2021年3月1日です)

他者(他社)が発行する紙をOCRで処理する場合の注意点

先述のとおり、他者(他社)が発行する紙をOCRで処理するのは、自社で発行した紙を処理するよりは、本質的にOCRにする意味のある使い方です。

一方で、注意するべき点もあります。
このケースの場合、紙を発行しているのが取引先なので、OCR側でも取引先ごとに異なるフォーマットに対応する必要があります。
また、フォーマットはあくまでも取引先の都合で決まるため、OCRで処理しやすいようにコントロールしようと思っても無理です。

image.png

このように多数のフォーマットに対応する場合、OCR側が備えるべき技術的な要件もぐっと高くなります。

自社の帳票をさばくだけであれば定型OCRで十分ですが、他社帳票の場合は、準定型や非定型に対応したOCRでないとさばけないケースがほとんどです。

定型OCR/非定型OCRの違いについては、以下の記事で解説しています。

準定型や非定型は、定型OCRに比べると実装の難易度が高くなりやすいです。

利用目的によっては、OCRよりも適した手段が考えられる場合もあります。
利用目的に応じた留意点については、以下の記事で解説しています。

結論

他者(他社)が発行している紙の処理について、要点をまとめると以下のとおりです。

  • 紙を発行しているのが他者(他社)の場合は、OCRを利用する必然性が高い
  • 一方で、他社帳票の場合はフォーマットを自社でコントロールできず、準定型や非定型OCRを要するなど、難易度が上がりがち
  • OCRの実現性や利用目的によっては、OCR以外の手段が適する可能性もある

ポイント2:OCRの利用目的は?

次に考えるポイントは、「OCRを使って、最終的に何がしたいのか」という利用目的です。

こちらは長くなったので、以下の記事に切り出しました。

ポイント3:OCRにかけたい帳票はどんな帳票か?

利用目的に照らして、「やっぱりこの業務はOCRでさばくのが一番だ!」という結論になったときに、ようやく製品選定の問題が出てきます。

こちらはポイント2の記事ほど長くありませんが、やはり以下の記事に切り出しています。

#まとめ:「紙=OCR」という定式にとらわれず、広い視野で最適な手段を考えよう

以上、「紙を扱う」という一点でひとくくりにされがちな業務を様々な切り口で掘り下げながら、

  • 本当にOCRが最適解なのか
  • OCRでないとすれば、どんな手段がとりうるのか

を考察してきました。

「紙」といえば「OCR」と反射的に考えてしまいがちですが、そうした固定観念にとらわれず、目的に応じた手段を広い視野で考えることが重要です。

この記事が、そうした検討の一助となれば幸いです。

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