こんにちは。
IQ Bot がまもなくTegakiと連携されるというニュースを受け、イベントでの露出も増えていますね。
RPAやAI-OCRまわりのイベントに最近ちょくちょく顔を出していたのですが、そんな中で気になるやりとりがあったので記事にとりあげてみました。
#IQ Botは、アンケートの集計には不向きですか?
とあるイベントで、参加者からIQ Botに関してこんな質問が出ました。
これに対して、ベンダーさんは「不向きです」とはっきり答えました。
理由は以下です。
- AI-OCRに100%はない
- Google Formなど、Inputを電子化すれば、即座に100%正しい集計結果が得られるのに、わざわざAI-OCRを使う意味がない
- AI-OCRに投資するお金があるなら、そのお金を入力の電子化に回せるはずだ
奇しくもこの議論は、私がQiitaを始めたかなり初期の頃に書いた記事(こちら)とまったく同じ論点でした。
さすがにベンダーが「不向きです」と正面切って言ったのだから、参加者も納得するのでは? と思って成り行きを見守っていましたが……
そうは問屋が卸しませんでした。
#アンケートをしているのは自社じゃないんです。顧客企業にアンケートのデータ化業務を頼まれたんです。
ベンダーさんの「AI-OCRはアンケートには不向き」発言に対して、参加者の方がさらに食い下がった論点はこれでした。
これに対する回答では、ベンダーも少し歯切れが悪くなりました。
IQ BotというかAI-OCRの用途としてアンケートが不向きだということをはっきり伝えた上でのこの食い下がりなので、「アンケートをOCRで処理したい」という要望がよほど強いことをくみ取ったのでしょう。
「まぁ、そのケースはたしかに(顧客企業に対して断るのが)難しいとは思うんですが、結局数百枚程度のアンケートのために帳票設定をして、精度100%は出ないとわかっている状態で処理をして……というのが、コストに見合うかという話なんですよね……」
と、まぁ、こんな感じの回答でした。
歯切れは悪いものの、「おすすめしません」のスタンスはあくまでも崩さずの回答だったので、これできっと会場も納得?!
……と、思いきや……
今回もまた、そうは問屋が卸しませんでした。
#数百枚とかでは費用対効果が出なくても、数万枚という規模になれば効果が出ますかね?
今度は質問した参加者の意図をくみ取って、イベントの司会者さんが言い出したのがこれでした。
ベンダーはさらに歯切れが悪くなり、「数万枚……うーん、おすすめはしませんけど……うーん……」みたいな回答になってました。
#この問題にIQぼっちが答えるなら
前置きが長くなりましたが、ここからが本題です。
この問題に対して、自分ならどう答えるかを改めて考えてみました。
私がもしも、IQ Botを販促する立場であったり、IQ Botを利用している企業の一員であって、顧客の企業からアンケートの入力と集計を請け負ってほしい、と言われたときに、果たしてIQ Botを使って対処をしようと思うか。
……まぁ、否ですよね。
##「金づちを持つと、全ての問題が釘に見えてくる」
この言葉、聞いたことありますか?
IT業界の中でもそこそこ有名な格言なので、あえてここで解説するのは避けますが、解説を読みたい人は下記のいずれかを選んで読んでみてください。
AI-OCRのプロジェクトに従事している人で、私のところに相談を持ち掛けてくる人の中には、かなりの割合で、この状態に陥っているように見える人がいます。
AI-OCRという武器を知ると、すべての紙をAI-OCRで処理しようとする。
ここが、「目的と手段のはき違え」の始まりなんです。
##「お客様のニーズがあるんです」の罠
IQ Botをアンケートの入力業務に使いたい、という要望は、自社の営業担当からも聞いたことがありました。
「アンケートの入力業務って、お客様のニーズかなりあると思うんですけどね」と。
お客様にいちばんフロントで接している営業の言うことなので、きっとそれは真実なのでしょう。
だけどね!
本当に大事なのは、お客様が口で言っていることを言葉どおりにやることじゃなくて、お客さんの本当の課題を解決することだと思うんだ。
たとえば、現代の文明社会からすごく取り残された村があって、その村の住人が「子供が出かけた先で親としっかり連絡がとれるように、村に公衆電話を20か所ほど増設したい」って言ってきたら、あなたはどう答えますか?
はいわかりましたと言って、村に20か所、公衆電話を設置しますか?
AI-OCRでアンケートを集計するって、私の目から見ると、そういう部類の事柄に見えます。
##もしも私なら
もしも私がその村の村長に相談を受けたとしたら、私はきっと村長に携帯電話の存在を教えます。
そして、村長が公衆電話を20か所増設するのに使おうとしていたお金を、村人全員に携帯電話を持たせるために使うようにアドバイスをすると思います。
お客さんの課題を解決するってそういうことだし、IT事業者に求められている本当の役割もそういうことだと思っているからです。
さすがにお客さんの方も、解決不可能と思っている課題をIT事業者に相談することはないでしょう。
ですからお客さんの持っているIT知識の範囲で、「この問題をこんなふうに解決できないか」と相談を持ち掛けてきます。
そのときに大事なのは、「この問題を」「解決する」という”課題”や”目的”であって、「こんなふうに」という”手段”は参考程度の情報でしかありません。
だって手段に関しては、私たちIT事業者の方がお客様より圧倒的に知識を持っているし、プロだからです。
プロとしては当然、「その課題を解決するなら、とるべき手段はこれですよ」と、お客様よりも広いITの知識を武器にソリューションを提案してあげる必要があるのではないでしょうか。
#その手段を、自分の売っているプロダクトが提供していなかったら?
お客様の課題に対して最適な手段が、自分の売っているプロダクトでなかった場合はちょっと葛藤が発生するかもしれません。
うーん、このプロダクト売りたいしなぁ……って。
だけど、「お客様の課題を解決するためにはもっといい手段がある」とわかっていながら、最適な手段じゃないプロダクトを売るみたいな売り方は、自分にはできないです。
目の前にあるのはネジで、自分が持っているのは金づち。
そういう状況で、ネジを金づちでたたいて板に押し込むことをお客様にすすめるかといったら……すすめません。
たとえ自分が金づち屋でも。
これは何も、販売に関わる人間としての道義心だけから思っているわけではないです。
お客様だって日々勉強しているはずなので、アンケートをOCRで処理するPoCしている最中に、ある日Google Formの存在を知るときがくるかもしれない。
回収して、入力して、集計して、ようやく結果が分析できるOCRと違って、Google Formなら即時に集計ができる便利さに気づくかもしれない。
そして、「あぁ、今まではOCRでやる頭しかなかったけど、これならGoogle Formでアンケート回収できるようにフローを変えた方がいいや」と思うかもしれない。
そうなったら、OCRでやったPoCはぜーんぶ無駄です。
それはもう、OCRの結果がどうこうという話以前の問題として。
それがいやなんですよ。
だからPoCに入る前段階で、「その課題、本当にAI-OCRで解決するのが最適ですか?」ということをしっかりしっかりしっかり確認しておきたいわけです。
販売に関わるメンバーの中には、PoC期間中にお客様の方針が変わったことに対して「まじであの客ふざけんな」的なぼやきをする人もいますけど、そこでお客様を責めるのは全然筋違いです。
そういうぼやきをする前に、つまりPoCに入る前に、お客様のニーズや検討状況を奥までしっかり掘り下げて、「これはまさにAI-OCRで解決するべき課題だ!」という部分だけは確定させてからPoCに入るべきだと自分は思っています。
もちろん、世の中にはいろんな人がいますから、「うるせー! オメーは電話屋だろ! 黙って俺の言うとおりに公衆電話を増設してりゃあいいんだよ」みたいな態度をとってくるお客様も中にはいるのかもしれません。
もしもそういうお客様に当たってしまった場合には……そうですね、表面上は穏やかに、すーっと距離をとるんだろうなぁ、と思いますが、幸い過去12年間のIT業界経験の中で、私は一度もそういうお客様にお会いしたことがありません。