■ はじめに
2024年のアドベントカレンダーの時期がやってまいりました。
今年の記事は、自身がAndroidの多端末検証の計画業務をおこなった際に検討や調査をして得たナレッジについて記載していきます。
ネットではAndroid端末の選定について細かく纏まっている記事があまりなかったので、今回は取りまとめようと思います。
※こちらの内容は絶対の正解ではなく、検討や考慮する際の参考にご活用いただけると幸いです
■ 多端末テストとは
多端末テストとは、複数の端末で動作確認を行うテストのことです。
今回はiOS端末より選定作業に工数のかかるAndroidのスマートフォン端末の選定における考慮しているポイントについて紹介していきます。
■ 端末選定で考慮しているポイント
多端末テストでは、テストする端末の選定が重要です。以下のポイントを考慮しています。
ポイント | 備考 |
---|---|
シェア率 | 各社の運営タイトルのシェア率を参考にし、利用者の多い端末をターゲットに選定します |
メーカー/キャリアのバランス | 普及率の高い大手のメーカー、キャリアを中心に対象を選択するのが一般的です。メーカーの違いにより挙動が異なるケースはよくあるので、必要に応じて幅広いメーカーで確認できると良いです。 ※検証対象を絞る際はそのバランスも考慮することを推奨します |
OSのバージョン | 各プラットフォーム(iOS、Android、PCなど)には複数のOSバージョンがあります。特に、ユーザー数の多いバージョンに対応することが重要です |
端末スペック/形状 | SoCの性能、ディスプレイの解像度、スマホ、タブレット、折り畳み端末など ※SoCについては下部に詳細を記載しています |
■ シェア率
市場シェアとユーザー層
Androidは世界中で広く使用されていますが、特に人気のある端末に対応することが重要です。市場シェアの高い端末を優先することで、多くのユーザーに対するテストが可能です。弊社で運用している、別ゲームの端末シェア率を参考に選定を実施したりしました。
地域別の人気端末
市場シェアは地域によって異なるため、ターゲット地域(日本、アメリカ、インドなど)で人気の端末を選定することが重要です。
価格帯の幅をカバーする
高価格帯(ハイエンド)から低価格帯(エントリーモデル)まで幅広い端末でテストすることが必要です。これにより、低スペック端末でも高品質な体験が提供されることを確認できます。
開発チームが定める推奨するスペックがあれば、そのスペックを基準にテストするなど調整もできるので、検証費用の最適化を考える上では意識すべきポイントです。
■ メーカー/キャリアのバランス
普及率の高い大手のメーカー、キャリアを中心に対象を選択するのがベストです。
メーカーの違いにより挙動が異なるケースはよくあるので、必要に応じて幅広いメーカーで確認できると良いです。
■ OSのバージョン
Androidのバージョン別ユーザー数
Google Play Consoleなどのデータから、各Androidバージョンの普及率を確認し、それに基づいてテスト対象の端末やOSバージョンを選定します。
最新バージョンと普及率の高いバージョンをカバーする
AndroidはOSのバージョンが多岐にわたるため、最新のOS(例えば、Android 14)をテストすることはもちろん、普及率が高いバージョン(例:Android 12、Android 13)もカバーする必要があります。Androidのアップデートが遅れることが多いため、特に古いバージョンも考慮する必要があります。
AndroidにはOppoから出ている独自のColorOSというものがあり、このOS特有の不具合を検知することもありましたので、検証ではしっかりと抑えておいた方が良いかもしれません。
■ 端末スペック/形状
SoC、メモリ、ストレージ、形状
ゲームやアプリのパフォーマンスが異なるため、低スペック端末、中スペック端末、高スペック端末それぞれでの動作確認を行います。特にメモリ(RAM)の容量やストレージ容量(ROM)の違いは、動作の安定性や処理速度に影響を与えます。
ゲームが特にパフォーマンスに依存する場合、ハイエンドやミッドレンジシリーズの端末でテストすることが不可欠です。また、低価格帯の端末の低スペック端末の動作確認も重要です。
最近では折りたたみスマホも増えてきており、自身が端末選定作業した際も縦折や横折など様々な形状も考慮するように気を付けました。
SoCとは
「SoC」とは、一個の半導体チップ上にシステムの動作に必要な機能の多く、あるいは全てを実装するという設計手法、また、その手法を使って作られたチップのことを指す言葉です。
その名称は「システムを一個のチップ上に載せる」を意味する英語“System on a Chip”の略称で、そのままエスオーシーやソックと呼ばれます。
SoCは多くの場合、コンピュータの中枢となるCPUとメモリ、ビデオチップ、I/Oといった機能を統合したチップとして設計されます。
下記にはSoC選定の参考用に種類を表でまとめています。
メーカー | SoC名称 | 詳細 | 備考 |
---|---|---|---|
Qualcomm | Snapdragon | ハイエンドからローエンドまで幅が広く、様々な端末メーカーが採用しています | ミドルエンド以下の端末は動作推奨端末以下に該当するものが多く、クラッシュ等の率は高い印象 |
HiSilicon | Kirin | Huawei系の端末のみに搭載されているモデル | |
Samsung | Exynos | Samsungの端末のみに搭載されているモデル(ハイエンドモデルは海外モデルのみではありますが、ミドルエンド以下は格安端末などに搭載されていることが多い | 格安系のミドルエンド以下の端末は動作推奨端末以下に該当するものが多く、クラッシュ等の率は高い印象 |
tensor | Google謹製のチップセット。Pixel6から搭載されていて、初代tensorはSnapdragon888 Plusより少し劣るくらいのハイエンドとなります | ||
MediaTek | Helio | ミドル~ローエンド(中~低価格帯)モデルのシェア率が高い | |
Unisoc | Tiger | 2021年の時点では、Mediatek、Qualcomm、Appleに次ぐ世界第4位のモバイルプロセッサメーカーであり、世界市場シェアの9%を占めています | |
Xiaomi | Surge | Xiaomiの端末のみに搭載されているモデル(Xiaomiが日本でも大きく市場を広げてくると影響はありそうですが、基本XiaomiのハイエンドモデルはSnapdragonを搭載しています) |
さいごに
Android端末の選定においては、端末の市場シェア、OSバージョン、解像度、性能、バッテリー容量などを考慮し、さまざまな端末をカバーすることが求められます。SoCに関しては、ゲームのパフォーマンスやエネルギー効率なども考慮し選定することが重要です。
年数が経つにつれて色々なスマートフォン端末が世に出てきていますので、今後もアンテナを広く張りながら環境を考慮して対応していきたいと思います。