LeSS' Yoaké ASIA 2024に参加しました。
LeSS Yoakeという国内初?のLeSSカンファレンスに参加してきました。LeSSの作成者であるCraig LarmanとBas Voddeが来日。彼らは何を語ったのか?語られたことから私が受けた学びや気づきを交えて、共有します。
LeSSはLarge-Scale Scrumの略で、Scrumを複数チームに拡大する手法の1つです。Day1の報告です。
※Craig Larman氏の補足説明。Agile manifestが作られた場にいたAgile業界の重鎮のひとり。また、システム思考に深い造形を持つ。
Keynote Opening Keynote AI, HR & Organizational Design, Craig Larman
オープニングキーノートはCraig Larman。70年代からAI開発に携わっていたという彼の知見から、AIとLeSSの関係性を話して頂けました。
- AIは、これまで使われてこなかった分野である、科学や物理でも使われている。これは産業革命では、トヨタが機織機を作ったことと同様のことが起きている
- SW開発ではAIのコード生成への利用が盛んであるがこれでは不十分である
- AIにGherkin記法※でテストケースを書いてもらい、AIにテストケースをパスするコードを書いてもらう。リファクタリングはAI同士(ChatGPTとGemini)でやらせる
※システムの振る舞いを定義するための記述方法です。調べたい方はこちらのサイトかこちらのサイトをご参考にしてください。
まずは、AIの影響について。システム開発において大概のことは現在のAIで出来るということで、デモも見せてくれました。昨今のAI事情を鑑みればまぁそうだよねと言ったところ。
- 今後人間は、複数専門性を持つべき
- あと、3年したら300人月が3-30人月で、できるようになる。あまった、297か月は何をもっと作る?No そのような需要はない。学習をする
- AIで学習を効率化、加速できる。1人で設計、人事、なんでもできるようになると予想している
Craigの主張、予測は、AIを使うことで生まれる余剰と学習コストの大幅な低下によって、複数の専門性を持てるようになる(持ちやすくなる)こと。というのがここで分かりました。
- AI Agentという言葉がしばらくすると世にあふれる。これはAI業界では昔からある考え。今のAIは問いかけに反応するだけであるが、AI Agentは自律的に動く
- AI Agent同士がコラボレーションする。エンジニアは複数のAI Agentを利用するようになる
更に話を進めて、近未来(あと半年か1年先)では、自律型Agentが普通に使われるだろう。との予言。こうなると、個別の工程の生産性をAIでどうのこうのするという世界から、ガラッと変わりますね。要求を投げ込むと、勝手にAI Agentがシステムを作り上げる?そんな世の中が来たら、我々SIerはどう生きていくのか?そんな問題提起をされているようにも感じました。
- AIを使ってmultilearningを促進する。これはThe New New Product Development Gameにも記載されている
ここで、AIからScrumの話に戻ります。Scrumの源流の1つの論文では、そもそも複数の領域を学ぶことが前提となっている。との指摘。よくスクラムでは、クロスファンクショナルと言われますが、ほとんどの現場では、UX、アーキテクト、XXマネージャーなどが存在しますね。Craigは明確には述べていませんが、Scrumを安易に弄るなというメッセージとも受け取れます。
- 管理者の役割は変わらないが、DB部署のようなものは作れない。専門性はAIで代替できるため
- AIを活用できる組織はどんな組織?LeSSでしょ?
最終的にLeSSがAIを活用に適した組織形態ですよ。という綺麗なまとめで終わりました。
QAコーナー
Q:LeSSの将来はどうなる?
A:2チームくらいでよいかと思う。5年後は分からない。(Craig)
Q:管理職はなくなるようだが、スクラムマスターは?
A:スクラムマスターは組織を良くする人。高いスキルでのコーチングはAIができるが、チームをつくるのに人間は残る。チームと同じ部屋で、観察。非言語コミュニケーションを含めてみる必要がある。ただし、3年後はわからない。AIに仕事を奪われる心配より、AIを使う人間に仕事を奪われる心配をした方がよい。(Craig)
所感:AIよりAIを使う人間に仕事を奪われる心配をした方が良いというのは、ギクリとする答え。
Q:国による違いはあるのか?
A:社風が影響すると思うが、国はそうでもない。(Craig)
私は業界より国の文化が影響あると思う。ドイツは職人気質。専門性が分かれる傾向にあり、QAの人に他の仕事をしろと言ったら、No!と言われた。同じチームで別拠点ポーランドにいるQAに同じく他の仕事をしろと言ったら、即OKだった。(Bas)
所感:CraigとBasで意見が全く違うのは非常に面白い。
Q:LeSSで日本が合うところ合わないところ
A:良い点は、人を集めてゴールを設定すると自然といいチームとなる。細かい設定をしなくても進めるところがある。階層型が課題に挙げられることが多いが、べつにそれはデメリットではない。階層とコンポーネントは異なる。悪いところは、衝突を避けるところ。自分の意見を抑えるところ。
所感:「衝突を避ける」点。確かに、なかなかタックマンモデル※でいうストーミング期が来ないし、来たら来たで上手く乗り越えられなかったりしますよね、、、
※チームの発展過程をモデルにしたもの。詳細はこちらのサイトかこちらのサイトをご確認ください。
Q:管理者がいないとき、組織の責任は誰がとる?誰も取りたがらなくなりそう。
A:スクラムマスターがチームが責任を取ることを促す。プレッシャーを掛けるのではなく、何が起こるのかを伝える。マネージャーができる仕事はチームでもできる。むしろチームは沢山人がいるでしょう? 生産性はスクラムマスターが気にする。チームに目を向けさせること。(Bas)
行動を変えたいのであれば、システム構造を変える。なぜ、気にしないのか?など考えることが大事。気にしろと言っても気にしない。顧客に会ったり、報酬につながったりが分かれば動くようになる。生産性。効率という言葉は赤信号。生産性や効率はただの出力であって、投資効果ではない。効果が欲しい。(Craig)
LeSSは管理者の存在を否定しません。置くかどうかは皆さんの判断(Bas)
所感:「マネージャが出来ればチームもできるよね」との指摘は、固定観念をあぶりだされる良い指摘ですね。真似したい。また、「構造を変えろ」とのCraigの指摘。これは、彼の言うラーマンの法則そのものですね。
以上でDay1報告は終了します。(Day1ではRedhatさんなど面白いスポンサーセッションもありました。)