前回、2.4GHzの半値角の説明をしました。引き続き2.4GHzについて説明します。
2.4GHz帯では、送信出力規定がmW/MHzと謎の「/MHz」が入る、という説明を書ました。字の通りで、「1MHzの帯域幅の出力」で、3または5または10mWと規定されています。例えば、ARIB STD-T66には以下の様に書かれています。
3mW/MHzでは、「周波数ホッピング方式(以下「FH 方式」という。)又は直接拡散方式(以下「DS 方式」という。)及び FH 方式の複合方式若しくは FH 方式と DS 方式の複合方式を使用するスペクトル拡散方式であって、2,427MHz 以上、2,470.75MHz 以下の周波数帯を使用する送信装置の空中線電力は、変調信号の送信速度と同じ送信速度の標準符号化試験信号により変調した場合において、1MHz の帯域幅における平均電力が 3mW 以下であること。」と書かれており、これが法律文章からわかりやすくした文面です。なんかわかりずらいですね。ここではもう一つの占有帯域幅の規定があり、以下の様に書かれています。
「FH 方式又は DS 方式と FH 方式の複合方式若しくは FH 方式と OFDM 方式の複合方式を使用する送信装置は 83.5MHz 以下、OFDM 方式を使用する送信装置は38MHz 以下、それら以外の方式を使用する送信装置は26MHz 以下の必要周波数帯幅であること。」
ここでの注目は「FH 方式又は DS 方式と FH 方式の複合方式若しくは FH 方式と OFDM 方式の複合方式を使用する送信装置は 83.5MHz 以下」で、最大83.5MHzの帯域が利用できるため、以下の計算が成り立ちます。
送信出力(MAX)=3mW/MHz×83.5MHz=250.5mW
つまり、トータル250.5mWの出力まで許容されます。これに公差の上限が+20%なので、300mWまで出せることになります。つまり、1MHzあたりの平均電力が3mW+20%=3.6mWになるように制御すれば、実質300mWの無線が使えるということです。それなら初めから300mWの製品でいいかと言えばそうではありません。FH方式は疑似ランダム符号で使う周波数が均等になるという前提のため、300mWがピークで通信が可能です。一方、DS方式は出力が使用周波数全体を均等にするため、ピークは3.6mWですが83.5MHz全体を使っていいのです。前者の例がBluetooth、後者がWi-Fiです。但し、流石に83.5MHzを一気に使うと同一エリアでは1つの無線しか使えないため、Wi-Fiでは20または40MHzまでに制限しています。ここで疑問が多数出ると思いますが、紙面では書ききれないため質問いただければ回答いたします。
また、2.4GHzでは、「スペクトル拡散以外の方式」は10mWと規定されており、ここには「/MHz」が付きません。つまり、スペクトル拡散以外は総電力が10mW以下しか出せないという意味です。通常、私が開発している製品はこの条件で製品化することがほとんどです。なんでこんな低い条件を選択しているのか疑問が湧いてくると思いますが、説明すると長くなるので一言だけ説明すると「低消費かつ多チャンネルを実現するため」です。そのような製品は世の中に少なく、結構重宝がられています。
その他、2,471-2,497MHzを使用するRCR STD-33という規格もありますが、話が長くなりすぎるので割愛します。
特小はこの辺で一旦終了し、次回から免許局を説明します。