通常はFC-SANを利用して構築する、ESXi RDMを利用したWSFCファイルサーバについて仮想環境のみで構築します。
※通常はADサーバも利用する構成が多いと思いますが、今回はADサーバを排してワークグループクラスターで構成します。
■環境
ESXiサーバ
6.7.0 Update 3 (Build 14320388)
WindowsServer
OS 名: Microsoft Windows Server 2016 Standard Evaluation
OS バージョン: 10.0.14393 N/A ビルド 14393
■構成詳細
サーバistg01
にてiSCSIディスクを2つ作成し、ESXiに接続します。
ESXiに接続されたiSCSIディスクをVMにRDMで結びつけます。
RDMで結びつけたディスクをWSFC共有ディスクとして利用します。
ADサーバを構築しない、ワークグループクラスタで構築します。
サーバ | IPアドレス | 役割 |
---|---|---|
ESXi | 192.168.142.10 | ESXiサーバ、iSCSIイニシエータ |
istg01 | 192.168.142.71 | iSCSIターゲット |
fs01 | 192.168.142.72 | ファイルサーバ1号機 |
fs02 | 192.168.142.73 | ファイルサーバ2号機 |
cls01 | 192.168.142.80 | WSFCクラスタ |
cls-fs | 192.168.142.81 | ファイルサーバ論理 |
DNS | 192.168.142.31 | DNSサーバ(BIND) |
iSCSIターゲットサーバの構築とESXi接続は以下記事に記載し、割愛します。
■構築フロー
1.VM作成
1-1.VM作成
1-2.windowsインストール
1-3.RDMディスクのマウント
1-4.片方でRDMディスクのフォーマット
2.WSFC構築
2-1.DNSサーバの設定
2-2.DNSクライアントの設定
2-3.ホスト名およびDNSサフィックスの作成
2-4.WSFCインストール
2-5.WSFCクラスタ作成
2-6.WSFCクラスタ作成
3.ファイルサーバの役割作成
3-1.ファイルサーバ、FSRMインストール
3-2.ファイルサーバの役割作成
3-3.WinRM TrustedHosts修正
3-4.共有の作成
4.動作確認
4-1.共有へのアクセス確認
4-2.フェールオーバー確認
1.VM作成
ではRDMを接続したVMを作成します。
2.WSFC構築
ではWSFCクラスタのセットアップまで実施します。
3.ファイルサーバの役割作成
ではWSFCクラスタ上にファイルサーバの役割を作成します。
4.動作接続
ファイルサーバへのアクセス確認、WSFCクラスタのフェールオーバーの確認を実施します。
作業1.VM作成
新規でVMを作成し、RDMディスクのマウント・フォーマットを行います。
手順1-1.VM作成
ファイルサーバ用VMのfs01
、fs02
を作成します。
Windowsインストール時点ではRDMは接続しないで構築します。
手順1-2.windowsインストール
windowsをインストールします(割愛)。
ワークグループクラスタの要件として、アカウント名とパスワードは同一にする必要があるので、インストール時のAdministratorパスワードはfs01
、fs02
で共通にしておきます。
Workgroup and Multi-domain clusters in Windows Server 2016
https://techcommunity.microsoft.com/t5/failover-clustering/workgroup-and-multi-domain-clusters-in-windows-server-2016/ba-p/372059
インストール後、以下だけは設定をしておきます(割愛)。
・IPアドレス固定設定
・リモートデスクトップ接続設定
・Windowsファイアウォールの無効化
手順1-3.RDMディスクのマウント
OSを停止し、RDMディスクをマウントします。
手順1-3-1.新規Rawディスクのマウント(fs01)
その他のデバイスの追加
> SCSiコントローラ
を選択します。
追加したディスクについて、コントローラの場所
をSCSIコントローラ1
(上記で追加したSCSIコントローラ)を選択します。
同様に、もう1個のディスクについても新規Rawディスク
から追加します。
追加したディスクについて、コントローラの場所
をSCSIコントローラ1
(上記で追加したSCSIコントローラ)を選択します。
VMが問題なく再構成されたら、VMを起動します。
手順1-3-2.既存のハードディスクディスクのマウント(fs02)
もう片方のVMであるfs02
においては、fs01
にて接続されたRDMと同じものを接続するため、既存のハードディスク
マウントします。
その他のデバイスの追加
> SCSiコントローラ
を選択します。
ハードディスクの追加
> 既存のハードディスク
を選択します。
追加したディスクについて、コントローラの場所
をSCSIコントローラ1
(上記で追加したSCSIコントローラ)を選択します。
もう一方のディスクについても同様に追加・設定し、VMが問題なく再構成されたら、VMを起動します。
手順1-4.片方でRDMディスクのフォーマット
Windows起動後、fs01
にてRDMディスクのフォーマットを実施します。
この作業はクラスタ内の1サーバのみの実行で問題ありません。
ディスクの管理
を起動し、ディスクが2個追加されていることを確認します。
ドライブ文字の変更を行います。デフォルトでE:
となっているので、Z:
ドライブに変更します。
もう片方のディスクについても、オンライン化、フォーマット、ドライブレターの変更を行います。
Quorum用ディスクとしてQ:
ドライブとしています。
作業2.WSFC構築
WSFCの構築を行います。まずはDNS系の設定を実施します。
手順2-1.DNSサーバの設定
DNSサーバの設定を行い、利用する予定のレコードを設定します。
ゾーンはtest.local
を利用します。
DNSサーバの設定手順は割愛します。
$TTL 86400
@ IN SOA cent77-01.test.local. root.test.local.(
2020020501 ; Serial
28800 ; Refresh
14400 ; Retry
3600000 ; Expire
86400 ) ; Minimum
IN NS cent77-01.test.local.
fs01 IN A 192.168.142.72
fs02 IN A 192.168.142.73
cls01 IN A 192.168.142.80
cls-fs IN A 192.168.142.81
$TTL 86400
@ IN SOA cent77-01.test.local. root.test.local.(
2020020501 ; Serial
28800 ; Refresh
14400 ; Retry
3600000 ; Expire
86400 ) ; Minimum
IN NS cent77-01.test.local.
72 IN PTR fs01.test.local.
73 IN PTR fs02.test.local.
80 IN PTR cls01.test.local.
81 IN PTR cls-fs.test.local.
手順2-2.DNSクライアントの設定
手順2-3.ホスト名およびDNSサフィックスの作成
Windowsサーバにてホスト名とDNSサフィックスの設定を行います。
コンピュータ名
を修正します。
また、詳細(M)...
を押下します。
このコンピュータのプライマリDNSサフィックス(P):
を入力し、OK
を押下します。
フルコンピュータ名:
が コンピュータ名+DNSサフィックス となっていることを確認し、OK
を押下します。
同様のことをクラスタ構成する全てのサーバに対して実行します。
手順2-4.WSFCインストール
サーバーマネージャー
> 管理
> 役割と機能の追加
を押下します。
再起動要求はありませんでしたが、念のため再起動を行います。
同様のことをクラスタ構成する全てのサーバに対して実行します。
手順2-5.WSFCクラスタ作成
サーバーマネージャー
> ツール
> フェールオーバークラスターマネージャー
を押下します。
クラスタを構成するサーバのホスト名を入力し、追加
を押下します。
すべてのテストを実行する
(デフォルト)を選択して次へ
を押下します。
結果の中に失敗
も含まれますが、問題なく続行が可能です。
使用可能な記憶域を全てクラスターに追加する
のチェックを外し、次へ
を押下します。
(あとからディスク追加するため)
手順2-6.WSFCクラスタ作成
RDMディスクが表示されるので、チェックを入れてOK
を押下します。
同様に、もう片方のディスクについても名前の変更を行います。
データ共有用のディスクをData
、クォーラムとして共有しないディスクをQuorum
としています。
作業3.ファイルサーバの役割作成
ファイルサーバの役割を作成し、外部からのアクセスを許可するところまで構築します。
手順3-1.ファイルサーバ、FSRMインストール
役割のファイルサーバー
とファイルサーバーリソースマネージャー
をインストールします。
サーバーマネージャー
> 管理
> 役割と機能の追加
を押下します。
再起動要求はありませんでしたが、念のため再起動を行います。
同様のことをクラスタ構成する全てのサーバに対して実行します。
手順3-2.ファイルサーバの役割作成
クラスタにファイルサーバーの役割を作成します。
フェールオーバークラスターを起動し、クラスターの役割にて役割の構成
を押下します。
汎用ファイルサーバー
(デフォルト)を選択し、次へ
を押下します。
クライアントアクセスポイントとなる名前
と住所
を入力し、次へ
を押下します。
使用する記憶域を選択します。
今回はData
のみを選択し、次へ
を押下します。
手順3-3.WinRM TrustedHosts修正
フェールオーバークラスター上のファイルサーバー共有については内部的にWinRMが利用されています。こちらのTrustedHosts
に許可を与えておかないとファイルサーバー共有の作成時にエラーになってしまうため、こちらの許可設定を実施します。
Powershellを起動し、既存のWinRM TrustedHostsの設定を確認します。
コマンド:Get-Item WSMan:\localhost\Client\TrustedHosts
PS C:\Users\Administrator> Get-Item WSMan:\localhost\Client\TrustedHosts
WSManConfig: Microsoft.WSMan.Management\WSMan::localhost\Client
Type Name SourceOfValue Value
---- ---- ------------- -----
System.String TrustedHosts
PS C:\Users\Administrator>
許可設定を行います。
コマンド:Set-Item -Path WSMan:\localhost\Client\TrustedHosts -Value '*'
PS C:\Users\Administrator> Set-Item WSMan:\localhost\Client\TrustedHosts -Value `*`
WinRM セキュリティの構成。
このコマンドは WinRM クライアントの TrustedHosts の一覧を変更します。TrustedHosts
の一覧内にあるコンピューターは認証されない可能性があります。クライアントはこれらのコンピューターに資格情報を送信する可能性があります。この一覧を変更しますか?
[Y] はい(Y) [N] いいえ(N) [S] 中断(S) [?] ヘルプ (既定値は "Y"): Y
PS C:\Users\Administrator>
設定後のWinRM TrustedHostsの設定を確認します。
コマンド:Get-Item WSMan:\localhost\Client\TrustedHosts
PS C:\Users\Administrator> Get-Item WSMan:\localhost\Client\TrustedHosts
WSManConfig: Microsoft.WSMan.Management\WSMan::localhost\Client
Type Name SourceOfValue Value
---- ---- ------------- -----
System.String TrustedHosts *
PS C:\Users\Administrator>
手順3-4.共有の作成
ファイルサーバーのディレクトリ共有設定を行います。
事前に、共有するディレクトリを作成します。
今回はZ:\sahre-test
とします。
下部カスタムパスを入力してください
を選択し、参照
を押下します。
事前に作成しておいたディレクトリを選択し、フォルダーの選択
を押下します。
共有
(共有フォルダアクセス)は読み取りしか付いていないため、Everyone
を編集
します。
作業4.動作確認
手順4-1.共有へのアクセス確認
他のPCから、共有フォルダへのアクセスを行います。
共有アクセスポイントのIPアドレスおよび共有名を利用してアクセスします。
アドレス:\\192.168.142.81\share
エクスプローラにてアドレスを入力します。
Windows Server 2016のAdministratorユーザによるパスワード認証を行っています。
手順4-2.フェールオーバー確認
フェールオーバー確認については役割の移動によって確認しています。
事前状態(現状)
役割がfs01
に搭載されており、記憶域(Z:\
)もfs01
も搭載されている。
事後状態(想定)
役割がfs02
に搭載されており、記憶域(Z:\
)もfs02
も搭載されている。
事前状態を確認します。役割および記憶域がfs01
も搭載されています。
事後状態を確認します。役割および記憶域がfs02
も移動されたことが確認できました。
■参考
Workgroup and Multi-domain clusters in Windows Server 2016
Workgroup Cluster の構築手順
WSFC / MSFC入門 (Windows Serverのクラスターでファイルサーバーを構築する)
Windows Server 2019 MSFC 構築手順
【VMware】SCSI バス共有を構成して RDM を仮想マシン間で共有させる方法
【図解】Windows Server 2022:WSFC (Windows Server Failover Clustering)構築手順