記事の内容は私個人の見解であり、所属する学科組織またはサークルを代表するものではありません.
ゲームが好きな少年たち
2人の少年A君とB君は、あるゲームが大好きです。A君は攻略本や攻略サイトでたくさんの知識を仕入れていて、いろんな戦術を覚えています。一方、B君はあまり知識はありませんが、自分で戦術を考えるのが好きです。
ゲームを始めた頃は、A君がB君に負けることはありませんでした。B君は悔しくて、A君に勝つために戦術を考えます。しかし、A君はどんどん新しい戦術を覚えていき、その度に新しい戦術を試してきます。君は、自分の頭だけで考えたのでは埒が明かないことに気づき、強い戦術を調べるようになりました。B君は、次第にそれらの戦術がなぜ強いのか、理解できるようになってきました。この時から、B君はA君に勝てるようになります。A君が新しい戦術を試してきても、その戦術の弱点を見抜き、臨機応変に自分の戦術を変えることができるのです。
今度は、A君が悔しがりました。なぜ負けるのか。A君はB君が使っている戦術を調べ、自分が知らないものだったら徹底的に覚えました。その学習の過程で、知らない戦術や面白そうな戦術が出てきたらそれも徹底的に勉強しました。今やA君は、B君が絶対に知らないであろうマイナーな戦術も知っています。これで負けるはずはありません。しかし、気づけば、A君はB君に全然勝てなくなっていました。
はじめに
PhysiKyuのアドカレ4日目です。自主ゼミサークルのアドカレということで、学習法について思うところを書きました。アドバイスとかが目的ではありません。物理を学習するにあたって、「こんなことを感じたやつがいるんだな」ということを温かい心で読んでいただけると嬉しいです。
以下の内容は、 時間がなかったので 、研究もやったことのないひよっこ物理学徒が、物理の勉強に対して、今の段階でなんとなく感じていることを吐き出した内容になります。(反省を込めて)
たくさんの本を読んで、説明や数式を追うだけではダメ
見出しの通りです。物理の勉強をするときには、「なぜこんな概念を持ち出す必要があるのか」とか、「この作業にはどんな意味があるのか」とか、「この結果は何を表しているか」とか、自分で考える時間を設けた方がいい気がします。本を読むと知識が増えていくし、知らないことやオシャレな計算手法も書いてあって楽しいですが、たまには本を閉じて自分なりに解釈してみるのも大事かと思います。具体例を自分で考えてみたりするのも結構面白いかもしれません。
物理が好きで、日頃からたくさん物理の本を読み、進んだ内容もたくさん知っている人の中にも、大学のテスト前には簡単な式の導出法とか、頑張って覚えようとする人が、僕の想像ではいると思います。しかしそれでは、青チャートやもっと難しい参考書を何周もして解法は全て覚えているけど、思考力を要する問題には手も足も出ない受験生と同じなのではないかと、僕は思います。
「高校生に毛が生えたレベル」を抜け出せたと感じた時
僕は高校を卒業して以来、自主的に物理と数学の勉強を進め、学部2年の終わりごろにはそこそこ進んだ内容も知っていたのではないかと思います。ただ、(数学科でも使われるちゃんとした教科書で)線形代数、微分積分、位相空間、多様体といった内容を一通り勉強してみても、テスト前に連成振動の解法をテスト前に何もみずに導出できるようになっても、Rayleigh散乱の表式の導出を頑張って追ってみても、アインシュタイン方程式を一旦一から導出してみても、手ぶらで問題に立ち向かった時の自分の思考回路が高校生の時から進歩していないことを薄々感じていました。要は、高校生の時より多くのことを知っているが、それを問題に適用できるほどには身についてないという、ただそれだけのことです。
その状況を少し抜け出せたのかなというタイミングがいくつかあり、例えばフーリエ変換をすると何がわかるのかを理解した時、統計力学における分布を与える手法の斬新さや普遍性を理解した時、などです。ちょっと言語化してみると、ある概念がどういう問題に対して適用できるのかとか、どういう経緯で導入されたものなのかとか、実際の計算に入る 前の 諸々の考察を面白いと思えた時、ということになるのかなと思います。
しかし面白さを理解するのは簡単じゃない
教科書を読み始めて最初の方にこういったお気持ちのことは書いてあることもあるのですが、学び始めに理解できるような代物ではないと思っています。実際に手を動かして計算をして、どのような結果が得られて、といったことをいくつも経験してからの方が理解しやすかったりもします。また、いろんなことを勉強していくうちに、根本の概念への理解が欠けていて、そしてその概念が斬新で面白いものであることに気づくこともあります。理解の前にはある程度慣れが必要って、まあいろんなところで言われていますね。
過去の自分に伝えたい、物理のこと
そういうわけで、過去の自分に伝えたい、物理のこと。「 物理で面白いのは、アイデアである。頑張って計算を追って、いろんなことを勉強するのも良いが、たまには根本の部分に目を向けてみてね 」
よく、物理の魅力として、「少数の原理から、いろんなことを説明できる」というものが語られますね。まあ実際そうなのですが、個人的には「 難問の解決のために積み重ねられてきた、さまざまな議論と斬新奇抜なアイデア 」というものを推したいです。原理と計算手法が与えられれば、結果に向かうまで論理的によく繋がっているので、その流れを理解することはなんとなくやっててもできるのかなと感じています。一方で、原理の発見に至るまでの過程や、計算手法の発明には、どうやったらそんなことが思いつくのかというアイデアが散りばめられています。これらの理解に、結構な教養と時間が必要だというのは、考えてみれば当たり前ですかね。
おわりに
ここまで読んでくれた温かい心の持ち主に幸あれ