#はじめに
2020年第3回のディープラーニングG検定の合格通知がきた。通知がくるまでは、合格するかどうかは全く分からなかった。
50代半ばを過ぎた自分が何故G検定を受けたのか?受験者の最多年代(20~40代)の方の中には不思議に思われる人もいるかもしれない。理由は、業務で機械学習関連を扱う可能性が高まること、それを踏まえて社内で勉強会を開始したことである。
これからG検定に挑戦する方、特に、知識ゼロの方、又は中年以上の方に、少しでも参考になることを願って、合格体験記を綴ってみた。
#1.ディープラーニングG検定の概要
ディープラーニングG検定は、深層学習(ディープラーニング)の基礎知識を有し、適切な活用方針を決定して、事業活用する能力や知識を有しているかを検定するテストであり、一般社団法人ディープラーニング協会により年に3回実施される。合格率は、おおよそ60~70%である。ちなみに、私の受けた2020年第3回目のG検定の合格率は60%であった。G検定の詳細については、一般社団法人ディープラーニング協会のホームページの次のURLにアクセスして確認いただきたい(URL:https://www.jdla.org/certificate/general/ )。
(1) 試験時間: 2時間
(2) 出題形式: 多肢選択式
(3) 出題数: おおよそ200問(今回の2020年#3では、191問)
(4) 試験環境: オンライン実施形式であり、ネット検索、書籍持ち込みも自由。
(5) 受験料: 一般;12000円、学生;5000円
(6) 出題範囲: おおよそ、以下のとおりである。
・人工知能(AI)とは(人工知能の定義)
・人工知能をめぐる動向
#2.私の勉強方法
まず、次の3種類の書籍を集めた。
(1)「ディープラーニングG検定公式テキスト」
(2)「これ1冊で最短合格ディープラーニングG検定 要点整理テキスト&問題集」
(3)「最短突破ディープラーニングG検定(ジェネラリスト)問題集」
今にして思うと、(1)か(2)のいずれか1冊と(3)を読み込むことでも良かったかもしれない。
何人かの合格体験記を見たところ、お勧めの書籍には、必ず「AI白書」が挙げられていたが、結構厚みのある書籍なので、検定当日までに時間があるようなら購入して読もうという程度に考えた。実際には、検定の日までにあまり時間がなく、「AI白書」を読むどころか、購入すらしなかった。このような厚い書籍は、読むに越したことはないが、短期合格を目指すなら、熟読ではなくパラパラ読む程度に留めるか、私のように思い切って読まないのも一考である。
私の勉強時間は、トータルでおよそ40時間くらいであった。検定1カ月前から準備したので、40時間を捻出するのが精一杯だった。
勉強時間の80%は、上記3冊の読み込みや、問題を解くのに使った。各3冊の書籍は、おそらく2回反復したと思う。
勉強時間の残り20%くらいは、インターネット上のサイトを見て、本ではわからないことを調べるのに使った。特に図解で説明されているサイト(例えば、Qiita)は貴重であった。
機械学習において、画像認識と自然言語処理は、将棋でいう飛車と角であり、非常に重要な分野である。自然言語処理は、私にとっては画像認識よりも理解しにくく、具体例がないと抽象的すぎて、ちんぷんかんぷんだった。何となく理解ができたのは、インターネットで図や具体例で説明しているサイトを見つけたためである。これには感謝感激である。
勉強前の私は、教師あり学習と教師なし学習と強化学習の明確な区別、畳み込みニューラルネットワークや、再帰型ニューラルネットワークについて無知であった。それでも40時間くらいの勉強でG検定に合格できた。検定を受けてみて自分なりに感じたことは、この試験は、試験テクニック5割、知識5割、ではないか?ということである。
#3.試験テクニック
まず、試験テクニックから述べてみたい。
■(その1)試験中頼りになるのはネット検索
G検定は、2時間という制限時間内で190~220問(自分が受けた2020年11月の検定では191問だった)の多肢選択問題を解いていく試験である。単純計算すると、1問につき30~36秒しかない。その代り、在宅試験であるから、テキストを見ても、ネット検索しても良い。検定試験を受けていて気づいたのは、テキストを見る時間的余裕はないことと、チートシートと称するカンペ(他人が要点整理してネットにあげたもの)も見る余裕がないこと、である。
問題を見てわからないワードにぶつかった場合には、ネット検索するしかない。事実、私は、G検定の問題を表示させるPCの他に、ワード検索用のPCを机におき、試験を受けていた。この方法が良いことは、既合格者の合格体験記にも書いてあった。書籍も机の上に置いていたが、試験中に1,2回見た程度である。
しかも、ページをめくって解答にたどり着くころには、おそらく2分以上経過していたと思う。そのことに気づき、検定を受けているときに本を見ることを途中からやめた。試験中、頼りになるのは、ネット検索であった。
■(その2)とにかく最後まで解くこと(やり残しはNG)
問題を解いていてわかったのは、長文問題と短文問題が入り乱れていることである。
短文問題の中には、即答できるものも結構あった。この手の問題の回答には10秒もかからない。このような「ごっつあん問題」を時間切れで未回答にするのは非常にもったいない。このため、長文問題は、一応読むが、わからない場合には未練なく捨てた。四択だと確率25%なので、25%に賭けて適当に選択した。捨てるしかない問題と、絶対正解できる問題と、メリハリをつけたといってよい。
■(その3)PC設定などの試験環境にも気をつかうこと
最近、自宅でも職場でもWiFiを使った無線通信の環境であることが多い。
しかし、無線通信の場合、いつのまにか通信が切断状態になることがある。そうでない人は良いが、私の場合はそのような経験が多かった。そこで、ケーブルを使った有線通信の環境下で検定を受けた。これなら、途中でネット切断状態にならないからだ。この検定は、時間との勝負であるから、試験中に、ネットの再接続を行う時間などはない。
PCのスリープ機能及び電源オフの機能についても同様である。スリープ機能や電源オフの設定については、長時間設定にするか、その機能をオフにする方が良い。試験中に、スリープとなり、PINやPWを入れないと復帰できないならば、著しく時間をロスしてしまうからだ。2時間という検定試験中は、PCがスリープ、ましてや電源オフにならないように、PCを設定しておくことも重要なことである。
最後に、試験中はトイレに行くことがないように、事前に用を済ませておくことも重要だと思う。
#4.機械学習の知識習得
機械学習に関する知識は、専ら、上記3冊の書籍の内、(1)「ディープラーニングG検定公式テキスト」と、(2)「これ1冊で最短合格ディープラーニングG検定 要点整理テキスト&問題集」を使って習得した。(3)「最短突破ディープラーニングG検定(ジェネラリスト)問題集」は、プラスアルファで使っただけである。あとは、インターネット上のサイトを見て理解を深めた。
試験を受けてみて感じたことは、機械学習の基礎を習得するには、上記(1)のみ、あるいは上記(2)のみの熟読でも良かったように思う。というのは、検定は、上記(1)や上記(2)の書籍には記載されていない事項も結構出題されていた。このため、他の書籍(例えば、AI白書)も読まないと、万全とは言えない。
しかし、万全を期す場合、私のような40時間くらいの勉強では足りず、もっと多くの勉強時間を要するだろう。これは、私見だが、わからない問題にあたったときには、まずネット検索をして、直ぐに回答できないようなら、適当に選択して、次の問題に進む方が良いと思う。
今回、後悔があるとすれば、それは、G検定の模擬試験として知られているStudy-AI G検定模擬テストが存在することに気付いたのが試験日の数日前であり、模擬試験を使った準備がほぼできなかったことである。この模擬テストは受けた方が良いと思った。
#5.勉強の効果が高い問題もある
大学や職場で機械学習に日々接している方は別だが、はじめて機械学習を学ぶ方にとっては、各種のニューラルネットワークを書籍で勉強したとしても直ぐに理解できない可能性もある。
一方、①トイプロブレム、フレーム問題などのAIにおける各種問題や、②個人情報保護法、著作権法、特許法等の法律問題、③各国の取り組みは、理解に苦しむことが少なく、「こういうものだ」という割り切りで暗記に徹すれば良い。私の受けた検定では、上記①②③に関する問題も結構出題されていた。①②③は、基本書の最初と最後の章に記載されているので軽視しがちだが、決して軽視せず勉強しておくことをお勧めする。
なお、「自動運転のレベル別の内容」や「ドローンの規制」については、表でまとめたものを試験当日、手元に置いておけば、暗記していなくとも良い。
#6.おわりに
今回の試験を受けて感じたことは、G検定は、機械学習とその周辺の情報を広く浅く問う試験ではないか、ということである。私は、知財業務を行う上で機械学習を少しでも理解したいと考えていた。このため、G検定の合格のみならず、合格を目指して勉強したこと自体が有益だった。上記の体験が読者の一部の方にでも参考になれば幸いである。