はじめに
株式会社LITALICOのエンジニアで新卒6年目の@H-asakawaです。
今年の10月から8人規模の開発チームのマネージャーに任命されました。
この記事は『LITALICO Advent Calendar 2023』の11日目の記事になります。
この記事では私がマネージャーになるまでに準備したことと、実際にマネージャーとなって2ヶ月経ってから感じたことを紹介します。
将来マネージャーになることに不安を抱えている方の参考になればいいなと思っております。
また、記事内の『上司』である@negiさんが『LITALICO Advent Calendar 2023』の12日目に本記事へのアンサーを書いてくれています。
対象読者
- エンジニアリングマネージャーを目指したい方
- エンジニアリングマネージャーを目指そうか迷っている方
- エンジニアリングマネージャーになることに不安を抱えている方
- 駆け出しエンジニアリングマネージャーの方
上記の方の中には、エンジニアリングマネージャーというなんだかとても大変そうな仕事に就くことに不安を抱えている人が多いんじゃないかと思います。私は完全にそうでした。
X(旧twitter)でくまみね先生の仕事猫と管理猫の絵を見ながら、管理猫って大変そうだよなぁといつも思っていました笑
私は新卒未経験でエンジニアとして働いているうちに、モノづくり自体の楽しさや課題を考えたり試行錯誤で解決して学びを得ながらチケットを完了にしていく楽しさを知り、ときには脳内にドーパミンが溢れ出す気持ちよさすらも感じてしまっていました。
何か問題が起きた時に調査して問題取り除いてヨシ!するのって楽しいなぁ
そのため、エンジニアリングマネージャーになったら自分でチケットを取る機会がなくなり技術の学習機会が減ってしまい、仕事の楽しさを失ってしまうのではないかという危惧や不安感を少し抱いていました。やってはみたいけど、性格的に合うかな・スキル的に出来るかなと心配してました。
そんな私が、2年半のアシスタントマネージャー時代を経てスキル面・マインド面でどんな準備をしたかと、業務引き継ぎを経て実際にEMを経験するなかで感じていることを紹介したいと思います。
結論からいえば、現在の私はEMの仕事はめちゃくちゃやりがいのある楽しい職種だと感じております。
1. EMになるための準備
1.1 スキル面の準備
EMに関する書籍を2冊読んで体系的知識をインプットしました。
どちらの本もめちゃくちゃ良い勉強になりました。
特にマネジメントキャリアパスの前半部分は1年目に読んでもけっこう役に立ちそうという印象でした。
マネージャー同士である程度共通認識を持ったうえで議論ができるようにするためにも、まずは体型的な基礎知識を入れて目線を合わせにいく作業が必要だと思います。
頭に定着しきっていないので、そのうちまた読み返したいです
次に自己管理スキルを強化しました。
きっかけは、EM本の2章「まず自分を管理しよう」を読んだことです。
私はアシスタントマネージャーになった後も自分専用のTODOリストを特に作っておらず、着手しているタスクに関してslackの「後で」に都度メモして見返すか、頭で覚えておく方式で運用していました。しかし、徐々に開発以外の細かい業務を任されるようになり、頭で記憶できる限界値を超えていることに気づかず、細かいタスクの期限を失念することが増えていました。
そのために、私の上司のTODOリストには「私に〇〇をリマインドする」というタスクが追加されていたようです、なんて悲しい事態。。。
これは私が完全に愚かだったなと深く反省し、TODOリストとしてGoogle ToDoリストを使うようにしました。
結果、自分専用のTODOリストを作ったおかげで生産性が爆上がりしました。
現在はタスクが発生した瞬間に速攻でTODOリストに書き込むようにしてます。
Googleカレンダーは利用頻度が高いので必然的に確認回数が増えて抜け漏れが起きづらいのと、タスクの順番をドラッグアンドドロップで簡単に変更できて内容も編集できるため、メモさえできていれば後から優先度や必要性をじっくり精査できるところが気に入っています。
毎日せっせと運用しており、今年は760件のタスクが完了。自分だけでちまちまと完了させてひっそりと快楽を味わっております
また、自分の自己管理の甘さを痛感したので、これを機に自己管理が甘いと感じたものをスプレッドシートを使って記録をつけて整理することも始めました。
自己管理シートの爆誕です。
体調管理(体調5段階評価、ひとこと日記、ジム行ったかどうか)、読書管理、サイト改善点管理、給与管理、賞与管理、タイヤ空気圧点検管理、などなど色々な管理対象に記録をつけながら、自己管理スキルを鍛えています。
さらに、期限付きの管理業務や承認が必要な書類に関連するメールを絶対に見逃さないようにするためにGmailのフィルタやラベルを使ってメールフィルタを綺麗に整理しました。
期限付きの作業依頼メールが月初に5個飛んでくるので、抜け漏れないようにしています
このようにEMとしての体系的な基礎知識を仕入れつつ、自己管理スキルを高める準備をしていました。
1.2 マインド面の準備
EM本を読んだことで少しずつEMのやるべきことがわかるようになり、普段の業務のなかでもっとこうしたほうがよいのでは?こうするべきなのでは?これは良くないだろうか?といった疑問を感じる機会が増えていきました。
こうした疑問はEMである上長との1on1のなかで解消していきました。
上長との1on1での相談で、EM目線からはチームの状態はこう見えている、EM目線だとこういう判断になるといった考え方の指針や判断基準の根拠などをチーム内で起きてる事例ベースで詳しく説明してもらいました。
各種の説明が腹落ちするまでは自分の頭で毎回じっくり考えました。時には疑問を抱くこともあったのですぐに質問し、経験の差からくる考え方の差異や見落としている観点がないかなどを学びました。
そうやって話をしていくなかで自分よりも優秀な人たちをどうマネジメントしていけばよいのかや、自分がコードを書かずにチケットを取らなくなっていくことに対してエンジニアとしてどう向き合っていけばよいのか、といった不安感を解消することができました。
1.3 業務引き継ぎ
アシスタントマネージャーを2年半やっている間に、上長との1on1やDM等で事あるごとに、マネージャーとしてなぜそういう判断をしたのか、メンバーにはなぜこういう伝え方をするのか、なぜこういう方針をとるべきなのか、といったEMとしての判断基準や考え方などを詳しく教えていただきました。
この地道な過程があったからこそ、少しずつ自分の考え方の観点や視座をEM目線に引き上げてもらうことができたと思っています(まだひよっこですが)。
あと右も左もわからない私からすると、EM業務に関する丁寧な引き継ぎがあるのがめちゃくちゃありがたかったです。
自分もいつか同じことをやるときがきたらできるだけ後任に丁寧に引き継ぎたいと思いました
業務引き継ぎはデリゲーションポーカーでマネージャー業務とアシスタントマネージャーの業務をそれぞれ一覧化し、現状の委譲レベルの再確認をしました。すぐに委譲が可能なもの、まだ完全には委譲できないものなどを整理していき、最終的には予算管理と人事評価だけはマネージャ就任後も一時的にサポートに入って頂くことになりました。
上記は私も実施にあたって不安を抱えている部分だったので、私のスキル感を考慮して学習期間を経て引き継ぐようにしてもらえて非常に助かりました。
特に予算に関しては簿記を勉強したことが無いのでだいぶスキル不足でした
2. EMになって感じたこと(2ヶ月)
2.1 不可抗力
期限のある逃れられない事務作業、申請承認、業務連絡告知、メール対応、予算管理(などなど他にも細かいものが色々出てくる)、こういった地味でつらい作業に取り組むことは不可抗力だなと思いました。
EM業務全体のなかで占める割合は少ないですが、管理職をやる以上はこういった地味な裏方業務も確実にこなす必要があります。
本質的なマネジメント業務やプロダクト開発に自分のリソースを集中するためにも、これらの裏方業務をいかに効率よくスムーズに捌くかが大事です。なので最低限の自己管理が必須スキルなのだと理解しています。
自己を管理できないものがチームを管理できるわけがない的なことがEM本に書かれてあり、当時は耳が痛かったです
なお、裏方業務をやっていると会社を運営するために何が必要なのかを自然と学ぶことができるので、個人的には良い学習機会を貰えたなと嬉しく思っています。
私は裏方業務の必要性を理解することと裏方を支えることが結構好きな性格なので、この不可抗力にも前向きに取り組めています。
2.2 知識があっても実践ができるとは限らない
EMの知識がある程度身について頭でわかったとしても、それをすぐ現場で実践できるわけでは全くありません。結局難しいので、迷いや戸惑いや葛藤は今後も沢山生まれるだろうなと思っています。
学ぶとわかる!となって、実践するとわからない..となる波を繰り返しながら一筋縄ではいかずに成長をしていくのがEMなんじゃないかという気がしており、若干息苦しそうです。
EM本ではダニング=クルーガー効果の谷の部分がインポスター症候群だと紹介されており、波を繰り返しながらスキルアップしていくことが大事のようです
それでも自分で悩み考え抜いて試行錯誤しながら自分なりのマネジメントスタイルを確立していく過程には、きっと楽しさや面白さや達成感が転がっているに違いないと思っています。
2.3 EMとしてのスキルをもっと高めたい
ひよっこの駆け出しEMなので日々の実践とともにスキルアップもしていきたいなと思っています。
この記事がめちゃくちゃ分かりやすかったです。
- 学ぶべき知識が体系化されていて学習がしやすい(量が多くて詳細に入り込むと正解が分かりづらそうな印象)
- 体系化されている主要な4つのスキル領域にはそれぞれ実践していく面白さがありスキルアップの幅も広い
- プロダクトマネジメント
- 事業目標達成のためプロダクトがどうあるべきかを考える - デリバリーマネジメント
- 事業目標達成のためプロダクトをリリースするまでの進め方を考える - ピープルマネジメント
- 事業目標達成のためどういう組織が必要かを考える - テクノロジーマネジメント
- 事業目標達成のためどういう技術が望ましいかを考える
- プロダクトマネジメント
- 人としての成長が期待できそう
- メンバー時代とは全然違った業務をやることになるので、人として成長できる可能性が高い
- 今まで大事だと思ってなかったことや気にも留めていなかったことが、実はこういうことだったのか!と気づける機会をもらえます
- 例えば、私は学生時代に事務作業が苦手で書類の提出や申請、記入指示の解読などを面倒くさがる性格の人でした。しかし今ではそういったドキュメントを隅々まで読み込んで期限までにキチッと済ませる作業がさして苦ではなくなりました
- また、今後はコーチングスキルや傾聴スキルをちゃんと学んで身につけたいと思っています
- そんなふうに、求められるスキル領域が広いからこそ自分の苦手な箇所や鍛えたい箇所を見つめ直してスキルアップに繋げていくことができそうです
- メンバー時代とは全然違った業務をやることになるので、人として成長できる可能性が高い
- 責任の重さに見合う裁量の大きさと達成感の大きさ
- 事業目標数値の達成やメンバーの評価/給与に責任を負うのは心理的には負担が重いです
- でもその分裁量も間違いなく大きいし、高い意欲を持って主体的に取り組んでいればチームで目標を達成できたときの充実感も大きいと思うのでやりがいがあると感じています
- ちなみにEMとしての業務は生半可な覚悟だとしんどい時にちゃんと完遂できないかもしれない...という印象を持っていたので、実際にEMになってからは覚悟が決まり、自然と業務に気合いが入り視座が高まり主体性が増しました
- 事業部の人達やエンジニアのメンバーとみんなで一致団結して日本一のサービス/プロダクトを作る、そんな挑戦がきっとできるだろうと思っています
おわりに
EMになったばかりで右も左もあまりわかってない私は、この記事を書く前にEMに関する記事を大量に読み漁りました。その結果わかったことは、先輩EM達が未来の後任EMのために非常に有益な知見を記事として沢山残してくれているということでした。
特に、EMを目指すと決めてからEMの体系的知識を学習しつつ、チームで実践しながら自分なりの解釈/考察/言語化を重ねていらっしゃるこの方の記事は非常に参考になりました。
すでにある程度体系化されたEMの知識集があり、それらをもとに目の前の業務とどう向き合っていったかを物凄く高い精度で言語化してくれている人もいて、具体的な実践手法や注意点を紹介してくれている人もいます。さらに、弊社の先輩達は過去のアドベントカレンダーのなかでEMに関するこんな魅力的な記事も発信してくれています。
EMになってから改めて読み直すことで気付きを得た箇所もありました
会社や部署が異なるとマネジメント手法が全然異なるケースは大いにあり得ると思うので、同じ会社内でEMの知見を共有しあえることほど嬉しいことはありません(横展開!横展開!)。大感謝です。
このように学習教材が十分揃っているおかげで、あとは知識を収集してそれを現場で実践できるかどうかを自分で試行錯誤しながら学んでいこう、と非常に前向きになることができています。
ということで今回一番伝えたかったことは、マネージャーを目指そうとしているあなたの周りには支援してくれる仲間(先輩EM達)がすでに沢山居るから、あんまり不安を抱えなくて大丈夫だよということです。
最後に、私は上司から丁寧な引き継ぎをして頂いているおかげで、いま自分の目の前の業務に対して前向きに取り組むことが出来ているので本当に感謝しています。自分もいつか後任の方に対して同じように丁寧な引き継ぎと知見の共有をしてあげたいと思い、まずは不安を消し去ろうという趣旨の記事を書こうと思った次第でした。
EMの魅力が伝わったかどうかはわかりませんが、EMを目指す人の不安が少しでも減ってくれれば嬉しいです。
明日(12日目)のLITALICOのアドベントカレンダーは@marie-yさんです。お楽しみに!