概要
Courseraを通じて、日本にいながら世界ランキング100位以内の常連 Public Ivy の1校から、GRE・IELTS/TOEFLや紹介状の準備なしにデータサイエンティストの修士号(Master of Science in Data Science / MS-DS)を取得できるよって話。
学部時代の成績が悪かろうが関係なく、そもそも Pathway に合格したらいいので高卒でも在籍してる人がいるよ。
Pathway course とは何か
University of Colorado Boulder のMS-DS Pathwayコースは英語試験のスコアも紹介状も不要で、大学の成績および学位がなくても Pathway に属する3科目1セットをB評価(GPA 3.0)以上で合格すると入学が許可される制度です。
Pathway 科目も必修科目に属しており、正式入学後は単位に加算されます。
体験入学しながら単位認定と入試を行っているイメージです。すべては Pathway 科目の評価で合否が決まります。
Pathway から入学した場合、修士論文は課されません。博士課程へ進みたい/研究者になりたい場合はリアルキャンパスに通う方がより確実です。
Pathway の時点でも最終試験を受験するなら簡単な英会話ができる必要があり、また正式入学後もエッセイ/プレゼンテーション/インタビューが課される講義があるため完全に英語から逃げられる訳ではありません。勉強しましょう。
2つの Pathway
正式入学希望者は以下の2コースから1つ選び、3科目でB評価以上で合格を目指します。
- Computer Science(コンピュータサイエンス)
- DTSA 5501 Algorithms for Searching, Sorting, and Indexing(検索、ソート、インデクシングのためのアルゴリズム)
- DTSA 5502 Trees and Graphs: Basics(木構造とグラフ構造:基礎)
- DTSA 5503 Dynamic Programming, Greedy Algorithms(動的計画法と貪欲アルゴリズム)
- Statistics(統計学)
- DTSA 5001 Probability Theory: Foundation for Data Science(確率論:データサイエンス基礎)
- DTSA 5002 Statistical Inference for Estimation in Data Science(データサイエンスにおける推定のための統計的推定)
- DTSA 5003 Hypothesis Testing for Data Science(データサイエンスのための仮説検定)
このプログラムが始まった2021年 Summer 1(山岳部標準時で2021年5月3日~6月25日)セッション時点では Statistics は開講されておらず、CSについても Dynamic Programming, Greedy Algorithms は未開講でした。
Pathway 以外も含めて講義が拡充されている段階です。現在の講義とその内容について、詳しくはカリキュラムをご確認ください。
なんでMS-DS取得しようとしてるの? それも Pathway から。
- ディープラーニングE資格の講座から(E資格を受験せずに)大企業のデータサイエンスチームに入ったものの、知識不足を痛感しているから。
- 昇進や転職の条件を見ていると、自分の給与より上だと理系修士卒が求められているのをそこそこの割合で目にするから。(私は経済学部卒)
- 学部時代に体調崩してGPAが悲惨なことになってるから。
卒業について
30単位を平均GPA3.0以上で8年以内に取得するとMS-DSに認定され、卒業証書が授与されます。現地の卒業式にも参加できます。
この卒業証書はキャンパスに通った人と同じものであり、他大学ではたまにある「オンライン」など特別な表記はされないようです。
履修登録について
およそ8週間の開講期間中に3科目まで受講できます。
年間6回の履修登録期間があり、各登録期間はクラス初日の2週間前に始まり、コースワークの期限が切れる2週間前に終了します。時間と科目登録数に余裕があるなら追加で受講できるということです。
講義について
講義はすべてCourseraプラットフォーム上で行われます。
CSコースの Algorithms for Searching, Sorting, and Indexing では、講義動画を視聴している間に出される確認クイズ(成績評価されない)と、講義とは別に課されるクイズ(成績評価される)を繰り返して理解度を深めていく流れでした。
その週のまとめとして、Jupiter Notebookを利用したプログラミングの自動採点課題を解きます。
科目によってはエッセイ/プレゼンテーションなどが課される場合もありますし、CS Pathway は Python ですが Statistics Pathway は R という話ですし、私が体験した High Performance Computing の講義は shell script を記述していました。
最終試験はクイズと同じ形式の問題です。オフィスアワーで質問した人によると、最終試験を受験しなくてもそれまでの得点がB評価以上なら無試験でも合格できるそうです。
CS Pathway の3コースは最終試験を含まなくても80%以上得点できるように設定されているため、毎回のクイズとプログラミング課題が満点であればそれだけで合格はできるようです。
A評価が付けばGPA 4.0が手に入るため、正式入学後を考えると最終試験は受けた方が良いとは思います。
試験について
ProctorUというサービスを使って、リアルタイム 1 vs 1 監視の下で試験を行います。
持ち込み可能なものは科目によって違うかもしれませんが、講義ノート(手書き・プリントアウトどちらでも)と指定テキストのみです。WEBカメラを使って部屋や机周りを撮影するため、ノートパソコンで受験するかUSB延長ケーブルがあるとチェックがしやすいです。
ここで試験官と簡単な英語での会話が発生します。検索するとProctorU受験記が複数見つかるので、流れを確認しておくと良いでしょう。
私は設定ミスで操作権限を渡せず試験時間を無駄にしたので、設定ビデオは何度か見返しながら設定チェックを行うと安心できるかもしれません。
試験が終わったら試験官へチャット欄から終わった旨を伝えて、指示に従って終了していきます。
質問について
オンライン講義は周囲に物理的な人間や図書館が存在しないため、質問し・答える場所に困る場面が出てくると思います。
活用できるのはオフィスアワーとSlack、そしてCourseraの機能を使ったディスカッションです。
Office hourの活用
事前に何月何日の何時からビデオチャットでスタッフが質問を受け付けるよとアナウンスしています。
相手がスタッフなので最も信頼できる情報源。
Slack チャンネルの活用
雑談チャンネルも存在しつつ、講義別チャンネルが用意されていて質問が行われています。
共通チャンネルのひとつでは「オフィスアワーでスタッフからこんなことを言われた」という情報が回ってくるので、英会話苦手勢はここで情報が落ちてくるのを待ちながら雑談してるといいと思います。
会話しないのはいないのと同じ、というのはオンラインですとより顕著です。
Discussion forum の活用
各講義ごとに質問や考察を投げられる掲示板。
システムの不具合で動かないときのトラブル回避方法なども共有されています。
他2つと違い、これのみCourseraの学位認定プログラムに参加していない受講者も読み書きができます。
過去の受講者が四苦八苦した資料を読んで行動するならここ。
最後に
受講者は20代から推定60代まで、幅広いです。
日本人も何人か参加していますが、アメリカに限らず世界中から参加しています。
また、既にデータサイエンティストとして働いている人もそれなりの割合で参加しているため、実務ならどうなのという観点から質問に答えてくれます。
手頃な値段(1講座667ドル)でアメリカの大学院から学位を取得しつつ、データサイエンティストのネットワークを得るには良いんじゃないでしょうか。
GPA/GRE/IELTS/TOEFLのスコアが高く、英文紹介状も用意できるなら学費がもう少し安い大学院も存在しています。
また、University of London では大学院ではなくCS系の学部生も募集しているようです。
その他、edXも学位認定プログラムがあったかと思うので、興味がある方はご自分で資料を比較検討してください。
受講メモ
Semester | Course Number | Title | Score | Grade |
---|---|---|---|---|
2021 Summer 1 | DTSA 5501 | Algorithms for Searching, Sorting, and Indexing | 92.30 | A |