【はじめに】Kubernetesがクラウドを変えた理由
Googleでクラウドプラットフォームエンジニアをしている佐藤です。私はKubernetesの前身であるBorgシステムの開発経験もあり、今日はKubernetesの設計思想と実運用で得た知見を余すところなくお伝えします。
Kubernetesは単なる「コンテナオーケストレーションツール」ではなく、分散システムの抽象化レイヤーです。Googleの大規模サービス(Gmail、YouTubeなど)で培ったノウハウが詰まっています。
【1】Kubernetesアーキテクチャの本質的理解
1.1 コントロールプレーンの魔法
- etcd:分散キーバリューストアの選定理由(RAFTアルゴリズムの詳細)
- kube-schedulerのスコアリングロジック(実際のGoogleのカスタムスケジューラ事例)
// サンプルスケジューラ拡張(Go実装)
type EnergyAwareScheduler struct {
preferredNodes []string // 再生可能エネルギー利用ノード優先
}
func (e *EnergyAwareScheduler) Filter(pod *v1.Pod, nodes []*v1.Node) []*v1.Node {
// カスタムフィルタリングロジック
}
1.2 データプレーンの設計原則
- Podネットワーキング:Googleが採用するIP-per-Podモデルの利点
- **CSI(Container Storage Interface)**によるストレージ抽象化の実装例
【2】本番環境で学んだ重大な教訓
2.1 大規模クラスタの障害事例
- ケーススタディ:500ノードクラスタで発生した「etcdクォーラム喪失」
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解決策:
- リージョン分散配置
- 定期的なコンパクション設定
# etcdメンテナンスコマンド例 etcdctl defrag --endpoints=https://etcd-cluster:2379
2.2 リソース最適化テクニック
- **Vertical Pod Autoscaler(VPA)**の落とし穴
- **Horizontal Pod Autoscaler(HPA)**のカスタムメトリクス連携(Prometheus連携)
【3】Google流Kubernetesベストプラクティス
3.1 セキュリティ設計
- GKE Sandboxによるコンテナ分離技術
- Binary Authorizationでイメージ署名を強制
3.2 コスト最適化
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ノードプール戦略:
- スポットインスタンス活用(最大70%削減)
- 自動スケーリングの閾値設定術
【実践ガイド】トラブルシューティングフロー
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診断コマンド:
kubectl get events --sort-by='.lastTimestamp' -A
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ログ収集:
stern -n production ".*" --template '{{.PodName}} | {{.Message}}'
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パフォーマンス解析:
kubectl top pod --containers
【まとめ】Kubernetes成功の5原則
- 宣言的APIを徹底活用する
- 観測可能性を最初から設計に組み込む
- カオスエンジニアリング(Chaos Meshなど)で耐障害性をテスト
- GitOps(Argo CDなど)で構成管理
- マルチクラスタ戦略で可用性を確保
次回は**「分散システム設計の基礎と実践!CAP定理を理解する」**について解説します! 質問は#KubernetesQAで募集しています。
🔧 チェックリスト
- コントロールプレーンの高可用性構成を確認
- Podディスラプション予算を設定
- バックアップ/Restoreプロセスをテスト済み
- ノードの自動修復を有効化
(※本記事の内容は個人の見解であり、Googleの公式見解ではありません)