技術的視点とクリエイティブ思考を活かすコミュニケーション戦略
こんにちは!クリエイターだけど、エンジニア育成事業の責任者をしているクリエイティブディレクターの大泉です。「エンジニアがわからない」ことを「クリエイティブの視点」という武器に変えて、なんとかやってます。
本記事では、エンジニアとクリエイターの思考法の違いを踏まえたチーム開発の進め方を紹介します。
この記事で得られること
・エンジニア×クリエイターの「思考法の違い」を理解し、チームでの意識合わせに活かせる
・加点法・減点法を上手く使い分けるディスカッションの進め方
・チーム内でのコミュニケーションギャップを減らすTips
こんな方におすすめ
・デザイナーなどクリエイター(事業責任者含む)と一緒にプロジェクトを進めているエンジニア
・エンジニアとのやり取りに苦戦しているデザイナーやディレクター
・ChatGPTなどAIを活用して企画・開発を円滑に進めたい方
1️⃣思考法の違い:加点法 vs 減点法
1-1. クリエイターの思考法:加点法
私たちクリエイターは、アイデアを積み上げていく「加点法」で考えることが多いです。
「このアイデア、いいね!ここをもっと膨らませよう」
「ここに○○を足したら面白くなりそう!」
アイデアの種を大切に育て、そこから可能性を広げていくのが得意。完璧でなくても魅力的な部分があれば価値を見出し、それを伸ばす思考回路を持っています。
1-2. エンジニアの思考法:減点法
一方、エンジニアの皆さんは「減点法」で考えることが多いです。
「このコードのここにバグがある」
「この仕様だと○○の場合に破綻する」
一つのミスがシステム全体を機能不全にする可能性があるため、問題点を先に洗い出し、ひとつずつ解決していく思考が身についています。これは決して否定的なわけでなく、プロダクト品質を担保するために不可欠なスキルです。
2️⃣なぜギャップが起こるのか?
この思考法の違いが、時としてコミュニケーションギャップを生みます。
クリエイター側の反応
「アイデアを出したのに、すぐに問題点を指摘される…」
「もっと可能性を広げて考えてほしい」
エンジニア側の反応
「技術的な制約を無視した非現実的な提案が多い」
「問題点を指摘しているだけなのに、否定されたと思われる」
ここを上手く橋渡しできるかどうかが、チームの成果を大きく左右します。
3️⃣ギャップを埋める:共創のための実践アプローチ
3-1. 議論のフェーズを明確に分ける
アイデア発散フェーズ
「まずは技術的制約は置いておいて、理想を語ろう」と宣言する
この段階では「Yes, and...」の精神で意見を積み上げる
実現性検討フェーズ
「では、現実的に実装するとしたらどうなるか?」と切り替える
この段階で技術的な制約や懸念点を出し合う
Tips: FigmaでアイデアのUIをざっくり描いて共有する
例:「アイデアのゴール」「想定ユーザー」「技術リスク」をあらかじめ洗い出しておくと、議論のフェーズを自然と分けやすいです。
3-2. 言い回しを工夫する
クリエイターからエンジニアへ
×「このアイデアでやりたい!」
○「このアイデアの核心は○○なんだけど、技術的に実現可能な形にするにはどうすればいい?」
エンジニアからクリエイターへ
×「それはできない」
○「その方向性は面白いね。技術的には○○という制約があるけど、代わりに△△という方法なら近い体験が実現でき
そう」
4️⃣共創成功事例:AI comic 英単語『コミ単』の開発プロセス
AI comic 英単語『コミ単』とは?
「コミ単」は英単語学習×生成AIを組み合わせたWebアプリです。中高生の「英単語がなかなか覚えられない」「単語帳がつまらない」という課題に対し、入力した英単語からAIが漫画を生成することで楽しく学習できる...と思ったけど、AIが生成する漫画の内容が面白くないので”自分で面白くする”仕組みにすることで、生成AIへの興味喚起と英単語学習の両方を実現しました。
4-1. ステップ1:ビジョン共有(加点法)
英単語を覚えるのが楽しくなる体験をビジョンとして提示
エンジニアも含めて周辺の中高生へのヒアリングを実施
この段階では技術的な実現性よりも「学習を楽しくする」というビジョンに全員が集中
4-2. ステップ2:技術的検証(減点法)
エンジニアチームが各アイデアの技術的実現性を検証
クリエイターも技術的制約を理解し、「AIの生成時間が長いなら、待ち時間を魅力に変えられないか?」と提案
「できない」ではなく「どうすればできるか」を全員で考える姿勢が重要
4-3. ステップ3:クリエイティブ解決(加点法×減点法)
技術的制約(リアルタイム生成が難しいなど)を前提に、新しいクリエイティブソリューションを共に考案
例:「テンプレート+部分生成の組み合わせ」で最終的に面白い漫画体験を実装
エンジニアが「AIはそもそもユーモアがない」といった限界を逆手に取り、「つまらない漫画を先に出して、人間が面白くする」という発想が誕生
結果、役割の垣根を超えて創発された、どちらだけでは生まれなかったプロダクトが完成しました。
▣まとめ & 次回予告
加点法・減点法が混ざると衝突が起きがちだけど、段階を分けて活用すれば最強のタッグになる
言い回しやコミュニケーション手段をちょっと工夫するだけで、生産性が大きく向上する
Figma、生成AIなど、ツール連携を積極的に取り入れると“共創”が加速
あなたの組織ではどうしていますか?
クリエイター×エンジニア間で「これは役立った!」というコミュニケーションの工夫やツール活用事例があれ
ば、ぜひコメントで教えてください!
逆に「こんな失敗談があった…」というリアルなエピソードも大歓迎です。
次回予告:「世間のエンジニア像 vs 実際のエンジニア」
エンジニアに対する誤解やステレオタイプをどう崩していくか?
“職人気質”と“柔軟性”を両立する開発チームの事例
お楽しみに!