概要
お久しぶりです。
最近、電波を自分で出し、無線を自作したいと思い勉強を始めたんですが、いろいろ詰まってしまったので、記録を残します。
まず分布定数回路自体はこちらに
参考書は
ギガヘルツ時代の電波解析教科書です。
まず初めに、ダイポールアンテナ(二本の直線導線を左右対称に取り付けたもの)の電流分布が
このように先端では電流0、根元では0じゃないことについて説明します。
普通に考えれば、アンテナという導体に流れる電流は一様ではないか?
そもそも、解放されているので電流なんて流れないのでは?
と考えてしまうでしょう・・・
実は、この問題は分布定数回路の理論を用いて説明されます!
まぁ、アンテナにコイル、コンデンサ成分が存在するためっというのが理由なのですが
アンテナについて軽く知りたい方はこちら
電信方程式
こちらの内容とかぶりますが
私なりに書いてみようと思います。
まず、交流電源に二本導線がつながっている状態を考えます。
ここで、二本の導線同士はつながっていません。
導線のどの場所も同じ電圧で、電流は流れていないと考えると思いますが、分布定数回路理論を導入し考えてみます。
導線内部には抵抗線密度 $R [\Omega/m]$、コイル成分線密度$L[H/m]$が存在します。
これを図にすると
さらに、二本の導線同士はコンデンサとして働くとも考えられるため、コンデンサ成分線密度$C[F/m]$
さらに、二本の導線間の気体が完全に絶縁することはないので、かなり大きい抵抗が存在すると考えられます。
以降の説明を容易にするためこの抵抗の単位として抵抗の逆数である、コンダクタンスを$G$を使います。
コンダクタンスは並列回路に対し和で合成抵抗が計算できるためです。
つまり、
こんな感じに、コンデンサ・抵抗をつけた状態が
この状態に対する分布定数回路理論における見え方です!
ある地点$x $ から、$x+\Delta x$の区間を抜き出します。
さらに、電流電圧が導線の位置$x$,時刻$t$によって変化していると考え
\begin{eqnarray}
V&=&V(x,t)\\
I &=& I(x,t)
\end{eqnarray}
電圧・電流で方程式が立ちます
\begin{eqnarray}
V(x,t) - V(x+\Delta x,t)&=&R\Delta x I(x,t) + L\Delta x \frac{\partial I(x,t)}{\partial t} \\
I(x,t)- I(x+\Delta x,t) &=& C\Delta x \frac{\partial V(x+\Delta x,t)}{\partial t} + G \Delta x V(x+\Delta x)
\end{eqnarray}
注意点
二式目はあまり見ないコンデンサの式です。一般的に
V=\frac{1}{C} \int i dt
がコンデンサの式ですが、両辺を微分し、$C$を移項することで
C\frac{dV}{dt} = i
という式が出てきます、これを使っています。
また、電圧・電流が時刻だけでなく位置によっても変化するため、偏微分を使用しています。
話を戻し、さらに$\Delta x$を移項すると
\begin{eqnarray}
\frac{V(x,t) - V(x+\Delta x,t)}{\Delta x}&=&RI(x,t) + L \frac{\partial I(x,t)}{\partial t} \\
\frac{I(x,t)- I(x+\Delta x,t)}{\Delta x} &=& C \frac{\partial V(x+\Delta x,t)}{\partial t} + G V(x+\Delta x)
\end{eqnarray}
$\Delta x$を0に近づけていきます!
\begin{eqnarray}
-\frac{\partial V(x,t)}{\partial x}&=&RI(x,t) + L \frac{\partial I(x,t)}{\partial t} \\
-\frac{\partial I(x,t)}{\partial x} &=& C \frac{\partial V(x,t)}{\partial t} + G V(x)
\end{eqnarray}
完成!これが電信方程式です。
電信方程式の解、反射電圧の考え方
少々強引ですが、電圧・電流を次のように置きます。
\begin{eqnarray}
V(x,t)&=& \dot{V(x)} e^{j \omega t}\\
I(x,t)&=&\dot{I(x)} e^{j \omega t}\\
\end{eqnarray}
代入し整理することで
\begin{eqnarray}
-\frac{ d \dot{V(x)}}{\partial x} &=&R\dot{I(x)} + L j \omega \dot{I(x)} \\
-\frac{ d \dot{I(x)}}{\partial x} &=& C j \omega \dot{V(x)} + G \dot{V(x)}
\end{eqnarray}
時間に関与する部分がなくなりました。
余談ですが、このような表示をフェザー表示といいます。
もう少し、まとめると
\begin{eqnarray}
-\frac{ d \dot{V(x)}}{\partial x} &=&(R + L j \omega )\dot{I(x)} \\
-\frac{ d \dot{I(x)}}{\partial x} &=& (C j \omega + G ) \dot{V(x)}
\end{eqnarray}
ここで
\begin{eqnarray}
Z=R + L j \omega\\
Y=C j \omega + G
\end{eqnarray}
と定義すると
\begin{eqnarray}
-\frac{ d \dot{V(x)}}{\partial x} &=& Z \dot{I(x)} \\
-\frac{ d \dot{I(x)}}{\partial x} &=& Y \dot{V(x)}
\end{eqnarray}
両辺を$x$で微分すると
\begin{eqnarray}
-\frac{ d^2 \dot{V(x)}}{d^2 x} &=& Z \frac{d \dot{I(x)} }{dx}\\
&=&Z(-Y)\dot{V(x)} \\
&=& -ZY\dot{V(x)}
\end{eqnarray}
つまり、
\begin{eqnarray}
\frac{ d^2 \dot{V(x)}}{d^2 x}
&=& ZY\dot{V(x)}
\end{eqnarray}
が導出されます。この式は波動方程式です
解は
\dot{V(x)} = Ae^{kx}+B e^{-kx}\\
(k^2 = ZYとなるkを使用)
になります。電流は
-\frac{ d \dot{V(x)}}{\partial x} = Z \dot{I(x)} \\
より
\begin{eqnarray}
\dot{I(x)} &=& -\frac{1}{Z} \frac{ d \dot{V(x)}}{\partial x} \\
&=& -\frac{1}{Z} (k Ae^{kx}-kB e^{-kx})\\
&=& -\sqrt{ \frac{Y}{Z}} ( Ae^{kx} - B e^{-kx})\\
&=& \sqrt{ \frac{Y}{Z}} ( -Ae^{kx} + B e^{-kx})\\
\end{eqnarray}
以上が電信方程式の解になります。
少し、文字の定義をします。
\begin{eqnarray}
Y_0 = \sqrt{ \frac{Y}{Z}} :特性アドミタンス\\
Z_0 = \sqrt{ \frac{Z}{Y}} :特性インピーダンス
\end{eqnarray}
$k$は伝搬定数と呼ばれます。
k=\alpha + j \beta
と置き、時刻も合わせると
V(x,t) = (A e^{j (\omega t + \beta x)}+B e^{j (\omega t - \beta x)} )e^{\alpha} \\
つまり、$\alpha $は距離減衰、$\beta$は振動 を表しています。
まとめ:フェザー表示
\begin{eqnarray}
\dot{V(x)} &=& Ae^{kx}+B e^{-kx}\\
\dot{I(x)} &=& \frac{1}{Z_0} ( -Ae^{kx} + B e^{-kx})\\
Z_0 &=& \sqrt{ \frac{Z}{Y}} :特性インピーダンス
(k^2 = ZYとなるkを使用)
\end{eqnarray}
まとめ:時刻も入れて
\begin{eqnarray}
V(x,t) &=& A e^{\alpha x} e^{j (\omega t + \beta x)}+B e^{ - \alpha x} e^{j (\omega t - \beta x)} \\
I(x,t) &=& \frac{1}{Z_0} (-A e^{\alpha x} e^{j (\omega t + \beta x)}+B e^{\alpha x} e^{j (\omega t - \beta x)} )\\
\end{eqnarray}
進行波と後退波
$A e^{j (\omega t + \beta x)}$の項は後退波を表し、$x$の負の方向に進みます
$B e^{j (\omega t - \beta x)}$の項は進行波を表し、$x$の正の方向に進みます
このような状況では、この波はxの正の方向に進んでいるので進行波です。
$e^{j (\omega t - \beta x)}$が変わらない$t,x$の関係を考えると明らかです。
\begin{eqnarray}
e^{j (\omega t_1 - \beta x_1)} &=& e^{j (\omega t_2 - \beta x_2)}\\
(\omega t_1 - \beta x_1) &=&(\omega t_2 - \beta x_2) \\
\frac{x_2 - x_1}{t_2 - t_1} &=& \frac{\omega}{\beta}\\
\end{eqnarray}
つまり、この波は速度$\frac{\omega}{\beta}$で$x$の正の方向に進むことがわかります。
逆に、後退波は
こんな感じです。
まるで、先端で戻ってきているように見えるため、後退波を反射波と呼ぶこともあります。
後退波と進行波が存在するため、重なり合い、一部が定常波になります。
基本的には、反射して帰ってくる電圧は、電源から送り出した意味がないので、できれば減らしたいという風に考えることが多いです。
後述しますが有名なスミスチャートは反射して帰ってくる割合、定在波となる割合を計算することができます。
半無限長線路の場合
先ほどは、微分方程式に境界条件を入れなかったため、任意定数$A,B$が残っていました。
境界条件を入れ、$A,B$を求めて、結果を比較してみましょう
の場合、電源が$V_a e^{j\omega t}$で電圧を供給している場合
\begin{eqnarray}
\dot{V(0)} = V_a\\
\dot{V(\infty )} = 0\\
\end{eqnarray}
となります。電圧が0になるのは、無限長先では物理量は0に収束するという理由です。
\dot{V(x)} = Ae^{kx}+B e^{-kx}\\
に代入すると
A+B =V_a\\
$k=\alpha + j \beta$を入れると
\dot{V(x)} = A e^{\alpha x} e^{j \beta x}+B e^{ - \alpha x} e^{-j\beta x} \\
$e^{\alpha x}$はxの負の方向に減衰するイメージ
$e^{-\alpha x}$はxの正の方向に減衰するイメージ
よって、$x= \infty$で$e^{\alpha x}$が0に収束したと考えると$x=0$周辺も$0$になると考える必要があります。よって
A=0
以上より
\dot{V(x)} = V_a e^{-kx}\\
=V_a e^{ - \alpha x} e^{-j\beta x}
となります。
電流は
\dot{I(x)} = \frac{1}{Z_0} V_a e^{-kx}\\
$x=0$での電流は
\dot{I(0)} = \frac{1}{Z_0} V_a \\
特性インピーダンス$Z_0$がつながっているように見えます。
一般的に使われる同軸ケーブル
では、$Z_0 = 50Ω$ことが多いです。意外と低い抵抗値ですよね!
\begin{eqnarray}
Z&=&R + L j \omega\\
Y&=&C j \omega + G\\
Z_0 &=& \sqrt{ \frac{Z}{Y}} :特性インピーダンス\\
k^2 &=& ZY\\
\end{eqnarray}
電磁気学の知識を使って$L,C$を計算し、$R,G$は無視できることから$50Ω$は計算できます。
ケーブルの径と誘電率で決定します。
詳細な導出は以下
有限長の場合
ダイポールアンテナでは有限長であるのでその場合も考えてみます。
線路長を$l$とします。
\begin{eqnarray}
\dot{V(0)} = V_a\\
\dot{I(l)} = 0\\
\end{eqnarray}
電流が0になるのは、分布定数回路の図
を見て、終端ではもう電流が右へ進める、抵抗、コイル、コンデンサがないため$0$と考えています。
境界条件を入れると
\begin{eqnarray}
\dot{V(0)} &=& A+B = V_a\\
\dot{I(l)} &=& \frac{1}{Z_0} ( -Ae^{kl} + B e^{-kl}) = 0\\
\end{eqnarray}
解くと
\begin{eqnarray}
A&=& V_a\frac{e^{-kl}}{e^{-kl}+e^{kl}} \\
B&=& V_a\frac{e^{kl}}{e^{-kl}+e^{kl}} \\
\end{eqnarray}
よって、
\begin{eqnarray}
\dot{V(x)} &=& V_a (\frac{e^{-kl}}{e^{-kl}+e^{kl}}e^{kx}+ \frac{e^{kl}}{e^{-kl}+e^{kl}} e^{-kx} ) \\
\dot{I(x)} &=& \frac{V_a}{Z_0} ( -\frac{e^{-kl}}{e^{-kl}+e^{kl}}e^{kx} + \frac{e^{kl}}{e^{-kl}+e^{kl}} e^{-kx})\\
\end{eqnarray}
よって
\begin{eqnarray}
\dot{V(x)} &=& V_a (\frac{e^{k(x-l)}}{e^{-kl}+e^{kl}}+ \frac{e^{-k(x-l)}}{e^{-kl}+e^{kl}} ) \\
\dot{I(x)} &=& \frac{V_a}{Z_0} ( -\frac{e^{k(x-l)}}{e^{-kl}+e^{kl}} + \frac{e^{-k(x-l)}}{e^{-kl}+e^{kl}} )\\
\end{eqnarray}
ここで、無損失$R=0,G= 0 $という仮定を入れると
\begin{eqnarray}
Z&=&j \omega L\\
Y &=& j\omega C\\
Z_0&=&\sqrt{\frac{Z}{Y}} = \sqrt{\frac{L}{C}}\\
k^2&=&ZY = -\omega^2 LC\\
\therefore k&=& j \omega \sqrt{LC}
\end{eqnarray}
となります。$k$を代入すると
\begin{eqnarray}
\dot{V(x)} &=& V_a (\frac{2cos( \omega \sqrt{LC} (x-l) )}{2cos(\omega \sqrt{LC} l)}) \\
\dot{I(x)} &=& \frac{V_a}{Z_0} ( -\frac{2j sin(\omega \sqrt{LC} (x-l) )}{2cos(\omega \sqrt{LC} l)} )\\
\end{eqnarray}
電源にとってのインピーダンスを求める
\begin{eqnarray}
\frac{\dot{V(x)}}{\dot{I(x)} } &=& Z_0 (\frac{cos( \omega \sqrt{LC} (x-l) )}{-jsin( \omega \sqrt{LC} (x-l) }) \\
&=& j Z_0 tan ( \omega \sqrt{LC} (x-l) )\\
\frac{\dot{V(0)}}{\dot{I(0)} } &=& -j Z_0 tan ( \omega \sqrt{LC} l )\\
\end{eqnarray}
この結果の重要な点は最終的に、インピーダンスはtanの形になり
$ \omega \sqrt{LC} l = n \pi$であれば抵抗は0になるということである!(無損失条件$R=0,G= 0$を入れているが、現実ではわずかに抵抗があるため、わずかにインピーダンスは発生する。)
l=\frac{n \pi}{\sqrt{LC} \omega}
とすれば、たくさんの電流を流すことができるのである!
周波数を変える場合、LC回路で共振周波数で供給すると、理論的にはインピーダンスが0になるのに似ています。
波は速度$\frac{\omega}{\beta}$で$x$の正の方向に進むと以前示しました。
無損失条件$R=0,G= 0$では
\frac{\omega}{\beta} = \frac{\omega}{\omega \sqrt{LC}} = \frac{1}{\sqrt{LC}} [m/s]
の速度で伝搬するということがわかります。この伝搬速度を$v$と書くとします。
$ \omega = 2 \pi f_s$とします。
波長$\lambda$と
\lambda \times f_s = v
の関係があります。以上を用いてインピーダンスが最小になる$l$の式を書き換えると
\begin{eqnarray}
l&=&\frac{n \pi}{\sqrt{LC} \omega}\\
&=& \frac{n \pi}{\sqrt{LC} 2 \pi f_s}\\
&=&\frac{n v }{2 f_s}\\
&=& \frac{ \lambda}{2 } n\\
\end{eqnarray}
この結果は非常に重要です!
つまり、アンテナの長さを半波長の整数倍の長さにすることで、流す電流を最大化することができるのです!
なぜ重要かというと、放射される電波(電磁波)は電流の大きさに比例するので、電流を増やすことで放射する電流を増やすことができるため重要です。
ただし、$C,L$が位置$x$によらない場合を考えていたので、ダイポールアンテナには必ずしも当てはまりません。
末端電圧について
あと、ちょっと面白いのが$x=l$での電圧を求めると
\begin{eqnarray}
\dot{V(x)} &=& V_a (\frac{2cos( \omega \sqrt{LC} (0) )}{2cos(\omega \sqrt{LC} l)}) \\
&=& V_a \frac{1}{cos(\omega \sqrt{LC} l)}
\end{eqnarray}
となり、線末端の電圧が供給電圧を超える可能性があります。
インピーダンス最小条件を満たした場合は線末端電圧は供給側電圧と一致します。
\begin{eqnarray}
\dot{V(x)}
&=& V_a \frac{1}{cos(\omega \sqrt{LC} l)}\\
&=& V_a \frac{1}{cos(\omega \sqrt{LC} \frac{n \pi}{\sqrt{LC} \omega})}\\
&=& V_a \frac{1}{cos(n \pi)}\\
&=& \pm V_a
\end{eqnarray}
開放端振動みたいですね。
負荷を接続した場合:反射比、定在波比
最後に、終端に負荷$Z_L$を接続した場合について考えます。
境界条件は
\begin{eqnarray}
\dot{V(0)} = A+B = V_a\\
\frac{\dot{V(l)} }{\dot{I(l)} } = Z_L
\end{eqnarray}
となります。まぁ、これは明らかといっていいですよね
\begin{eqnarray}
\dot{V(x)} &=& Ae^{kx}+B e^{-kx}\\
\dot{I(x)} &=& \frac{1}{Z_0} ( -Ae^{kx} + B e^{-kx})\\
Z_0 &=& \sqrt{ \frac{Z}{Y}} :特性インピーダンス
(k^2 = ZYとなるkを使用)
\end{eqnarray}
電信方程式の解に境界条件を適用すると次の式が立ちます。
\begin{eqnarray}
\begin{bmatrix}
1 & 1 \\
(1+\frac{Z_L}{Z_0})e^{kl} & (1-\frac{Z_L}{Z_0})e^{-kl} \\
\end{bmatrix}
\begin{bmatrix}
A\\
B
\end{bmatrix}
=
\begin{bmatrix}
V_a\\
0
\end{bmatrix}
\end{eqnarray}
を解くと
\begin{eqnarray}
\begin{bmatrix}
A\\
B
\end{bmatrix}
=
\frac{1}{ (1-\frac{Z_L}{Z_0})e^{-kl} - (1+\frac{Z_L}{Z_0})e^{kl} }
\begin{bmatrix}
(1-\frac{Z_L}{Z_0})e^{-kl} & -1 \\
-(1+\frac{Z_L}{Z_0})e^{kl} &1 \\
\end{bmatrix}
\begin{bmatrix}
V_a\\
0
\end{bmatrix}
\end{eqnarray}
よって
\begin{eqnarray}
A=\frac{1}{ (1-\frac{Z_L}{Z_0})e^{-kl} - (1+\frac{Z_L}{Z_0})e^{kl} }
(1-\frac{Z_L}{Z_0})e^{-kl} V_a\\
B=- \frac{1}{ (1-\frac{Z_L}{Z_0})e^{-kl} - (1+\frac{Z_L}{Z_0})e^{kl} }
(1+\frac{Z_L}{Z_0})e^{kl} V_a
\end{eqnarray}
になります。
\begin{eqnarray}
\dot{V(x)} &=& Ae^{kx}+B e^{-kx}\\
\dot{I(x)} &=& \frac{1}{Z_0} ( -Ae^{kx} + B e^{-kx})\\
\end{eqnarray}
に代入する。$\frac{Z_L}{Z_0} = M$とする。
\begin{eqnarray}
\dot{V(x)} &=&Ae^{kx}+B e^{-kx}\\
&=& V_a \frac{(1-M)e^{-k(l-x)} -(1+M) e^{k(l-x)} }{(1-M) e^{-kl} - (1+M) e^{kl}}\\
&=& V_a \frac{-sinh (k(l-x)) -Mcosh(k(l-x)) }{-sinh(kl) -Mcosh(kl)}\\
&=& V_a \frac{sinh (k(l-x)) + Mcosh(k(l-x)) }{sinh(kl)+ Mcosh(kl)}
\end{eqnarray}
末端電圧は
\begin{eqnarray}
\dot{V(l)}
&=& V_a \frac{(1-M)e^{-k(l-l)} -(1+M) e^{k(l-l)} }{(1-M) e^{-kl} - (1+M) e^{kl}}\\
&=& V_a \frac{(1-M) -(1+M) }{(1-M) e^{-kl} - (1+M) e^{kl}}\\
&=& V_a \frac{-2M }{(1-M) e^{-kl} - (1+M) e^{kl}}\\
&=& V_a \frac{ M }{sinh(kl)+ Mcosh(kl)}\\
&=& V_a \frac{ 1 }{ \frac{sinh(kl)}{M}+ cosh(kl)}
\end{eqnarray}
$k$は正確には複素数なため、$sinh,cosh$でまとめるてもグラフ的に解釈はできないですね。
$M=-1$とすると
\begin{eqnarray}
\dot{V(l)}
&=& \frac{ V_a}{ e^{-kl}}
\end{eqnarray}
となり、入力電圧に対して末端電圧がかなりの倍率を持つことになります。
反射比、透過係数
\begin{eqnarray}
\dot{V(x)} &=& Ae^{kx}+B e^{-kx}\\
\dot{I(x)} &=& \frac{1}{Z_0} ( -Ae^{kx} + B e^{-kx})\\
Z_0 &=& \sqrt{ \frac{Z}{Y}} :特性インピーダンス
\end{eqnarray}
が電信方程式の解でした、これを進行波を$V_+,I_+$,後退波を$V_-,I_-$とすると
\begin{eqnarray}
\dot{V(x)} &=& V_+ + V_-\\
\dot{I(x)} &=& \frac{1}{Z_0} (V_+ - V_-)\\
\end{eqnarray}
と書けます。$A$が後退波、$B$が進行波になります。
反射比$\rho$を進行波と後退波の比率とすると
\rho = \frac{V_-}{V_+}
と定義されます。
この状態の時、負荷$Z_L$での電流電圧抵抗の関係より
\begin{eqnarray}
\dot{I(x)} &=& \frac{1}{Z_0} (V_+ - V_-) (電信方程式解)\\
\dot{I(l)} &=& \frac{1}{Z_L}(V_+(l) +V_-(l)) (電線末端での電圧電流インピーダンス関係)\\
\therefore \frac{1}{Z_L}(V_+(l) +V_-(l)) &=& \frac{1}{Z_0}(V_+(l) - V_-(l))\\
\end{eqnarray}
と計算できます。末端だけでの話に途中からすり替わっているので注意です。
反射比率を以上の関係より計算します。
\begin{eqnarray}
(\frac{Z_L}{Z_0}-1)V_+(l) = (1+\frac{Z_L}{Z_0})V_-(l)\\
\therefore \frac{V_-(l)}{V_+(l)} &=& \frac{\frac{Z_L}{Z_0}-1}{1+\frac{Z_L}{Z_0}}\\
&=&\frac{Z_L-Z_0}{Z_L+Z_0}
\end{eqnarray}
と計算できます。
供給電圧に対して、負荷に加わった電圧の比を透過係数$\tau$といいます。
\begin{eqnarray}
\tau &=& \frac{V_+ + V_-}{V_+}\\
&=& 1+\frac{\frac{Z_L}{Z_0}-1}{1+\frac{Z_L}{Z_0}}\\
&=&\frac{2Z_L}{Z_0+Z_L}
\end{eqnarray}
となります。
以上からわかることがあります。
Z_L = Z_0
であれば、反射比が0になり、透過係数が1になります。
これがインピーダンス整合であり、線路特性インピーダンスが50Ωなら負荷側も50Ωにすれば反射は起こらなくなります。
スミスチャート
負荷抵抗と線路特性インピーダンスの関係によって、反射比・透過率が決まることがわかりました。
反射比・透過率をグラフで求めようとするのがスミスチャートです。
反射比を$\rho$とおきます
\frac{V_-}{V_+} = \rho = u + jv
負荷インピーダンス$Z_L$を$Z_0$で正規化した、正規化インピーダンスは
\frac{Z_L}{Z_0} = \frac{V_+ + V_-}{V_+ -V_-}\\
=\frac{1+\rho}{1-\rho}
となります。
\frac{Z_L}{Z_0} = R+jX
とおきます。$(u,v) → (R,X)$の関係を求めます。
R+jX =\frac{1+u + jv}{1-u - jv}\\
=\frac{1-u^2-v^2 + 2jv}{(1-u)^2+v^2}
よって
\begin{eqnarray}
R&=&\frac{1-u^2-v^2 }{(1-u)^2+v^2}\\
X&=&\frac{2v }{(1-u)^2+v^2}\\
\end{eqnarray}
この式を変形すると
\begin{eqnarray}
(u-\frac{R}{R+1} )^2 +v^2 &=& \frac{1}{(R+1)^2}\\
(u-1)^2+(v-\frac{1}{X} )^2 &=& \frac{1}{X^2}
\end{eqnarray}
となります。
さらに、反射比の大きさは1以下なのでu-v平面上の単位円内のみが有効範囲であるので
こうなります。
これがスミスチャートです!
反射比 と 正規化インピーダンス(負荷抵抗/伝送線路特性インピーダンス)の対応を示した図です。
$X$は0に近いほど反射比が小さくなり、$R$は特性インピーダンスに近いほど反射比が小さくなることを意味しています。