前回
つづき
前回は,ベクトルについて詳しく述べました.
今回は,角速度,速度について詳しく記述していきます.
座標系A上に固定されている点Pの速度を考えます.ここで,点PはA上に固定されているため $r_{AP}^A$ (AからPへの代数ベクトル,A座標系で表現)は時不変の定ベクトルになります.よって,座標系AでPを見る際の速度は
v_{P}^A = 0
であるといえます.
座標系Oで見る際の速度は0であるとは限りません.なぜなら,A座標系が並進移動・回転をしている可能性があるからです.結論から述べると
v_{P}^O = v_{A}^O + C_{OA} cross(\omega_{A}^A) r_{AP}^A
となります.$\omega_{A}^A$は座標系Aの角速度ベクトルです.
座標系Aの原点の速度(並進速度)が $ v_{A}^O $
座標系Aの回転による速度が $cross(\omega_{A}^A) r_{AP}^A $
になります.並進速度はわかると思いますが,回転による速度は,意味不明だと思います.
座標系Aが回転していることで,点Pには速度ベクトルが発生していることがわかると思います.
この幾何速度ベクトルは,
\vec \omega_A \times \vec r_{AP}
という外積で計算できます.参考リンク
代数ベクトル計算する場合は,$\vec \omega_A $,$ \vec r_{AP}$両方同じ座標系で代数ベクトルとして表現する必要があります.$ \vec r_{AP}$はA座標系でないと定ベクトルではないので,両方A座標系で表現し,外積します.よって$cross(\omega_{A}^A) r_{AP}^A $となります.
$v_{P}^O $はO座標系表現なので,並進速度と合成する際は,$C_{OA}$を掛けて,O座標系に変換して足しています.
追記(飛ばしていいです)
直感的でなく数学的に証明することもできます.
C_{OA} C_{OA}^T = I
を時間微分すると
\dot{C_{OA}} C_{OA}^T +C_{OA} \dot{C_{OA}^T} = 0
ここでの時間微分は,各要素の時間微分です.
\Omega = \dot{C_{OA}} C_{OA}^T
とすると
\Omega + \Omega^T = 0
よって,対角成分は0,対象成分は正負が反転$\Omega_{i,j} =-1*\Omega_{j,i} $である.
よって
\Omega=\left(
\begin{array}{ccc}
0&-w_z&w_y\\
w_z&0&-w_x\\
-w_y&w_x&0\\
\end{array}
\right)\\
=cross(w)
と書ける.ここで,新しいベクトルを定義した.
\omega =
\left(
\begin{array}{ccc}
w_x\\
w_y\\
w_z\\
\end{array}
\right)\\
話を戻して,
\dot{C_{OA}} C_{OA}^T +C_{OA} \dot{C_{OA}^T} = 0
より
\begin{eqnarray}
\dot{C_{OA}} C_{OA}^T &=& -C_{OA} \dot{C_{OA}^T}\\
\therefore \dot{C_{OA}} &=& -C_{OA} \dot{C_{OA}^T} (C_{OA}^T)^{-1}
&=&-\Omega^T C_{OA}\\
&=&-cross(w)^T C_{OA}\\
&=&cross(w)C_{OA}\\
\end{eqnarray}
$C_{OA}$は,$e_{AX}^O$を座標系$A$の$x$方向単位幾何ベクトルを$O$座標系で表した代数ベクトルとすると
C_{OA} = [e_{AX}^O , e_{AY}^O , e_{AZ}^O]
と書けますので,列で見ると
\begin{eqnarray}
\dot{e_{AX}^O} &=& cross(w)e_{AX}^O\\
\dot{e_{AY}^O} &=& cross(w)e_{AY}^O\\
\dot{e_{AZ}^O} &=& cross(w)e_{AZ}^O\\
\end{eqnarray}
が導かれます.
座標変換行列の時間微分と角速度ベクトルの関係
先ほど求めた結果を用いて座標変換行列の時間微分を求めてみます.
$r_{OP}^O$を時間微分することを考えます.
\begin{eqnarray}
\frac{d}{dt} r_{OP}^O &=& \frac{d}{dt} r_{OA}^O + \frac{d}{dt} r_{AP}^O\\
&=& v_{A}^O + \frac{d}{dt} (C_{OA}r_{AP}^A)\\
&=& v_{A}^O + (\frac{d}{dt} C_{OA} ) r_{AP}^A\\
\end{eqnarray}
$r_{AP}^A$は時不変なので,$\frac{d}{dt}r_{AP}^A = 0$となり,現れません.
先ほどの結果
v_{AP}^O = v_{A}^O + C_{OA} cross(\omega_{A}^A) r_{AP}^A
と比較すると
\frac{d}{dt} C_{OA} = C_{OA} cross(\omega_{A}^A)
が得られます.この関係は頻繁に表れるので覚える価値ありです.角速度ベクトルはA座標系で表している必要があることも大切です.
以上で運動学的説明を終わります.
次に3質点剛体を用いて,目標である,3次元のオイラー・ニュートンの運動方程式を導出します.