実効値を使う理由
電力計算を成立させるために、実効値表示は存在します。
P=V_a I_a
次のように置きます。
\begin{eqnarray}
V_m,I_m:最大値\\
V_{ave},I_{ave}:平均値\\
V_a,I_a:実効値
\end{eqnarray}
次の表が求まります(積分計算の結果)
電圧 | 電流 | $V_m$に対する振幅比 | $I_m$に対する振幅比 | $V_mI_m$に対する比率 |
---|---|---|---|---|
$V_m$ | $I_m$ | 1 | 1 | 1 |
$V_{ave}$ | $I_{ave}$ | $\frac{2}{\pi}$ | $\frac{2}{\pi}$ | $\frac{4}{\pi^2}$ |
$V_a$ | $I_a$ | $\frac{1}{\sqrt{2}}$ | $\frac{1}{\sqrt{2}}$ | $\frac{1}{2}$ |
電力$P$を計算します。
\begin{eqnarray}
P&=& \frac{1}{T}\int_0^{T} V(t) I(t) dt\\
&=& \frac{1}{T}\int_0^{T} V_m \sin \omega t \times I_m \sin \omega t dt\\
&=& V_m I_m \frac{1}{2}\\
&=& V_a I_a
\end{eqnarray}
最後の2行が大切です。
最大値同士で掛けると2倍になる
実効値同士で掛けると正常値になる
実効値で電流・電圧表示しておくと電力計算がすぐできるのです!これが実効値表示を使う理由です!
共役複素数にする必要がある理由
フェザー表示を用いると、計算は楽になるがところどころ小骨が引っかかるような感覚があり、特に共役複素数に変換する点に関して違和感を感じる。
問題提起:抵抗の消費する電力
次のような回路の場合
V= \sqrt{2} | \dot{E}| e^{j\omega t}
とすると
i_R = V/R = \sqrt{2} \frac{| \dot{E}|}{R} e^{j\omega t}
となる(嘘)。
消費電力Pは
P=V\times i_R = 2\frac{| \dot{E}|^2}{R} e^{2 j\omega t}
となる。ここでの消費電力は瞬時電力と呼ばれます。周期で積分して平均電力を求めましょう。
P_{ave} = \frac{1}{T} \int_0^{T} 2\frac{| \dot{E}|^2}{R} e^{2 j\omega t} dt
しかし、複素関数の積分となってしまう。また、正しい電力は$\frac{E^2}{R}$である。
なぜうまくいかないのだろうか
結論から言えば、電力計算では片方を共役複素数にしないといけないのである。
P=V\times i_R^*
なぜ共役複素数にしないといけないのか
計算の辻褄を合わせる結果これが理由である。
そもそも、電圧に虚部は存在しない。存在しないものを追加し、実数の計算方法をそのまま拡張し、結果うまくいかなかっただけなのである。原理は存在しない。人間側の都合で追加したものの後始末をつけるだけである。
共役複素数を取って掛け算をするとちょうど人間が余分に追加したものが消えただけである。仮に複素共役を取ってうまく行かなかったら、別の方法が採用されていただろう。そうすると都合が良かったそれだけだ。
よって、実際に正しく計算できていることを確認・証明すれば、十分である。それ以上の追求に意味はない。
\begin{eqnarray}
P &=& Re (\dot{E}\times \dot{I}^*)\\
&=& Re( | \dot{E}| e^{j \omega t + j\theta_E} | \dot{I}| e^{-j \omega t - j\theta_I} )\\
&=& Re( | \dot{E}| | \dot{I}| e^{ j(\theta_E - \theta_I)} )\\
&=& | \dot{E}| | \dot{I}| cos (\theta_E - \theta_I )
\end{eqnarray}
実部のみで計算した値と一致すれば、確認完了である!
実部のみで計算する
E = \sqrt{2} | \dot{E}| sin(\omega t + \theta_E)
とすると
I = \sqrt{2} | \dot{I}| sin(\omega t + \theta_I)
となる。
消費電力Pは
P=E I= 2| \dot{E}|| \dot{I}|sin(\omega t + \theta_E)sin(\omega t + \theta_I)
となる。ここでの消費電力は瞬時電力と呼ばれる。周期で積分して平均電力を求める
\begin{eqnarray}
P_{ave} &=&\frac{1}{T} \int_0^{T} 2| \dot{E}|| \dot{I}|sin(\omega t + \theta_E)sin(\omega t + \theta_I) dt\\
&=&\frac{1}{T} \int_0^{T} 2| \dot{E}|| \dot{I}|\frac{1}{2} [cos(2 \omega t + \theta_E +\theta_I) - cos (\theta_e - \theta_I) ] dt (和積の公式を使用)\\
&=&\frac{1}{T} 2| \dot{E}|| \dot{I}| cos (\theta_e - \theta_I) \frac{1}{2} T\\
&=& | \dot{E}|| \dot{I}| cos (\theta_e - \theta_I)
\end{eqnarray}
と計算できる。
正しく計算できた。確認完了!!!
補足:無効電力の正負
遅れ無効電力を正(+)とする。
理由はない。
個人的にコイルでは電流は電圧基準で負の方向を向いているため。無効電力は負になる気がするが、逆になる。
だからこそ
P = \bar{E} I
ではなく
P = E \bar{I}
となるのだろう.
覚え方:愛には裏がある
(追加)最近読んだ本では正負逆で設定しているものがあった。あくまで定義の話になるので、統一されていればどちらでも本質的には問題ない。注意が必要だ。