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磁界共鳴型給電の理論

Last updated at Posted at 2021-12-31

概要

を見て、磁界共鳴型給電は意外といけることが分かったので、論文を読んで、勉強したのでまとめます。

電磁誘導型と異なる磁界共鳴方式は

  • Wireless Power Transfer via Strongly Coupled Magnetic Resonances
  • Efficient wireless non-radiative mid-range energy transfer

という論文が始まりでした。

60Wの電力を2mの距離、40%の効率で伝送し、非常に注目を集めたそうです

磁界の振動により、共振結合が発生しエネルギーが効率よく伝達されるとあります?

不思議ですね。

上の二つを読んでもさっぱりなので、日本語で探したところ、いい論文がありました。

10MHz共振で送信するみたいですね、非常に高周波です。
そもそも、原理自体も最初は議論を呼んでいて、電磁誘導の一種かも怪しかったようです(上の日本語論文は、電磁誘導方式の一種といっている)。

中距離のエアギャップが大きくなった時に、結合係数が下がります。その時の効率が電磁誘導型と比べ優れている点に磁界共鳴型給電の利があります。

以降では、結合係数が低下したトランスを用いて、電磁誘導型と磁界共鳴型で近似した理論式を用いて議論を行います。
ただし、トランスの鉄損はコアがないので存在せず、寄生容量は巻き数が少ないため無視できるとして考えます。

磁気共鳴型

効率

a.png

に基づいて効率$\eta$を求めると

\eta = \frac{R_L}{R_L + r_2 + r_1 \frac{(\omega  L_2 -\frac{1}{\omega C_2 } )^2 + (r_2 + R_L)^2}{(\omega L_m)^2 }}

となる。
ここで$\omega L_2 = \frac{1}{\omega C_2 } $ となるよう、$\omega = \frac{1}{\sqrt{C_2 L_2 }}$とすると、

\eta = \frac{R_L}{R_L + r_2 + r_1 \frac{ (r_2 + R_L)^2}{(\omega L_m)^2 }}

となる。$\omega L_m$をとにかく増加すれば、効率が良くなるといえる。
一方で$\omega L_m$の増加による効率の改善には、上限があり$(r_2 + R_L) << \omega L_m$ となれば、

\eta = \frac{R_L}{R_L + r_2 }

となり、$r_1$の影響を受けなくなる。

上記の論文では$\eta$を$R_L$で微分して、最適の$R_L$を計算してる。

R_L = \sqrt{r_2^2 +\frac{r_2(\omega L_m)^2}{r_1} +(\omega L_2 -\frac{1}{\omega C_2} )^2  }

とするのが、よいそうだ。

入力インピーダンス

いくら効率が良くても、一次側の電圧が高くないと全然電力が消費されない(入力インピーダンスが高い)と非常に不便である。

入力側のインピーダンス

\begin{eqnarray}
\frac{V_1}{I_1} &=& \frac{r_1(r_2 +R_L)+ (\omega L_m)^2 +j(r_2 + R_L)(\omega L_1 -\frac{1}{\omega C_1}) }{r_2 + R_L}\\
&=& r_1+ \frac{ (\omega L_m)^2  }{r_2 + R_L}+j(\omega L_1 -\frac{1}{\omega C_1})\\
\end{eqnarray}

となる。(これは自分で計算したので自信はない)
$\omega L_1 =\frac{1}{\omega C_1}$となるようにした方が、入力インピーダンスが下がることは明らか

先ほど、$(r_2 + R_L) << \omega L_m$ としようと考えたが、こうすると
入力インピーダンスが増加する

出力抵抗

電流$I_2$を負荷に流すが、負荷間電圧が$I_2$によって、変動すると非常に不便である。

負荷間電圧($R_L = \infty $の時)は

\frac{j \omega L_m}{r_1+j(\omega L_1 - \frac{1}{\omega C_1})  } V_1

短絡時の電流$I_2$は

I_2 = \frac{-j \omega L_m}{(\omega L_m)^2 +r_1 r_2} V_1

よって、出力抵抗は

- \frac{(\omega L_m)^2 +r_1 r_2}{ r_1 }\\
= -(r_2 +\frac{(\omega L_m)^2 }{ r_1 })

となる、二次側コイルの内部抵抗$r_2$の影響がそのまま表れるのはわかるが、入力周波数$\omega$を上げると出力抵抗が上がるというのは意外な結果だ。

まとめ

$\omega = \frac{1}{\sqrt{C_2 L_2 }}$となるようにした方が、効率が上がる
$\omega= \frac{1}{\sqrt{C_1 L_1 }}$となるようにした方が、入力インピーダンスが下がる

  • $(r_2 + R_L) << \omega L_m$ とすれば、効率は上がる
  • $(r_2 + R_L) << \omega L_m$ とすれば、入力インピーダンスが増加する
  • $r_1<< \omega L_m$ とすれば、出力抵抗が増加する

以上の3つは、効率を犠牲にするか、出力抵抗・入力インピーダンスを犠牲にするかの選択を意味している。
基本的に、磁気共鳴方式は$ \omega L_m$をとにかく大きくして、効率を優先している

電磁誘導方式

効率

磁気共鳴方式から、Cを抜くだけ

\eta = \frac{R_L}{R_L + r_2 + r_1 \frac{(\omega  L_2 )^2 + (r_2 + R_L)^2}{(\omega L_m)^2 }}

$L_2$の部分が消せないために、どう考えても効率を上げるならば、$C_2$をつけてやるのが重要であるということがわかる。

入力インピーダンス

\frac{V_1}{I_1} 
=r_1+ j\omega L_1 + \frac{ (\omega L_m)^2  }{r_2 + R_L+j \omega  L_2}\\

出力抵抗

負荷間電圧($R_L = \infty $の時)は

\frac{j \omega L_m}{r_1+j \omega L_1   } V_1

ちなみに、$r_1$が十分小さいとすると、負荷間電圧は$\frac{L_m}{L_1} V_1 = k \sqrt{\frac{L_2}{L_1}}$となり、理想トランス通りになる。

短絡時の電流$I_2$は

I_2 = \frac{-j \omega L_m}{(\omega L_m)^2 +(r_1+j \omega L_1 )( r_2+ j \omega L_2)} V_1

よって、出力抵抗は

\begin{eqnarray}
- \frac{(\omega L_m)^2 +(r_1+j \omega L_1 )( r_2+ j \omega L_2) }{ r_1 + j \omega L_1 }\\
= -(r_2 +  j\omega L_2 + \frac{(\omega L_m)^2 }{ r_1 +j \omega L_1 })
\end{eqnarray}

高周波になると$j \omega L_2$のインダクタンスによる電圧降下が大きく発生すると考えられる。
(追記)と思ったが、3つ目の項でインダクタンスは打ち消される
$r_1 << \omega L_1$と考えれば(電磁誘導方式なら必ずこうする)

\begin{eqnarray}
-(r_2 +  j\omega L_2 + \frac{(\omega L_m)^2 }{ r_1 +j \omega L_1 })
&=&-(r_2 + j\omega L_2 + \frac{\omega^2  k^2 L_1 L_2  }{ j \omega L_1 })\\
&=&-(r_2 + j\omega L_2 - j \omega  k^2  L_2  )\\
&=&-(r_2 + j\omega(1-k^2) L_2)
\end{eqnarray}

高周波になると$j (1-k^2) \omega L_2$のインダクタンスによる電圧降下が発生する
結合係数が1に近いほど、降下は小さくなる。

二つの比較

効率

磁気共鳴方式

\eta = \frac{R_L}{R_L + r_2 + r_1 \frac{ (r_2 + R_L)^2}{(\omega L_m)^2 }}

電磁誘導方式

\eta = \frac{R_L}{R_L + r_2 + r_1 \frac{(\omega  L_2 )^2 + (r_2 + R_L)^2}{(\omega L_m)^2 }}

磁気共鳴方式の方が必ず高くなる

入力インピーダンス

磁気共鳴方式

r_1+ \frac{ (\omega L_m)^2  }{r_2 + R_L}\\

電磁誘導方式

r_1+ j\omega L_1 + \frac{ (\omega L_m)^2  }{r_2 + R_L+j \omega  L_2}\\

磁気共鳴方式の方が大きくなると予想

出力抵抗

磁気共鳴方式

 -(r_2 +\frac{(\omega L_m)^2 }{ r_1 })

電磁誘導方式

 -(r_2 +  j\omega L_2 + \frac{(\omega L_m)^2 }{ r_1 +j \omega L_1 })

磁気共鳴方式の方が出力抵抗が大きくなる(電磁誘導方式で$r_1 (1-k^2) << \omega k^2 L_1 $と設定した場合)。

以上より、負荷に流す電流によって電圧降下をあまりさせたくない場合、電磁誘導方式を採用したほうがいい
効率を優先したい場合は断然、磁気共鳴方式である。
入力インピーダンスについては自信がない

最初の英語論文を読んだ

上のような等価回路による議論ではない

難しい・・・電波を放射していると考えて、損失も考えているのか?

今後の課題とする

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